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昼間の日差しの代わりに電灯が辺りを照らす御殿場市内。
夏の終わりを告げ始めた虫の音も、国道を走る家路に向かうクルマの音にかき消される。
その様子は昼間とあまり変わらない印象を受けるが、国道に面したあるGSの様子は昼間の物とは少々違っていた。
涼介が林に正式にFCのチューニングを依頼し2週間・・店を閉めた後にピットに残る林の姿がそこにはあった。

「所長―――いるぅ?」
「オキか・・調度イイから一服すっか 俺ウーロンな」
「えー自販なんか目の前にあるじゃねーかよォ」

ピットの中央に置かれたFC、そして作業台の上にはその要となる新たなREの加工が行われている所だった。

「所長 あの群馬のアイツのEgはどんなにするのさ?ただポート削るだけってワケじゃあなさそーだけど」
「組み直す前の状態が良くて250馬力前後ってところだったからナ―――それに上乗せ250馬力・・勿論このまんまじゃあ Eg本体がもたない だから高圧縮と高ブーストに耐える為にローターから総換えだ」
「と・・なるとFDの?」
「いやRX-8のローターだ・・マツダの販売戦略のせいかレネシスは従来のREとは全く違うモノという認識が強いが実は同じだ REはその構造ゆえ大幅な設計変更は出来ない・・昔っからREは技術屋泣かせだったのヨ 最近はやれエコだのウルセーだろ? そんな中新型REをあえて放つ・・これはもう意地だ そしてREである以上それは走りを要求される・・家族で乗れるREだけどRE である以上求めるのはやはり走り・・事実RX-8のEg圧縮はRX-7より高く設定されている」
「ふーん・・よくわかんないけどなんか凄いね」
「あー!?ここまで優しく説明してやってわかんねーってバカかオメーは(笑)」

「いや違うって・・所長がだよ」
「何?」
「このFCもそうだけど・・前にも東京から来た人いたじゃん あの人に組んだ時もそうだけど正直俺のとはレベルが違うもん」
「レベルねぇ・・・・そりゃオメーは金がねーし(笑)」
「どーせ俺は貧乏だよ!」
「まーまーそうカッカするな・・ま 本音で言えば金と言うより走り屋としての寿命っつーかさ・・・・長年色々なクルマや人間を
見ているとソイツの走るコトへの熱が保たれる期間がわかるよーになってきてな・・・・この前の群馬の兄さんはソレがもう長く
ないよーな気ィするのよ だから組んでやるのよ・・とびきりのREを」
「ふーん・・じゃあ俺は長く走る人間なワケ」
「やっぱりお前は金かな(笑)」
「・・・・」

相変わらずのコンビネーションを見せる林とオキ。
対し涼介と啓介は先日の口論以来、ぎくしゃくした間柄にあった。
元々荒れに荒れていた啓介ではあったが、涼介には常に心を開いていた事もあり、生まれて初めて兄に手を挙げてしまった
事への戸惑いからまだ抜け出せないようである。

―――こんな時にFDがあれば―――

Egをかければ何処にでも連れて行ってくれたFD、兎に角この居心地の悪い場所から抜け出したい。
何処か遠くに駆けて行きたい・・啓介はぼんやりと自室の天井を見つめていた。

ピリリリリリ・・・・

啓介の携帯が鳴り響く。
液晶画面には藤原拓海の文字が表示されていた。