戯事[翁]のフーリッシュソウル

さてさて、いつまで続くのやら

第一回MMVS-P-00[零藍] という存在

 “零藍”は、いわば俺の内にある「萌」分が、直接具現化したものなのかもしれない。
いや、実質そうであるのだろう。
メイドさんというものに、多少なりと憧れを抱く俺ならば、ここはYESと応えるべきだ。
ただ、俺は明確にそれが「好き」とはいえなかった。
オールマイティに好きになる俺だからこそ、何が好きかがわからなかった。
(正直いまでも迷っていると言ってもいいが)

そんな漠然とした思いの中、ある転機が訪れる。
言わずもがな、このサークルに所属すると言うことだ。

そして、全ては元から場所が決まっている、パズルのピースのようにはまり込んでいった。

サークル名決定の際、俺が挙げて没になった名前。
''「喫茶 蔵美亭」''
なんの事は無い、グラビティの当て字だ。

通常なら、それは破棄して心の隅にでも追いやるべきだったのかもしれない。
ただ俺はそういったことが出来ない、大莫迦だった。

GravityZeroというサークル名が決まって尚、押し捲った。
世界設定も、殆ど自分勝手に近く。
自分でも自己中心的に押し付けるように。
申し訳ないという罪の意識を感じ。
それでも止まる事は、出来なかった。


気付くと、俺の前には彼女が居た。
重力というテーマに基づき、俺自身の「萌」の具現化した存在。
気付かぬうちに、思いのたけを注ぎ込んでいた。

彼女はヒトではない存在だ。
どこか人間不信である俺が、心を許した機械という存在。
彼女はその最終形態だ。

はじめは繰り人形のようだった彼女。
幾度かのVerUPと共に、その容姿を少しずつ変えてゆく。


そして出来上がったのが零藍 、というキャラクターだ。


彼女はヒトではない。
けしてヒトになる事は出来ない。
何故なら、機械だから。
ヒトを裏切れない存在だから。

ただ、そんな事は悲しすぎる。
いや…悲しすぎた、と言った方が良いだろう。

俺の心の中には、実質二人の感情が渦巻いている。

一人は臆病で、人間不信な性格。
一人は楽観的で、優しい性格。

どちらを抜いても、俺は俺でなくなるだろう。
だからこそ、悲しすぎると思ったのだろう。

ただの機械と、ヒトとの違い。
考え方や、動作だけではくくれないもの。
在り方を超えた、特別な存在。




そう、機械たる彼女には、心を与える必要があった。
彼女はけして機械であってはならない。
大好きを結集して作られた存在だからこそ、悲しい存在であってはならない。
何より俺がそれを許すはずが無い。


だからこそ、彼女には思考や肉体とは違う、明確な「心」が必要だった。


しかし、初めから完成された心を作り出すことは難しい。
いや、不可能であると言えるだろう。
空想上の産物であったとしても、それはありえるはずの無いものだし、在っては成らないものだ。

故に、俺は彼女らMMVSを名乗る者に、「ココロイド・ドライヴ」という要素をつけた。

それはただの機械に、擬似的なココロを与える装置。
彼女に搭載された「ココロイド・ドライヴ」は、今はまだ心の模倣に過ぎない。
ただ、切欠を与えただけだ。
本当の心じゃない。
ただ、道をしめしただけだ。


俺は、哀しみを好いては居ない。
何より、俺の身勝手によって不幸せになる事を、至上に嫌っている。
憎んでいると言ってもいい。


だから、空想上の人物だとしても…。
彼女には幸せな人生を送って欲しいと願う。

俺は零藍の擬似的な心が、本当の心になる事を望む。

それが、俺が望む事。
本当の心になったとき、彼女の目は開くだろう。
封印した目は、俺が出来る最後のおせっかい。


だから、皆に頼みたい。
心から、願いたい。

彼女を認めてくれたのなら、心から愛してやってくれ。
今はまだ、歩き始めた赤ん坊みたいなものだ。

彼女は自分の感情がまったく理解できない。
元来のプログラムに従い、素直そのものだ。
機械や、メイドという枷で、冷たく見えるかもしれない。

それでも、頼みたい。
彼女を愛してやってくれ。
嫌なら、それでもいい。

彼女を、愛してやって欲しい。


傲慢で、自分勝手な申し出だとは思う。
それでも、コレだけは…伝えたかったのだ。


2005/11/11 戯事[翁]
最終更新:2005年11月11日 03:50
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