「探し人」(2008/08/06 (水) 08:12:23) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**探し人
路上に放置された車が一台。
それに寄り添うように四人が座っている。
いきなり鼻がご立派な怪物と幽霊?に襲われた四人は、車に乗って逃げたはいいもののD-3の路上で立往生を余儀なくされていた。
車はアーロンという怪物と衝突した衝撃に加え、荒い運転によってついに動かなくなってしまったのだ
「どうじゃ?」
「……そう簡単には直せそうにねぇな」
元々このパトカーは真撰組の所有物である。真撰組副長である土方はなんとも不思議な気分で車の調子を確かめる。
部下によって、時には自らの手によって廃車に追い込んだことのあるパトカー。
このパトカーもまた土方が最後の運転手になってしまった。
細かいところまでは分からないが、目先の故障箇所は前輪のパンクだ。
エンジン類もこの調子ではいくつか壊れているかもしれない。
叩いて直るというレベルの故障ではなかった。というかこのパトカーはやけに年季が入っている。
ハルの荒い運転は故障のきっかけに過ぎなかったのだろう。
検査を終えて土方が首を横に振ると、落胆したように少女は表情を曇らせた。
車が支給されて帰れると思ったらこの有様。出鼻をいきなり挫かれた様なものだ。
「三浦……」
玄野の気遣うような声にハルは笑顔を浮かべて見せるが、やはりどこか冴えない。
「いえ、みなさんが無事でよかったです!車は壊れちゃったけど、いい人達と出会えてハルはハッピーです!」
ハルは落ち込む気持ちを持ち前のポジィティブで切り替える。
土方、玄野、大公望。優しそうな、頼れそうな人達と出会うことができた。
記憶は曖昧だが、ハルの行動で三人を救えたらしいのだ。人を引いたという事実はショックのあまり忘却の彼方である。
「だが、ありゃ一体なんなんだ?」
「ゆきめと、……確かアーロンと名乗っておったな」
「玄野さん達を襲った人達のことですか?」
危機を共に乗り越えた連帯感とでも言うのだろうか。すぐに打ち解けた四人は軽い自己紹介を済ませた後、先ほどの出来事について話し始める。
ハルは車であの場に突入すると同時に気を失ったので、二人の顔や姿は一切見ていない。
ハルの疑問に男達は一斉に顔を見合わせた。
「……魚星人?」
「魚人とか言っておったのぉ」
「お、俺は別にびびってねえぞ。幽霊なんて怖いわけねぇだろぉぉぉぉ!」
「はひ?魚?幽霊?」
いまいち要領の得ない会話にハルは疑問符を浮かべる。
土方の真っ青な顔がなんだかおかしい。
しかし今はこうやって普通に話しているが、目の前の三人は実際に殺されそうになったのだ。
ぞくり、とハルの背筋を冷たいものが滑り落ちる。思い出すのは最初に見た死体だ。
急に黙り込んでしまったハルに合せるように場に沈黙が落ちる。殺し合いというここに集められた目的を思い出してしまったからだろうか。
沈黙を真っ先に破ったのは玄野だ。彼にはずっと気になっていることがあった。
「変なこと聞きますけど、皆さん死にました?」
「はぁ?」
それに訝しげな表情を浮かべたのは土方だ。
「んな訳ねーだろ。そもそも死んでたら今こうして話せないだろ」
「ハルも死んだことはないです……」
玄野は二人の答えに表情を険しくする。どう説明したらいいのやら。そもそもこういう説明は苦手なのだ。
加藤がいれば任せられるのだが、今事情を詳しく知るのは自分しかいない。
「太公望さんは?」
「わしはそもそも人間じゃなくて仙人だしのう。こう見えてお主らの数倍生きておる」
「仙人……!?」
三人は驚愕して太公望を凝視する。そもそも仙人を見たことがないので本物かどうかは判別することができないが。
やはりおかしい、と玄野は思う。
今までにこんなおかしなことはなかった。生きた人間、それに仙人が集められた『殺し合い』という異常なミッション。
スーツも武器も玄野の手にはない。
いつもと違う。どうしてこんな事になっているのか。
「最初に集められた黒い球がある部屋覚えてます?」
玄野以外の三人が頷く。忘れるはずはない。
玄野はたどたどしいながら、自らが知ることを三人に話す。
死人が集められて行われるミッションのこと。ガンツのこと。ワポルのことは見たことも聞いたこともないということ。
累積点が100点に到達すると3つの特典のうち一つを得られること。玄野が体験したミッションについても軽く話す。
要点がまとまってるとはいえない説明だったが、それでも異常事態だということは伝わったらしい。
「ハルは死んだんですか?」
「分からない。普通は皆死んだ時の記憶があるから、それがないっていうことは……」
「おいおいおい!マジかよ……漫画や小説じゃあるまいし……」
「いや、死人という点は気になるが状況的にその『ミッション』と考えるのが妥当じゃ」
玄野が語った『ミッション』の内容。
黒い球、突然謎の部屋に集められる、参加者の頭蓋内の小型爆弾。クリア後の得点。
ミッションも星人を殲滅するという内容だが、今のこの状況も自分以外を殲滅しろというのと同意である。
類似点が多すぎるのだ。現に黒い球が存在するのを太公望たちは見ている。無関係とは考え辛い。
ミッションを終えない限りは元の場所には帰れない、と玄野は告げた。
「そんな……」
「どうしろって言うんだよ」
土方が苛立ちを隠そうともせず舌打ちをする。ハルは突きつけられた現実に衝撃を隠せない。
玄野だってこんな事態は初めてだ。戸惑いは消えることはない。
太公望は少し唸ってから自分の支給品を確認する。やはり宝貝は入っていない。
なくても戦えない事はないが、大幅な戦力ダウンだ。
打神鞭、杏黄旗、太極図。一つでもあれば心強かったのだが現実はそう甘くない。
正直、真正面からじゃあの二人……特にアーロンに勝てる気はしない。
そもそも太公望は軍師タイプなのだ。策を考え罠を張る。それが彼の戦い方だ。
「そう悲観するのは早いぞ。付け入る隙がない訳ではない」
と、太公望は己の首を指した。そこにあるのはもちろん首輪の他ない。
普通『ミッション』では頭蓋内に爆弾を仕掛けられるらしいが、今回は違う。
頭蓋内だったら手の施しようもないが、首輪は外側についているのだ。外す方法もあるかもしれない。
それに首輪があるのだから、頭蓋内まで爆弾を仕掛けている可能性は低いだろう。二度手間になってしまう。
頭蓋内の方が外す方法もなく効果的だと思うのだが、主催者の思考までは分からない。
「首輪さえ外せば逃げられるんじゃないかのう?」
太公望の言葉に、皆の瞳に爛々とした輝きが蘇った。
+++
必要なのは、と太公望は指を二つ立てる。視線が己に集まるのを確かめてから太公望は話し始めた。
まず一つ。首輪を解除できる人間、方法を探すこと。
首輪によって殺された人間のことは未だ記憶に新しい。主催者に命を握られているという脅威。
何をするにしてもまず首輪が障害になる。脱出でも主催者打倒でも、首輪をどうにしかしなければ行動を起こす前に主催者によって殺されてしまう。
そしてもう一つ。これはついさっきその必要性を実感したばかりだ。
「強い仲間を集める、か」
理不尽な暴力に対する自衛手段。
殺し合いという馬鹿げたゲームだが、優勝景品のためかあるいは元の世界に帰るために手を汚す選択をする参加者もいるはずだ。
現にゲーム開始数分も経たずして、四人は殺し合いにのっている人間を二人も見ている。
太公望達を害するものは主催者だけではない。
それらに対抗するためには多くの仲間、多くの力が欠かせない。
まず二つ。生き残り、首輪を外すために必要なもの。
「強い人……」
「ツナさんが来ていれば心強いんですけど、」
支給されていた名簿は白紙。自分で作れということだろうか。
これでは知り合いが来ているかなんて知りようがない。
玄野は経験豊富ではあるが、それはスーツの力によるところも大きい。いつものように戦えるかといったらノーだ。
ハルは普通の女子高生である。太公望と土方はそこそこ戦えるが、戦闘に特化した相手には劣るだろう。
「土方さん?」
ふと、土方がその場から立ち上がる。
自分の荷物をまとめている様子に慌てて声をかけると強い奴に心当たりがある、とだけ土方は答えた。
最初に集められたとき、土方は確かに見覚えのあるヒヨコ頭が同じ空間にいるのを確認した。
そいつがガキの頃からの付き合いだ。見間違えるはずもない。
――沖田総悟。
真撰組一番隊長にして隊一番の問題児。だが18という若さながらその剣の腕は土方も遠く及ばない。
頭がカラッポな代わりにすべて剣術に才能が注がれたのだろう。
真撰組最強を誇る剣の使い手。十分『強い』人間に該当するだろう。
同じ場所で銀髪のテンパも見かけたような気がするが、こっちはうる覚えだ。
そいつも十分に『強い』。いけ好かない奴だが、戦力にはなると思う。
「やらなきゃいけねえ事は分かった。俺はそいつらを探す」
「一人でですか!?」
「……そうだ」
このまま四人で行動した方が安全なことは分かっている。だがそうだからといって悠長に行動するのは土方の性に合わない。
これは自分のわがままだというのも土方はよく理解している。
あの幽霊を見たとき、一瞬だけミツバではないかと土方は思ったのだ。
白い肌、白い着物。ほんの数日前に見たミツバの最期の姿とそれは酷似していた。
そして、葬式から数日も経たないうちにこんなゲームに巻き込まれている。
(……総悟)
ミツバの忘れ形見。
頻繁に土方の命と地位を狙ってきて憎たらしいのは間違いはないが、そんなのでも長年共にいれば情だって移る。
沖田は土方以上にミツバに依存していた。
おそらく心の整理も終わらないままここに放り込まれているのだろう。
ミツバのために、というのもあるが――一言で言うと心配なのだ。上司として腐れ縁として。
「ちょっと待て」
「止めても無駄だ」
「そうではない。……これをもって行け」
「……は?」
太公望から差し出されたのは打ち上げ花火。
説明書には空に大きな花を咲かせます!と書いてある。
「わしらの仲間の証じゃ。丁度十本もあるから五本程もっていくが良い。
位置を知らせるのにも使えて、仲間の証にもなる。なんと素晴らしいアイテムじゃ」
要するに花火を信頼の証にしたいという。これを広めていけば見ず知らずの人間と争うことも減るだろう。
悪い奴らに渡ったら厄介ではあるが、そんなことばかり考えていたら何もできない。
絶対に信頼できる、と確信したら渡すよう太公望は強く言い聞かせる。
ピンチのときに使えば、それを知る仲間が駆けつけてくるかもしれない。悪い奴らも来る可能性もあるわけだが。
随分と穴のある作戦だが、現段階では大した策はうてないのだ。
「達者でのう」
「……おう」
+++
急に静かになってしまった。
カツカツと音を立てながら土方は道を進む。背後に感じる違和感をどうしようかとずっと考えているが良いアイデアがなかなか浮かばない。
はぁ、と頭を搔きながら土方はゆっくりと背後を振り返った。
「お前、どうして付いてきたんだ」
「はひ……だって、土方さん一人じゃ心配で」
隠れてるようで丸見えの尾行を行っていたのはハルだ。
一時は土方を見送ったものの、不安になって思わず追いかけてしまっていた。
「早くあいつらの所へ戻れ」
「で、でも、やっぱり土方さん一人じゃ危険です!」
ハルは弱いかもしれない。運動神経は良いが戦ったことはない。戦力にはならないかもしれない。
でも、一人より二人の方が絶対良いと断言できる。
色んな方向に注意が向けられるし、誰かに襲われたときだって複数だと相手はやり辛さを感じるはずだ。
会話はお互いの主張を譲らないまま平行線だ。
「だから……、」
「じゃあ、交換条件です!この刀を土方さんに渡す代わりに、ハルを連れて行ってください!」
ぎらり、と鞘から抜かれた刀は怪しい光を醸し出す。
(……あ)
土方はその交換条件に、一瞬心が揺さぶられた。
かっこよく太公望達と別れたはいいものの、そういえば武器をひとつも持っていないことを失念していた。
幽霊とかパトカーとか様々な心労が重なったせいかもしれない。
――やべえ。このままじゃ襲われたら一発でジ・エンドだった。セーフ。まじセーフ。
刀は、喉から手が出るほど欲しい。
たらり、と土方の顔から汗が流れる。ごくりと唾を飲み込んだ。
刀を向ける少女はとても頼りない。
刀と引き換えに少女のお守り。格好つけた代償か、と土方はぼんやり考える。
「背に腹は変えられない、か」
「はひ?」
「いや、……仕方ねぇ。刀を寄越せ」
「!じゃあ……」
ぱあ、とハルの顔が爛々と輝く。それに多少のバツの悪さを感じながらも土方は頷いた。
【C-3 道路 / 一日目 黎明】
【三浦ハル@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 新八の眼鏡@銀魂
【状態】:健康
【思考・行動】
1:土方さんに付いて行く。
2:みんなで元の世界に帰りたい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
【土方十四郎@銀魂】
【装備】: 菊一文字則宗@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式 ビニール袋に入ったMr.5の鼻くそ×6@ONE PIECE、ポテトチップス@DEATH NOTE、ブルマのパンツ@DRAGON BALL 打ち上げ花火五本
【状態】:健康
【思考・行動】
1:沖田・銀時・他仲間(強い・首輪解除できる人間)を探す。信頼できそうな仲間に会えたら花火を渡す。
※参戦時期はミツバ編直後なようです。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
「行かせてよかったのか?」
「わしらと居ても危険なことには変わりないんじゃ。土方一人で行動させるのもちと不安だったしのう」
土方とハルが歩いていったほうを眺めながら、太公望と玄野はこれからについて話し合った。
追いかけていってしまったハルが心配だが、土方と一緒なら大丈夫だろうと玄野は思った。
そこで玄野はずっと気になっていたことを口にする。
強くもなく、首輪解除をできるわけでもないが大切な人を探したいと告げると太公望は快く頷いてくれた。
――小島多恵。あと他の仲間達。
来ているかは分からないが、ガンツからのミッションだとすればその確立は高い。
(多恵ちゃん……)
怯えてるかもしれない。早く会って抱きしめたかった。
【D-3 道路 / 一日目 黎明】
【玄野計@GANTZ】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0~3)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:太公望と共に仲間を集める。多恵達を探す。
2:みんなでこのゲームから脱出する。
※参戦時期はゆびわ星人編前です。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
【太公望@封神演義】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 打ち上げ花火五本 未確認(0~2)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:仲間を集める。信頼できそうな相手には花火を渡す。多恵達を探す。
2:宝貝が欲しい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
D-3道路に壊れたパトカー(修理すれば動く範囲?)が放置されています。
|031:[[鬼女 が 生まれた 日]]|CENTER:[[投下順>本編(投下順)]]|033:[[再会]]|
|030:[[ヒソカの性欲×1stステージ×桃の決意]]|CENTER:[[時間順>本編(時間順)]]|033:[[再会]]|
|010:[[救世主現る!]]|三浦ハル||
|010:[[救世主現る!]]|土方十四郎||
|010:[[救世主現る!]]|玄野計|039:[[GANTZにかけられた制限]]|
|010:[[救世主現る!]]|太公望|039:[[GANTZにかけられた制限]]|
#divid(fontSizeManager){}
**探し人
路上に放置された車が一台。
それに寄り添うように四人が座っている。
いきなり鼻がご立派な怪物と幽霊?に襲われた四人は、車に乗って逃げたはいいもののD-3の路上で立往生を余儀なくされていた。
車はアーロンという怪物と衝突した衝撃に加え、荒い運転によってついに動かなくなってしまったのだ
「どうじゃ?」
「……そう簡単には直せそうにねぇな」
元々このパトカーは真撰組の所有物である。真撰組副長である土方はなんとも不思議な気分で車の調子を確かめる。
部下によって、時には自らの手によって廃車に追い込んだことのあるパトカー。
このパトカーもまた土方が最後の運転手になってしまった。
細かいところまでは分からないが、目先の故障箇所は前輪のパンクだ。
エンジン類もこの調子ではいくつか壊れているかもしれない。
叩いて直るというレベルの故障ではなかった。というかこのパトカーはやけに年季が入っている。
ハルの荒い運転は故障のきっかけに過ぎなかったのだろう。
検査を終えて土方が首を横に振ると、落胆したように少女は表情を曇らせた。
車が支給されて帰れると思ったらこの有様。出鼻をいきなり挫かれた様なものだ。
「三浦……」
玄野の気遣うような声にハルは笑顔を浮かべて見せるが、やはりどこか冴えない。
「いえ、みなさんが無事でよかったです!車は壊れちゃったけど、いい人達と出会えてハルはハッピーです!」
ハルは落ち込む気持ちを持ち前のポジィティブで切り替える。
土方、玄野、大公望。優しそうな、頼れそうな人達と出会うことができた。
記憶は曖昧だが、ハルの行動で三人を救えたらしいのだ。人を引いたという事実はショックのあまり忘却の彼方である。
「だが、ありゃ一体なんなんだ?」
「ゆきめと、……確かアーロンと名乗っておったな」
「玄野さん達を襲った人達のことですか?」
危機を共に乗り越えた連帯感とでも言うのだろうか。すぐに打ち解けた四人は軽い自己紹介を済ませた後、先ほどの出来事について話し始める。
ハルは車であの場に突入すると同時に気を失ったので、二人の顔や姿は一切見ていない。
ハルの疑問に男達は一斉に顔を見合わせた。
「……魚星人?」
「魚人とか言っておったのぉ」
「お、俺は別にびびってねえぞ。幽霊なんて怖いわけねぇだろぉぉぉぉ!」
「はひ?魚?幽霊?」
いまいち要領の得ない会話にハルは疑問符を浮かべる。
土方の真っ青な顔がなんだかおかしい。
しかし今はこうやって普通に話しているが、目の前の三人は実際に殺されそうになったのだ。
ぞくり、とハルの背筋を冷たいものが滑り落ちる。思い出すのは最初に見た死体だ。
急に黙り込んでしまったハルに合せるように場に沈黙が落ちる。殺し合いというここに集められた目的を思い出してしまったからだろうか。
沈黙を真っ先に破ったのは玄野だ。彼にはずっと気になっていることがあった。
「変なこと聞きますけど、皆さん死にました?」
「はぁ?」
それに訝しげな表情を浮かべたのは土方だ。
「んな訳ねーだろ。そもそも死んでたら今こうして話せないだろ」
「ハルも死んだことはないです……」
玄野は二人の答えに表情を険しくする。どう説明したらいいのやら。そもそもこういう説明は苦手なのだ。
加藤がいれば任せられるのだが、今事情を詳しく知るのは自分しかいない。
「太公望さんは?」
「わしはそもそも人間じゃなくて仙人だしのう。こう見えてお主らの数倍生きておる」
「仙人……!?」
三人は驚愕して太公望を凝視する。そもそも仙人を見たことがないので本物かどうかは判別することができないが。
やはりおかしい、と玄野は思う。
今までにこんなおかしなことはなかった。生きた人間、それに仙人が集められた『殺し合い』という異常なミッション。
スーツも武器も玄野の手にはない。
いつもと違う。どうしてこんな事になっているのか。
「最初に集められた黒い球がある部屋覚えてます?」
玄野以外の三人が頷く。忘れるはずはない。
玄野はたどたどしいながら、自らが知ることを三人に話す。
死人が集められて行われるミッションのこと。ガンツのこと。ワポルのことは見たことも聞いたこともないということ。
累積点が100点に到達すると3つの特典のうち一つを得られること。玄野が体験したミッションについても軽く話す。
要点がまとまってるとはいえない説明だったが、それでも異常事態だということは伝わったらしい。
「ハルは死んだんですか?」
「分からない。普通は皆死んだ時の記憶があるから、それがないっていうことは……」
「おいおいおい!マジかよ……漫画や小説じゃあるまいし……」
「いや、死人という点は気になるが状況的にその『ミッション』と考えるのが妥当じゃ」
玄野が語った『ミッション』の内容。
黒い球、突然謎の部屋に集められる、参加者の頭蓋内の小型爆弾。クリア後の得点。
ミッションも星人を殲滅するという内容だが、今のこの状況も自分以外を殲滅しろというのと同意である。
類似点が多すぎるのだ。現に黒い球が存在するのを太公望たちは見ている。無関係とは考え辛い。
ミッションを終えない限りは元の場所には帰れない、と玄野は告げた。
「そんな……」
「どうしろって言うんだよ」
土方が苛立ちを隠そうともせず舌打ちをする。ハルは突きつけられた現実に衝撃を隠せない。
玄野だってこんな事態は初めてだ。戸惑いは消えることはない。
太公望は少し唸ってから自分の支給品を確認する。やはり宝貝は入っていない。
なくても戦えない事はないが、大幅な戦力ダウンだ。
打神鞭、杏黄旗、太極図。一つでもあれば心強かったのだが現実はそう甘くない。
正直、真正面からじゃあの二人……特にアーロンに勝てる気はしない。
そもそも太公望は軍師タイプなのだ。策を考え罠を張る。それが彼の戦い方だ。
「そう悲観するのは早いぞ。付け入る隙がない訳ではない」
と、太公望は己の首を指した。そこにあるのはもちろん首輪の他ない。
普通『ミッション』では頭蓋内に爆弾を仕掛けられるらしいが、今回は違う。
頭蓋内だったら手の施しようもないが、首輪は外側についているのだ。外す方法もあるかもしれない。
それに首輪があるのだから、頭蓋内まで爆弾を仕掛けている可能性は低いだろう。二度手間になってしまう。
頭蓋内の方が外す方法もなく効果的だと思うのだが、主催者の思考までは分からない。
「首輪さえ外せば逃げられるんじゃないかのう?」
太公望の言葉に、皆の瞳に爛々とした輝きが蘇った。
+++
必要なのは、と太公望は指を二つ立てる。視線が己に集まるのを確かめてから太公望は話し始めた。
まず一つ。首輪を解除できる人間、方法を探すこと。
首輪によって殺された人間のことは未だ記憶に新しい。主催者に命を握られているという脅威。
何をするにしてもまず首輪が障害になる。脱出でも主催者打倒でも、首輪をどうにしかしなければ行動を起こす前に主催者によって殺されてしまう。
そしてもう一つ。これはついさっきその必要性を実感したばかりだ。
「強い仲間を集める、か」
理不尽な暴力に対する自衛手段。
殺し合いという馬鹿げたゲームだが、優勝景品のためかあるいは元の世界に帰るために手を汚す選択をする参加者もいるはずだ。
現にゲーム開始数分も経たずして、四人は殺し合いにのっている人間を二人も見ている。
太公望達を害するものは主催者だけではない。
それらに対抗するためには多くの仲間、多くの力が欠かせない。
まず二つ。生き残り、首輪を外すために必要なもの。
「強い人……」
「ツナさんが来ていれば心強いんですけど、」
支給されていた名簿は白紙。自分で作れということだろうか。
これでは知り合いが来ているかなんて知りようがない。
玄野は経験豊富ではあるが、それはスーツの力によるところも大きい。いつものように戦えるかといったらノーだ。
ハルは普通の女子高生である。太公望と土方はそこそこ戦えるが、戦闘に特化した相手には劣るだろう。
「土方さん?」
ふと、土方がその場から立ち上がる。
自分の荷物をまとめている様子に慌てて声をかけると強い奴に心当たりがある、とだけ土方は答えた。
最初に集められたとき、土方は確かに見覚えのあるヒヨコ頭が同じ空間にいるのを確認した。
そいつがガキの頃からの付き合いだ。見間違えるはずもない。
――沖田総悟。
真撰組一番隊長にして隊一番の問題児。だが18という若さながらその剣の腕は土方も遠く及ばない。
頭がカラッポな代わりにすべて剣術に才能が注がれたのだろう。
真撰組最強を誇る剣の使い手。十分『強い』人間に該当するだろう。
同じ場所で銀髪のテンパも見かけたような気がするが、こっちはうる覚えだ。
そいつも十分に『強い』。いけ好かない奴だが、戦力にはなると思う。
「やらなきゃいけねえ事は分かった。俺はそいつらを探す」
「一人でですか!?」
「……そうだ」
このまま四人で行動した方が安全なことは分かっている。だがそうだからといって悠長に行動するのは土方の性に合わない。
これは自分のわがままだというのも土方はよく理解している。
あの幽霊を見たとき、一瞬だけミツバではないかと土方は思ったのだ。
白い肌、白い着物。ほんの数日前に見たミツバの最期の姿とそれは酷似していた。
そして、葬式から数日も経たないうちにこんなゲームに巻き込まれている。
(……総悟)
ミツバの忘れ形見。
頻繁に土方の命と地位を狙ってきて憎たらしいのは間違いはないが、そんなのでも長年共にいれば情だって移る。
沖田は土方以上にミツバに依存していた。
おそらく心の整理も終わらないままここに放り込まれているのだろう。
ミツバのために、というのもあるが――一言で言うと心配なのだ。上司として腐れ縁として。
「ちょっと待て」
「止めても無駄だ」
「そうではない。……これをもって行け」
「……は?」
太公望から差し出されたのは打ち上げ花火。
説明書には空に大きな花を咲かせます!と書いてある。
「わしらの仲間の証じゃ。丁度十本もあるから五本程もっていくが良い。
位置を知らせるのにも使えて、仲間の証にもなる。なんと素晴らしいアイテムじゃ」
要するに花火を信頼の証にしたいという。これを広めていけば見ず知らずの人間と争うことも減るだろう。
悪い奴らに渡ったら厄介ではあるが、そんなことばかり考えていたら何もできない。
絶対に信頼できる、と確信したら渡すよう太公望は強く言い聞かせる。
ピンチのときに使えば、それを知る仲間が駆けつけてくるかもしれない。悪い奴らも来る可能性もあるわけだが。
随分と穴のある作戦だが、現段階では大した策はうてないのだ。
「達者でのう」
「……おう」
+++
急に静かになってしまった。
カツカツと音を立てながら土方は道を進む。背後に感じる違和感をどうしようかとずっと考えているが良いアイデアがなかなか浮かばない。
はぁ、と頭を搔きながら土方はゆっくりと背後を振り返った。
「お前、どうして付いてきたんだ」
「はひ……だって、土方さん一人じゃ心配で」
隠れてるようで丸見えの尾行を行っていたのはハルだ。
一時は土方を見送ったものの、不安になって思わず追いかけてしまっていた。
「早くあいつらの所へ戻れ」
「で、でも、やっぱり土方さん一人じゃ危険です!」
ハルは弱いかもしれない。運動神経は良いが戦ったことはない。戦力にはならないかもしれない。
でも、一人より二人の方が絶対良いと断言できる。
色んな方向に注意が向けられるし、誰かに襲われたときだって複数だと相手はやり辛さを感じるはずだ。
会話はお互いの主張を譲らないまま平行線だ。
「だから……、」
「じゃあ、交換条件です!この刀を土方さんに渡す代わりに、ハルを連れて行ってください!」
ぎらり、と鞘から抜かれた刀は怪しい光を醸し出す。
(……あ)
土方はその交換条件に、一瞬心が揺さぶられた。
かっこよく太公望達と別れたはいいものの、そういえば武器をひとつも持っていないことを失念していた。
幽霊とかパトカーとか様々な心労が重なったせいかもしれない。
――やべえ。このままじゃ襲われたら一発でジ・エンドだった。セーフ。まじセーフ。
刀は、喉から手が出るほど欲しい。
たらり、と土方の顔から汗が流れる。ごくりと唾を飲み込んだ。
刀を向ける少女はとても頼りない。
刀と引き換えに少女のお守り。格好つけた代償か、と土方はぼんやり考える。
「背に腹は変えられない、か」
「はひ?」
「いや、……仕方ねぇ。刀を寄越せ」
「!じゃあ……」
ぱあ、とハルの顔が爛々と輝く。それに多少のバツの悪さを感じながらも土方は頷いた。
【C-3 道路 / 一日目 黎明】
【三浦ハル@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 新八の眼鏡@銀魂
【状態】:健康
【思考・行動】
1:土方さんに付いて行く。
2:みんなで元の世界に帰りたい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
【土方十四郎@銀魂】
【装備】: 菊一文字則宗@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式 ビニール袋に入ったMr.5の鼻くそ×6@ONE PIECE、ポテトチップス@DEATH NOTE、ブルマのパンツ@DRAGON BALL 打ち上げ花火五本
【状態】:健康
【思考・行動】
1:沖田・銀時・他仲間(強い・首輪解除できる人間)を探す。信頼できそうな仲間に会えたら花火を渡す。
※参戦時期はミツバ編直後なようです。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
「行かせてよかったのか?」
「わしらと居ても危険なことには変わりないんじゃ。土方一人で行動させるのもちと不安だったしのう」
土方とハルが歩いていったほうを眺めながら、太公望と玄野はこれからについて話し合った。
追いかけていってしまったハルが心配だが、土方と一緒なら大丈夫だろうと玄野は思った。
そこで玄野はずっと気になっていたことを口にする。
強くもなく、首輪解除をできるわけでもないが大切な人を探したいと告げると太公望は快く頷いてくれた。
――小島多恵。あと他の仲間達。
来ているかは分からないが、ガンツからのミッションだとすればその確立は高い。
(多恵ちゃん……)
怯えてるかもしれない。早く会って抱きしめたかった。
【D-3 道路 / 一日目 黎明】
【玄野計@GANTZ】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0~3)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:太公望と共に仲間を集める。多恵達を探す。
2:みんなでこのゲームから脱出する。
※参戦時期はゆびわ星人編前です。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
【太公望@封神演義】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 打ち上げ花火五本 未確認(0~2)(宝貝はないようです)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:仲間を集める。信頼できそうな相手には花火を渡す。多恵達を探す。
2:宝貝が欲しい。
※この殺し合いをガンツの「ミッション」ではないかと考えています。
D-3道路に壊れたパトカー(修理すれば動く範囲?)が放置されています。
|031:[[鬼女 が 生まれた 日]]|CENTER:[[投下順>本編(投下順)]]|033:[[再会]]|
|030:[[ヒソカの性欲×1stステージ×桃の決意]]|CENTER:[[時間順>本編(時間順)]]|033:[[再会]]|
|010:[[救世主現る!]]|三浦ハル||
|010:[[救世主現る!]]|土方十四郎||
|010:[[救世主現る!]]|玄野計|039:[[GANTZにかけられた制限]]|
|010:[[救世主現る!]]|太公望|039:[[GANTZにかけられた制限]]|
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: