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子供は元気です。 時にいやになるほど。 ファミリーレストランなどで食事をしている時、たまに2~3家族の複合体とみえる一群が入店してくることがあります。 このような状況下においては、もはや食事をゆっくり楽しむという行為は不可能となります。 2~3家族の複合体の中には、たいてい子供が4~5人含まれています。 この時の子供は、まったくひと時もジットしていません。 そして移動するときには、必ずといっていいほど走って移動します。 対して我々初老の年齢にもなると、めったなことでは走りません。 たまに走るとしたら、信号が変わる寸前の時くらいでしょうか。 それも同じくらいの歳の人が走るのをみると、体重は完全に後ろに残り、足だけバタバタと動かしているだけです。 まったくサマになっていません。 もちろん私が走る姿を他の人がみても、同じことを思っているでしょう。 それに比べ、ファミレス内で走り回っている子供は実にサマになっています。 本当に腹が立つほどに・・・ いったいこの違いはどこからくるのでしょう? この章では、[[第4章 白血病 >第4章 白血病]]でも少し考えた、子供の元気の謎について、つっこんで考えていきたいと思っています。 2006/05/16 (火) 21:36 さて前章で外胚葉の細胞が、原口背唇部からの誘導をうけ、神経細胞となり、これが一番最初に機能細胞として、完全分化するのではないかと考えました。 それ以降の発生の経過を、脊椎動物について、想像してみることにします。 神経細胞はどんどん増えていきます。 その数は分裂の際、全てテロメアハサミの酵素を使ったとしても([[第5章 進化のビックバン>第5章 進化のビックバン]]参照)、体全体の細胞より、はるかに多い数が作られる可能性があります。 さて分化した神経細胞は、神経板から神経管を形成し、原口背唇部とともに、尾の方向にのびていきます。 原口背唇部は脊索に分化していきますが、脊椎動物では、成長につれ退化してなくなってしまいます。 そして頭の方がふくらんで脳が形成されていき、図①のような形になります。 これが中枢神経系となり、この形は脊椎動物の基本形です。 この頃には当然他の細胞も分裂を重ね、機能細胞になっているものもあります。 そして身体全体が形作られるわけですが、そのあたりのことを考えてみたいと思います。 まずテロメアが60あると仮定しましょう。 つまり受精卵から60回分裂したら、分裂能力を失い、機能細胞になるということです。 神経細胞系は最も分裂速度が早く、全ての分裂にテロメアハサミの酵素を使っていると考えます。 仮に全ての細胞の分裂速度が同じなら、60回分裂した時点で、細胞の総数は64京個にもなってしまいます。 つまり一個の受精卵には64京個もの細胞を作り出す能力があるということにもなります。 2006/05/18 (木) 8:45 他の体細胞系は、ハサミもノリも使わないとすると、神経細胞が完全分化した時点では、テロメアの数が30個位の細胞が。最も多くなることになります。 また神経細胞の数は、発生のどの時点で、神経細胞になる方向が決定したかによって、だいたい決まります。 胞胚期から(10回程度)原腸陥入して、原口背唇部の誘導をうけるのですから、15回程度でしょうか? そうするとその時の細胞の数は約30000個、そして神経細胞の数は、約35兆個にもなる計算です。 人間の成体の総細胞数は、約60兆個といわれているので、少し多すぎるような気もしますが、神経細胞はかなりの数がアポトーシスで消えることもあり、それ程不自然な数字ではないかもしれません。 私が考えたのは、完全分化した神経細胞が、他の体細胞系に対し、系統だった指令をだすようになるのではないか、ということです。 分裂速度とテロメアの減り具合により、この時点で細胞を三つの群にわけてみます。 一つ目はテロメアが順調に減り、もう少しで完全分化する細胞群(テロメア1~25くらい) 二つ目は平均して2回に1回テロメアが減る一般的な細胞群(テロメア25~35)。 そして三つ目はテロメアがなかなか減らず、おそらく分裂速度も遅い細胞群(テロメア35以上)。 この三つの細胞群に対し、①にはテロメアハサミの酵素をだす指令を、②には分裂を一時休みなさいという指令を、③にはアポトーシスして消えなさいという指令をだすのではないかと、想像してみました。 2006/05/23 (火) 22:25 ③から考えてみると、例えばテロメアの残が50の細胞からは、仮に全てハサミの酵素を使ったとしても、一千兆以上の細胞ができることになります。 もうそれ程の数の細胞は、必要ないという判断で、この群にはアポトーシスを指令するのです。 [[第4章 白血病 >第4章 白血病]]で考えた、テロメアと分化度の関係が、ある程度正しいとすると、この群の細胞は、未分化度が強い、つまりなんにでもなれる要素のある細胞だと考えられます。 しかしこれが消えてしまうのですから、脊椎動物の再生能力が、あまり強くない説明になるかもしれません。 ②はいわゆる補充細胞です。 しかも分化の方向は、もうほとんど決定していると思います。 中にはかなりの能力を残した細胞もあるかもしれませんが、それでもせいぜいイモリの足程度で、それも少数派のようです。 そして①の細胞群が、その後の身体を形成していく、細胞群になると思います。 ①の細胞群も、分化の方向は、決定していると思いますので、テロメアがなくなるまでは、分裂に関する情報だけを発現して、その数を増やしていきます。 そして次々といろいろな種類の機能細胞が、増えていきます。 その様子を少し想像してみましょう。 神経管が形成され、脊索とともに伸びていきますが、脊索はすぐに退化を始めます。 その後をおうように、(原口背唇部の後ろあたりではないでしょうか?)脊椎骨が形成され始め、神経管をおおうような形で、成長をします。 神経管の前の部分が膨らみ始め、脳が形成されるとほぼ同時に、脊椎骨の前方にふくらみが生じ、頭蓋骨を形成していきます。 さらに脊椎骨の後ろのあたりから、筋肉細胞と血管が生じます。 2006/06/11 (日) 8:34 外胚葉からは、神経領域に引き続き、表皮の細胞も機能細胞となり、最も外側に層をなします。 魚類や両生類では、この時点で、呼吸器系(エラ)や消化器系もあらかたできて、いわゆる孵化をするのではないでしょうか。 爬虫類以降の脊椎動物では、陸上での生活に適合するため、呼吸器系もエラから肺に変化し、四肢も形成されだします。 そして消化器系も内胚葉から生じ、だいたいの原型ができあがります。 本によくあるあの図です。 この段階までは、とても素早く事が進むと思います。 それは比較的テロメアの残りの少ない細胞から、このような中心を作る、昨日細胞が生まれると考えられるからです。 そしてもう少しテロメアの残りが多い細胞も、じょじょに完全分化をしていきます。 しかしテロメアの残りが多い分、少しずつ時間が長くかかるようになると思います。 そして消化器系や感覚器系の、いろいろな器官が作られだし、手足も身体の中心と同様、神経、骨、血管、筋肉、表皮が、順序よく形成されていくと思います。 さらに、生殖器系や、内分泌系、血球の細胞も作られだし、それぞれの器官も、細かな組織ができあがり、全体として、昨日を持つようにもなります。 ここらへんまでで、だいたいの発生は一段落で、爬虫類や鳥類は、卵から孵化をするでしょう。 哺乳類では、もう少し母親の胎内で成長すると思います。 これは卵生の爬虫類や鳥類と違い、胎生の哺乳類は、母親から栄養補給ができるためだと考えられます。 その結果、子供が成体まで育つ確率は、哺乳類になり断然高くなっているでしょう。 しかし母親への負担から、子供の数自体は、少なくなる傾向にあると思います。 ここまでの力は、もっぱら遺伝子による、誘導と応答が、役割をこなしてきました。 卵の内部組成の不均質さにより、卵割期のすんだ細胞に、細胞質内の組成の違いにより、個性が生じます。 2006/06/11 (日) 22:39 それにより遺伝子の発現パターンに個性が生じ、誘導と応答の連鎖反応で、細胞の分化の方向が、次々と決まっていきます。 胚全体の形も、中胚葉誘導から、神経誘導がおこり、大きく変化していきます。 そして神経細胞が、最初に完全分化をはたし、神経管を形成し、それに続き他の細胞群も、次々と機能細胞化していきます。 細胞に個性が生じ、全体としての形が、大まかにできあがりました。 そしてここからが、本編の主題である成長期にはいります。 ここからは遺伝子にかわり、中枢神経が主役になるのではないかと、私は考えています。 もちろんその中枢神経も、遺伝子の情報を元に作られるのですから、遺伝子が主役であることには、かわりないのですが・・・ いうなれば、生物の身体を作る設計図は、遺伝子ですが、中枢神経が、現場監督として、働きだすのではないかと思うのです。 実際の建築でも、もちろん設計図を元に、建物は作られるのですが、細かな点は、現場監督の裁量によって、決定されることは少なくありません。 つまり同じ設計図からでも、現場監督の個性により、できあがる建物に、ある程度違いが生じることも、ありえるのです。 発生から成長期に移る時点では、膨大な数の神経細胞ができあがっていると思われます。 それらが複雑な神経ネットワークを、形成していくのです。 その全てを遺伝子の情報に書き込むことは、不可能でしょう。 神経ネットワークは、経験や環境によって、それぞれの個体間で変化が生じるのは、当然考えられることです。 つまり現場監督に、個性が生じるわけです。 実務にあたる職人さんは、設計図の全てを見て、仕事をするわけではありません。 自分にかかわりのある部分だけをみて、現場監督の指示により、仕事をします。 ほとんどの場合、設計士さんと直接会うことはありません。 そしてさらに細かな部分については、自分の裁量で決定することもあります。 2006/06/28 (水) 7:31 同じ種の生物のあいだで、個性が生じるというのは、こういう原理ではないでしょうか? 一卵性双生児の方の場合、設計図は全く同じはずですが、それでもよくみると、必ず個性があります。 これは全く同じ経験をし、同じ環境にいることは不可能なため、神経ネットワークに差が生じるのではないでしょうか? 神経細胞は、成長期の頃には、ほぼ一生分の細胞が、できあがっていると考えられています。 本にも神経細胞は、再生能力はないと、書かれています。 これは全ての分裂に、テロメアハサミの酵素を使ってきたので、全ての細胞が、完全分化をしたためと、考えられます。 補充用細胞がないのです。 神経細胞は、かなり早い時期に、全てが完全分化して、機能細胞になります。 ですから神経細胞の数としては、赤ちゃんの方が大人よりも多いはずです。 しかし生まれたばかりの赤ちゃんは、高度な精神活動をしているとは、思えません。 これは神経ネットワークが、未完成だからではないでしょうか? 神経細胞の数が多すぎて、不必要な接続が多く、混乱をしている状態だと、考えられます。 それが成長するに従い、不必要な部分を切り捨てて、整然とした、神経ネットワークになっていくのではないでしょうか? 経験した刺激に対し、スムーズに反応できるようになる、その数を増やしていくことが、心の成長ということに、なるような気がします。 もちろん生まれながらにして、スムーズに反応する刺激もあります。 例えばお腹がすけば、泣くという行動があります。 これは泣くことによって、母親が乳をくれるだろうという、知恵だと思います。 いわゆる本能とよばれる部分です。 人類誕生以来、数万年という、歴史的な集成が、泣くことによって、エサが与えられるという、知恵を作ってきたのです。 空腹という刺激に対し、泣くという反応の神経ネットワークは、生まれながらにして完成されている、人類の伝統であるといえます。 このような経験による成長や、本能的な知恵は、主に大脳を起点とするネットワークだと思います。 それ以外に、もっと生命に直結した反応もあります。 2006/07/01 (土) 21:49 例えば呼吸です。 呼吸の中枢は、延髄にあるといわれています。 生まれたばかりの赤ちゃんは、まず「オギャア」と泣きます。 これは母親の胎内からでて、初めて自分で呼吸するために、必要不可欠な行動です。 「オギャア」と、甲高い声を発することにより、呼吸が開始されるのです。 この神経ネットワークも、完成されていないことには、呼吸がスムーズにできず、たちまちのうちに、死をむかえることになるでしょう。 話はそれますが、それにしても赤ちゃんは、大きな声で泣きます。 他の動物で、誕生直後、あのような大きな声で、泣く動物はいるでしょうか? また、昔の人類や、原人・猿人なども、あのような大きな声をたてていたでしょうか? 大自然の中で、あのような大声をあげれば、たちまち他の動物たちの餌食になるような気もします。 母親も赤ちゃんも、ほとんど無防備な状態なのですから、生まれる場所、つまり巣が、絶対安全であるという保障がなければ、あのような大声をあげることは、できないと思います。 長い歴史的な経験の積み重ねが、文明という形で、巣を絶対安全な場所にし、それが神経ネットワークに、本能という形で、うめこまれているのでしょう。 私はこの本脳という部分は、遺伝子という設計図には、しるされていないと、考えます。 神経ネットワークが、種の歴史的な経験の積み重ねを元に、生まれながらにして、スムーズにいくよう、作られている部分だと思います。 熟練した現場監督が、設計図の内容をこえ、よりよい建物を作り出していくようなものではないでしょうか? このことも非常に興味深い問題なのですが、いずれ機会があれば、ゆっくり考えることにして、話を進めていこうと思います。 このような意識レベルの機能だけではなく、神経には、身体全体の調節という働きもあります。 自律神経とよばれるもので、これは中枢から抹消への、一方通行の神経です。 2006/07/05 (水) 21:53 この自律神経の中枢というべき場所で、調節とともに成長に関する大事な仕事が行われているのではないかと考えました。 ここから身体のいろいろな種類の補充細胞に、「分裂をしなさい」という指令をだしているのではないでしょうか? 発生の時に、テロメアがなくなりきらなかった細胞は、補充用細胞として、数多く残っているはずです。 そして分裂周期からはずれ、一時休止の状態にあると思われます。 そして分化の方向は、すでに決まっているはずです。 神経系は、この補充用細胞に、再び分裂をうながすような、指令をだすのではないでしょうか? 仮にテロメアが30個残っている細胞があるとすると、その1個の補充用細胞から作られる、機能細胞の数は、約10億個です。 [[白血病編>第4章 白血病]] で考えたように、テロメアの残りの少ない補充用細胞から、分裂周期にはいるとすると、子供の頃の、補充用細胞のテロメアの残りは、少ないと考えられます。 そうすると短い時間で、機能細胞になれるということと、一度にできる機能細胞の数が、少なくなるという特徴があると思います。 そのため神経系からの、分裂の指令は頻繁にだされ、機能細胞はスムーズに増えていくことになります。 その数より、役目を終えアポトーシスをおこして、消えていく細胞の数が、少ないときが、成長期です。 骨を作る造骨細胞や、筋肉細胞の数が、増えていくのですから、当然身体は大きくなります。 また身体の各器官も、一様に成長をして、そのバランスを司る仕事をしているのが、神経系の器官ではないかと、考えています。 [[白血病編>第4章 白血病]] で、なぜ子供は元気なのかを考えましたが、もう一つ要素があることを、思いつきました。 身体を大きくする(身長を伸ばす)には、まず骨が成長しなければなりません。 骨の成長は、他の身体の部分と比べ、遅いような気がします。 ということは子供の頃は、身体の大きさに比べ、細胞の数が多いことが、予想されます。 2006/07/08 (土) 22:04 つまり密度が濃いのです。 密度が濃ければ、細胞同士のコミュニケーションも、よりスムーズにとれるような気がします。(乳幼児の時は、逆に密度が濃すぎて、コミュニケーションが混乱している可能性もあります) これも子供が元気である、大きな要因であると考えられます。 そのような元気な子供にも、ガンは発生します。 私の娘も、そのうちの一人です。 子供のガンは、非上皮性のガンが多いようです。 骨や筋肉などに発生する、肉腫といわれるものや、白血病やリンパ腫のような、血液のガンのことです。 ガン細胞は一般に、活発に新陳代謝している細胞に、発生するといわれています。 2006/07/09 (日) 9:55 子供の骨や筋肉の細胞は、活発に新陳代謝しているので、ガンが発生しやすくなっていると、考えられます。 成人の方には、このような非上皮性のガンは、あまり多くないように思われます。 成人の方は、胃がんや大腸がんなど、上皮性のガンの発生率が、高くなっています。 消化器系や呼吸器系の細胞は、成人になっても、活発に新陳代謝するためでしょう。 しかし子供には、上皮性のガンが、あまり多いようには思えません。 考えてみれば、不思議な現象です。 骨や筋肉、血液はすべて、中胚葉から作られる細胞です。 対して、呼吸器系や消化器系は、内胚葉から分化をします。 どうもここいらへんに、多きなヒントがあるような気がします。 2006/07/09 (日) 13:38 [[「5. 常識への挑戦」へ >>5. 常識への挑戦]]
子供は元気です。 時にいやになるほど。 ファミリーレストランなどで食事をしている時、たまに2~3家族の複合体とみえる一群が入店してくることがあります。 このような状況下においては、もはや食事をゆっくり楽しむという行為は不可能となります。 2~3家族の複合体の中には、たいてい子供が4~5人含まれています。 この時の子供は、まったくひと時もジットしていません。 そして移動するときには、必ずといっていいほど走って移動します。 対して我々初老の年齢にもなると、めったなことでは走りません。 たまに走るとしたら、信号が変わる寸前の時くらいでしょうか。 それも同じくらいの歳の人が走るのをみると、体重は完全に後ろに残り、足だけバタバタと動かしているだけです。 まったくサマになっていません。 もちろん私が走る姿を他の人がみても、同じことを思っているでしょう。 それに比べ、ファミレス内で走り回っている子供は実にサマになっています。 本当に腹が立つほどに・・・ いったいこの違いはどこからくるのでしょう? この章では、[[第4章 白血病 >第4章 白血病]]でも少し考えた、子供の元気の謎について、つっこんで考えていきたいと思っています。 2006/05/16 (火) 21:36 さて前章で外胚葉の細胞が、原口背唇部からの誘導をうけ、神経細胞となり、これが一番最初に機能細胞として、完全分化するのではないかと考えました。 それ以降の発生の経過を、脊椎動物について、想像してみることにします。 神経細胞はどんどん増えていきます。 その数は分裂の際、全てテロメアハサミの酵素を使ったとしても([[第5章 進化のビックバン>第5章 進化のビックバン]]参照)、体全体の細胞より、はるかに多い数が作られる可能性があります。 さて分化した神経細胞は、神経板から神経管を形成し、原口背唇部とともに、尾の方向にのびていきます。 原口背唇部は脊索に分化していきますが、脊椎動物では、成長につれ退化してなくなってしまいます。 そして頭の方がふくらんで脳が形成されていき、図①のような形になります。 これが中枢神経系となり、この形は脊椎動物の基本形です。 この頃には当然他の細胞も分裂を重ね、機能細胞になっているものもあります。 そして身体全体が形作られるわけですが、そのあたりのことを考えてみたいと思います。 まずテロメアが60あると仮定しましょう。 つまり受精卵から60回分裂したら、分裂能力を失い、機能細胞になるということです。 神経細胞系は最も分裂速度が早く、全ての分裂にテロメアハサミの酵素を使っていると考えます。 仮に全ての細胞の分裂速度が同じなら、60回分裂した時点で、細胞の総数は64京個にもなってしまいます。 つまり一個の受精卵には64京個もの細胞を作り出す能力があるということにもなります。 2006/05/18 (木) 8:45 他の体細胞系は、ハサミもノリも使わないとすると、神経細胞が完全分化した時点では、テロメアの数が30個位の細胞が。最も多くなることになります。 また神経細胞の数は、発生のどの時点で、神経細胞になる方向が決定したかによって、だいたい決まります。 胞胚期から(10回程度)原腸陥入して、原口背唇部の誘導をうけるのですから、15回程度でしょうか? そうするとその時の細胞の数は約30000個、そして神経細胞の数は、約35兆個にもなる計算です。 人間の成体の総細胞数は、約60兆個といわれているので、少し多すぎるような気もしますが、神経細胞はかなりの数がアポトーシスで消えることもあり、それ程不自然な数字ではないかもしれません。 私が考えたのは、完全分化した神経細胞が、他の体細胞系に対し、系統だった指令をだすようになるのではないか、ということです。 分裂速度とテロメアの減り具合により、この時点で細胞を三つの群にわけてみます。 一つ目はテロメアが順調に減り、もう少しで完全分化する細胞群(テロメア1~25くらい) 二つ目は平均して2回に1回テロメアが減る一般的な細胞群(テロメア25~35)。 そして三つ目はテロメアがなかなか減らず、おそらく分裂速度も遅い細胞群(テロメア35以上)。 この三つの細胞群に対し、①にはテロメアハサミの酵素をだす指令を、②には分裂を一時休みなさいという指令を、③にはアポトーシスして消えなさいという指令をだすのではないかと、想像してみました。 2006/05/23 (火) 22:25 ③から考えてみると、例えばテロメアの残が50の細胞からは、仮に全てハサミの酵素を使ったとしても、一千兆以上の細胞ができることになります。 もうそれ程の数の細胞は、必要ないという判断で、この群にはアポトーシスを指令するのです。 [[第4章 白血病 >第4章 白血病]]で考えた、テロメアと分化度の関係が、ある程度正しいとすると、この群の細胞は、未分化度が強い、つまりなんにでもなれる要素のある細胞だと考えられます。 しかしこれが消えてしまうのですから、脊椎動物の再生能力が、あまり強くない説明になるかもしれません。 ②はいわゆる補充細胞です。 しかも分化の方向は、もうほとんど決定していると思います。 中にはかなりの能力を残した細胞もあるかもしれませんが、それでもせいぜいイモリの足程度で、それも少数派のようです。 そして①の細胞群が、その後の身体を形成していく、細胞群になると思います。 ①の細胞群も、分化の方向は、決定していると思いますので、テロメアがなくなるまでは、分裂に関する情報だけを発現して、その数を増やしていきます。 そして次々といろいろな種類の機能細胞が、増えていきます。 その様子を少し想像してみましょう。 神経管が形成され、脊索とともに伸びていきますが、脊索はすぐに退化を始めます。 その後をおうように、(原口背唇部の後ろあたりではないでしょうか?)脊椎骨が形成され始め、神経管をおおうような形で、成長をします。 神経管の前の部分が膨らみ始め、脳が形成されるとほぼ同時に、脊椎骨の前方にふくらみが生じ、頭蓋骨を形成していきます。 さらに脊椎骨の後ろのあたりから、筋肉細胞と血管が生じます。 2006/06/11 (日) 8:34 外胚葉からは、神経領域に引き続き、表皮の細胞も機能細胞となり、最も外側に層をなします。 魚類や両生類では、この時点で、呼吸器系(エラ)や消化器系もあらかたできて、いわゆる孵化をするのではないでしょうか。 爬虫類以降の脊椎動物では、陸上での生活に適合するため、呼吸器系もエラから肺に変化し、四肢も形成されだします。 そして消化器系も内胚葉から生じ、だいたいの原型ができあがります。 本によくあるあの図です。 この段階までは、とても素早く事が進むと思います。 それは比較的テロメアの残りの少ない細胞から、このような中心を作る、昨日細胞が生まれると考えられるからです。 そしてもう少しテロメアの残りが多い細胞も、じょじょに完全分化をしていきます。 しかしテロメアの残りが多い分、少しずつ時間が長くかかるようになると思います。 そして消化器系や感覚器系の、いろいろな器官が作られだし、手足も身体の中心と同様、神経、骨、血管、筋肉、表皮が、順序よく形成されていくと思います。 さらに、生殖器系や、内分泌系、血球の細胞も作られだし、それぞれの器官も、細かな組織ができあがり、全体として、昨日を持つようにもなります。 ここらへんまでで、だいたいの発生は一段落で、爬虫類や鳥類は、卵から孵化をするでしょう。 哺乳類では、もう少し母親の胎内で成長すると思います。 これは卵生の爬虫類や鳥類と違い、胎生の哺乳類は、母親から栄養補給ができるためだと考えられます。 その結果、子供が成体まで育つ確率は、哺乳類になり断然高くなっているでしょう。 しかし母親への負担から、子供の数自体は、少なくなる傾向にあると思います。 ここまでの力は、もっぱら遺伝子による、誘導と応答が、役割をこなしてきました。 卵の内部組成の不均質さにより、卵割期のすんだ細胞に、細胞質内の組成の違いにより、個性が生じます。 2006/06/11 (日) 22:39 それにより遺伝子の発現パターンに個性が生じ、誘導と応答の連鎖反応で、細胞の分化の方向が、次々と決まっていきます。 胚全体の形も、中胚葉誘導から、神経誘導がおこり、大きく変化していきます。 そして神経細胞が、最初に完全分化をはたし、神経管を形成し、それに続き他の細胞群も、次々と機能細胞化していきます。 細胞に個性が生じ、全体としての形が、大まかにできあがりました。 そしてここからが、本編の主題である成長期にはいります。 ここからは遺伝子にかわり、中枢神経が主役になるのではないかと、私は考えています。 もちろんその中枢神経も、遺伝子の情報を元に作られるのですから、遺伝子が主役であることには、かわりないのですが・・・ いうなれば、生物の身体を作る設計図は、遺伝子ですが、中枢神経が、現場監督として、働きだすのではないかと思うのです。 実際の建築でも、もちろん設計図を元に、建物は作られるのですが、細かな点は、現場監督の裁量によって、決定されることは少なくありません。 つまり同じ設計図からでも、現場監督の個性により、できあがる建物に、ある程度違いが生じることも、ありえるのです。 発生から成長期に移る時点では、膨大な数の神経細胞ができあがっていると思われます。 それらが複雑な神経ネットワークを、形成していくのです。 その全てを遺伝子の情報に書き込むことは、不可能でしょう。 神経ネットワークは、経験や環境によって、それぞれの個体間で変化が生じるのは、当然考えられることです。 つまり現場監督に、個性が生じるわけです。 実務にあたる職人さんは、設計図の全てを見て、仕事をするわけではありません。 自分にかかわりのある部分だけをみて、現場監督の指示により、仕事をします。 ほとんどの場合、設計士さんと直接会うことはありません。 そしてさらに細かな部分については、自分の裁量で決定することもあります。 2006/06/28 (水) 7:31 同じ種の生物のあいだで、個性が生じるというのは、こういう原理ではないでしょうか? 一卵性双生児の方の場合、設計図は全く同じはずですが、それでもよくみると、必ず個性があります。 これは全く同じ経験をし、同じ環境にいることは不可能なため、神経ネットワークに差が生じるのではないでしょうか? 神経細胞は、成長期の頃には、ほぼ一生分の細胞が、できあがっていると考えられています。 本にも神経細胞は、再生能力はないと、書かれています。 これは全ての分裂に、テロメアハサミの酵素を使ってきたので、全ての細胞が、完全分化をしたためと、考えられます。 補充用細胞がないのです。 神経細胞は、かなり早い時期に、全てが完全分化して、機能細胞になります。 ですから神経細胞の数としては、赤ちゃんの方が大人よりも多いはずです。 しかし生まれたばかりの赤ちゃんは、高度な精神活動をしているとは、思えません。 これは神経ネットワークが、未完成だからではないでしょうか? 神経細胞の数が多すぎて、不必要な接続が多く、混乱をしている状態だと、考えられます。 それが成長するに従い、不必要な部分を切り捨てて、整然とした、神経ネットワークになっていくのではないでしょうか? 経験した刺激に対し、スムーズに反応できるようになる、その数を増やしていくことが、心の成長ということに、なるような気がします。 もちろん生まれながらにして、スムーズに反応する刺激もあります。 例えばお腹がすけば、泣くという行動があります。 これは泣くことによって、母親が乳をくれるだろうという、知恵だと思います。 いわゆる本能とよばれる部分です。 人類誕生以来、数万年という、歴史的な集成が、泣くことによって、エサが与えられるという、知恵を作ってきたのです。 空腹という刺激に対し、泣くという反応の神経ネットワークは、生まれながらにして完成されている、人類の伝統であるといえます。 このような経験による成長や、本能的な知恵は、主に大脳を起点とするネットワークだと思います。 それ以外に、もっと生命に直結した反応もあります。 2006/07/01 (土) 21:49 例えば呼吸です。 呼吸の中枢は、延髄にあるといわれています。 生まれたばかりの赤ちゃんは、まず「オギャア」と泣きます。 これは母親の胎内からでて、初めて自分で呼吸するために、必要不可欠な行動です。 「オギャア」と、甲高い声を発することにより、呼吸が開始されるのです。 この神経ネットワークも、完成されていないことには、呼吸がスムーズにできず、たちまちのうちに、死をむかえることになるでしょう。 話はそれますが、それにしても赤ちゃんは、大きな声で泣きます。 他の動物で、誕生直後、あのような大きな声で、泣く動物はいるでしょうか? また、昔の人類や、原人・猿人なども、あのような大きな声をたてていたでしょうか? 大自然の中で、あのような大声をあげれば、たちまち他の動物たちの餌食になるような気もします。 母親も赤ちゃんも、ほとんど無防備な状態なのですから、生まれる場所、つまり巣が、絶対安全であるという保障がなければ、あのような大声をあげることは、できないと思います。 長い歴史的な経験の積み重ねが、文明という形で、巣を絶対安全な場所にし、それが神経ネットワークに、本能という形で、うめこまれているのでしょう。 私はこの本脳という部分は、遺伝子という設計図には、しるされていないと、考えます。 神経ネットワークが、種の歴史的な経験の積み重ねを元に、生まれながらにして、スムーズにいくよう、作られている部分だと思います。 熟練した現場監督が、設計図の内容をこえ、よりよい建物を作り出していくようなものではないでしょうか? このことも非常に興味深い問題なのですが、いずれ機会があれば、ゆっくり考えることにして、話を進めていこうと思います。 このような意識レベルの機能だけではなく、神経には、身体全体の調節という働きもあります。 自律神経とよばれるもので、これは中枢から抹消への、一方通行の神経です。 2006/07/05 (水) 21:53 この自律神経の中枢というべき場所で、調節とともに成長に関する大事な仕事が行われているのではないかと考えました。 ここから身体のいろいろな種類の補充細胞に、「分裂をしなさい」という指令をだしているのではないでしょうか? 発生の時に、テロメアがなくなりきらなかった細胞は、補充用細胞として、数多く残っているはずです。 そして分裂周期からはずれ、一時休止の状態にあると思われます。 そして分化の方向は、すでに決まっているはずです。 神経系は、この補充用細胞に、再び分裂をうながすような、指令をだすのではないでしょうか? 仮にテロメアが30個残っている細胞があるとすると、その1個の補充用細胞から作られる、機能細胞の数は、約10億個です。 [[白血病編>第4章 白血病]] で考えたように、テロメアの残りの少ない補充用細胞から、分裂周期にはいるとすると、子供の頃の、補充用細胞のテロメアの残りは、少ないと考えられます。 そうすると短い時間で、機能細胞になれるということと、一度にできる機能細胞の数が、少なくなるという特徴があると思います。 そのため神経系からの、分裂の指令は頻繁にだされ、機能細胞はスムーズに増えていくことになります。 その数より、役目を終えアポトーシスをおこして、消えていく細胞の数が、少ないときが、成長期です。 骨を作る造骨細胞や、筋肉細胞の数が、増えていくのですから、当然身体は大きくなります。 また身体の各器官も、一様に成長をして、そのバランスを司る仕事をしているのが、神経系の器官ではないかと、考えています。 [[白血病編>第4章 白血病]] で、なぜ子供は元気なのかを考えましたが、もう一つ要素があることを、思いつきました。 身体を大きくする(身長を伸ばす)には、まず骨が成長しなければなりません。 骨の成長は、他の身体の部分と比べ、遅いような気がします。 ということは子供の頃は、身体の大きさに比べ、細胞の数が多いことが、予想されます。 2006/07/08 (土) 22:04 つまり密度が濃いのです。 密度が濃ければ、細胞同士のコミュニケーションも、よりスムーズにとれるような気がします。(乳幼児の時は、逆に密度が濃すぎて、コミュニケーションが混乱している可能性もあります) これも子供が元気である、大きな要因であると考えられます。 そのような元気な子供にも、ガンは発生します。 私の娘も、そのうちの一人です。 子供のガンは、非上皮性のガンが多いようです。 骨や筋肉などに発生する、肉腫といわれるものや、白血病やリンパ腫のような、血液のガンのことです。 ガン細胞は一般に、活発に新陳代謝している細胞に、発生するといわれています。 2006/07/09 (日) 9:55 子供の骨や筋肉の細胞は、活発に新陳代謝しているので、ガンが発生しやすくなっていると、考えられます。 成人の方には、このような非上皮性のガンは、あまり多くないように思われます。 成人の方は、胃がんや大腸がんなど、上皮性のガンの発生率が、高くなっています。 消化器系や呼吸器系の細胞は、成人になっても、活発に新陳代謝するためでしょう。 しかし子供には、上皮性のガンが、あまり多いようには思えません。 考えてみれば、不思議な現象です。 骨や筋肉、血液はすべて、中胚葉から作られる細胞です。 対して、呼吸器系や消化器系は、内胚葉から分化をします。 どうもここいらへんに、多きなヒントがあるような気がします。 2006/07/09 (日) 13:38 [[「4. ガ ン 」へ >>4. ガ ン ]]

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