7.一分の対話、一分の対峙(後編)

    

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

次は誰だっただろう。
思考がその背番号に辿り着くよりも早く、答が姿を現した。
「森笠さん?ですか?」
森笠は、長谷川昌幸(42)の足取りがひどくゆっくりなのが気にかかる。
時計を見た。既に森笠の出発からは2分になろうとしている。やはり、遅い。
「長谷川、聞いてくれ。 取り合えずできるだけたくさん仲間を集めて、今後のことを話し合いたい。
鉄塔が見えるだろ?あそこに倉さんが待ってる。次の奴にそれを伝えてくれ」
時間が無い。森笠は息も継がずに一気に喋る。

じゃあ頼んだぞ。最後のフレーズを言う前に、長谷川が口を開いた。
その足取りと同じようにゆっくりと。
「出来るだけたくさんって正気ですか?生き残れるのは6人しかいないんですよ?」
「………なっ」
何を。言いかけた言葉を飲み込んだ。
一度、ベルトの後ろに手を回された長谷川の右手が、森笠の前に突きつけられる。
正確には右手をではなく右手に握られた拳銃を。その銃口を。
「はせが……」
「その様子だと開いてもないみたいですね。バッグ。武器が支給されるって言ってたんだ。
そうしたら真っ先にそれを確認するのが常識じゃないですか?」
(コイツは何を言ってるんだ?何がしたい?)
時間を確認したかった。だが銃口から目を離せない。殺気。
チームメートが殺し合いに“乗った”。そんな馬鹿な。
だが、汗が背中を伝う。
理屈なんかんじゃない。動物としての本能。これは殺気。
森笠の視線が、自分に向けられた銃口ただ一点に集中する。
長谷川の右手は、揺らぎもしない。その位置が少し高いのは、眉間を狙っているからか。
手の平サイズの小さな拳銃。そんなものに身動きが取れない。
その時、森笠の狭い視界には、建物から出て来た一つの影は入っていない。
長谷川の方にもきっと、それに気付くだけの余裕がなかったのだろう。それはあまりにも一瞬だった。
ふいに銃口が揺れる。長谷川の体が傾いて、森笠の目の前から消えた。
何が起こったのかわからなかった。
「うわあっ」
どさり。長谷川の驚いたような声の後に、重たいものが倒れる音。そして
「逃げろ、森笠!」
はっと気がつくと、地面に二人の人間が転がっている。
一人は長谷川。そしてその両手を押さえつけているのは、背番号44。
「福地さん!」
「早く逃げろ!!」

弾かれたように森笠は走り出した。
(間に合え…間に合え…!)
時計を見る余裕はない。どこまで走ればいいのか分からない。
(だから甘いって言われるんだよ、俺は!)
唇を噛み締めながら、自分に罵声を浴びせ続ける。パニックになって、誰かに待ち伏せされたかと疑った。
だがその疑いが晴れたとたんに、なんとかなるかもしれないと楽観的になり過ぎた。
緊張感を持っていれば、長谷川の様子におかしいことにだって気が付けたかもしれない。
(倉さん、すみません。福地さん、どうか無事で…)

― ガァァ……ン ―
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その銃声は背中で聞いた。
福地寿樹(44)の悲鳴も同時に耳に届いた。
立ち止まって目を落とした腕の時計は、3分15秒。
この時、森笠は二つの事実を知る。一つは、禁止区域を抜けたということ。
そしてもう一つ。もう、そこには戻れないということ。

【生存者残り41人】


リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A
|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|
  
MENU


■ リレー版





取得中です。