桜の木の下で
西連寺 春菜が目を覚ましたのは美しい桜の木の真下だった。
淡い月明かりに照らされた薄紅色の花達は、それらを見上げる春菜にとってとても幻想的なものに思えた。
空に浮かび上がる花々。
春菜が先ほどまで普通に過ごしていた場所は、桜などもう咲いていない。
だから夢だと思った。思いたかった。
だが、体の震えは止まらなかった。夜風が冷たく春菜の体に現実を押し付ける。
ショートヘアーの黒髪を揺らしながら、春菜は心を落ち着かせようと父親の言葉を思い出した。
『常に前向きでいろ。そして……悩むくらいなら行動しなさい』
春菜はそれを心に刻もうと務めるが、やはり体の震えは止まらない。
人が死んだ。殺し合えと言われた。
首に手を当てると、確かに硬質な感触が伝わってくる。
ある程度の非日常はララが来てから慣れているつもりだった。だが、今回は命が懸かっているのだ。
普通の女子高生でしかない春菜は、すぐに現状に立ち向かえるほど強くない。
初めて真近で見る人の死に心が竦んでいた。
淡い月明かりに照らされた薄紅色の花達は、それらを見上げる春菜にとってとても幻想的なものに思えた。
空に浮かび上がる花々。
春菜が先ほどまで普通に過ごしていた場所は、桜などもう咲いていない。
だから夢だと思った。思いたかった。
だが、体の震えは止まらなかった。夜風が冷たく春菜の体に現実を押し付ける。
ショートヘアーの黒髪を揺らしながら、春菜は心を落ち着かせようと父親の言葉を思い出した。
『常に前向きでいろ。そして……悩むくらいなら行動しなさい』
春菜はそれを心に刻もうと務めるが、やはり体の震えは止まらない。
人が死んだ。殺し合えと言われた。
首に手を当てると、確かに硬質な感触が伝わってくる。
ある程度の非日常はララが来てから慣れているつもりだった。だが、今回は命が懸かっているのだ。
普通の女子高生でしかない春菜は、すぐに現状に立ち向かえるほど強くない。
初めて真近で見る人の死に心が竦んでいた。
「結城君……」
愛しい人の名前を呟く。
最初に集められた会場にはたくさんの人がいた。
咄嗟のことだったので梨斗とララしか他の参加者を確認できなかったが、確かにこの会場のどこかに二人はいるはずなのだ。
会いたい。探しに行きたい。でも、足が竦んだまま動けない――その時だった。
最初に集められた会場にはたくさんの人がいた。
咄嗟のことだったので梨斗とララしか他の参加者を確認できなかったが、確かにこの会場のどこかに二人はいるはずなのだ。
会いたい。探しに行きたい。でも、足が竦んだまま動けない――その時だった。
「やあ」
一人の少年が声を掛けてきたのは。
「桜が綺麗だなと思って来て見たんだけど、一人かい?」
「あ、……はい」
「あ、……はい」
中性的な声色をした少年は、見た目とは裏腹な落ち着きを持っていた。
歳は春菜と同い年……いや、年下だろうか。
春菜と同じような日本人特有の長い黒髪を揺らしながら、少年は穏やかに微笑を浮かべた。
歳は春菜と同い年……いや、年下だろうか。
春菜と同じような日本人特有の長い黒髪を揺らしながら、少年は穏やかに微笑を浮かべた。
「桜の木の下には死体が埋まっているという話は聞いたことがあるかい?」
「え?」
「どうしてこんな噂が広まっているかは分からないけれど、それほど昔の人は桜に神秘性のようなものを見出していたんだろうね。
――なのに人は自然を破壊し、己の欲望のまま生きている。人は業が深すぎる」
「え?」
「どうしてこんな噂が広まっているかは分からないけれど、それほど昔の人は桜に神秘性のようなものを見出していたんだろうね。
――なのに人は自然を破壊し、己の欲望のまま生きている。人は業が深すぎる」
少年の声のトーンが変わる。
それと同時に春菜の体が異変に襲われた。一瞬だけ、体がマグマの中に放り込まれたような感覚に陥る。
そして次に感じるのは、ララが来てから慣れてしまったあの感覚。
それと同時に春菜の体が異変に襲われた。一瞬だけ、体がマグマの中に放り込まれたような感覚に陥る。
そして次に感じるのは、ララが来てから慣れてしまったあの感覚。
「あ……」
驚いてろくに声も出せなかった。
春菜の体には制服の燃えカスだけが残るのみで、その豊満な体は何に遮られることもなく外気に晒された。
春菜の体には制服の燃えカスだけが残るのみで、その豊満な体は何に遮られることもなく外気に晒された。
「やはりこの程度か」
少年は春菜の様子に顔色を変えることなく何事かを呟くと、そのまま春菜へと覆い被さる。
同時に冷たい銃口が春菜の額に押し付けられた。
同時に冷たい銃口が春菜の額に押し付けられた。
「え」
「怖がることはないよ。お前の魂は我が糧になって永久に生き続ける」
「怖がることはないよ。お前の魂は我が糧になって永久に生き続ける」
春菜には少年の言葉が半分も理解できなかった。自分より年下の少年が銃を突きつけていること。
所々感じる体の痛み。確実に近づいてくる死の足音。
これが走馬灯なのだろうか。様々な光景が脳裏へと蘇ってきた。楽しかった日々、両親のこと、友達のこと、あと……
――ゆうき、
「好きなのかい?その男のこと」
所々感じる体の痛み。確実に近づいてくる死の足音。
これが走馬灯なのだろうか。様々な光景が脳裏へと蘇ってきた。楽しかった日々、両親のこと、友達のこと、あと……
――ゆうき、
「好きなのかい?その男のこと」
思考を読まれたかのようなタイミングで声を掛けられ、春菜は驚愕に目を見開いて少年を見た。
「……?宇宙人?へぇ、面白いね。――何か言い残すことは?」
少年の指が引き金に触れる。
――結城君。
「たすけ――」
――結城君。
「たすけ――」
一発の銃声が響いて、少女の命も深い闇の中へと消えた。
【西連寺 春菜@ToLOVEる 死亡】
「喰っていいぞ、スピリット・オブ・ファイア」
春菜だったものを見下ろしながら、ハオは傍らに控えていた己の持霊へと声をかけた。
現れた赤い精霊は、酷く頼りなかった。大きさは赤ん坊ぐらいだろうか。
この精霊の名前はスピリット・オブ・ファイア。パッチ族に伝わる五大精霊の一つである。
ハオは銃で人を殺すということはあまりやったことがない。人間はそれはもう何百何千という単位で殺してきたが。
普段はスピリット・オブ・ファイアの力で丸焼きか串刺しか、それか手下に殺させる。
ハオ自身が人間の作った兵器で人を殺めるというのはとても珍しいことだ。
そうしなければならなかった理由は一つ。
この会場に突如送り込まれて、ハオが気がついたときには持霊のスピリット・オブ・ファイヤが素霊状態になっていたのだ。
素霊とは人間で言う赤ん坊のような状態のことである。生まれたばかりの精霊。
よって力も弱く、春菜を焼き殺そうとした時も服を燃やすことしかできなかった。
力のある魂を喰らえば、以前の力が多少は取り戻せるだろうが春菜の魂程度では足りないようだ。
脱出するのしても、優勝を目指すにしても、スピリット・オブ・ファイアの力が戻らないことにはどうにもならない。
ハオ自体は多少の陰陽術の心得があるにしても、体は10代前半の子供に過ぎないのだ。
現れた赤い精霊は、酷く頼りなかった。大きさは赤ん坊ぐらいだろうか。
この精霊の名前はスピリット・オブ・ファイア。パッチ族に伝わる五大精霊の一つである。
ハオは銃で人を殺すということはあまりやったことがない。人間はそれはもう何百何千という単位で殺してきたが。
普段はスピリット・オブ・ファイアの力で丸焼きか串刺しか、それか手下に殺させる。
ハオ自身が人間の作った兵器で人を殺めるというのはとても珍しいことだ。
そうしなければならなかった理由は一つ。
この会場に突如送り込まれて、ハオが気がついたときには持霊のスピリット・オブ・ファイヤが素霊状態になっていたのだ。
素霊とは人間で言う赤ん坊のような状態のことである。生まれたばかりの精霊。
よって力も弱く、春菜を焼き殺そうとした時も服を燃やすことしかできなかった。
力のある魂を喰らえば、以前の力が多少は取り戻せるだろうが春菜の魂程度では足りないようだ。
脱出するのしても、優勝を目指すにしても、スピリット・オブ・ファイアの力が戻らないことにはどうにもならない。
ハオ自体は多少の陰陽術の心得があるにしても、体は10代前半の子供に過ぎないのだ。
「慣れないことはするものじゃないね」
あまり使い慣れていない銃をすぐに取り出せるような場所に仕舞いながら、ハオは春菜から視た『リト』と『ララ』について思い返す。特に『ララ』
宇宙人とは俄かに信じられない話ではある。未知なる物にハオは微かに警戒を抱き始めた。
ハオには『霊視』という力があった。相手の心を見透かしてしまう異能。
『ララ』達の情報を得たのはその力の恩恵である。
この能力によりハオは人間を信じられなくなった。
そして人間をすべて滅ぼしシャーマンだけの王国を作るという暴挙に出たわけだが、この場では非常に有能な能力だった。
何もハオ自ら手を下さなければならない訳ではない。ただ人が死ぬそのタイミングに居さえすれば。
肉体という拠り代を失った魂は数分程度でこの世を離れてしまうのだ。
ハオは死というものをそれほど恐れては居ない。転生を二回も繰り返し、死も同程度体験している。
ただ、もうすぐで念願のグレート・スピリッツという全知全霊の精霊が手に入るところだったのだ。ここで死んだら、また五百年の月日を待たなければならない。できれば死にたくはない。
主催の打倒を目指す人間に紛れるか、殺し合いに乗った人間を利用して魂を集めるべきか。
先ほどの春菜のような無防備な人間相手だったら、直接手を下してもいい。
宇宙人とは俄かに信じられない話ではある。未知なる物にハオは微かに警戒を抱き始めた。
ハオには『霊視』という力があった。相手の心を見透かしてしまう異能。
『ララ』達の情報を得たのはその力の恩恵である。
この能力によりハオは人間を信じられなくなった。
そして人間をすべて滅ぼしシャーマンだけの王国を作るという暴挙に出たわけだが、この場では非常に有能な能力だった。
何もハオ自ら手を下さなければならない訳ではない。ただ人が死ぬそのタイミングに居さえすれば。
肉体という拠り代を失った魂は数分程度でこの世を離れてしまうのだ。
ハオは死というものをそれほど恐れては居ない。転生を二回も繰り返し、死も同程度体験している。
ただ、もうすぐで念願のグレート・スピリッツという全知全霊の精霊が手に入るところだったのだ。ここで死んだら、また五百年の月日を待たなければならない。できれば死にたくはない。
主催の打倒を目指す人間に紛れるか、殺し合いに乗った人間を利用して魂を集めるべきか。
先ほどの春菜のような無防備な人間相手だったら、直接手を下してもいい。
未来王たる自分をこんな遊戯に招待したお返しは、スピリット・オブ・ファイアが万全になってから考えよう。
「桜の木の下には死体、ね」
ハオは春菜を一瞥した後、宛もなく歩き始めた。
【E-5桜付近 一日目 深夜】
【麻倉ハオ@シャーマンキング】
【装備】:S&W M36 (残り弾数4/5)
【所持品】:支給品一式×2、不明支給品0~2個、春菜の不明支給品0~3個。
【状態】:健康
【思考・行動】
1:魂をS.O.F に喰わせて成長させる。別に自分で殺さなくても構わない。
2:対主催チームに潜り込むか、マーダーを利用したい。
【スピリット・オブ・ファイアについて】
ハオの持ち霊。素霊状態では弱い炎しか出せないようです。
力や格のある魂を喰うと、成長します。
成長すると乗って空を飛べたり、指で串刺しにしたり、人間を溶かすことができます。
(どの程度の魂を食べれば、力を取り戻せるのかは次の書き手任せです)
【麻倉ハオ@シャーマンキング】
【装備】:S&W M36 (残り弾数4/5)
【所持品】:支給品一式×2、不明支給品0~2個、春菜の不明支給品0~3個。
【状態】:健康
【思考・行動】
1:魂をS.O.F に喰わせて成長させる。別に自分で殺さなくても構わない。
2:対主催チームに潜り込むか、マーダーを利用したい。
【スピリット・オブ・ファイアについて】
ハオの持ち霊。素霊状態では弱い炎しか出せないようです。
力や格のある魂を喰うと、成長します。
成長すると乗って空を飛べたり、指で串刺しにしたり、人間を溶かすことができます。
(どの程度の魂を食べれば、力を取り戻せるのかは次の書き手任せです)
010救世主現る! | 投下順 | 012:妲己の三分間クッキング |
010救世主現る! | 時間順 | 012:妲己の三分間クッキング |
初登場 | 西連寺春菜 | 死亡 |
初登場 | ハオ | 018:鬼 |