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<p>終電を逃した勤め人を乗せるタクシーの姿も大分減り、時折オールクリアの状態を見せるC1にFCの姿があった。<br /> 路面の継ぎはぎが車体を細かく上下に揺らす。<br /> 限界まで攻めるでもなく、かと言って中途半端に流すでも無い。<br /><br /> 「こうしているとまだ走り始めた頃のコトを思い出すよな」<br /><br /> 流れる景色を見ながら啓介が呟いた。<br /><br /> 「どうした?急に」<br /> 「覚えてるか?兄貴・・俺がレッドサンズに入る前のコト」<br /> 「忘れるもんか 初めてお前をFCのナビに乗せた時ときたら・・・・地元では名の知れたワルが泣きそうになったのは笑ったぜ」<br /> 「しょーがねえだろ 俺だってあんな経験初めてだったんだから・・それからしばらくは兄貴の横に乗ってたよな」<br /> 「こうしてお前とタンデムするのは秋名以来だな・・あれからもう1年か 早い物だ」<br /><br /> ハンドルを握りながらこれまでの思いを馳せる涼介。<br /> 群馬最速を目指した遠征、拓海との出会い、プロジェクトD、そして首都高。<br /> 既にただ楽しいだけでは済まなくなった走るという行為、だがその中で得た掛け替えの無い物、それを継いでくれる仲間に対し<br /> 伝えられるのは走るという行為を通してのみ。<br /><br /> 北の丸トンネルを抜け、赤坂STへ。<br /> FCの車速が乗っていく。<br /><br /> 「啓介・・今夜のタンデムがお前との最後のタンデムだ」<br /> 「え?」</p> <div class="mes">「な・・待ってくれ兄貴!そりゃどういう意味だ!?」<br /><br /> 涼介の突然の申し出に狼狽する啓介。<br /><br /> 「そう泣きそうな声を出すな・・・・お前は俺の考える公道最速理論の完成型に限りなく近い 既に俺から学ぶ技術は無いだろう<br /> 勿論またこうやって出かけるコトもあるだろう・・だが これからはお前がお前の意思で考え走る番だ」<br /> 「・・・・」<br /><br /> 呆然とする啓介を乗せFCは芝公園方面へ抜けて行く。<br /> 迫る浜崎橋、200km台からのブレーキングにFCは鼻を沈める。<br /> フロントに荷重がかかり切った事を確認し、ブレーキをリリースしながらブラインドの浜崎橋へ。<br /> 徐々にアクセルを入れ荷重をリアに移しながら加速を始めるFC。<br /><br /> 「啓介・・だから今日はお前に伝える 走るというその意思を───!」<br /><br /> 汐留めJCTに合流。<br /> 100kmを割る速度から再び加速を始めるFC、その時だった。<br /> 羽田線方向から聞こえる”音”を二人は聞いた。<br /> FCのエキゾーストノートに重なり、飛び込んでくる音の主はFCの右をかすめ走り去る。<br /> 遭遇───ブラックバード。<br /><br /> 「行くぞ!啓介」<br /><br /> 戦闘態勢に入ったFCの追撃が始まった。</div>
<p>終電を逃した勤め人を乗せるタクシーの姿も大分減り、時折オールクリアの状態を見せるC1にFCの姿があった。<br /> 路面の継ぎはぎが車体を細かく上下に揺らす。<br /> 限界まで攻めるでもなく、かと言って中途半端に流すでも無い。<br /><br /> 「こうしているとまだ走り始めた頃のコトを思い出すよな」<br /><br /> 流れる景色を見ながら啓介が呟いた。<br /><br /> 「どうした?急に」<br /> 「覚えてるか?兄貴・・俺がレッドサンズに入る前のコト」<br /> 「忘れるもんか 初めてお前をFCのナビに乗せた時ときたら・・・・地元では名の知れたワルが泣きそうになったのは笑ったぜ」<br /> 「しょーがねえだろ 俺だってあんな経験初めてだったんだから・・それからしばらくは兄貴の横に乗ってたよな」<br /> 「こうしてお前とタンデムするのは秋名以来だな・・あれからもう1年か 早い物だ」<br /><br /> ハンドルを握りながらこれまでの思いを馳せる涼介。<br /> 群馬最速を目指した遠征、拓海との出会い、プロジェクトD、そして首都高。<br /> 既にただ楽しいだけでは済まなくなった走るという行為、だがその中で得た掛け替えの無い物、それを継いでくれる仲間に対し<br /> 伝えられるのは走るという行為を通してのみ。<br /><br /> 北の丸トンネルを抜け、赤坂STへ。<br /> FCの車速が乗っていく。<br /><br /> 「啓介・・今夜のタンデムがお前との最後のタンデムだ」<br /> 「え?」</p> <div class="mes">「な・・待ってくれ兄貴!そりゃどういう意味だ!?」<br /><br /> 涼介の突然の申し出に狼狽する啓介。<br /><br /> 「そう泣きそうな声を出すな・・・・お前は俺の考える公道最速理論の完成型に限りなく近い 既に俺から学ぶ技術は無いだろう・・勿論またこうやって出かけるコトもあるだろう・・だが これからはお前がお前の意思で考え走る番だ」<br /> 「・・・・」<br /><br /> 呆然とする啓介を乗せFCは芝公園方面へ抜けて行く。<br /> 迫る浜崎橋、200km台からのブレーキングにFCは鼻を沈める。<br /> フロントに荷重がかかり切った事を確認し、ブレーキをリリースしながらブラインドの浜崎橋へ。<br /> 徐々にアクセルを入れ荷重をリアに移しながら加速を始めるFC。<br /><br /> 「啓介・・だから今日はお前に伝える 走るというその意思を───!」<br /><br /> 汐留めJCTに合流。<br /> 100kmを割る速度から再び加速を始めるFC、その時だった。<br /> 羽田線方向から聞こえる”音”を二人は聞いた。<br /> FCのエキゾーストノートに重なり、飛び込んでくる音の主はFCの右をかすめ走り去る。<br /> 遭遇───ブラックバード。<br /><br /> 「行くぞ!啓介」<br /><br /> 戦闘態勢に入ったFCの追撃が始まった。</div>

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