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次は誰だっただろう。 思考がその背番号に辿り着くよりも早く、答が姿を現した。 「森笠さん?ですか?」 森笠は、長谷川昌幸(42)の足取りがひどくゆっくりなのが気にかかる。 時計を見た。既に森笠の出発からは2分になろうとしている。やはり、遅い。 「長谷川、聞いてくれ。 取り合えずできるだけたくさん仲間を集めて、今後のことを話し合いたい。 鉄塔が見えるだろ?あそこに倉さんが待ってる。次の奴にそれを伝えてくれ」 時間が無い。森笠は息も継がずに一気に喋る。 じゃあ頼んだぞ。最後のフレーズを言う前に、長谷川が口を開いた。 その足取りと同じようにゆっくりと。 「出来るだけたくさんって正気ですか?生き残れるのは6人しかいないんですよ?」 「………なっ」 何を。言いかけた言葉を飲み込んだ。 一度、ベルトの後ろに手を回された長谷川の右手が、森笠の前に突きつけられる。 正確には右手をではなく右手に握られた拳銃を。その銃口を。 「はせが……」 「その様子だと開いてもないみたいですね。バッグ。武器が支給されるって言ってたんだ。 そうしたら真っ先にそれを確認するのが常識じゃないですか?」 (コイツは何を言ってるんだ?何がしたい?) 時間を確認したかった。だが銃口から目を離せない。殺気。 チームメートが殺し合いに“乗った”。そんな馬鹿な。 だが、汗が背中を伝う。 理屈なんかんじゃない。動物としての本能。これは殺気。 森笠の視線が、自分に向けられた銃口ただ一点に集中する。 長谷川の右手は、揺らぎもしない。その位置が少し高いのは、眉間を狙っているからか。 手の平サイズの小さな拳銃。そんなものに身動きが取れない。 その時、森笠の狭い視界には、建物から出て来た一つの影は入っていない。 長谷川の方にもきっと、それに気付くだけの余裕がなかったのだろう。それはあまりにも一瞬だった。 ふいに銃口が揺れる。長谷川の体が傾いて、森笠の目の前から消えた。 何が起こったのかわからなかった。 「うわあっ」 どさり。長谷川の驚いたような声の後に、重たいものが倒れる音。そして 「逃げろ、森笠!」 はっと気がつくと、地面に二人の人間が転がっている。 一人は長谷川。そしてその両手を押さえつけているのは、背番号44。 「福地さん!」 「早く逃げろ!!」 弾かれたように森笠は走り出した。 (間に合え…間に合え…!) 時計を見る余裕はない。どこまで走ればいいのか分からない。 (だから甘いって言われるんだよ、俺は!) 唇を噛み締めながら、自分に罵声を浴びせ続ける。パニックになって、誰かに待ち伏せされたかと疑った。 だがその疑いが晴れたとたんに、なんとかなるかもしれないと楽観的になり過ぎた。 緊張感を持っていれば、長谷川の様子におかしいことにだって気が付けたかもしれない。 (倉さん、すみません。福地さん、どうか無事で…) ― ガァァ……ン ― 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 その銃声は背中で聞いた。 福地寿樹(44)の悲鳴も同時に耳に届いた。 立ち止まって目を落とした腕の時計は、3分15秒。 この時、森笠は二つの事実を知る。一つは、禁止区域を抜けたということ。 そしてもう一つ。もう、そこには戻れないということ。 【生存者残り41人】 ---- リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A
次は誰だっただろう。 思考がその背番号に辿り着くよりも早く、答が姿を現した。 「森笠さん?ですか?」 森笠は、長谷川昌幸(42)の足取りがひどくゆっくりなのが気にかかる。 時計を見た。既に森笠の出発からは2分になろうとしている。やはり、遅い。 「長谷川、聞いてくれ。 取り合えずできるだけたくさん仲間を集めて、今後のことを話し合いたい。 鉄塔が見えるだろ?あそこに倉さんが待ってる。次の奴にそれを伝えてくれ」 時間が無い。森笠は息も継がずに一気に喋る。 じゃあ頼んだぞ。最後のフレーズを言う前に、長谷川が口を開いた。 その足取りと同じようにゆっくりと。 「出来るだけたくさんって正気ですか?生き残れるのは6人しかいないんですよ?」 「………なっ」 何を。言いかけた言葉を飲み込んだ。 一度、ベルトの後ろに手を回された長谷川の右手が、森笠の前に突きつけられる。 正確には右手をではなく右手に握られた拳銃を。その銃口を。 「はせが……」 「その様子だと開いてもないみたいですね。バッグ。武器が支給されるって言ってたんだ。 そうしたら真っ先にそれを確認するのが常識じゃないですか?」 (コイツは何を言ってるんだ?何がしたい?) 時間を確認したかった。だが銃口から目を離せない。殺気。 チームメートが殺し合いに“乗った”。そんな馬鹿な。 だが、汗が背中を伝う。 理屈なんかんじゃない。動物としての本能。これは殺気。 森笠の視線が、自分に向けられた銃口ただ一点に集中する。 長谷川の右手は、揺らぎもしない。その位置が少し高いのは、眉間を狙っているからか。 手の平サイズの小さな拳銃。そんなものに身動きが取れない。 その時、森笠の狭い視界には、建物から出て来た一つの影は入っていない。 長谷川の方にもきっと、それに気付くだけの余裕がなかったのだろう。それはあまりにも一瞬だった。 ふいに銃口が揺れる。長谷川の体が傾いて、森笠の目の前から消えた。 何が起こったのかわからなかった。 「うわあっ」 どさり。長谷川の驚いたような声の後に、重たいものが倒れる音。そして 「逃げろ、森笠!」 はっと気がつくと、地面に二人の人間が転がっている。 一人は長谷川。そしてその両手を押さえつけているのは、背番号44。 「福地さん!」 「早く逃げろ!!」 弾かれたように森笠は走り出した。 (間に合え…間に合え…!) 時計を見る余裕はない。どこまで走ればいいのか分からない。 (だから甘いって言われるんだよ、俺は!) 唇を噛み締めながら、自分に罵声を浴びせ続ける。パニックになって、誰かに待ち伏せされたかと疑った。 だがその疑いが晴れたとたんに、なんとかなるかもしれないと楽観的になり過ぎた。 緊張感を持っていれば、長谷川の様子におかしいことにだって気が付けたかもしれない。 (倉さん、すみません。福地さん、どうか無事で…) ― ガァァ……ン ― 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 その銃声は背中で聞いた。 福地寿樹(44)の悲鳴も同時に耳に届いた。 立ち止まって目を落とした腕の時計は、3分15秒。 この時、森笠は二つの事実を知る。一つは、禁止区域を抜けたということ。 そしてもう一つ。もう、そこには戻れないということ。 【生存者残り41人】 ---- prev [[6.一分の対話、一分の対峙(前編)]] next [[8.絶望のち、希望]] ---- リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A

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