レッドサンズのホームコースの終着点に黒いエボⅢが現れてから大分たった頃、赤いS14が降りてくる。
明らかに戦意を喪失した様子で、バトルやタイムアタックの走りと言うよりかは普通に流している…と言った方が相応しい。
S14は一瞬躊躇したようだが、エボⅢと少し離れる形で停車する。
「いくらレッドサンズがハイレベルを語っていても所詮は高橋兄弟の一枚岩だな・・何が走り屋だ笑わせる」
「てめぇ・・・・啓介さんと涼介さんがいないからっていい気になるなよ!プロジェクトDはお前なんか相手にしちゃいねえ」
「地元も満足に走れないヤツが遠征専門チームを騙るなんてお笑い種だな・・涼介に伝えておけ 今のお前は大事な物を見落としてるとな」
須藤はケンタに背を向けエボに向かう。
ふと思い出したように、近くにいるレッドサンズのメンバーに声をかける。
「おい お前はレッドサンズのメンバーか?」
「は・・・・はい!」
須藤の迫力に圧倒される走り屋。
「ならステッカーを一枚貰おうか・・持っているなら出せ」
「わ わかりました」
シュッ!
須藤は走り屋からステッカーを受け取ると、真っ二つに切り裂いた。
「てめえ!何しやがる!?」
「レッドサンズが俺に撃墜された証だ・・俺はいつでも挑戦を受けてやる なんなら今度は上りで走るか?」
「・・・・ッ!」
須藤はエボに乗り込み、駐車場を後にした。
その頃、赤城の麓の道路を走る白いFCがあった。
史浩から須藤来襲の報を受けた涼介が駆る、林から借りているFCである。
FCがホームコースに程近いロングストレートに近づいた頃、対向車線から迫る青いHIDのクルマが迫ってくる。
擦れ違い様、街灯も何も無い漆黒の中だが涼介は迫る対向車線を走るクルマのドライバーの姿をハッキリ見た。
「京一!」
「・・・・今のは涼介?思ったより速かったがあのFCは一体何だ?」
二台はそのまま擦れ違い、FCは山へ、エボは里へ向かう。
FCが駐車場についた時には、辺りの空気は重く澱んでいた。夜の闇が更に重圧としてのしかかっているようだ。
「涼介さ・・ん・・・・すみません」
涙で声を詰まらせながらケンタが話しかける。
「俺・・涼介さんと・・・・啓介さんを須藤に馬鹿にされて・・・・一生懸命走ったんですけど・・・・うっ」
「よくやったなケンタ」
「俺・・俺―――」
無言でケンタを見守る涼介。
どれくらいの時間がたっただろうか?涼介は無言で走り屋達に背を向けFCに乗り込む。
「涼介さん!」
走り屋達が口々に涼介の名を呼び集まってくる。
「皆・・すまなかったな だがこのまま俺は終わらせはしない」
―――林さん・・貴方の仕事を実戦で見させてもらいます そして待っていろ・・京一!―――
涼介とFCの怒りの咆哮にも聞こえるエキゾーストノートを響かせながら、FCは駆け出した。