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人の気配の全く無い倉庫街に”それ”はいた。<br /> 開いているシャッターからうかがい知れるその姿は、何度見ても背筋に冷たい物が流れる異様な迫力に満ちている。<br /> 絶対的な存在感―――島のかつての親友の命だけではなく、数多の人間の命を啜ってきた呪われたその存在。<br /> ミッドナイトブルーに彩られた悪魔・・S30Zは傾きかけた陽の光を浴びて鈍く輝いている。<br /><br /> ゴトゴト・・<br /><br /> 長く伸びたS30のボンネットルーフの中から音が響く。<br /> 島は僅かに足が震えているのを感じた。<br /><br /> 「なァーに固まってるワケ?そんなトコで」<br /><br /> 背後から声をかけられ島は振り向く。<br /><br /> ―――朝倉・・―――<br /><br /> 一瞬出かかった声をなんとか島は飲み込んだ。<br /> まだ幼さの残る少年の姿がそこにあった。しかしその周りには威圧するでもない、独特の雰囲気があり、彼が普通の少年<br /> ではない事を物語っている。<br /><br /> 「無用心だネ・・開けっ放しで外出の癖は控えた方がイイと思うヨ」<br /> 「5分くらいの買出しくらい大丈夫だって あ何か飲む?水とおにぎりは俺の昼飯だから駄目だけど」<br /> 「・・じゃあコーヒーを」<br /> 「飲むんだ(笑)」<br /><br /> 少年はコンビニの袋から缶コーヒーを取り出すと島に手渡すと、ジャッキアップされてタイヤの外されたZの脇にしゃがむ。<br /><br /> 「エア抜き・・かい?」<br /> 「そそ コーヒー飲んだついでにブレーキ踏んでヨ(笑)」<br /><br /> ググゥ・・カチャ、キュゥ・・<br /><br /> ペダルを踏む音、ボルトを締め、緩める音が倉庫を支配する。<br /><br /> 「そー言えば珍しいよネ ソッチから俺に会いに来るなんて・・ポルシェのフレームにクラックが入ったとか?(笑)」<br /> 「いや・・そうじゃない 実は君に会って欲しい人がいてね・・今夜辺り首都高に上がれないか?」<br />
<p>人の気配の全く無い倉庫街に”それ”はいた。<br /> 開いているシャッターからうかがい知れるその姿は、何度見ても背筋に冷たい物が流れる異様な迫力に満ちている。<br /> 絶対的な存在感―――島のかつての親友の命だけではなく、数多の人間の命を啜ってきた呪われたその存在。<br /> ミッドナイトブルーに彩られた悪魔・・S30Zは傾きかけた陽の光を浴びて鈍く輝いている。<br /><br /> ゴトゴト・・<br /><br /> 長く伸びたS30のボンネットルーフの中から音が響く。<br /> 島は僅かに足が震えているのを感じた。<br /><br /> 「なァーに固まってるワケ?そんなトコで」<br /><br /> 背後から声をかけられ島は振り向く。<br /><br /> ―――朝倉・・―――<br /><br /> 一瞬出かかった声をなんとか島は飲み込んだ。<br /> まだ幼さの残る少年の姿がそこにあった。しかしその周りには威圧するでもない、独特の雰囲気があり、彼が普通の少年ではない事を物語っている。<br /><br /> 「無用心だネ・・開けっ放しで外出の癖は控えた方がイイと思うヨ」<br /> 「5分くらいの買出しくらい大丈夫だって あ何か飲む?水とおにぎりは俺の昼飯だから駄目だけど」<br /> 「・・じゃあコーヒーを」<br /> 「飲むんだ(笑)」<br /><br /> 少年はコンビニの袋から缶コーヒーを取り出すと島に手渡すと、ジャッキアップされてタイヤの外されたZの脇にしゃがむ。<br /><br /> 「エア抜き・・かい?」<br /> 「そそ コーヒー飲んだついでにブレーキ踏んでヨ(笑)」<br /><br /> ググゥ・・カチャ、キュゥ・・<br /><br /> ペダルを踏む音、ボルトを締め、緩める音が倉庫を支配する。<br /><br /> 「そー言えば珍しいよネ ソッチから俺に会いに来るなんて・・ポルシェのフレームにクラックが入ったとか?(笑)」<br /> 「いや・・そうじゃない 実は君に会って欲しい人がいてね・・今夜辺り首都高に上がれないか?」</p>

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