「再会」(2008/08/12 (火) 11:44:02) の最新版変更点
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**再会
廊下を突き当たって右。至って単純な経路を辿って、桂木弥子はそこに居た。
───“グツグツ、トントン”
何かを煮込む音も包丁をまな板に打ちつける音もまだここには無い。
無音の室内で空白の時間を一人で過ごすということに何となく世界に取り残されたような疎外感を感じて、窓を開いて外界とこの空間を結んでいる。
窓枠に頬杖を突く弥子はまるで恋人でも待っているかのように、切なく、それでいて待ちわびしいという雰囲気を纏っていた。
────遅い。
考えてはいけない、そう思い直ぐに“彼ならきっと大丈夫”と無理矢理思考を切断しても一度生まれた不安は水を与えずとも簡単に育ってしまうわけで。
────見に行ってみようかな。
踵を返し、直ぐに“彼を信じなくちゃ”と必死に気持ちを切り替えてまた窓の向こうの景色を覗いてみても気付けば足のつま先は部屋の出口を見つめているわけで。
「……あの、人、は…目覚めたかな?」
気持ちを紛らわさなければ。その材料として頭の中に出てきたのがサンジに助けられた男、空条承太郎。
…これも一種の“利用”なのかもしれない。
微かな罪悪感と大きな不安を胸に抱き、弥子は食堂を飛び出して行った。
◇ ◇ ◇
時は僅かに遡る。
「ここは……?」
薄く瞼を開いては、見慣れぬ天井。
状況が把握できぬまま状態を起こすと身体の節々が軋みを起こした。
「確か……そうだ、俺は」
ぼやけた記憶の糸を紡いでいけば屈辱的なあのシーン。
───“すみまっせーーーーーんっっ!!”
「く……ッ」
そうだ、俺はあのハゲとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!
何故か頭を下げて戦闘を放棄してしまったんだ!
無論、承太郎本人には敵に土下座をし許しを請うなどというつもりは一ミリも無かった。
地面に擦りつけていた額を持ち上げようとした、それでも無駄だった。
戦闘意欲すら湧かずスタンドを出現させることさえできないという状態だったのだ。
しかし、それなら予めスタンドを出しておけば問題は解決するのではなかろうか。
まさか戦闘になった途端意思を無視してスタープラチナが消えてしまうだなんてことは………いや、有り得る。
“奴”は遠距離から他者の身体を操作できるというかなり強力なスタンドを持っているのだから、そのくらいわけないのかもしれない。
それでもその現象には必ず条件というものがあるはずだ。
その条件さえクリアしなければ承太郎にだって賞賛はある。
まずは“奴”を倒し、ワポルを裁こう。
「休憩は終わりだ。行くぞ、スタープラチナ」
「……どういうことだ?」
スタンドが、発現しない。
「まさかまだ敵に見られている…!?」
黒い背景の中央に、閃光が駆け抜ける!
ならば早く見つけ出さなければ。──という考えとは裏腹に、敵に思考を読まれないよう承太郎は悠長に歩き出した。
…勿論、自分がヘタレてしまった根本的な原因も一緒に。
◇ ◇ ◇
「……あれ、どこ行ったんだろ、あの人」
皺が刻まれたシーツ、下の方で無造作に丸まった布団。
触れた寝台にはまだ先刻までそこに人が眠っていたという証の温度があった。
再び不安が動き出す。
────ネウロが居ない、サンジが居ない、承太郎が居ない、一人ぼっち。
一つ不の要素が現れれば、それがスイッチだったかのように次々と嫌な考えが頭を支配する。
────サンジさんは何でこんなに遅いの?さっきまで寝てた人が何でいきなり一人で出て行くの?まさかサンジさんと戦ってた人が追いついちゃったの?だとしたらサンジさんは?連れてかれちゃった人は?みんなどうなったの?私はどうすれば良いの?
答えが出るはずはないのにどんどんどんどん浮かんでくる。
いけない。駄目、今は泣いている場合ではない。言い聞かせる、言い聞かせる、言い聞かせる。
立ち止まっていては駄目。私が、動かなければ。
「…まだ、追いつけるよね!」
一人になりたくない。
その思いが強すぎて、近くに敵が居るかもしれないという危険を無視し弥子は走り出していた。
◇ ◇ ◇
走る、走る、走る。
足止めをしてくる空腹感を振り切って、走り続ける。
何に向かっているのかは、その先に何があるのかは、まだ弥子にはわからない。
「ハァッ……くッ…ハァ………居、た」
あれは確かにあの人の後ろ姿。
大きな体格の割にかなり弱気な───。
「来ないほうが、良いぜ」
後ろ姿のまま弥子に告げる承太郎の向こう側に転がっているのは、見覚えのある黒と、見覚えのない赤。
だが、その言葉と光景の意味を直ぐに理解するには、今の弥子には到底難しいことで。
「何、言ってるんですか…?サンジさん、ちゃんとそこに居るじゃないですか」
緊張した頬の筋肉を和らげようと口角を持ち上げてみるが、叶わない。
きっと頭では理解していたのだ───承太郎の言葉の真意を。
けれど心が理解したくなかったのだ───承太郎の足元に横たわる人物の理由を。
見たくない、でも信じたい。矛盾していることは重々承知。
複雑な心境のまま、弥子は佇んだ承太郎の横を通り抜けて、地に伏した人物の確認を行う。
「………」
血が“赤黒い”ということを、彼女は知っている。
数々の事件と向き合ってきたのだからそれは当然のことなのだ、けれども。
地にひれ伏したサンジから溢れ出ている“赤黒い”液体が血液であるということを認めたくなかった。
「サンジさん、ごめんなさい。私来ちゃいました」
呼びかける。
「約束破っちゃってごめんなさい…」
呼びかける。
「何回でも謝りますから、何か…言ってください」
反応は?
「ねぇ、サンジさん…」
─────────────無い。
“どうして?”
─────────────何故なら彼はもう。
“……………”
私が無理を言ったから。でも、そうしなかったら今私の隣に立ってるこの人はどうなっちゃってた?
私が何もできなかったから。何もできない、そういえば私はいつもネウロに助けられてたんだっけ。
ねぇ、ネウロ。
─────私はあのとき、どうすれば良かったのかな。
弥子が向かっていたものは、そこにあったのは、絶望の黒一色だった。
【C-5 中央西・施設入口付近/一日目 黎明】
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1~3(未確認)
【状態】:健康 疲労による大きな空腹 ショック
【思考・行動】
1:私のせい?
2:サンジさんが…。
3:死にたくない、でも誰かを殺すのなんて…
※サンジと互いの世界について幾ばくかの情報交換をしています。情報の深度は他の書き手にお任せします。
※参加時期については後続の書き手に任せます
ただし、XIを知っているので、3巻以降であることは確かです
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
【装備】:妖刀・村麻紗@銀魂
【所持品】:支給品一式
【状態】:投げ飛ばされた衝撃による軽度の打撲 奥歯が一本折れています
【思考・行動】
1: (本当は居ない、承太郎をヘタレにした)見えない敵を探し出して倒す
2:ワポルを倒す
※承太郎は吉良と同じ時間軸から呼び出されています。
※妖刀・村麻紗について
この妖刀は一度手にすれば離れません。
また持ち主の意思に関わりなく、『危険な場面』では行動・言動がヘタレオタク化します。
行動・言動がヘタレオタク化しても承太郎の精神は変化していません。
(通常時は呪いの影響はありません)
原作では土方の精神を乗っ取っていましたが、それは数日経った後のことであり、
このロワの開催期間中に承太郎の精神が乗っ取られることはありません。
※承太郎は現在、村麻紗の影響によって闘争本能を表に出せないため、
闘争本能で操作するスタンドを出すことができません。
|032:[[探し人]]|[[投下順>本編(投下順)]]|034:[[夜の海に加わる渦巻く影]]|
|032:[[探し人]]|[[時間順>本編(時間順)]]|034:[[夜の海に加わる渦巻く影]]|
|026:[[恐るべき妖刀]]|空条承太郎||
|026:[[恐るべき妖刀]]|桂木弥子||
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**再会
廊下を突き当たって右。至って単純な経路を辿って、桂木弥子はそこに居た。
───“グツグツ、トントン”
何かを煮込む音も包丁をまな板に打ちつける音もまだここには無い。
無音の室内で空白の時間を一人で過ごすということに何となく世界に取り残されたような疎外感を感じて、窓を開いて外界とこの空間を結んでいる。
窓枠に頬杖を突く弥子はまるで恋人でも待っているかのように、切なく、それでいて待ちわびしいという雰囲気を纏っていた。
────遅い。
考えてはいけない、そう思い直ぐに“彼ならきっと大丈夫”と無理矢理思考を切断しても一度生まれた不安は水を与えずとも簡単に育ってしまうわけで。
────見に行ってみようかな。
踵を返し、直ぐに“彼を信じなくちゃ”と必死に気持ちを切り替えてまた窓の向こうの景色を覗いてみても気付けば足のつま先は部屋の出口を見つめているわけで。
「……あの、人、は…目覚めたかな?」
気持ちを紛らわさなければ。その材料として頭の中に出てきたのがサンジに助けられた男、空条承太郎。
…これも一種の“利用”なのかもしれない。
微かな罪悪感と大きな不安を胸に抱き、弥子は食堂を飛び出して行った。
◇ ◇ ◇
時は僅かに遡る。
「ここは……?」
薄く瞼を開いては、見慣れぬ天井。
状況が把握できぬまま状態を起こすと身体の節々が軋みを起こした。
「確か……そうだ、俺は」
ぼやけた記憶の糸を紡いでいけば屈辱的なあのシーン。
───“すみまっせーーーーーんっっ!!”
「く……ッ」
そうだ、俺はあのハゲとの戦いの最中に何者かからの術を受け…!
何故か頭を下げて戦闘を放棄してしまったんだ!
無論、承太郎本人には敵に土下座をし許しを請うなどというつもりは一ミリも無かった。
地面に擦りつけていた額を持ち上げようとした、それでも無駄だった。
戦闘意欲すら湧かずスタンドを出現させることさえできないという状態だったのだ。
しかし、それなら予めスタンドを出しておけば問題は解決するのではなかろうか。
まさか戦闘になった途端意思を無視してスタープラチナが消えてしまうだなんてことは………いや、有り得る。
“奴”は遠距離から他者の身体を操作できるというかなり強力なスタンドを持っているのだから、そのくらいわけないのかもしれない。
それでもその現象には必ず条件というものがあるはずだ。
その条件さえクリアしなければ承太郎にだって賞賛はある。
まずは“奴”を倒し、ワポルを裁こう。
「休憩は終わりだ。行くぞ、スタープラチナ」
「……どういうことだ?」
スタンドが、発現しない。
「まさかまだ敵に見られている…!?」
黒い背景の中央に、閃光が駆け抜ける!
ならば早く見つけ出さなければ。──という考えとは裏腹に、敵に思考を読まれないよう承太郎は悠長に歩き出した。
…勿論、自分がヘタレてしまった根本的な原因も一緒に。
◇ ◇ ◇
「……あれ、どこ行ったんだろ、あの人」
皺が刻まれたシーツ、下の方で無造作に丸まった布団。
触れた寝台にはまだ先刻までそこに人が眠っていたという証の温度があった。
再び不安が動き出す。
────ネウロが居ない、サンジが居ない、承太郎が居ない、一人ぼっち。
一つ不の要素が現れれば、それがスイッチだったかのように次々と嫌な考えが頭を支配する。
────サンジさんは何でこんなに遅いの?さっきまで寝てた人が何でいきなり一人で出て行くの?まさかサンジさんと戦ってた人が追いついちゃったの?だとしたらサンジさんは?連れてかれちゃった人は?みんなどうなったの?私はどうすれば良いの?
答えが出るはずはないのにどんどんどんどん浮かんでくる。
いけない。駄目、今は泣いている場合ではない。言い聞かせる、言い聞かせる、言い聞かせる。
立ち止まっていては駄目。私が、動かなければ。
「…まだ、追いつけるよね!」
一人になりたくない。
その思いが強すぎて、近くに敵が居るかもしれないという危険を無視し弥子は走り出していた。
◇ ◇ ◇
走る、走る、走る。
足止めをしてくる空腹感を振り切って、走り続ける。
何に向かっているのかは、その先に何があるのかは、まだ弥子にはわからない。
「ハァッ……くッ…ハァ………居、た」
あれは確かにあの人の後ろ姿。
大きな体格の割にかなり弱気な───。
「来ないほうが、良いぜ」
後ろ姿のまま弥子に告げる承太郎の向こう側に転がっているのは、見覚えのある黒と、見覚えのない赤。
だが、その言葉と光景の意味を直ぐに理解するには、今の弥子には到底難しいことで。
「何、言ってるんですか…?サンジさん、ちゃんとそこに居るじゃないですか」
緊張した頬の筋肉を和らげようと口角を持ち上げてみるが、叶わない。
きっと頭では理解していたのだ───承太郎の言葉の真意を。
けれど心が理解したくなかったのだ───承太郎の足元に横たわる人物の理由を。
見たくない、でも信じたい。矛盾していることは重々承知。
複雑な心境のまま、弥子は佇んだ承太郎の横を通り抜けて、地に伏した人物の確認を行う。
「………」
血が“赤黒い”ということを、彼女は知っている。
数々の事件と向き合ってきたのだからそれは当然のことなのだ、けれども。
地にひれ伏したサンジから溢れ出ている“赤黒い”液体が血液であるということを認めたくなかった。
「サンジさん、ごめんなさい。私来ちゃいました」
呼びかける。
「約束破っちゃってごめんなさい…」
呼びかける。
「何回でも謝りますから、何か…言ってください」
反応は?
「ねぇ、サンジさん…」
─────────────無い。
“どうして?”
─────────────何故なら彼はもう。
“……………”
私が無理を言ったから。でも、そうしなかったら今私の隣に立ってるこの人はどうなっちゃってた?
私が何もできなかったから。何もできない、そういえば私はいつもネウロに助けられてたんだっけ。
ねぇ、ネウロ。
─────私はあのとき、どうすれば良かったのかな。
弥子が向かっていたものは、そこにあったのは、絶望の黒一色だった。
【C-5 中央西・施設入口付近/一日目 黎明】
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1~3(未確認)
【状態】:健康 疲労による大きな空腹 ショック
【思考・行動】
1:私のせい?
2:サンジさんが…。
3:死にたくない、でも誰かを殺すのなんて…
※サンジと互いの世界について幾ばくかの情報交換をしています。情報の深度は他の書き手にお任せします。
※参加時期については後続の書き手に任せます
ただし、XIを知っているので、3巻以降であることは確かです
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
【装備】:妖刀・村麻紗@銀魂
【所持品】:支給品一式
【状態】:投げ飛ばされた衝撃による軽度の打撲 奥歯が一本折れています
【思考・行動】
1: (本当は居ない、承太郎をヘタレにした)見えない敵を探し出して倒す
2:ワポルを倒す
※承太郎は吉良と同じ時間軸から呼び出されています。
※妖刀・村麻紗について
この妖刀は一度手にすれば離れません。
また持ち主の意思に関わりなく、『危険な場面』では行動・言動がヘタレオタク化します。
行動・言動がヘタレオタク化しても承太郎の精神は変化していません。
(通常時は呪いの影響はありません)
原作では土方の精神を乗っ取っていましたが、それは数日経った後のことであり、
このロワの開催期間中に承太郎の精神が乗っ取られることはありません。
※承太郎は現在、村麻紗の影響によって闘争本能を表に出せないため、
闘争本能で操作するスタンドを出すことができません。
|032:[[探し人]]|[[投下順>本編(投下順)]]|034:[[夜の海に加わる渦巻く影]]|
|032:[[探し人]]|[[時間順>本編(時間順)]]|034:[[夜の海に加わる渦巻く影]]|
|026:[[恐るべき妖刀]]|空条承太郎|043:[[俺様の軍事力はエリア一ィィィィィ!!]]|
|026:[[恐るべき妖刀]]|桂木弥子|043:[[俺様の軍事力はエリア一ィィィィィ!!]]|
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