911とFCに合流するZ、バトルの様相は三つ巴となる。
道幅は狭い羽田線ではあるが、道路の構造自体は直線を基調としており、瞬間的なオールクリアさえあれば大台も夢ではない。
但し、それは踏み切れればの話である。
高価なパーツをつけても、それを生かし、そして踏み切る腕を持っているのは全体の内2割にも満たないだろう。
一般車がばらけていく・・近づくオールクリア、200km/hを超える速度でスラロームを繰り返しつつ機会を待つ3台。
京浜運河のS字を抜ける、オールクリア───
震える空気を身にまとったZがFCの背後から一瞬早く飛び出し911と横並びになる。
C1合流までの約1.5kmのストレート、条件は整った。
速度が乗り視覚効果的に狭さを更に感じるがそれをものともせず速度は更に乗っていく。
250・・260・・280───FCのスピードメーターの針は林の言った限界に近づく。
───ここまでか・・あのZとそしてポルシェには追いつけないのか───
280・・285・・290・・・・
だが涼介の思惑とは別にFCの加速は止まらず、二台との距離も離されるでもなく食らい着くFC
───回しきった先のもう一伸び・・コレはまるで魔法(マジック)だ ついていける・・あの二台に───
300km/h───涼介も啓介も体験した事の無い未知の領域に飛び込む三台。
その頃には調度レインボーブリッジからの合流が近づき再度道路の流れが鈍る、勝負は再びC1に持ち込まれた。
「終わりだ」
FCを巡航モードで走らせる涼介が口を開く。
ふうっ───と一息つき、啓介は四点ハーネスのベルトを解く。
「どうして走るのを止めたんだ?兄貴」
「言っただろう・・今日の走りは俺の為でもありお前の為だと 俺はお前に教えかったと」
「兄貴の言うコトはいつも難し過ぎて今の俺にはよくわからねー・・だけど 上手く言えないけど何かわかった気がしたよ」
心地よい沈黙が車内と包む。
それは以前の涼介と啓介の間に流れていたその物だった。
関越道に入り群馬へと走るFCを朝日が照らす。
「さあ帰ろう啓介」
「ああ」
FCのテールに貼られた”Redsuns”のステッカーがキラリと一瞬輝く。
二人を迎える群馬の空は青く、そして澄んでいた。