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神への道



「夜神さん……俺、実はあの部屋のこと少しだけ知ってるんです」

僕の前を歩いていた加藤が、足を止めもせず唐突に言った。
僕は自分の耳を疑う。
あの部屋――おそらく、首輪が爆発して男が死んだあの部屋のことだ。
僕と加藤の共通する『あの部屋』といえば、あそこしかない。
何故この男がそんなことを知っているのか……。どうしてこいつが……。
思索の奔流が押し寄せる。
目の前をゆく男が急に怪しく見えだす。
加藤がなにを知っているのか、どの程度のことをわかっているのか、興味が湧いた。
情報はなににも勝る武器になる。加藤の知るすべてを聞き出したかった。

「あの部屋というと、最初の『あの部屋』のことかい?」

白々しい問い。
なにを知っているのか早く聞きたかったが、がっついていた姿は見せたくない。
かといってあの部屋に興味なさげでは不自然にすぎる。
僕はいぶかしまれないよう、自分の身に起こったことを案じる保守的な姿勢で加藤に接する。
擬態はお手のものだ。

「ええ、黒い球のあった、あの部屋のことです」

加藤は視線を前に向けたままだった。
その様子からいくぶん緊張しているようにも感じられた。
頬を汗が流れ、鼻息が荒くなっている。脈拍が上がっている証拠だった。
嘘をついている――はじめはそう思った。
だが違う。こいつは嘘は言っていない。そんなに器用な奴でもないはずだ。
緊張してるのは僕にこの話をするべきかどうか悩んでいるからだろう。
察するに言えない事情があるか、または言っても信じてもらえないと思っているか。
いずれにしろ話を聞かなければ先には進まない。
僕は疑って掛かることはせず、加藤が話しやすいように声のトーンを和らげて続きを促した。


「加藤くん、その話、詳しく聞かせてもらえないかな」
「……その前に、夜神さんは死んだことがあるって言いましたよね」

加藤はまたも唐突だった。
死んだかだって? ――ああそうだった、確かにそう言ったっけ。
咄嗟に口から出たデマカセだが、なかなか傑作だ。
僕がどう答えたものか窮していると、すぐに加藤が言葉を継いだ。

「すいません。こんなこと、あまり思い出したくないですよね。
 ただ、もう一度確認しときたくて。夜神さんも死んだことあるんですよね?」
「なんだか怖いな。さっきのあの部屋の話と、なにか関係あるのかな」
「関係あります」

益々意味がわからない。こいつは正気だろうか――。
僕は加藤を見据えたが、彼が発狂してる風はなく、例の真っ直ぐな瞳を前に向けていた。
仕方なく、加藤の話に付き合ってやる。

「そうだ。僕はLに殺された。真相に近づきすぎたんだ。
 ……でも、本当は死んでなかったんだろう。そんなことあるわけがない。
 きっと色々あって疲れていて、それでそんな夢を見のさ。
 ここには薬でも嗅がされて連れてこられたんだろう。そうだ、だから僕はこうしてここに――」
「違うんだ!!」

加藤は複雑な表情をして怒鳴った。
感情の起伏の激しい奴。加藤の本質――御しやすい。

「違う? なにが違うって言うんだい」
「それは……」

煮え切らない、もどかしい間がある。
加藤の持つ情報が堪らなく欲しかった。


「なあ加藤くん、ちょっと話が見えないな。
 できれば順を追って説明してくれると助かるんだけど」

加藤は一層複雑な表情をし、森の真ん中で足を止めた。
この辺りなら誰かが来る心配はないだろう。
加藤はどこから話していくべきか、それを考えている様子だった。
僕は加藤の頭の整理がつくまで黙って待った。
森は深く暗く、沈黙しているとそのまま茫漠とした闇に溶けてしまいそうだった。
五感が研ぎ澄まされる。頭がどんどんクリアーになっていく。
Lとの知恵比べにも今なら負ける気がしなかった。
やがて加藤がおずおずと口を開いた。

「俺も……死んでるんですよ。電車に轢かれて」
「なん……だって……?」
「死んだんです。電車に吹き飛ばされて自分の身体がバラバラになるのを、
 俺は薄れていく意識の下で見てました」

どうリアクションをとればいいのか――。
嘘をついているわけでもない。おかしくなったというわけでもない。なら……。
僕は加藤という男がわからなくなっていった。

「ははは、冗談だろ? そんなわけ……」
「…………」

加藤はなにも言わなかった。
……なるほど、こうなることがわかっていたから言い淀んでいたんだ。
どうせ信じてはくれないだろうと。おかしな奴だと思われるだろうと。
しかし、そう思われるのを承知で僕に打ち明けたということは、そこに意味があるからだ。
やはり加藤の言うことが真実だということになる。
一度死んだ人間がこうして目の前にいるのを信じるべきか――いや、待てよ……。

Lだ……。Lがいる。
レムに殺されたはずのLが生きてたじゃないか。あの部屋にいたじゃないか。
加藤とL――。死んだ人間同士――。繋がりはある。
犯罪者達の持つ説明のつかない力の秘密が垣間見えた気がした。僕は益々それが欲しくなる。
このまま僕も死んだことにしておけばもっと面白い話を聞けるかもしれない。
僕は思いきり笑い転げたくなった。

「信じられないと思いますが、俺達は本当に死んでるんです」
「死んでる……嘘だろ……。でも現に僕はこうして……。
 ――いや、どうやらその様子じゃ嘘を言ってるわけでもなさそうだね。
 加藤くん、君の知ってることを僕に話してくれないかな?」

我ながら名演技じゃないか。
今にも泣き出しそうなこいつの顔。――駄目だ、おかしくて堪らない。
僕の境遇に立ち、僕を憐れみ、そして僕のために涙を流そうとするなんて、つくづく愚かな男だ。
しかしこういう質の男だからこそ、僕が思うように動かせるというもの。
馬鹿に感謝しなければ。

「わかりました、夜神さん。俺の知る範囲でお話しさせてもらいます」

腹の中での哄笑がやむことはない。
僕らは近くに聳え立つ老杉の根元に場所を移すことにした。


   ◆ ◆ ◆



加藤の話はさすがの僕を驚かせるに充分だった。
死んだ特定の人間があの部屋に集められること――。
黒い球体は『ガンツ』と呼ばれていること――。
ガンツは死人達を『せいじん』と称される怪物と殺し合わされること――。
加藤はそのミッションに何度か参加させられていること――。
その他ガンツミッションの細かいルールなど諸々――。
普通ならどれも信じられる話じゃなかった。安っぽいSFでももう少し説得力がある。
だが、死神の存在やデスノートの力を知っている僕にはわりと受け入れやすい話でもあった。
死神がいるんだから死人を呼ぶ球があってもおかしくないし、怪物だっているだろう。
それに加藤の言う通りなら、Lが生きていたことも説明がつく。
加藤の語るところを疑う理由はどこにもなかった。
ただ、気掛かりなこともある。
加藤によると今回のミッションはこれまでと大分違うらしい。
これほどまでに大人数が集められたことは曾て一度もなかったというし、
また、ガンツ以外の介入者が関わってくるのもはじめてらしかった。
なにより対戦相手がせいじんではないというのが一番大きい。
個々に武器を取り、そして殺し合う――。
なにかが違い、なにかが狂っている。
加藤はそこまでを捲し立てるように一気に語ってくれた。
この収穫は大きい。
どうあれこの話からわかるのは、今回の件にはやはりガンツが関わってるということだ。
ガンツがなんであるか加藤も詳しく知らないらしいが、
それでもこの情報を持っているのは少なからずアドバンテージになるだろう。
僕は全部を聞き終えた上で意味ありげに頷いて見せた。

「突飛な話……だね」
「信じてもらえますか?」
「そうだな――俄には信じられないけど、信じないわけにはいかない……ってところかな」


一体ガンツとはなんなのか。あの壁を食らう男は。この殺し合いの意味とは。僕がここにいる理由は。
――知りたいことは山のようにあった。
Lの顔がちらつく。
あいつに勝ちたい。あいつを消したい。あいつを殺したい。
だが、それにはまだまだ情報が足りない。
すべてを僕が掌握するには知らなきゃならないことが多すぎた。
僕は加藤に言う。

「まだ頭が混乱してるけど……話してくれてありがとう。
 君のお陰で朧気ながら状況が見えてきたよ」

根本の部分はなにも解決していなかった。
この首輪の外し方もわからなければ、ここからの脱出法も、
黒幕と考えられるガンツやカバ男から力を奪い去るやり方も、
Lの殺し方や、ひいては僕が神になる方法まで、まだ濃い霧の中にある。
それでも視界が少しはひらけてきた気がする。
要するにガンツがすべての鍵なのだ。
そして加藤――馬鹿正直で単純で、ガンツをよく知る男。御しやすい男。
使える。こいつは使える。
これが新たなガンツのミッションと仮定するならば、この男ほどの適任はいないだろう。
僕はこの男といる限り安全を保証されたようなものだった。
この男と行動し、利用し、身を守らせればそれでいい。僕はLについてだけ対処していける。
もうすぐだ――もうすぐLを抹殺できるかもしれない。
笑いが込み上げてくる。


「これからどうしますか」
「これからか……。やっぱりLを放っておくことはできないな。
 どうにかして奴を止めたい。いや、止めなければならない」
「そうですね」
「それと、Lの他にも犯罪を犯そうとしてる奴がいないとも言い切れない。
 そいつらを止め、罪のない人達を守らなければ」
「はい、俺もそう思います!」

ちっぽけな正義感をくすぐってやるだけで僕の言いなりか。
まるで犬だな。ご褒美に尻尾を振って喜んでいるかのようだ。
滑稽な奴――。お前みたいな善人ぶった奴がいくら頑張ろうと、この世の悪はなくならないんだ。
正義を押し通そうと思うならば、僕のように犠牲を惜しまない崇高な志を持つべきだ。
その志がなければ、それはただの偽善にすぎない。
加藤、お前はなにも理解していない。身の程をわきまえろ。

「となると、やはり人を集めるのが先決だろうな。
 加藤くん、この地図を見てくれ――」

僕は地図を広げ、懐中電灯で手元を照らす。
背の高い加藤は腰を縮めて覗き込んだ。

「いいかい、おそらく僕らはこの辺りにいる」

懐中電灯を加藤に渡してから地図の左上を指でなぞった。
A-2を中心に広大な森が広がっている。

「この森がたぶん僕らのいるところになる」
「確かですか?」
「正確なことは言えないがね。でも間違いないだろう。
 僕らは砂漠のような砂地を突っ切ってきたし、地理的に該当する森はここだけだ。
 まあもっとも、それはこの地図が正しいものであるとした場合の話だけどね」


加藤は僕の説明に耳を傾けている。
もし仮にまったく見当外れな説明をしたとしても、こいつは僕を疑いすらしないだろう。
造作もない。面白味もない。
頭の中にまたLの顔がちらついた。
Lとの戦いを渇望している僕と、Lとの決着を切望している僕。
一体どちらが本当の僕なんだろうか。――きっとどちらも僕の本音なのだ。

「加藤くん、人が集まりそうな場所はどこだと思う?」
「人の集まりそうな場所……。やっぱり街とか……」
「そう、街や村――建物の多いところだろうね。
 建物が多ければ隠れる場所もあり、なにか使えるものが手に入ると考える人は少なくないはずだ」
「なら俺達が向かうところは……」
「街だ。それも中心地を目指そう」

中心を目指すのに確たる意味はない。街ならどこでもよかった。
強いて理由を作るなら、そこが一番栄えていそうだからだ。
一人でも多く、そして一分一秒でも早く僕の手足となる兵隊を作るなら、
少しでも人の集まる可能性に賭けるべきだった。

「近くに病院らしいところもありますね。腕の手当てができるかもしれない」
「すまないね、面倒を掛けて」

そんなこと気にしないでくださいと、加藤は大きな声で言った。

「そうとなったら急ごう、加藤くん。こうしてる間にもLが誰かを襲っているかもしれない」

加藤に右手を伸ばし引っ張り起こしてもらった。
僕は刀を持った忠実な犬を連れて、覇業に向って歩き出した。

【A-2 森 1日目 黎明】

【加藤勝@GANTZ】
【装備】:雪走@ONE PIECE
【所持品】:支給品一式 不明支給品0~2(本人確認済み)
【状態】:健康 Lへの怒り
【思考・行動】
1:島の中心部を目指す
2:GANTZに反抗し、ゲームを脱出する
3:月と一緒に、反抗者を探し仲間にする
4:月を信じる
5:襲撃者はできれば殺したくない

※参戦時期は、おこりんぼ星人戦で死亡直後です

【夜上月@DEATH NOTE】
【装備】:スペツナズナイフ@現実 手榴弾@現実
【所持品】:支給品一式 手榴弾×4 不明支給品0~1
【状態】:健康 左肩に浅い切り傷
【思考・行動】
1:優勝して、主催の力を手に入れる
2:反抗者グループを作りマーダーを打倒、その後グループを壊滅させる
3:L=キラ、という悪評を広める
4:加藤は利用するだけ利用する
5:島の中心部を目指す

※参戦時期は第1部終了直後です


027:二人の武道 投下順 029:想い人
026:恐るべき妖刀 時間順 029:想い人
013:しんせかいの かみ 夜神月 034:夜の海に加わる渦巻く影
013:しんせかいの かみ 加藤勝 034:夜の海に加わる渦巻く影