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「うっ」 誰かの呻き声で新井貴浩(25)は覚醒した。頭はまだ、霧の中を彷徨っているようにぼんやりしている。 やっとのことで分かったのは、呻き声は自分が発したものだったということだけだ。 …それにしてもいつの間に眠ってしまったのだろう。 召集に応じて集まり、同級生たちとふざけて笑っていたところまでは覚えている。 …何かがおかしい。 ひんやりとした床の温度が手のひらに伝わって、新井はまじまじと床を見た。 皆が集められたあの部屋は、こんな風にモルタルの床だったっけ? それから何故自分は寝てしまったのだろう。寝不足などではなかったのに。 「何が…」 ふと横を向くと横山竜士(23)が床に突っ伏していた。 ご丁寧に右肩を上にして、肩に負担がかからないようにしている。 (無意識に利き腕や肩を庇うのは本当なんだな) (それからこいつ、ユニフォームなんていつ着たんだ?) 無性に可笑しくなって、笑おうとして…凍り付いた。 自分も目の前の同級生と同じく、ユニフォームを着ていたからだ。 自分だけではない。狼狽して辺りを見回すとチームメイトがばたばたと倒れていて、その全員がユニフォームを着ている。 ただならぬ雰囲気を感じて、新井は思わず横山を揺すった。 「何だよ…やめろよ」 寝ていた横山は乱暴に揺する新井の手を面倒臭そうに払い除ける。 それでも揺すり続ける新井に半ば観念したように、横山は身を起こした。 「何だあ?ここどこだよ」 ぽかんとしている横山に新井は状況を説明しようとして、自分に向けられている訝しげな視線に気付いた。 「…お前、何、それ」 横山の視線は自分の首元に向けられている。新井は恐る恐る首元の違和感に向けて手を延ばした。 ヒヤリ。無機質な金属の冷たさが指先に伝わる。 「な…何だこれ?」 「自分で付けたんじゃねーのかよ」 「ちょっ、これどうなってる?」 「どうなってるも何も、首輪か?それ…」 横山は笑った。しかし、その笑顔が数秒後凍り付いたのを新井は見た。 横山も同様に金属の冷たさを首に感じたに違いない。 「ちょっと待てよ、何だよこれ!」 横山が突然上げた大声に眠りを遮られたチームメイト達が、次々と身を起こす。 たちまち部屋の中が疑問とぼやきで一杯になった。 「何でお前らユニフォーム着てんの?」「馬鹿、お前も着てんじゃねえかよ」 「ええ?着替えた覚えなんかねーよ」「つーか、どこだ?ここ」 誰もが明確な答えを欲しがっている状況で、新井は周りをきょろきょろと見回した。 どうやら最初に集められた場所から、知らぬ間に移動したらしい。 (でも、どうやったらこんな大男ばっかり移動できるんだ?) 今現在自分達が居るのは、学生時代を思い出す、まるで教室のような…いや本物の教室か。教壇と黒板がある。 教壇の上にはテレビが載っているが…あれはちゃんと映るのだろうか、配線が全く無いように見える。 窓の外は暗くてよく見えなかった。集まったのは朝だから…どうやら結構な時間眠っていたらしい。 部屋の隅の方では前田智徳(1)が仏頂面で腕組みをしていた。 少し離れて、緒方孝市(9)が本当に静観しているといった感じで座っている。 浅井樹(6)も腕組みをして後方から状況を見ていた。そのさらに横には佐々岡真司(18)がいる。 (きっと大丈夫だ) 新井が少しホッとしたとき、部屋の扉が突然開いて誰かが慌ただしく駆け込んできた。 「静かに!」 大声で皆を制止したのは、見慣れた顔であった。 「奉文?…何だよ、それ」 紛れもなく今季まで一緒に同じグラウンドで汗を流した仲間。 その仲間が、機関銃を自分達に向けていた。 静かにしなければ殺す、とでも言うかのように。 「冗談やめろよ、なあ」 松本の隣には同じく戦力外を通告された田村がいた。 同じように機関銃を携え、こちらに向けている。 新井は目眩を感じた。納得できる説明が欲しい。 静まらない室内に呆れたかのように、松本奉文が銃口を少々下げた。 そして、引き金を引いた。 パラパラパラ…と雨が強く打ち付けるような音が止むと、室内に静寂が訪れた。床に無数の穴が空いて埃が舞っている。 「……全部これから説明されますよ」 松本の声に冷たさと得体の知れない恐怖を感じ、新井は身を震わせた。 おかしい。明らかにおかしい。これは夢なんじゃないか? 混乱する元チームメイト達をよそに田村がテレビの配線を繋いでいる。 横で松本が元チームメイト達に銃口を向けている。 夢だと言ってくれ!新井の声にならない叫びをまるで無視するかのように、 テレビの画面がブンッ、と音を立て見えるようになり、聞き覚えのある声がスピーカーから流れだした。 【生存者残り42人】 ---- リレー版 Written by リレー開始 ◆WX10dB5Sm2
「うっ」 誰かの呻き声で新井貴浩(25)は覚醒した。頭はまだ、霧の中を彷徨っているようにぼんやりしている。 やっとのことで分かったのは、呻き声は自分が発したものだったということだけだ。 …それにしてもいつの間に眠ってしまったのだろう。 召集に応じて集まり、同級生たちとふざけて笑っていたところまでは覚えている。 …何かがおかしい。 ひんやりとした床の温度が手のひらに伝わって、新井はまじまじと床を見た。 皆が集められたあの部屋は、こんな風にモルタルの床だったっけ? それから何故自分は寝てしまったのだろう。寝不足などではなかったのに。 「何が…」 ふと横を向くと横山竜士(23)が床に突っ伏していた。 ご丁寧に右肩を上にして、肩に負担がかからないようにしている。 (無意識に利き腕や肩を庇うのは本当なんだな) (それからこいつ、ユニフォームなんていつ着たんだ?) 無性に可笑しくなって、笑おうとして…凍り付いた。 自分も目の前の同級生と同じく、ユニフォームを着ていたからだ。 自分だけではない。狼狽して辺りを見回すとチームメイトがばたばたと倒れていて、その全員がユニフォームを着ている。 ただならぬ雰囲気を感じて、新井は思わず横山を揺すった。 「何だよ…やめろよ」 寝ていた横山は乱暴に揺する新井の手を面倒臭そうに払い除ける。 それでも揺すり続ける新井に半ば観念したように、横山は身を起こした。 「何だあ?ここどこだよ」 ぽかんとしている横山に新井は状況を説明しようとして、自分に向けられている訝しげな視線に気付いた。 「…お前、何、それ」 横山の視線は自分の首元に向けられている。新井は恐る恐る首元の違和感に向けて手を延ばした。 ヒヤリ。無機質な金属の冷たさが指先に伝わる。 「な…何だこれ?」 「自分で付けたんじゃねーのかよ」 「ちょっ、これどうなってる?」 「どうなってるも何も、首輪か?それ…」 横山は笑った。しかし、その笑顔が数秒後凍り付いたのを新井は見た。 横山も同様に金属の冷たさを首に感じたに違いない。 「ちょっと待てよ、何だよこれ!」 横山が突然上げた大声に眠りを遮られたチームメイト達が、次々と身を起こす。 たちまち部屋の中が疑問とぼやきで一杯になった。 「何でお前らユニフォーム着てんの?」「馬鹿、お前も着てんじゃねえかよ」 「ええ?着替えた覚えなんかねーよ」「つーか、どこだ?ここ」 誰もが明確な答えを欲しがっている状況で、新井は周りをきょろきょろと見回した。 どうやら最初に集められた場所から、知らぬ間に移動したらしい。 (でも、どうやったらこんな大男ばっかり移動できるんだ?) 今現在自分達が居るのは、学生時代を思い出す、まるで教室のような…いや本物の教室か。教壇と黒板がある。 教壇の上にはテレビが載っているが…あれはちゃんと映るのだろうか、配線が全く無いように見える。 窓の外は暗くてよく見えなかった。集まったのは朝だから…どうやら結構な時間眠っていたらしい。 部屋の隅の方では前田智徳(1)が仏頂面で腕組みをしていた。 少し離れて、緒方孝市(9)が本当に静観しているといった感じで座っている。 浅井樹(6)も腕組みをして後方から状況を見ていた。そのさらに横には佐々岡真司(18)がいる。 (きっと大丈夫だ) 新井が少しホッとしたとき、部屋の扉が突然開いて誰かが慌ただしく駆け込んできた。 「静かに!」 大声で皆を制止したのは、見慣れた顔であった。 「奉文?…何だよ、それ」 紛れもなく今季まで一緒に同じグラウンドで汗を流した仲間。 その仲間が、機関銃を自分達に向けていた。 静かにしなければ殺す、とでも言うかのように。 「冗談やめろよ、なあ」 松本の隣には同じく戦力外を通告された田村がいた。 同じように機関銃を携え、こちらに向けている。 新井は目眩を感じた。納得できる説明が欲しい。 静まらない室内に呆れたかのように、松本奉文が銃口を少々下げた。 そして、引き金を引いた。 パラパラパラ…と雨が強く打ち付けるような音が止むと、室内に静寂が訪れた。床に無数の穴が空いて埃が舞っている。 「……全部これから説明されますよ」 松本の声に冷たさと得体の知れない恐怖を感じ、新井は身を震わせた。 おかしい。明らかにおかしい。これは夢なんじゃないか? 混乱する元チームメイト達をよそに田村がテレビの配線を繋いでいる。 横で松本が元チームメイト達に銃口を向けている。 夢だと言ってくれ!新井の声にならない叫びをまるで無視するかのように、 テレビの画面がブンッ、と音を立て見えるようになり、聞き覚えのある声がスピーカーから流れだした。 【生存者残り42人】 ---- prev [[0. Reborn]] next [[2.『選抜』開始]] ---- リレー版 Written by リレー開始 ◆WX10dB5Sm2

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