客の姿がまばらな深夜のファミレス、通常の座席とは少しだけ隔離された場所にある座席に紫がかった煙が立ち込める。
座席には喫煙席のマーク、テーブルの上には走り屋系のクルマ雑誌が置いてある事から席の主達は走り屋と窺い知れる。
「なぁ・・ここんとこよく出る白いFCって知ってるか?」
「見たことないけど噂では聞いたコトあるぜ・・なんでもプロジェクトDのFCらしいぞ」
「プロジェクトDって”あの”プロジェクトDか?あいつ等峠専門なんじゃねーのかよ?」
「そこなんだよな・・でも見たってヤツの話だと群馬ナンバーでレッドサンズってステッカーが貼ってあったって言うぜ?」
「レッドサンズ?」
「プロジェクトDが出来る前に群馬最強と言われたチームらしい・・で 白いFCはそのチームのリーダーのクルマだって話だ」
「で・・・・速いの?」
「実測は大台(300キロ)行くか行かないかみたいだけど兎に角250前後がバカっ速でバトル向きだってサ・・実際湾岸でも大台に乗せるのは条件が良くないと難しいから」
「ふーん・・ところでさ―――」
煙草の灰を灰皿に落とし、彼等は別の話題に興じるのだった。
一方、人の噂は千里を駆けるとはよくぞ言ったもので、連日首都高に現れるという涼介の噂は群馬県でも実しやかに囁かれていた。
それは当然FDを失っている啓介の耳にも届いてくる、そう、あの時の須藤とのいろは坂でのバトルの時のように。
夜もふけ始めた頃にガレージの電気シャッターが開けられる音を啓介は聞いた。
続いて、FCのEg音が響いてくる。少し考え、啓介はガレージに向かう。
「兄貴―――」
「なんだ?啓介」
「いやその・・」
「どうした?ボーっと突っ立って・・久しぶりに俺の隣に乗ってみるか?」
「あ ああ」
二人を乗せたFCは前橋インターから関越道へ入る。