プロローグ

    

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プロ野球もシーズンオフになり、しばらくゆっくりとした生活を楽しんでいた
新井貴浩(25)と黒田博樹(15)はテレビ局の取材を受けていた。

チームは低迷し最下位の苦汁を舐める結果となったが、
前述の二人はタイトルホルダーとして今季、経歴に華を咲かせた。

取材はそんな二人に今季の活躍について聞くという、何とも普通の企画であった。


タイトルホルダー達の取材は思いの外、淡々と進んだ。
インタビュアーの女性アナウンサーの質問には少々的外れの物もあったが、
大体はありふれた、聞かれ慣れた事柄であった。


「それでは新井選手は、『もしも』そのホームランが出ていなかったら今季どうなっていたんでしょうね?」

(おいおい、何だよその質問は)

黒田の眉がぴくりと跳ねた。横では新井が「そうですね…」などと言い淀んでいる。

結果論だろ、そんなもん。黒田は思った。シーズン中にそんなこと考えてやっとらんわ。
…その『もしも』は今だからこそ言える『もしも』だ。

だから、その『もしも』を聞き始めたらきりがないだろう。
『もしも』によって勝つ奴がいるかもしれない。戦力外にならずにすむ奴がいるかもしれない。

(普通聞かんやろ、それは)

黒田はイラついていた。自分でも不思議に思うほどに。

(…今日の俺は虫の居所が悪いな)

隣の新井は何とか無難に答えたらしい。
…新井でもからかって気を紛らわすか。黒田は一息吐くと、思考を切り替えた。
黒田と新井がテレビ局の取材を受けた日から数日後。


突然選手達に召集がかかった。
予定には無い召集に選手達は戸惑ったが、どうやら定時に全員集まったらしい。

ぐるりと仲間達の顔を見渡して、黒田は少しの寂寞感を覚えた。

人数が少なくなった。チームリーダーがいない。

…引退してコーチや球団職員になる奴らは集められていないのか。
それから、二軍の奴らもいない、のか?
結構な人数を前にして正確には分からなかったが、黒田にはそう思えた。

一同が集められたのは大野練習場だったが、その後バスで移動し、現在はやけに広い無味乾燥な場所に彼らは居た。

それにしても。黒田は思考を再開した。
ここは大男たちが入る部屋じゃないだろうに。
天井は無駄に高いが、窓が小さく光が入ってこないため、薄暗くて息苦しい。
部屋の端にはテレビが備え付けられていたが、きっと誰一人見てはいないだろう。

まるで開放感のない体育館か、あるいは天井の高い事務所とでもいうような。
大体こんな…ん?
そこまで考えて黒田はハッとした。

違和感。

慌てて辺りを見渡せば、何人もがぐったりとしている。

「何だよ、これ…」

自分自身も原因不明のだるさを自覚し始めた。

一体どうしたっていうんだ!そう呼び掛けたくても、口を動かすのも億劫になっていた。

足がふらつき始めて、壁に寄り掛かる。
ずるずると力が抜けて、重力に従って地に伏すと、意識までもが遠退く。

遠くなっていく意識の中で、黒田はテレビの音声を聞いた。

(ああ、この前の…)

テレビの中では新井がインタビュアーの質問に答えていた。


「うーん、『もしも』あのホームランが無かったら…ですか」
「今季は無かったかもしれませんね…ちょっと分かんないですけど」



『もしも』これから仲間同士で殺し合うことになったら?

まさか。黒田の意識はそこで途切れた。


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