1.M&Aの実務と企業価値の算出方法
参照:本書、PART4(P.117~196)
1.1. 株式市場の評価に耳を傾ける
自社の株価をチェックして経営課題を探る。株式が低迷している場合、市場が経営課題を認識していると考えられる。とくに著名なアナリストのレポートによって株価は影響を受けることがある。日頃のIR活動から投資家の声をチェックし、日々の経営課題を認識しておくべきである。株価を見る際には、相場全体や業界全体の平均と比較して判断する。テロやバブル崩壊など、特殊な要因で相場が下がっている場合や、業界全体が構造不況に陥っている場合は必ずしも自社が低い評価を受けているわけではないから。
次に買収対象の検討をする。自社の事業内容と買収企業の事業をよく分析し、シナジー効果の高いM&A戦略を考える。シナジー効果とは1+1が2になることにとどまらず、3、4になるようなメリットであるとよく説明される。具体的には下記のようなものがある。
・複数の企業が統合することによって規模の経済(スケールメリット)が働き、原材料コストなどが下がる。
・お互いの商材を相互に販売(クロスセル)することにゆおおって収益機会の拡大につながる。
・企業の弱点を他方の企業の強みが補うことによって事業基盤を強くする。
上記のようなシナジー効果の実現こそがM&A成功のカギ。どんな分野でどのようなシナジー効果がどのくら実現する可能性があるのか十分に考慮する必要がある。実務では、SWOT分析をおこなって、どのようなシナジー効果があげられるのか検討したりするらしい。
シナジー効果を分析し買収する企業が決定したら、(買収後の)事業計画の前提となるシナリオを作成する。どんなにデータを集め、分析を重ねても、将来は予測不可能である。様々な状況を想定して、楽観的、実現的、悲観的など複数のシナリオを作成する。このシナリオをもとに、予想売上高、予想営業利益、予想フリーキャッシュフロー、などを計算して、事業計画を考える。このように複数のシナリオを作成しておくと、売り手の交渉の際に
妥協するべき点、しない点が明らかになり、交渉も進めやすくなる。
1.2. DCF法による企業価値評価
事業計画を策定した後はいよいよ企業価値をもとめることになる。一般的にはDCF法で算出。DCFを算出する際に必要な数字は下記の3つだけである。DCF法については、松村先生の授業でさんざんやったので割愛。
・将来キャッシュフローの見積もり:将来の市況、競合状況、人員計画、設備投資計画などから、現実性の高い将来キャッシュフローを見積もる。
・割引率を設定する(不確実性を見積もる):企業特有のリスクを勘定して割引率を設定。具体的には、国債やほかの株式と比較して、どれだけ不確実性が高いかを加味する。
・永続価値を見積もる:通常5~10年スパンで分析する。ある仮定をおくことで、予想期間以降の永続価値を計算する。
1.3. DCF法を用いて実際に企業価値評価をおこなう
実際の財務数値をつかっての計算の仕方のケースタディなので割愛。
1.4. 買収効果をどのように測るか
(株主にとって)良い買収とは、つまり一株当たり利益が増える買収である。通常M&Aをする際、対象となるのは利益の出ている企業または、将来利益を生み出す企業なので、現金買収の場合、単純に利益は増える。ただ株式交換や合併の場合、発行株式数が増加して、EPSが低下する場合があるので、注意が必要。
1.5. PERやEDITA倍率(マルチプル)による検証
DCF法の妥当性を検討するために、PERやEBITA倍率(いわゆるマルチプル)で検証をする。これらの指標を使用する理由は、”相場観”から見て、その買収価格が高いか安いか判断するためである。
(補足説明)俺もまだちゃんと理解してないので質問禁止(苦笑)
EBITA:「営業利益+減価償却費」
企業価値=EBITA×EDITA倍率
成長率、利益率が高いとEBITA倍率も上がる。株価が高いか安いかみるのにPERが使われるのに対して、EDITA倍率は企業価値が高いか安いかを判断する。
1.6. さまざまな買収ストラクチャーを検討する
一口にM&Aといっても様々なスキームがある。スキームごとのメリット、デメリットを考えてM&Aをすべし。
子会社化:ある会社を買収して、自社の子会社にする。買収の対価として現金を支払う「現金買収」、自社の発行する株式で買収する「株式交換」がある。
一体化:複数の会社が合併して一つの会社に統合すること。一つの会社が存続会社、もう一つの会社が消滅会社となり、消滅会社が存続会社に吸収されて、結果一つの会社になることを(吸収)合併という。
株式移転:持ち株会社を作る際のスキーム。大企業同士のM&Aの際にシステム統合などで問題をおこなさないために用いられることが多い。統合作業に目途がついた段階でぶら下がっている企業を合併したり、消滅させたり二段構えで事業再編をおこなうことも多くなっている。
吸収分割:会社丸ごとではなく、特定の事業だけを切り離して買収するスキーム。また事業譲渡は会社の特定の資産に限定して、買収するスキーム。
1.7. M&Aのプロセスと外部専門家の利用
P.180の図解をみてもらえば、M&Aの一般的なプロセスが一目でわかる。またM&Aをする際に付き合う証券会社は結構重要である。