クパァ
―――なんだ・・・・このRE―――
林が持ち上げたFDのボンネットの中を見た涼介は目を見張った。
鈍く輝くローター、うねる様に這うパイピング。
これまで自分達が見てきたクルマとは明らかに違う…まるでクルマが生きているような錯覚を覚えるようだ。
「タービンはT78 勿論ポート削りまくりヨ」
「コレでどれくらい出てるんですか?」
「んー正確じゃないケド500馬力・・ってトコかナ」
「500・・・・超ド級の峠マシンですね」
「いやー実は元は峠仕様じゃナイのヨ・・ちょっと前に首都高に遠征したコトがあってね その時の仕様を煮詰めたワケ」
「首都・・高?林サンその話聞かせてもらえませんか?」
「なんか急に食いついてきたね・・お兄さんワケありか?」
「実は・・・・先程言った事故を起こしたチームのメンバーは首都高でとあるクルマを追っていたんです」
涼介は事の顛末を語り始めた。
チームの事、啓介の事、そして首都高で一度見たあのZの事…
全てを語り終えた涼介は自分の中にある止められない気持ちを確信した。
そして意を決し言う。
「林サン・・自分のFC組んでくれませんか?」
「ちょ・・ッちょっと待てよ!いきなり何言うんだよアンタ!!」
オキが声を荒げる。
今日初めて会い、お互いの事も殆ど知らない。
場合によっては敵同士だったかもしれない相手から、自分が命を預けている相手への図々しいとも言える依頼。
普通では考えられない事だ。
「自分でも無理を言っているのはわかります・・でも でも俺はあのZとポルシェと走りたい!それにはこのFCじゃ歯が立たないんです・・・・お願いします林さん!」
涼介が頭を下げる。
「なァ・・アンタちょっとおかしーぜ?第一俺達は―――」
「やめろ オキ」
「・・・・」
ケンカ腰のオキを鎮め、林は涼介の真意を図るかのようにじっと目を見つめる。
時間にすればほんの数秒であるが、涼介にはそれがとてつもなく長い時間に感じられた。
そして林が言う。
「なァ・・・・取りあえずお前の”仕事”見せてくれヨ 色々と話をするのはそれからだろ?」