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車体の底から火花を飛び散らせ、エボはFCを大きく突き放す。
ハイリスク、ハイリターンであるいろは坂の高低差を利用したジャンプ走法は正に公道だからこそ出来る走法と言えるだろう。
小さく、そして鋭く立ち回るエボⅢに対し豪快にリアを振り回しながら切り返しを続けるFC。
その差は麓が近づき勾配が緩くなった高速区間には前を行くエボの優勢は明らかに見えた。

―――エボの車間距離はややあるが挽回が不可能というワケじゃあない・・残されたタイヤのマージンを使い切り針の穴のような
突破口を付く!―――

最後の左ヘアピンを抜けトンネルに入る二台。
いくら整備された観光道路と言えども、先行するクルマが堂々と真ん中を走れば左右から抜き返すラインは無い。

―――見事だ涼介・・初めて見せる空中のラインにも動じず俺について来る その才能を公道だけにこだわるコトを惜しいと思う
感情と同時にジェラシーすら感じるぜ お前程の男を本気にさせる存在にな―――

ゴール近くの橋が迫り、エボはアウトにラインを振る。
涼介はその瞬間を見逃さなかった。
無謀とも思えるスピードでコーナーに進入し、エボの左後輪の辺りにFCのノーズをねじ込む。
道幅一杯に並ぶ二台には最早ライン変更の余裕は全く無い、

「曲がる!曲がってくれ!FC!」

「ふ・・ざけんなぁ!!」

FCに迫られアクセルを入れる事も抜く事も出来ないエボⅢ、それはFCにも言え、Gにまかせアウトに膨らんで行く。

バチンッ!

双方のボディが接触、その反動をきっかけにFCは体制を建て直しアクセル入れ直す。
僅かに引いたエボⅢ、二台はそのままサイドバイサイドでゴール地点に飛び込んだ。

―――数分後、先程まで響いていたスキール音が嘘のように静まりかえった、本来のいろは坂の姿があった。

「見事だ涼介」
「腕を上げたな京一」

ギリギリの領域で走る事で共感する何かを掴んだかのような空気がそこにはあった。

「涼介・・本心で答えろ お前が何よりも大事にしていたプロジェクトDよりも優先するモノは何だ?」
「・・・・首都高には悪魔と呼ばれるS30Zがいる 俺の心はそのクルマに奪われてしまっていると言っても過言ではない」
「成る程な・・俺もそのクルマは知っている」
「何だと!?どういうコトだ」
「詳しくは言わん・・だがアイツはお前と引き換えにしている物が全く違う お前程の人間だからもう気付いているだろう? お前はいつまでも首都高にいる人間ではないと・・・・まだやるべきコトが残っていると そのFCもお前の考えがあって乗っている特別なクルマなんだろう・・だがな涼介 影でお前を待っている人間・・それを忘れるな」

須藤はくるりと背を向けエボに乗り込む。

「待て!京───」

涼介を残し、エボは去って行く。
”影でお前を待っている人間”、その言葉がいつまでも涼介の心に響いていた。