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約束



―――ぽたり、ぽたり。
 少年は道路の上に赤い道を作っていった。
―――ぽたり、ぽたり。
 少年は雫が溢れ出る場所を乱雑に拭う。
―――ぽたり、ぽたり。
 少年はそれでも止まらない血に鬱陶しさより快感を覚えた。
―――ぽたり、ぽたり。
 少年は小さく肩を震わせて笑う。
―――ぽたり、ぽたり。
 少年は、和泉紫音は、この状況を盛大に楽しんでいた。



【E-4 南・道路 / 一日目 深夜】

【和泉紫音@GANTZ】
【装備】:首さすまた@地獄先生ぬ~べ~
【所持品】:支給品一式 未確認(0~2)
【状態】: 左耳欠損(未治療)
【思考・行動】
1:今までに感じたことの無い快楽に嬉々。
2:アーロンの案に乗る。
3:ガンツからの指令に従う。

※ 参戦時期はゆびわ星人編前です。
  二日目の深夜にD-4でアーロン・ゆきめと合流する約束をしました。

      ◇      ◇      ◇

 アーロンとゆきめを目の前にして和泉紫音の中では好奇心と〝何か〟が同居していた。
 さて、その〝何か〟に何と名前をつけようか。
 …いや、本当はわかっている。わかっているのだが。
 認めてしまったら今までに無い程に感情が高ぶってしまう気がしてならなかった。
 焦っているなど認めれば、この自分にそれを与えた対象に対し好奇心に打ち震えるこの身体を制御できるか自分でもわからなかったから。

「さぁ、答えを出せ。お前は俺の提案に乗るか、乗らないか?」

 アーロンは答えを予想していた。
 必ずこの男からの返事は自分を納得させるものであろう、と。
 何故ならばこの男の目は普通の人間がするような目ではなかったから。
 今まで見てきた人間とは違い酷い歪みが、その男の瞳には宿っていた、だから――――。

「答えはもちろん―――――――――」
「コイツ……!」

 場を支配していた静寂を、漸く和泉の声が破る。
 和泉はアーロンとゆきめをまるで品定めでもするかのように見比べた後、突如アーロンに向かって体勢低く駆け出した。
 危険を察知したゆきめを置き去りに、不敵に微笑んだアーロンと視線を絡ませあった瞬間首さすまたを握った手の力を一層強め。
 全ての力を右手に集め一気に振り上げた。
 アーロンはそれを見届けた後でやっとアクションを取った。
 すると和泉の動きがピタリと止まる。
 その場に居たゆきめからすれば止まったのは和泉の身体ではなく延々と流れるはずの時間自体が動かなくなったようにも思えた。

      ◇      ◇      ◇

 夜空で魅力を発揮する月や星たちが、物静かな森に光を与えていた。
 そんな僅かな月明かりを頼りにするしかない森の中を男は、威圧感を放つように指を鳴らしながら歩を進める。
 無論、そんなことはしなくとも一般人であれば充分迫力のみに圧し負けているだろう。

「楽しくなってきたぜ……」

 アーロンは白と赤の斑模様に飾った鮫を連想させるようなギザギザの歯を剥き出しにして、ただただ笑いながら。
 一人、目的地に向けて森の中を突き進んだ。


【C-4 北東・森 / 一日目 深夜】

【アーロン@ONE PIECE】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0~3)
【状態】:健康 全身に軽いかすり傷
【思考・行動】
1:ゲームに乗る賢いやつらとは協力(利用)する。
2:甘ったるいことを考えている下等動物は殺す。

※ 参戦時期は九巻辺り。ルフィ戦前。
  二日目の深夜にD-4で和泉・ゆきめと合流する約束をしました。 

      ◇      ◇      ◇

「これで満足か、人間」

 〝短くて長かった〟静止状態をアーロンの声が解かす。
 一連の光景を目の当たりにしていたゆきめの背筋に電撃が走った。
 おかしなことにいつの間にかアーロンは和泉と背中合わせになる位置に立っているのだから。

 そう、和泉が前進を止めてしまったのはアーロンの驚異的な身体能力。
 先程和泉が右手を掲げた時、〝目標が姿を消したと同時に、消えたはずの目標の顔が和泉の視界の許す限りを支配していた〟ことに動揺したのだ。
 そして1テンポ遅く、左耳に痛みが走った。
 緩慢とした動作で指を這わすと、肉片と血がこびりついた。

「ククク……あははははは!」

 違う、ミッションの時とはまるで違う。
 この男は、このゲームは、俺に限りない快感を与えてくれる。

「で、どうするんだ?」
「あぁ、勿論…呑ませてもらう」
「シャハハ……シャーッハッハッハッ!俺を試そうとしたくせに何ほざいてやがる、と言いたいところだが…。
 お前はここで自分がすべきことを理解している!やはりお前のような賢い人間は今ここで殺すには勿体無い。俺の一味に加えてやりたいくらいだ!
 それに……お前は貴重な人材だ。恐らくこの島にはさっきのような能無しどもがうじゃうじゃしてやがるんだろうぜ」
「………」

 戦いに対する快楽。
 それが無いゆきめにとっては今の遣り取りの意味がまったく以て理解できずに。
 状況に置き去りにされたゆきめはただ漫然とアーロンが吐き出した和泉の左耳の欠片を見つめていた。

      ◇      ◇      ◇

 前進する度に身体が浮き沈みを繰り返す。
 ゆきめはアーロンたちと別れた後、自分の体質と相性の良いとっておきの場所を見つけていた。
 肌に纏わりつく冷気が何とも心地良いここは、D-4 ドラム城。
 入り口を潜れば外の鮮やかだった景色の気配も消え失せ白一色となっている。
 非常に不思議な土地である。
 そんな奇妙な城の片隅で、ゆきめは一人考え込んでいた。

「ルールに従う奴って、みんなアイツらみたいな奴らばかりなのかしら…」

 アイツらは戦闘に歓楽を覚えている。
 このゲームを楽しんだ上で自らが進行役となっている。
 ただ単純に生き残るために、掟に従うために人間を殺すと決めたゆきめにとってそれはとてつもなく不気味だった。
 特に和泉紫音とか言う人間。
 彼はただの人間であるはずなのに、何故か怯えが感じられなかった。

「気持ち悪い。………ああいう奴らはあんまり相手にしたくないわね」

 地面に敷き詰められた純白の雪を見つめて、ゆきめは表情を歪ませた。

【D-4 北西・ドラム城 一階 / 一日目 深夜】

【ゆきめ@地獄先生ぬ~べ~】
【装備】:無し
【所持品】:支給品一式 未確認(0~3)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:アーロン・和泉に嫌悪感。
2:アーロンの案に乗る。
3:他の参加者を殺す

※ 参戦時期は110話以降、ゆきめ復活直後。
  二日目の深夜にD-4でアーロン・和泉と合流する約束をしました。

      ◇      ◇      ◇

「それじゃあそろそろ行動するか」
「ちょっと…待って。さっきの人間が言っていたように全員で行動するよりは皆別れてゲームに乗ってない奴から殺していったほうが効率が良いと思うの」

 早速行動を開始しようと一歩を踏み出すアーロンと和泉の背中にゆきめがストップをかける。
 本当はどちらでも良かったのだが、この二人と行動を共にするのは生理的に嫌だった。
 二人がこちらを振り返って見てくることにすら嫌悪が湧く。

「そう言って、裏切るつもりじゃないのか?」
「馬鹿なこと言わないで。確かに三手に別れればその分リスクも負うことになる。だけど……地図を見ればわかるだろうけどここは広すぎる。
 一緒に殺し回るだなんて時間の無駄。それにそうこうしているうちに私の妖力も尽きてしまうわ」

 わざとらしく双眸を細める和泉をゆきめは睨みつける。
 その横でアーロンがここで初めて地図を取り出し、ゆきめの意見と照らし合わせる。

「…確かに、お前の言う通りだ。固まって行動するにはこの島は何分広すぎる」

 アーロンからの賛同を得たゆきめは和泉に皮肉めいた笑みを送って自身も地図を見る。

「だからここはエリアごとに分担しましょう?なるべく積極的な奴とは協力する。
 そして24時間後、生きていたらここで一旦合流して情報交換。…どう?」
「よし、ではABを俺が。CDはゆきめ、EFは紫音。これで良いだろう」

 適当に分担を決めてアーロンは地図をシャツのポケットへと突っ込んだ。
 ゆきめと和泉はそれぞれの方向へ踵を返し、無言でアーロンへの返答をする。
 丁度三人の背が中央を向いた時、揃って科白を吐いた。



―――――――「二十四時間後、生きていたらまたここで」



019:盗賊について 投下順 021:笑えよ
019:盗賊について 時間順 021:笑えよ
010:救世主現る! 和泉紫音 027:二人の武道
010:救世主現る! アーロン 044:死ぬことと見つけたり
010:救世主現る! ゆきめ 037:男の戦い ver.snow