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須藤の赤城襲来、そして涼介のいろは坂のバトルから一夜が明けた。
走り屋達の間には瞬く間にその噂は広まり、その噂は今現在FDを失っている啓介の耳にも勿論届いたのだった。

「聞いたぜ兄貴・・須藤と走(や)ったんだってな」

検査入院から退院した啓介が自宅のロビーでくつろぐ涼介の前に現れる。
所々に貼ってあるシップが少し痛々しい後を見せるが、日常生活には全く支障が無いように見える。

「もうお前の耳にその話が入っているとはな・・人の噂は伝わるのは早いものだ」
「兄貴・・FCはどうしたんだ?」
「お前が対戦する予定だった御殿場のチューナーから借りたんだ・・凄いぞ啓介 あんなFC俺は見たことがない」

涼介の口から林のFCを賛辞する演説が流れ始める。
目を輝かせ、そして流暢に語る涼介の様子とは裏腹に啓介は苛立ちをつのらせて行くのだった。

「そんなに走りたいのか・・」
「すまない よく聞こえなかった」
「兄貴はそんなに首都高を走りたいのかよ!峠には峠の 首都高には首都高の走り方やルールがあるのは俺にも分かる!
けどな・・俺達はプロジェクトDってチームだろ?兄貴一人であれこれやってこれまで兄貴を信じてついて来た藤原や皆には
なんとも思わないのかよ!?」
「落ち着け!啓介・・今の俺には―――」

ガンッ!

涼介の頬を鈍い衝撃が襲った。

啓介は何も言わずにロビーから飛び出して行く。
後には唇から血を流して佇む涼介が残されるのだった。
伝う血を拭いながら、涼介は今日は林からFCを借りている猶予であった事を思い出す。
胸にまとわりつく不快感から逃げるかのように、涼介はFCを走らせ、御殿場に向かった。

御殿場にたどり着いた頃には既に午後の日差しとなっていた。
暦の上ではもう秋ではあるが、残暑は厳しい。
陽炎で揺らめくスタンドの一角に涼介はFCを停めると、それを見計らったかのように相変わらずツナギ姿の林が現れた。

「よー兄さん久しぶりだな・・お?どーしたその顔は 女にでも引っ叩かれたか(笑)」
「いえ・・・・弟少し」
「ふーん・・・・」
「林さん この1週間FCを貸していただきありがとうございました 単刀直入に言います・・自分のFCのチューニングを改めてお願い出来ませんか?」
「しょーがねよな・・そこまで本気なら 俺の方も兄さんのFCを色々見させてもらったのヨ」
「どうです?」
「よくバランスが取れているとは思うが・・コレだと首都高は辛いのが正直な所だろう Egの組みなおしと冷却系の見直し・・足に関しちゃあOHとスプリングを換えればOKだナ」
「わかりました パーツ代も含めてまずは手付けで50万程お渡しします」
「おーおー(笑)太っ腹でいいねぇ」
「いえ・・そーいうワケではないんです ですがタイヤやオイルもタダじゃありませんよね?得る物があるなら代償も支払うのは当然のコトです」

―――いいんですよね・・自分は首都高を走っても―――

「ああ?何か言ったか?」
「いえ別に」

涼介の中に生じた僅かな迷いから思わず呟いた声は林の耳には届かなかった。