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「ここ・・は?」

知らない天井、知らない部屋、そしてベッドに横たわる自分。状況を掴めない啓介の思考は停止する。

「気がついたか?啓介」

声の主は兄、涼介だった。

「兄貴・・?お 俺は―――」
「まったく夜中に道路公団からお前が首都高で事故ったと聞いた時は何事かと思ったぜ」
「兄貴・・俺は」
「言うな啓介・・藤原から話は聞いた」
「・・・・すまねえ ところでFDは?」
「今は松本の工場に入ってるよ お前の方は奇跡的に打撲だけで済んだようだ」

沈黙が病室を包む。
窓から指す光が形作る影が二人の心境を物語っているようだ。

「失礼―――高橋啓介サンの身内の方ですか?」

ふいに声をかけられ二人は病室の入り口を振り向く。そこには白衣姿の島がいた。
思わず啓介は驚きの声を上げる。

「お お前は!あの時のポルシェの―――」
「今日出勤したら当直当番から群馬県の人が事故の急患で運ばれたと聞いてね・・もしやと思ったんだが」
「まさかアンタが医者だったとは・・」
「医者だからってこーいうコトをしてるのは僕だけじゃあない・・君も知ってるだろう?パープルシャドウの城島先生を」
「何もかもお見通しってワケか・・」
「ま この業界もワリと狭いからネ・・それより君は宝町の中央車線を上りきったところの死角でトラックを見なかったかな?」
「ああ見たぜ まさかあんな所をチンタラ走ってるクルマがいるなんて思わなかったからな・・ま追突しなかっただけ儲けモンか」
「成る程ね・・君が事故った原因がわかったヨ」
「何!?俺が事故を起こしたワケがわかるだと?」
 
今にも噛み付きそうな顔で啓介は島に問いかける、一方島は顔色を一つも変えない。

「そんなに気になるのかい?」
「当然だ・・こちとら今まで県外遠征で修羅場を潜って来てんだ その自信が一気に砕かれた気分だからな」
「・・・・つまり そーいうトコロなんだヨ」
「何?」

一呼吸置いて島は改めて説明を始める。

「君が事故を起こした宝町の登りなんだが・・そのままC1を回るには真ん中の車線から江戸橋のコーナーに飛び込んだ方がラインに余裕が持てる・・ 一番左のラインを攻めるより効率がイイ上に万が一の時にも回避出来る車線が二つに なるんだ・・・・ これらの理由から僕は真ん中車線を使うコトが多い」
「つまりライン選択のミスだと?」
「いいや それでもナイ・・最後まで聞きたいのなら教えるが」
「頼む」

少しの間、島は啓介を見つめ、口を開く。

「恐らく君は・・あの時に初めてに近い状態で走るC1にかなりの戸惑いを持っていたのだろう 銀座エリアから少しの間テールトゥノーズとまでは行かなくても君を先行する形で走ったが運転技術はかなりのモノだ・・それは認める だが―――」
「だが?」
「その先がナイ・・ゆっくり流せばコースは覚えるが大事なのはコースではなくてその場所の走り方だ 先の見えない状況に自分が備え そしてそれを組み立てていくイメージする能力だ・・君はこれまでに色々な峠を走ってきたらしいが感情に任せたままのドライビングをして来たコトも多いと思うヨ」
「・・・・」
「だがそれでもここまで君が成長したのは優秀な指揮官が君を育ててきたからだ・・そう―――」

島は目線を啓介の傍らで話を聞いていた涼介に移す。

「兄である涼介君の存在だヨ」