「意外と早かったなァ 京一」
長髪を後ろで束ねた、がっしりとした体つきの男が須藤に話しかける。
彼の傍らにはボンネットに大きくmonsterと赤く書かれた白いエボⅣが停まっている。
須藤が率いるランエボのみで構成されているチームEmperorのサブリーダーである、岩城清二だ。
尤も、サブリーダーと言っても、その速さは愛車に拠る部分が大きく、運転技術が優れているというワケではない。
皮肉にもEmperorも須藤がレッドサンズに言ったような”一枚岩”のチームである。
「深夜に近い時間帯だからこんなモンだろう」
「で どうだったんだ?赤城は」
「話にならんな・・俺の新しくチューンされたエボの相手にもならん」
「へへっ なんたって高い金かけて駆動系を弄くったんだもんな」
「ああ デフギアの駆動配分比率を前4の後ろ6にしたのは正解だった・・流石はRGOだ」
「まさか京一が東京のショップまでエボⅢを持ち込むとは思ってもいなかったぜ」
「去年のバトル以来 俺の中でエボに対する手詰まり感もあったからな・・・・だが素直な操縦―――」
清二との話の腰を折る形で須藤の携帯が鳴る。
「俺だ・・どうした?」
「京一さん!今しがた白いFCがそっちに登って行ったんですがもしかして」
「思ったとおりだ・・涼介に間違いない 連絡ご苦労」
須藤が携帯を胸ポケットに収めてからしばらく後、彼方からREサウンドが響いてくる。
「来たな涼介・・始めようぜ 本当のバトルってやつをな」
須藤は音が近づいてくる方向をじっと見つめていた。