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見よ!塾長は紅く燃えている




「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」


「いえ、そのような大きな声を出さなくても聞こえますよ、江田島先生。
 むしろ、そんな大声を出せばあたりの人に気付かれ」
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」
「…………はあ」


 エリアでいえば、E-5にあたる川の傍の草原。
 そこで、2人の男が会話をしていた。
 1人は大柄な体躯に、見事なまでに髪のない頭、それでいて精悍な顔つきで立派なひげに和服を着た男。
 もう1人は対照的に、端正な顔つきに金髪の優男といった印象の男だった。


 大柄な男、江田島平八と青年、玉藻京介が遭遇したのはついさっきのこと。身構えた玉藻に江田島が「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」と叫び、
玉藻が唖然としたところに江田島が自分はこのゲームに乗っていないことを申告。互いに自己紹介を始めたところだった。
 ……ちなみに、もう江田島は自分の名前を叫んだのだから、さっきの自己紹介は本当は必要なかった、という
ツッコミはしてはいけない。ていうかしても無駄だ。

「私は玉藻京介と言います。童守小学校で教育実習生をしています」
「ほう。教育実習生、ということはお主も将来は教師を目指すものか」
「ええ。今は見習いの身ですが、ね。いつか生徒達に学業を教えたいと思っています。
もっとも……それを叶えるためには、まずここを抜け出さなくてはなりませんが」
「うむ」


 江田島はこのゲームに乗るつもりは全くない。
 確かに人が生死をかけた戦いで自分を磨くということは知っている。
 だが、これはそんなものではない。こんなものではそんなことは望めない、いや望んではいけない。
 あのワポルという男はただ楽しみたいだけだ。そのような事は赦せない。
 それにあの説明の時を見る限り、明らかに学生が何人か見受けられた。
 若者は国の宝。その芽を殺し合わせて絶つなど、断じて赦せん!

「とりあえず、まずは人員を集めましょう。私たちだけではどうしようもありません。
私たちのように、このゲームに抵抗する人間はきっといるはず。その人たちと合流、結託。
それから、この首輪を外す方法なりを模索しましょう」
「うむ。それがよかろう。わしが男塾校長江田島平八である!!」
「それはもういいですから…」
 玉藻があきれ果てながら、つっこんだ。

 しかし、それはどうやらすこし遅かったらしい。


「ねえ。あんた、すっごい大きな声してるね」
 声に2人が振り向くと、そこには白い布だけを羽織った銀髪の少年がいた。
「うむ。わしが「君は何者だい?」ある!!」
 江田島の声を玉藻が遮り、少年に問う。
 少年はすこし不機嫌な顔になった。

「俺が何者か、かー。……それは俺が一番聞きたいことなんだよ。
 俺は自分が何者か分からない。脳細胞がずっと変異を続けててさ、どんどん記憶が失われてくんだ。
 どこで生まれたのか、本当の名前がなんなのか、本当の性別も、親も分からないんだ」
「……君は何を言ってるんだ?」
 玉藻が少年の奇妙な言動にいぶかしげな顔を見せる。少年はそれを無視して続ける。



「俺は自分が何者か知りたい。その為には、他人と自分を比べてみればいいと思うんだ。そうして自分の正体を探すんだ。
 そう、他人の……――とさ」
「?今、何と言―」


 次の瞬間、少年は玉藻の目の前まで接近していた。
 一気に接近してきた。地を蹴って、ほんの刹那の間に。
(なんという、脚力!まずい、対応が…!)
 玉藻が後ろに下がろうとするが、少年はそこで腕を振りかぶり、
玉藻に向かってそれが突き出され―


 横からの鉄拳でその腕を防がれた。


「え!?」
「ぬおおおおおおおおお!」
 鉄拳の持ち主、江田島が少年の伸ばした腕を殴り飛ばし、殴り飛ばされた腕に吊られて少年も吹き飛ばされる。
が、地面に激突するかと思った時、手を地面につくと、バク転のように体を回転させ、見事に着地した。
 着地した少年は、驚いた顔で玉藻の前に出た江田島を見る。

「すげえ……今の力、ただの人間とは思えないよ!あんたもネウロみたいな魔人なの?!」
「魔人……?」
 玉藻がその言葉に反応するが、少年はそれを意に介さず、江田島だけを見ている。
「俺のスピードにもついてこれたし……気が変わった。そこのお兄さんにしようかと思ったけど、やっぱあんたにするよ」
 少年が身をくぐめるのを確認し、江田島も身を構える。
「玉藻よ。下がっておれ」
「……それがよさそうですね」
 玉藻が江田島から距離をとる。この戦いに、自分は邪魔になる。そう悟った。



 少年は喜悦に顔を歪ませ、言った。
「あんたの中身を、見せてくれ」


 少年が地を蹴り、江田島に肉薄し腕を突き出す。明らかに細い腕、だがその力がとてつもないということは
既に江田島は先の拳で把握していた。少年の手は握り締められてはおらず、むしろ開かれている。じゃんけんで言えば、
グーではなくパー。ただし指を立て、掴むイメージのパーだ
 それに今江田島の目の前でおこる豪速、怪力が備わり、人間に直撃したならば……人間の肉がまるでワニに噛まれた
ようにそがれてしまうに違いない。つまり、あれがどこに当たろうが危険だ。あの腕は、まさしく喰らい付くワニの顎も同然!
「ふん!」
 その顎を紙一重でかわし、江田島も鉄拳を打ち出す。だが少年は身軽にそれをジャンプでかわし、今度は怪力の腕を振り下ろす。
 江田島はそれを正面から拳で迎え撃つ

 江田島の正拳と少年の腕が激突する。少年の開かれた指が江田島の拳に突き刺さる。
 華奢な細腕とは思えない力。それが江田島の腕に一気に襲い掛かる。
「凄いなあんた!俺にこんなに対抗できた奴、始めてみた!
 あんたみたいな奴の中身を見れば、俺の中身もわかるかもしれない……なあ、何者なんだよあんた!ネウロみたいな魔人?

 まあ、後であんたの中身を見れば済む話なんだけどさ!!」

 嬉々とした少年がもう片方の腕を空中で江田島に振りかぶる。もう一つのワニの顎が江田島に襲い掛かる。

「わしが何者か、知りたいか……」

「えっ!?」


 が、次の瞬間少年の体勢が空中で崩れた。なぜか。
 簡単な話。江田島が少年の指の刺さった拳を一気に引いたのだ。
 ただ引いただけではない。それはもう恐ろしいまでの速さ。空中で踏ん張るものなどない少年は引っ張られ、
そして江田島に近づかせられる。
「あ、あんた…!まさか、この為に俺の指を……力を抜いてたのか!?」
 全力を出して少年をただ吹き飛ばしてしまったらこうはいかない。肉を切らせて骨を絶つ。江田島は少年の力と自分の力が拮抗
するように、腕の力を調整したのだ。最初の手合いで少年の一撃が自分の全力より弱いと察した江田島は、目算でその力を調整、
ぶつかった時に瞬時に微調整をした。
 力の調整、それは江田島ほどの男でなければそうそうできない所業である。
 結果、少年は江田島に引き寄せられる。その先に待つのは、江田島の片方の鉄拳。
カウンター。こちらに向かう力と逆の力。その2つがぶつかった時、そのダメージは倍増する!


「わしが男塾塾長」
 江田島の拳が少年の胴を直撃し


「江田島平八であーーーーーーーーる!!!!」


 華奢な少年の体を紙のようにふっ飛ばし、埋まっていた指をも引き剥がし、少年は川の方へと吹っ飛んだ。
 50メートルほど吹っ飛んだ少年の体が、無防備に川へと着水した。

 やがて大きな水しぶきが上がったのを見て、江田島は安堵する
「あの者……恐ろしい相手であった。だがどうやら精神は童同然。是非わしが正しき道を導いてやりたいところだった……む?」
 揺れる水面を見ていた江田島に奇妙なものが見えた
「あれは……何!?」



 それはしゃれこうべ。要は、頭蓋骨。それが川の水面をいくつも揺れて動いているのだ。
 さっきの少年のもの?いや、それにしては多い。川を漂い流れるいくつもの髑髏。それは果たして地獄のような光景。
 百戦錬磨の江田島といえど、気を揺るがさざるを得なかった。


 そして、そのわずかな心の隙を……『彼』は見逃さなかった。


「ぐうううう!!」
 咄嗟に、地を蹴った江田島。だが、一歩遅かった。その背中を何かが大きく抉った。
 江田島はその痛みに耐え、振り向きざまに拳を繰り出すが、彼はそれを軽々とかわした。

 江田島の後ろにいた人物、それは当然1人しかいない。

「玉藻……お主……!」
「一気に致命傷を与えるつもりだったのですが……まさか背後の攻撃に気付くとは思いませんでしたよ」
 江田島の怒りの視線を受けてなお、さっきまで友好的であった青年、玉藻京介は血の滴る刀、三代鬼徹を平然と構えている。
 その表情には不敵な笑みが浮かんでおり、罪の意識はまるで感じられない。
「江田島先生。あなたはどうやら人間の中でもかなり強力な力を持っている方のようだ。
 私はこのようなところで死ぬつもりはないのでね。素直に優勝するとしましょう」
「貴様!!」
 裏切りに激昂した江田島が玉藻に向かって走り、拳を突き出す。だが、玉藻は先の少年のようにアクロバットではないものの、
身軽にそれでいて華麗にも見えるほどの動きでそれをかわす。
「おや、江田島先生。さっきより拳が鈍っているようですね。やはり背中の傷はそれなりに影響が出たようだ」
「ふん!!」
 玉藻の言葉に答えず江田島は蹴りを玉藻に繰り出す。だが、その時背中の傷から痛みが走った。
「ぐ、ぬ…!」



 本来の江田島ならば、これくらいの傷はなんてことはない。なにしろマグナムの一撃にすら耐えられる強靭な肉体だ。
 だが、ここでは彼の身体能力は著しく弱まっていた。拳の威力。そして体の強靭さ。しかも理由はそれだけではない。
玉藻の使っている三代鬼徹。これは素でも石斧をたやすく切り裂くほどの切れ味があるが、肝心なのはこの刀が『妖刀』である点である。

「足を止めていいのですか?」
「なに?……!?」
 すこし後ろに下がった玉藻を見て、江田島の瞳孔が開いた。さっきまでの玉藻とは明らかに違う点があった。

 尾だ。玉藻の尻から金色の尾が生えているのだ。
「その尾は……狐か!」
「そう。教えてあげましょう。私は妖狐。古来より人間達に災厄と混乱をもたらしてきた、妖狐・玉藻です」


 妖狐。要は、狐の妖怪である。古来より妖狐は400歳を越えると、人化の術を覚え人に化け人に災いをもたらす事を掟としている。
 400歳をこえた彼、玉藻もそれに漏れず、完全なる人化の術を完成させるため、立野広の頭蓋骨を求めて童守小学校の教育実習生としてやってきた。
 だが、それを鵺野鳴介に阻まれる。
 その時の鵺野に興味を抱き、彼に再び術を仕掛けるがそれも突破され、ますます興味を持った。その矢先の出来事がこのゲームだった

 先刻、江田島が気をとられた水面の髑髏。あれは、玉藻の仕業だ。妖狐の術の一つ、『幻視の術』。
 古来狐は舞い落ちる木の葉で人を化かす、というのはよくある話。だが妖狐の場合は、木の葉だけに留まらない。
 動いている物にならばどんな物にでも幻覚を纏わせる事ができる。
 さっきの場合、玉藻は少年の着水によって川に起きた波紋。揺れて動くそれに髑髏の幻覚をつけ、江田島を動揺させた。
 その隙に、三代鬼徹で切りかかった。さっきのからくりはこんなところだ。



 先の鬼徹に話を戻そう。三代鬼徹は妖刀である。それは所持者が不幸にあったという逸話だけでなく、
これの持ち主ロロノア・ゾロが、目に見えない場所に鬼徹があったにもかかわらずそれを感知できたことから、
妖怪でいう妖気的なものが鬼徹にはあると伺える。
 ではそれを妖怪であり妖気を操る玉藻が持てばどうなるか。ただでさえ強力な妖刀が、彼の妖気により強化されてもおかしくはない。
 妖気により強化された妖刀、制限により弱まった肉体。この2つの要素が超人、江田島平八の背中に深い傷を負わせたのだ。


「鵺野先生を殺すのは残念ですが、私もここで死ぬつもりはない、もとより人間などに殺されるとは思っていない。
 故に、私はあなた達を殲滅する。妖狐のプライドの下にね。もちろんあのワポルという男もただでは終わらせませんが」
「……」
「おや、裏切られた怒りで言葉も喋れなくなりましたか。その背中の裂傷で立っていられるとはたいしたものです。
 このまま切り殺してもいいのですが、あなたの格闘術が優れているのはすでに把握しました。
ですから……あなたは一気に焼き殺すとしましょう!」
 玉藻の尾が動き、摩擦を起こす。するとそこから炎が起こり、玉藻の周りを螺旋状に包んだ。

 『妖狐 火輪尾の術』。妖狐は尾をすり合わせる事で炎を起こし、それを自在に操る。
 俗に言う狐火と言う奴だ。ただの炎ではなく、霊的な炎であり、それは全てを焼き尽くすという。
「はっ!」
 玉藻が江田島に指を向けると、炎が一気に江田島へと向かう。江田島が逃げる間もなく、炎は江田島の体を直撃した。

「ぐっ!!!!」
「ははははははは!悲鳴をあげないとは驚きましたよ。かつて、多くの霊能力者がこの術に敗れ去った。
 ……最近唯一1人だけ、この術に耐え切った男がいましたが……彼は霊能力者であり、白衣観音経を使ってやっとだった。
 この意味が分かりますか?江田島先生」
 江田島の答えを聞くまもなく、江田島に襲い掛かる炎が強くなっていく。
 江田島の服は焼け消え、彼の体がどんどん火傷に包まれていく。


「霊能力者ではないあなたにはこの術に耐えるすべなどありえないということです!」
 炎のレベルは既に玉藻に言わせれば『道鏡レベル』に上がっている。道鏡とは奈良時代の僧であり、
要するにその彼が耐えられたレベルの炎、ということである。

 江田島の体を灼熱が襲う。江田島の体に激痛が走る。
 だが、その江田島の口がゆっくりと動いた。

「……玉藻、よ……一つ、問う……」
「!?ば、ばかな!このレベルで喋れる気力があるというのか!」
 江田島の体は炎に包まれている。炎は酸素を消費する。江田島はもはや呼吸すら辛い状態のはずなのに、言葉をつむいでいる。
 そもそも、常人ならば既に焼け死んでいるほどの炎のはずだ。

「……教育、実習生、というのは……おぬしの、偽りの、姿か……?」
「……ええ。それがどうかしましたか。そのような物、ある生徒の頭蓋骨を得たいが為の仮の姿!
 汚らわしい人間どもなど、私にとってはどうでもいい!」

「そう、か……」
 それを聞き、江田島の腕がゆっくり動く。
「まだ動けるとは!ですが、これで終わりです、『空海レベル』!!」
 炎が更に勢いを増し、平安時代に天台宗を開いたという僧、空海が耐えられた炎にまで温度のレベルが達する。
 江田島の体がどんどん焼け焦げていく。

「これで流石に終わりでしょう。あなたは恐ろしい超人でした。ですが、もうここが限界で……!?」
 玉藻の言葉が止まった。いや、止まらざるを得なかった。




 江田島の鋭い、威圧を伴った眼光が、玉藻を射抜いていたからだ。


(許さぬ、許さぬぞ玉藻京介!)
 江田島は憤怒していた。
 教師とは、若人を導く者。若人は、国の希望。若人は、国の未来。その若人を導く教師、それは誇りに溢れなければならない。
 だからこそ、許せない。
若人を殺す為に、教師を目指す者を騙ったこの男が。
今から若人の命を刈らんとするこの男が!
この男にこのまま殺されるわけには行かない。この炎に焼かれるわけには行かない。


「心頭滅却すれば、火もまた涼し!!」
 江田島が叫ぶと、まるで炎が江田島の体を避けるようになった。それはまるで伝説に語り継がれるモーゼのよう。
 もっともモーゼが割ったのは水であり、今江田島の体を避けて割れているのは炎だが。
「ば、馬鹿な!私の炎が!!
 な、なぜ……!
!?まさか、あなたは……気の使い手!」

 江田島平八は霊能力者ではない。
 だが、百戦錬磨の戦士であり、闘士である。その過程で、彼は『気』を会得していた。
 その『気』が無自覚か、それとも故意にか、霊的な炎から江田島を守っていたのだ。さながらそれは、『気』の鎧。
 ……加えるなら、なにしろ彼は大気圏を突入しても平気だった男。恐らくその時もこの『気』が作用したのだろう。
 つまり、肉体が弱まってるとはいえ、玉藻の業火には充分堪えることができたのだ。


 江田島が構える。それは拳を打ち出す構え。
「っ!だが、例え気を使えたとしても!全身火傷に背中の裂傷!もうあなたは満足に動けないはず!
 ならば、私が今直接その心臓を貫いてあげましょう!」
 江田島が接近してくる前に、玉藻は地を蹴って突進。三代鬼徹で江田島の心臓を貫く事にした。
 妖気を伴った鬼徹の剣速と、満身創痍の江田島の拳、速いのは明らかに前者。玉藻はそう判断した。
(そう、人間如きに、霊能力者でもない相手に、この玉藻が破れるはずがない!)
 その思いとともに、玉藻は江田島に突進する。


 玉藻は焦っていた。いや、動揺していたというべきか、無自覚のうちに。
 彼の自慢の術が霊能力者でもない相手に破られた。それは彼のプライドをかなり傷つけていた。
 ただでさえ鵺野に敗北してから間がない。その傷はかなり深いものだ。

 そのプライドの傷による焦り、それが玉藻の正常な思考力を奪った。
 江田島の構えが、玉藻の刀がとどくはるか前で突き出される。

「気が狂いましたか江田島先生!そのようなところでは、拳が届きま――」


 彼は油断した。焦りから油断した。
 江田島の『気』が腕に収束した事に気づかなかった。
 いや、気付いたとしても、江田島はそれを放てないと思ったかもしれない。何しろその腕は、
気で防いだとはいえ、かなりの火傷に覆われているのだから。


「若人の、未来……若人の、希望……絶たせは、せぬ!!」
 だが、彼は知らなかった。
 目の前の男が何者なのか。
 何回も聞いていたはずなのに。




 彼は、若人を導く者、その頂点にいる男。
 若人を導き、若人の成長を見守る男。


 そして、若人の希望を守る漢!



「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!!」


 その叫びと共に放たれた拳、そこから放たれた、更なる拳、気でできたその拳が、接近していた玉藻を直撃した。

「なっ!!ば、馬鹿な、この、私が!!!」


 『千歩氣功拳』。その技が、玉藻の体を遥か彼方まで吹き飛ばした。

*****


「ぐっ……まだ、まだ」
 江田島は、自分のデイパックと玉藻のデイパックを拾い上げると、ゆっくりと歩き始めた。
 衣服はほとんど残っていない、裸同然。その裸の体には見るのも痛々しい火傷が広がり、背中には大きな裂傷がある。
 普通の人間なら死んでいて当然の傷。だが、江田島は歩みを止めない

「我が命……風前の灯、なれど……若人の未来の為ならば!この命、まだまだ燃やしつくそうではないか!」
 彼はまだ自分にやるべきことは残っていると思った。あの少年も、玉藻もおそらくまだ死んでいないだろう。
 それに、まだまだこのゲームに乗った悪漢はいる、彼の勘がそう言っている。




 彼は歩む。満身創痍の体。
 けれど、歩む。全ては若人の未来のために。
 なぜなら、彼は。


「わしは、男塾塾長、江田島平八である!!」


【E-5 川岸・中央部西側 / 一日目 黎明】

【江田島平八@魁!男塾】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式<江田島>、支給品一式<玉藻、地図以外>、不明支給品1~3<江田島>、不明支給品0~2<玉藻>
【状態】:全身火傷、背中に深い裂傷、全裸
【思考・行動】
1:ゲームに反抗し、若人を守る。
※ 参戦時期は、後続の書き手に任せます。
※ 江田島の傷はかなりの重傷です。放っておくと命を落としかねません。
※ 玉藻京介、銀髪の少年を危険人物として認識しました。



****

「くっ……まさか、妖狐である私が、2度も人間に敗れる、など……」
 玉藻もまた江田島ほどではないが、かなりのダメージを負っていた、なにしろ千歩氣功拳が直撃したのだ。
 妖狐といえどただではすまない。

「鵺野鳴介……江田島平八……何故だ、何故、人間はあれほどになっても、あんな力が出せる!」
 鵺野鳴介は、傷だらけの体で玉藻に立ち向かってきた。結果、彼は一旦倒された。
 火輪尾の術で試した時も、彼は生徒を守り、大きな霊力を出して術を破った。
 そして、江田島平八。満身創痍だった彼。普通ならば動けないはずの彼が、その力を発揮して玉藻を撃退した。

「知りたい…あの大いなる力の秘訣が……私があの力を、手に入れる事ができれば!」
 彼には元から興味があった。鵺野の力への興味が。脆弱で汚らわしいはずの人間が発揮した力の秘密。
 その興味は、先の江田島の力によって更に強まった。

「……すこし、方針を変更しましょうか……どの道、これでは満足に戦えない。
 回復を待ちつつ、窮地に陥った人間を観察……そして、あの力の秘密を見つけ出す!
 その後、人間の殺戮を始めましょう」
 デイパックは失ったが、地図だけは携帯していたのが幸いだった。それを広げ、潜伏する場所を探す。

「ここから近い場所は……あのビル街でしょうか」
 地図で見れば南のほうに、肉眼では左の方に確認できる大きなビル街。
 その中でも、二つのビルがくっついているように見える建物が気になった。
「都庁に似ていますが……あのような場所なら、監視カメラなども完備しているはず。
 それを掌握できれば、人間の観察も容易になる。それに、高い場所なら眼下で起こった事も見渡せる……」
 玉藻は立ち上がると、ゆっくり歩み始めた。




 玉藻は気付かない
 2人の共通項は『教師』
 そして、2人の力の源もまた、近しいものであることに


【E-3 橋の袂 / 一日目 黎明】

【玉藻京介@地獄先生ぬ~べ~】
【装備】:三代鬼徹@ONE PIECE
【所持品】:地図
【状態】:全身への痛み
【思考・行動】
1:都庁に似た建物に潜伏し、窮地に陥った人間を観察。人間の力の秘密を得る。
2:力の秘密を得た後は、人間の殺戮を開始、優勝を目指す。
※ 参戦時期は、ぬーべーを火輪尾の術で試した直後です。
※ 首さすまたがなく、自分の髑髏を取り出せないため妖狐本来の姿にはなれません
    なるには、首さすまたが必要です。



***

 時は僅かに遡る。

「あー、いったー。あのおじさん、本当凄いや。肋骨を折られるなんてネウロ以来だよ」
 川、江田島たちのいるところの対岸、そこにさっきの少年、自身の世界で怪盗サイと呼ばれる者はいた。
先の江田島の鉄拳で川にたたき付けられたサイは、激しい痛みに耐えて水中を泳いだ。そして対岸までいき、切り立った崖のようになっている川岸を
痛みに耐えつつ、その怪力で強引によじ登り、崖からあがった後、今陸地をゆっくり歩いているところだった。
 ちなみに、江田島たちがそれに気付かなかったのは、川の幅が広く対岸が遠かった事、まだ辺りが暗かった事、何より本人たちがそれどころではなかった事、が起因している。

「にしても、いつもより体が脆い気がするよ……いや、力も弱まってるし、今も回復が遅いなあ。
それでも、もう動けるくらいには治ってるんだけどさ」
 ずぶぬれで歩きながらサイは考える。自分の身に起こっていることを。

 サイにはいくつか普通の人間と違う点がある。
 まず驚異の身体能力と怪力。それはさっき、江田島平八と渡り合ったところから察せられる。
 本来なら人間の頭、体を一発で完全破砕できる。
 それで、弱まっていてなお、江田島を恐れさせる威力が出る。
 次に驚異的回復能力。その自己回復の速さたるや、銃で両足を打ち抜かれても、すぐ後には二階の窓から楽々と逃亡をはたし、
頭を銃でうたれても、腹をナイフで刺されても死なない。サイの身体はそれほどにまで強靭。だが、それもここでは弱まっている。
 それでも常人に比べれば回復は速いのだが。
「デイパックの口ちゃんと閉めといてよかったよ。水が入ったら大変だしね……ん?」
 呟きながら歩いていたサイは、前方にあるものに気付いた。

 桜。綺麗に咲き誇る桜。辺りに花びらが舞い地面を覆い尽くすほど散っている。さながら桜色な絨毯のよう。

 その絨毯の上で、少女が一人死んでいた。



 一目で死んでいると判断したサイは別に驚きも悲しみもせず、桜の花びらに既にいくらか覆われた、
どこか幻想的なその死体に近づき、その死体をまじまじと見つめた。

「普通の女の子っぽいけど、でもあのおじさんみたいに実は凄いのかも。
……ま、『見れば』わかるか」
 そう言って、サイは腕を振りかぶり、躊躇いなくその豪速の腕を少女に振り下ろした。


 もちろん、相手への言葉を忘れずに。



「あんたの中身を見せてくれ」


*****

 ボキンメキメキブシャベキピチャ
 パキンメリメリメリップチュッズパッポキッ
 ボキ   バキン   グシャッ

*****



「ちぇっ、結局普通の女の子だった。がっかりだなー」

 ミシ ミシ  メキ

「やっぱり頭を一発か。顔見知りか、あの子がよほど油断してたのか」

 ミシ ミシ  メキ

「俺みたいに速い奴かも。俺だって額に銃を押し付けるくらいできるし」

 ミシ ミシ  メキ

「火傷があったからまちがいないよね。ま、俺には関係ないし」

 ミシ ミシ  メキ

「ここにいるのって、結構凄い連中ばかりな気がする。そいつらの中身を観察すれば、俺の中身もわかるかも知れない」

 ミシ ミシ  メキ

「さて、こんな感じかな?」


 桜の木の麓、そこに少女が一人立っていた。
 黒髪のショートカットに髪留め、愛らしい顔立ちに小柄な体駆。
 それは、ここで死んでいた少女、西蓮寺春菜と瓜二つだった。ただし服だけは違う。ピンクを基調としたピンク色の女子高生制服。
 童実野高校という学校の女子用制服だった。

「俺の支給品にこれが入っていたのはラッキーだったなー。あー、あー。…声帯の感じから声はこんなものかな」
 春菜の姿をしたそれは、彼女によく似た声を出し、そして先ほどまでここにいたサイと同じ口調で話した。



 これがサイの特徴の一つ、変装能力。いや、むしろ変形能力と言った方が妥当かもしれない。
 サイは細胞の変化が著しい。先にサイが脳細胞の変化を言っていたが、それが一端。細胞は常に変化を続けている。
 更に、サイはその変化の方向性を変えることができる。それにより、自身の姿を自在に変えられる。時には140cmの老婆になったことも、
果てには犬にまでサイは変化した事がある。

 怪盗サイ。それが彼の呼び名である。ただ、これは略称であり本来の呼び名は、
 『怪物強盗X・I』
 サイの犯行は誰にも見られない。誰もその姿を目撃できない。陰も形も捉えられない。
 正体が分からない、サイの姿は『未知』である。ゆえに『X』。
 姿が見えない、サイは『不可視』である。ゆえに『Invidible』、頭文字は『I』。
 それを率直に並べて『XI』。続けて読んで、『サイ』。それが、サイの呼び名の語源。

 その理由がこの変形能力。誰にでもなれる。だから誰も目撃できない。ただそれだけ。

「口調は、まあ、その辺の女子高生のを見習おうかな。知り合いにあったら、無口でいようっと。
 それに、そうすれば相手の反応で本来の性格、口調が把握できるし」
 サイはしばらくはこの春菜の姿でいる事にした。
 理由は、このゲームの攪乱だ。サイは、他人の中身が見たい。中身を見る事で自分の中身を見つけたい。
 ここにいるのはそれにふさわしい人員ばかりかもしれない。
 かといって、全員自分の手で殺したい、というわけではない。別に彼は中身が見れればいいので、死んでいても問題はない。
 木っ端微塵でもない限り。となれば、ここにいる者をできるだけ混乱させれば、殺し合いは促進するはずだ。
「それには俺のこの能力は向いてる。なにせ、濡れ衣なんてお手の物だし。着せたい奴に化けて誰か殺せばいい。
 それに……俺にはアレもあるし」



 サイがここに来る直前、その身に取り込んだものがある。
 電子ドラッグ。ある教授が作り出したそのプログラム、それは映像プログラム。だが、その視覚情報は人間の脳に多大な影響を与える。
 脳内麻薬の大量分泌。それによる身体能力の著しい向上。
 そして一番の効果、それは人間の深層心理の犯罪願望を開放する事だ。
 たとえ犯罪者の素質がなく、良心的な人間だったとしても、そのプログラムを見せられたならば、誰でも持っているような願望が特化され、
犯罪願望となる。
 人は誰でも理性を持つ。電子ドラッグは、犯罪を抑えるその理性を完全に消し去ってしまう。そんな悪魔のプログラム。
 それをサイは脳内に持っている。そしてそれを、他人に見せて暴走させる事ができる。
 それには目を合わせてかなり相手に近づく必要があるのだが。
 これを使えば、たとえやる気のない人物でも、暴れさせる事ができる。サイはそう考えた。変身能力と電子ドラッグ。
 この2つを使い分け、殺人者を増やしていこう。そしてそれで増えた死体の中身を、自分が見る。
 生来、面倒くさがりなところがあるサイはそう決めた。


  そう考え、サイは立ち上がり、桜の下を去る。と、足を止めて振り返った。そして笑顔で言う
「せっかく中身を見せてもらったし、サービスであんたの姿を借りさせてもらったよ
 名前も知らないけど……ありがと。じゃあね」
 そう言って、前を向くと、今度こそその場から去った。



 後に残されたのは、桜色の絨毯と、その上に乗る……『箱』。
 それは確かに『箱』だった。立法系の形に、さっきまでサイが来ていた布が包んでいる。一体それは何か。
 サイの支給品か?いや、違う。




 最後に、サイの犯行について記述しよう。
 強盗、と呼ばれるからには何か盗み、怪盗と呼ばれるからには高価な美術品などを狙うと思うだろう。
 確かにサイは芸術品を盗む。だが、それだけではない。芸術品が盗まれたところから、さらに1人、
人間が消えるのだ。
 それだけではない。後日、その現場にあるものが届く。それが『赤い箱』。
 ガラス張りで立方体のそれは、赤いとしか言いようがなく、ただただ赤い。
 一体、それはなんなのか……ヒントは、その箱の重量。

 その箱の重量は、ガラスを除けば攫われた人間とほぼ同じ。
 更にヒントを言えば、細胞のDNAも完全一致する。
 ここまで言えば、もう言うまでもない。

 届く箱とは、攫われた人間そのものであり、人間がサイにより破砕され、箱に圧縮され成り果てた姿なのだ
 サイは人間の中身を見たい。余すところなく見たい。だから箱を作る。上下左右前後から見れる『箱』。
 その為にサイは人を『箱』にする。
 これがサイの犯行の全容である。



 花びらが、箱になりはて、布に覆われた『西蓮寺春菜』の上に積もっていく。
 たとえ知り合いがそれを見つけても、彼女と気づく事は、まずないだろう。


 花びらは、それを哀れむかのように、まだまだ舞い散っていた。

【E-5 桜の木の下 / 一日目 黎明】

【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め
【所持品】:支給品一式 不明支給品(0~2)
【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能)
【思考・行動】
1:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。
2:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。
※ 参戦時期は、HALⅡからHALの目を得た直後です
 故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、
 制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、
「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。
 サイはまだその制限を自覚していません。
※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。
※ 春菜の名前を知りません
※ 江田島平八を『凄い奴』と認識。

※E-5に、サイが着ていた布と、箱状に圧縮された春菜の肉塊が放置されています


024:小さな勇士 投下順 026:恐るべき妖刀
023:聞く耳持ちません 時間順 026:恐るべき妖刀
初登場 江田島平八
初登場 玉藻京介
初登場 XI 029:想い人