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<p>ヴアァ・・・・<br /><br /> 囀る鳥達の声、風にそよぐ木々の音とは明らかに違う異質な音が響き渡る。<br /> やがて音の主は次第にオキと林に近づき、ついにその姿を見せた。<br /><br /> 「白いFC・・だけどちょっと圧縮抜けた感じだナ」<br /> 「へー流石所長 音聞いただけでわかるんだ」<br /> 「あったりめーだろ 何年RE組んでると思ってんだ(笑)」<br /><br /> バラバラバラ・・ RE特有のアイドリング音を立てて白いFCは二人の近くに停まる。<br /> 運転席の扉が開き、そこから現れたのは高橋涼介その人であった。<br /> 瞬間―――時間にすれば正に瞬間だが、オキは涼介との間に同じ”匂い”のような物を感じた気がした。<br /><br /> 「はじめまして・・自分はプロジェクトDのリーダー 高橋涼介と言います」<br /> 「オキだ 神奈川西部と静岡東部をメインで走ってる・・まさかリーダー直々に挨拶に来るなんて思ってもなかったヨ」<br /> 「ええ・・今回はちょっと特別な事情があって」<br /> 「特別?」<br /> 「実は・・来週のバトルを中止して欲しいんです」<br /> 「ええええ――――!?」<br /><br /> 箱根の山にオキの声が木霊した。<br /> オキの声に、展望台の観光客も一斉に振り向く。<br /><br /> 「ばっか!オメーは一々声がでけーんだヨ」<br /> 「だってェ・・折角林所長にEg組み直してもらってセッティングも出してらったんだゼ・・・・」<br /><br /> がっくりと肩を落としたオキ。<br /> それを見て流石に涼介も悪いと感じたのだろうか、簡単な説明を始めた。<br /><br /> 「オキさんもご存知だと思いますが・・うちのチームはヒルクライムとダウンヒルを別々のドライバーが担当しています<br /> 実は・・昨晩なんですがヒルクライム担当のドライバーが事故を起こしたんです ドライバーは1週間程度で退院出来ますが<br /> クルマの方が結構酷くて・・・・」<br /> 「そうなの・・ま しょーがないよネ 俺も事故は何回か起したし・・ でも俺の相手も同じREって聞いたから楽しみだったんだヨ」<br /> 「結構速そうな感じがしますよね そのFD」<br /> 「お!?わかるゥ」<br /><br /> さりげないフォローにオキの顔がパッと明るくなる。<br /> 人の扱い方に長けているのは流石、遠征を繰り返すチームのリーダーと言うべきか。<br /><br /> 「そのFD・・見た目は派手だけど実は全部中古なのヨ パーツ一つ一つをOHしてネ」<br /> 「所長!なんでそーいうコト言うんだヨ!!こーいう時は昔からハッタリきかすんじゃねーのかヨ」<br /> 「ハハッハ!まぁイイじゃねーかオキ 同じRE乗りのよしみだろ」<br /> 「ははは」<br /><br /> 自然と涼介からも笑い声が出た。<br /> そう言えば最後に笑ったのはいつだろう…<br /> 困難な学業と負けられない遠征バトルの連続で常に心が張り詰めていた日々の中で、笑えるという安らぎを涼介は初めて感じた。<br /><br /> 「でも中古と言っても実はEgは派手なのヨ 見せたいワ オジサン―――」<br /><br /> 林はFDのボンネット開いた。</p>
<p>ヴアァ・・・・<br /><br /> 囀る鳥達の声、風にそよぐ木々の音とは明らかに違う異質な音が響き渡る。<br /> やがて音の主は次第にオキと林に近づき、ついにその姿を見せた。<br /><br /> 「白いFC・・だけどちょっと圧縮抜けた感じだナ」<br /> 「へー流石所長 音聞いただけでわかるんだ」<br /> 「あったりめーだろ 何年RE組んでると思ってんだ(笑)」<br /><br /> バラバラバラ・・ RE特有のアイドリング音を立てて白いFCは二人の近くに停まる。<br /> 運転席の扉が開き、そこから現れたのは高橋涼介その人であった。<br /> 瞬間―――時間にすれば正に瞬間だが、オキは涼介との間に同じ”匂い”のような物を感じた気がした。<br /><br /> 「はじめまして・・自分はプロジェクトDのリーダー 高橋涼介と言います」<br /> 「オキだ 神奈川西部と静岡東部をメインで走ってる・・まさかリーダー直々に挨拶に来るなんて思ってもなかったヨ」<br /> 「ええ・・今回はちょっと特別な事情があって」<br /> 「特別?」<br /> 「実は・・来週のバトルを中止して欲しいんです」<br /> 「ええええ――――!?」<br /><br /> 箱根の山にオキの声が木霊した。<br /> オキの声に、展望台の観光客も一斉に振り向く。<br /><br /> 「ばっか!オメーは一々声がでけーんだヨ」<br /> 「だってェ・・折角林所長にEg組み直してもらってセッティングも出してらったんだゼ・・・・」<br /><br /> がっくりと肩を落としたオキ。<br /> それを見て流石に涼介も悪いと感じたのだろうか、簡単な説明を始めた。<br /><br /> 「オキさんもご存知だと思いますが・・うちのチームはヒルクライムとダウンヒルを別々のドライバーが担当しています 実は・・昨晩なんですがヒルクライム担当のドライバーが事故を起こしたんです ドライバーは1週間程度で退院出来ますがクルマの方が結構酷くて・・・・」<br /> 「そうなの・・ま しょーがないよネ 俺も事故は何回か起したし・・ でも俺の相手も同じREって聞いたから楽しみだったんだヨ」<br /> 「すみません ところで結構速そうな感じがしますよね そのFD」<br /> 「お!?わかるゥ」<br /><br /> さりげないフォローにオキの顔がパッと明るくなる。<br /> 人の扱い方に長けているのは流石、遠征を繰り返すチームのリーダーと言うべきか。<br /><br /> 「そのFD・・見た目は派手だけど実は全部中古なのヨ パーツ一つ一つをOHしてネ」<br /> 「所長!なんでそーいうコト言うんだヨ!!こーいう時は昔からハッタリきかすんじゃねーのかヨ」<br /> 「ハハッハ!まぁイイじゃねーかオキ 同じRE乗りのよしみだろ」<br /> 「ははは」<br /><br /> 自然と涼介からも笑い声が出た。<br /> そう言えば最後に笑ったのはいつだろう…<br /> 困難な学業と負けられない遠征バトルの連続で常に心が張り詰めていた日々の中で、笑えるという安らぎを涼介は初めて感じた。<br /><br /> 「でも中古と言っても実はEgは派手なのヨ 見せたいワ オジサン―――」<br /><br /> 林はFDのボンネット開いた。</p>

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