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鬼女 が 生まれた 日




 -私が教室の隅っこで、絵を描いていたとき。

『あの……さ……』

 -それが、始まりだった。

 *****


 ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
 それは砂の上に落ちて、鮮やかな染みを作っていた。

 ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
 背中に空いた穴、そこから血が流れ出る。

 ぽたり、ぽたりと血が落ちる。
 それでも彼女の足は止まらなかった。


 *****


 -彼に呼ばれて、校舎の一角で向かい合った時。


『俺……と、付き合ったりとか……はは。だめだよね……』


 -それが、彼との交際の始まりだった。



 *****


 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。


 背中が痛い。背中が痛い。背中が痛い
 背中に空いた、傷が痛い


 顔が痛い。顔が痛い。足が痛い
 ここまで砂の中を歩いてきた、足が痛い。


 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
 それでも、彼女の足は止まらない


 *****


 -教室が、あっという間に地獄に化した時。


『立てるか? 逃げなきゃホラ!』


 -それが、彼と私の逃亡の始まり。



 *****


 ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
 歩けるようになっても、どうしても鈍いところがある。


 ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
 滴り落ちた血が、奇妙なシュプールを砂に描く。


 ずるずる、ずるずると片足を引きずる。
 彼女が歩みをやめないから。


 *****


 -変な怪物が私に襲い掛かってきた時。


『!!』


 -それが、彼が私を守ってくれた、始まり。



 *****


 どくどくと、どくどくと音がする。
 顔に刺さった何かから音がする。


 どくどくと、どくどくと音がする。
 自分が付ける仮面から伸びた、何かから音がする。


 足りない、足りない、足りない、と声がする。
 だから彼女は歩き続ける。


 *****

 -彼が不良たちに連れて行かれるとき。


『大丈夫だからっ!!大丈夫』


 -それが、私が彼の身を案じた、始まり。



 *****


 ぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたりぽたり。
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
 ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる。
 どくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどくどく。
 足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。




 見つけた。


 *****

 -彼が大男に向かっていった時。


『うオオオオオオオッ』


 -それが、私が彼の強さを見た、始まり。



 *****

 それは本能に任せての事。


 首にズブリと牙を立てた。
 それだけでは満足できず、両手を相手の胴に突き刺した。


 ズキュン、ズキュン


 抜けていく。抜いていく。
 満たされる。自分が満たされていく。


 塞がっていく。自分の傷が、塞がっていく。

 既に命なき死体の血でも、傷が塞がるには十分だった。

 *****


 始まって、そして今がある。

 今、私は、彼が――


 大好き。



 *****


「はぁ……はぁ……助かった…」
 私は思わずそう口にした。だって実際そうなのだから。

 背中をまさぐる。服に穴が開いたままだけど、そこから突っ込んだ指で肌を探っても、さっきまであった穴はもうなかった。
 塞がったんだ。傷はもう塞がった。もう血は流れない。さっきまでみたいな激痛もない。
 私は、助かったんだ。
 嬉しい。よかった。よかった……。


 そこで気付いた。
 喜んでなんて、いられない。

 自分を容赦なく撃った、あの男。
 酷い。酷い。酷い。
 笑って人を撃つなんて、ひどい人。
 悪人。あの人は悪人だ。悪い人だ。なんて人だ。
 あの人はきっとこれからも笑って人を撃って殺すんだろう、私みたいに。

 脳裏に浮かぶビジョン。さっきの男が逃げる人の背中に笑いながら銃を撃つ。
『あーっはははははは!』
 ひどい、相手の人がかわいそう。私のように、騙されて撃たれる人。

 黒い学ラン、黒い髪。端正な顔立ちのその人……。



 計、チャン?




 気付いた。気付いてしまった。
 計チャンが、危ない。


 計チャンが強いことは知っている。でも、それでも不安が消えない。
 あの男以外にも、ここには『酷い人』が多い気がする。
 『さっきの』だってそうだ。胸に傷があった。あの男じゃない。きっと別の誰かがやったんだ。


 計チャンが撃たれる姿が目に浮かぶ。頭が吹っ飛んで、脳みそが宙を舞う。
 計チャンが刺される姿が目に浮かぶ。胸を貫かれて、そのまま体を切られてしまう。
 計チャンが潰される姿が。
 計チャンが殴り殺される姿が。
 計チャンが焼き殺される姿が。
 計チャンがバラバラになる姿が。




 嫌だ!嫌だ!
 そんなの嫌だ。
 計チャンを、私の大事な人を、あんな奴らに殺されたくない。
 嫌だ、嫌だ、そんなのは嫌だ。

 彼は私の大切な人。
 私に光を与えてくれた人。
 私を守ってくれた人。
 私に笑顔をくれた人。
 私は彼を失いたくない。



「しんじゃ嫌だよ、計チャン…」



 涙が流れる。
 でもどうすればいい。
 ここにいっぱいいる『酷い人』たち。
 その人たちに計チャンが殺されないようにするには、どうしたらいいの?
 私に何ができる?




「あ」



 なんだ、簡単だ……。


 殺せばいいんだ。計チャンが殺される前に、『酷い人』をみんな私が殺せばいいんだ。
 そうだ、簡単な話だったんだ。
 いつも彼に守られていた、弱い私。でも今の私は違う。
 もう、外れていた石の仮面。多分これが私に力を与えてくれた。それがなんとなくわかる。これは、本能、なのかな。
 近くにあった『ゴミ』を掴む。私の栄養の搾りかす。既にやせ細ったそれを、腕に抱える。



 あっという間に折りたたむ。それほどまでに私の腕の動きは速くなってる。
 残った骨が合わせた腕の中で粉になるのが分かる。腕の力も増している。
 残った頭を片手に掴み、握り締める。頭蓋骨はあっさりと砕け散り、かさかさの皮と肉が手にこびりつく。
 その手を近場の壁に叩きつける。壁は砕け散り、一緒に肉と皮も飛び散った。

 凄い。凄い。
 今の私なら、あの高笑いの男もあっという間に倒せるかもしれない。
 いや、倒せる。銃弾なんてもう怖くない。握って壊せばいい。

 私なら、『酷い人』を全員殺せる。計チャンが殺される、その前に。早く。


 だけど、どうしよう。
 あの男も最初は友好的だった。きっと『いい人』のふりをする『酷い人』もいっぱいいる。
 どうしたらいいだろう。それじゃあ、私は騙されちゃうかもしれない。
 どうしよう……。


「あ、そうか」




 みんな殺せばいいんだ。


 私と計チャン以外、みんな殺せばいい。
 そうすれば『酷い人』は間違いなくいなくなる。
 よかった……一時はどうしようかと思った。

 最後は私と計チャンと二人きり。
 あの人は、最後に残った1人を元の場所に返してくれるはずだ。
 ……一緒に帰りたい。一緒に帰って、二人で暮らしたい。
 あの部屋で、二人でおきて、二人で朝食を食べて、二人で出かけて……。

 でも、駄目。
 だって、計チャンにはしんで欲しくない。
 だから、私は自殺しよう。
 全部終わったら、私が死ぬ。それで計チャンが残る。それで計チャンは生き残る。そして元の場所に帰れる。

 大丈夫。計チャン良い人だから、きっとまたいい人が見つかるよ。
 私が隣にいたいけど……でも、しょうがないよね。
 我慢、しなくちゃだめだよね。
 わたしの幸せより、計チャンが幸せになってくれた方が嬉しいから。

 涙が流れた。
 ないちゃ駄目だよ。
 ないたら、決意が脆くなっちゃう。


 計チャン、生きて、おねがい……。
 私は、一緒に行けないけど、ごめんね。



 *****

 すこし後、私は近くの駅の中に潜んでいた。


 あの後、私は脚力も試してみた。
 やっぱり、足は速くなり、蹴った壁もスポンジみたいに簡単に壊れた。

 だけど、そこで予想外な事が起こった。
 夜が明けてきて、差し込んできた日差し。それを受けた私は、途端に体に熱さを感じた。
 苦しみ。焼けるような熱さ、何かが失われる感覚。私は、がむしゃらに地面を蹴って、この駅の窓ガラスを破って飛び込んだ。
 日陰に入ると、苦しみは消え、私は安心した。

 吸血鬼。
 その言葉がやっと私の脳裏によぎった。
 私はさっき、血を吸った。それにより傷は治り、強靭な肉体を得た。
 まさに吸血鬼そのものだ。
 となれば、さっきの私の苦しみも説明がつく。
 吸血鬼は日光を嫌う。吸血鬼のセオリー。他にもにんにくとかあるけど……どうなんだろ?

 ともかく、夜が明けたら私は迂闊に外に出られない。
 もたもたしていられないのに。でももう外を出歩くわけにはいかない。
 一体どうしたら……。


 そうだ。ここは駅なんだ。
 飛び込んだところは改札よりも中、すこし進めばすぐホームがある。
 ホームの近くには線路も見える。



 ということは、電車も走っているかもしれない。
 電車の中なら、日が強くなければ物陰に潜んで日を避けられる。少なくとも、上からの日光は防げる。
 それに、電車ならば移動も容易だ。
 私は早く行動しなくちゃいけない。早く計チャン以外を全員殺さないといけない。
 それには速い移動手段が必要、だと思う。少なくとも物陰に隠れながら歩くよりはいいと思う。
 地図を見ると、線路は山手線みたいに輪になっていて、駅はここを入れて3つある。
 電車に乗って、外をなんとか見れば、線路沿いの範囲は大体見ることができるはず。
 もし、相手を見つけたら近場の駅に潜んで、近くを通るのを待つ。
 本当は直接向かいたいけど、昼間のうちは難しそう。だから、昼間のうちは隠れて潜む。そして、相手が近づいてきたら……
 私はデイパックからあるものを取り出した。

 奇妙な形の銃。前に計チャンが持っていたのに似ているが、アレよりずっと大きくて長い。小さいモニターがついていて、説明書によるとこれで相手をターゲットするらしい。
 上トリガーでロックオン、下トリガーで、撃つ。
 試し撃ちをしたら、すこしタイムラグの跡に壁が吹き飛んだ。すごい、銃よりも凄い。だって銃弾なんてないんだから、避けようがないんだ。
 しかも、どうやら射程はかなり長くって、500mまで撃てるらしい。まるでスナイパーだ。ドラマのシーンが頭によぎる。
 建物の中に潜んで、相手が来るのを見計らうスナイパー。私はそんな風に潜むんだ。
 電車内から撃って当たればいいんだけど、さすがに猛スピードで走ってる電車の中から撃って当たる自信は、素人の私にはない。
 だから、電車で敵を探して、駅で敵を待つ。そうやって夜までにこの辺りの敵を一掃したい。
 夜になれば……私は自由に歩いていける。
 神様……計チャンがどうか夜までに無事でいますように。


 そう考え、私は日光の入らないところで、電車を待った。


 計チャン。
 弱い私を守ってくれた人。
 今度は私があなたを守るから。
 ちょっと怖いけど、でも、計チャンの為なら……私、頑張る。
 もし、最後にあなたと2人きりになれたら……あなたの絵を、描きたいな。
 いい絵の具を見つけたの。紅くって、綺麗で、おいしい絵の具。
 それであなたを描いていいかな?
 駄目だったら、いいんだけど……。
 でも、できれば描きたいな……。
 だから、安心して、計チャン。


 みんな、私が殺すから。
 わたしが、計チャンを、守るから。



【C-2 駅/ 一日目 早朝】
【小島多恵@GANTZ】
【装備】: Xショットガン@GANTZ 日本刀@るろうに剣心
【所持品】:支給品一式<沖田> 石仮面@ジョジョの奇妙な冒険 未確認支給品0~1<沖田>
【状態】:吸血鬼 健康
【思考・行動】
1:玄野以外の人間を殺害し、自分も自殺して玄野を生き残らせる。
2:電車が着たら乗り込み移動。敵を探し、見つけたら近場の駅に潜伏する。夜までこの繰り返し。
3:日差しを避ける
※ 吸血鬼@ジョジョの奇妙な冒険 になりました。身体能力の向上、吸血による体力回復の能力が備わりました。
    日光への耐性は強化されており、20秒程度は活動が可能です。また、性格もやや邪悪になっており、
    玄野以外の人間への思いやりが欠落しています。
    本来は血を吸った相手を屍生人に変える能力もありますが、少なくとも既に死人だった沖田には効果がありませんでした。
    生者への効果は不明です。
※ 沖田のデイパックを回収して使っています。
※ 電車が動いているのか、動いているとしたら、どの程度のサイクルで動いているのかは、後続の書き手の判断に任せます。

※ A-1からC-2にかけて、血痕が残っています。

※ C-2に血を吸われてひからび、破砕された沖田の死体が放置されています。
※ C-2に壁を壊された建物がいくつか見られます。


030:ヒソカの性欲×1stステージ×桃の決意 投下順 032:探し人
027:二人の武道 時間順 035:業を負いし者
014:全速前進吸血鬼 小島多恵