「だからァ なーんで所長も来るんだヨ」
「ふぅ―――ヤマで吸うタバコはウマイわぁ」
「・・ったく 人の話を全然聞いてねぇ」
都会では見られない青い空、澄んだ空気。そして新緑の木々。
彼方には雪を被った霊峰富士を望む。
東海道五十三次で古くから難所として、また絶景として親しまれてきた箱根路の風景がそこにあった。
「だってヨ 遠征で群馬県からココまで来るって言うんだろ?熱くなってスピンされたらたまんねーし(笑)なぁオキ」
「だからしねーよ!林所長は嫌味ったらしいよナ―――」
「ハハッハ!」
オキ・・そう呼ばれた若い男性がぷいっとむくれる。
年の頃は20歳そこそこだろうか、赤く染めた髪の毛が一際目立つ。
一方笑い声を上げている林と呼ばれた男性・・オキに対し年齢は2倍程だろう。服装には無頓着のようで、何故かツナギ姿である。
「で―――なんだっけ?プロジェクト・・なんたらってのが来るんだろ?」