炎の8週間

710 名前: NPCさん 05/03/09 03:30:55 ID:???

困ったちゃんがいなくなった翌日、私は妻とともに散歩に出かけた。もう冬だというのに木は青々としている。
人々の表情は希望と活気に満ち、額から流れる労働者の汗が太陽光を反射していた。
「人間が憎しみあう時代は終わったのだな」
昨日まで無敵アイテムに身を固めていたアップルちゃんが、ほっとしたように私たち夫婦に言った。
「ええ、これからは人が人を支え合う時代なんですよ」           
普段は滅多にゲームに加わらない固定値9の先輩が、アップルちゃんの肩に手を置いて優しく言った。
「人という字を御覧なさい。二本の線がお互いを支え合っているじゃないですか」
通りがかりの髪の長いルーチェ・クラインがそう言って微笑んだ。
千早神牙は長年使ってきたキャラクターシートを破り捨て、黒光りする鍬を購入した。
「NOVAはもう不要だ。これからは日本中に鍬の音を響かせよう」
一仕事終えた農夫の表情で男は言った。
青空の下をムギャオーが横切っていった。


732 名前: 54スレの348 05/03/10 22:08:06 ID:???

>>710氏リスペクトでちょっと書いてみました。長文ごめんなサイ。

数々の悲劇を生み出し、多くのコンベンションを焼き尽くした「炎の8週間」から2年・・・・
世界は復興に向け歩みつつあった。
だが、ささやかな平和の中で、力を取り戻していたのは荒れ果てたサークルだけではなかった。
困ったちゃんもまた、人知れず牙を研ぎ続けていたのだ。

闇の中を駆け抜けていく一組の男女。
男は左肩から血を流し、女は無傷ではあるものの、二人とも返り血と煤にまみれていた。
ザ、ザザー
『これを聞いている同志諸君へ。われわれレジスタンスは今人格優良師範の矯正部隊の攻撃を受けている。
サークルの消滅は時間の問題だ。私は敵部隊を可能な限り引止める。サークル各員、生きて脱出せよ。
これを聞いている同志諸君へ・・・・』
無線機はさっきからずっと同じ内容を繰り返している。

「全ての女性に優しい卓ゲを」をモットーに感痴☆害紳士が大総統に当選したのが1年前。
人々は新たな時代を予感し、明るい未来に胸膨らませた。が、「新たな時代」はまったく逆の方向で到来する。
女性オンリーコンに、大統領じきじきに乗り込み、気に入った女性をお手つきにする。どこのAVを参考にしたのかも
わからない、俗悪なプロパガンダ。大総統の目にとまり、引き裂かれたカップル数知れず。
大総統は、逆らう者には「人格矯正部隊」を派遣し、徹底的に弾圧した。
女性は「女狩り」を恐れて外出しなくなり、人々は地下サークルを組織し、レジスタンス運動が各地で興った。


733 名前: 54スレの348 05/03/10 22:09:26 ID:???

「アブドバ、アブドバぁ・・・・」
「泣かないでください、あなたが奴の手から逃れることこそがアブドバさんの望みだったんです!急いで!」
追っ手をひとまず振り切ったのを確認し、無人の夜の公園で小休止をとる。以前は治安もよく、多少遅い時間でも、
レストランでささやかなディナーを楽しんだ帰りの親子連れや、人目をはばからず愛を語らうバカップルにあふれ、
公園から人気がなくなるという事はなかった。だが、いまは誰もいない。一組の逃亡者を除いて。
「もうここまでくればしばらくは安心のはずです」
「・・・・ごめんなさい、取り乱しちゃって。もうだいじょうぶだから、ね?」
(大丈夫なわけあるかよ・・・いきなり恋人が目の前でぬめを撃ち抜かれたんだぞ?くそっ奴ら容赦ねぇ!)
夜の公園を沈黙が支配した。

「・・・ねぇ、これからどうするの?」
沈黙を破ったのは女だった。
「みんなと、アブドバさんの仇を討ちます。あいつら、絶対に許さない!」
「やっぱり!だめよ、そんなこと!キミも言ってたでしょ?アブドバだってそんなこと望んじゃいないわ!」
「でも!」
「デモもストもないわ!これは先輩命令です!敵討ちなんてダメ!」
『アー、アー、キミたちは包囲されてますから!残念!無能不穏分子斬り!!』
「しまった、もう見つかったのか?!早すぎる!」
いつの間にか公園はお茶かけ侍に包囲されていた。上空を夜間哨戒用太史慈が飛んでいる。
お茶ブッかけフロストジャイアントもエストリガーだ。


734 名前: 54スレの348 05/03/10 22:10:45 ID:???


「(いい?よく聞いて。包囲を抜けて、身の安全を確保したら今私が渡した紙に書いてあるサークルに連絡して。そこ
ならキミもうけいれてくれるわ)」
小さくたたんだ紙を男の手に押し込みながら女が鋭くささやいた。先ほどまでのしょぼくれ様はどこにもない。いつもの
はつらつとした、彼の憧れだった女性が戻ってきていた。
「(まさか、一人で残るつもりじゃないでしょうね?だめです!)」
「(安心して。命を捨てたりはしないわ。1、2、3で、二手に分かれて振り向かずに走ること!紙に書いてある連絡先で
落ち合いましょう)」
『大統領の暖かいお慈悲を理解できないなんて反逆者はかわいそうですね~素直に投降しましょうね~』
包囲網がじりじりと狭まってきている。
「(1、2、3!)」
合図とともに彼は左方向、彼女は右方向へ駆け出した。だが、フロストジャイアントを突き飛ばし、茂みに駆け込んだ
ときに彼は聞いてしまった。
「私はここよ!捕まえられるものなら捕まえてみなさい!」
バカな!振り向くと、彼女はわざわざ開けた場所を、追っ手を挑発しながら走っていた。一瞬、二人目が合った。
かなり距離があったのに、彼には、彼女の口が、小さく「ごめんね」と動いたのがなぜか分かった。
「いたぞ、こっちだ!!」
彼は振り向かずに走った。心の中で別れを告げ、もう二度と振り向かなかった。


ごくありふれた弱小サークルの崩壊から3ヶ月。あらたな戦いが始まる。


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長々と失礼しました。彼女と彼の名前がないのはNPCだから、ということで。



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