10.舞台裏の男

    

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細長い折り畳み机が数組に無造作に並んだパイプ椅子、
申し訳程度に幾つかの椅子に掛けられた数枚の毛布。
いかにも味も素っ気もない学校の会議室といった薄暗い部屋に、
最初の『仕事』を終えた松本奉文と田村彰啓が入ってきた。

気怠い様子でつい今までかつてのチームメートに銃口を向けていた機関銃を机に置く。
ガチャリ、というその音は機関銃それ自体の重みよりも更に重苦しく響いた気がした。
部屋の一角、影が凝り固まったような暗がりに立ち
窓から空を見上げていた小林幹英がゆっくりと振り返る。

「ご苦労さん」
「いえ…」
「とりあえずは順調にスタートってとこだな」
言いながら小林は奉文の赤くなった頬に目を留めた。
「奉文、顔どうした?」
出発する部屋の様子はさっきまでいた別の場所で見て知っている。
敢えて聞いた。
あちらさんは豪華なソファーにリビングセットときたもんだ。
ふん、良いご身分だな。

少し動揺を見せた奉文の横から田村が答える。
「前田さんに殴られたんすよ」
「……黙れ」
「ふぅん……で?」
奉文は苦々しい顔で目線を逸らせ、吐き捨てるように言った。
「スター選手をあっさり殺っちゃつまらないでしょ」
「何もしなかった訳か」
「……」

それ以上は言及しなかった。別に奉文をいじめてもしょうがない。
小林は再び窓の方に向直り、吸い込まれそうな漆黒の風景に目をやった。
この闇の中に今まさに解き放たれた選手達がそれぞれの思いを抱え散らばっている。
すでに銃声が響くのも聞いた。狂気は始まっている。

「ちょっと顔洗ってきます」
奉文が部屋を出て行き、重苦しい雰囲気を感じ取ったのか田村もその後を追い、
また部屋には小林1人が残った。

お前もまだ甘いよな、奉文。
まあ稀代の天才バッター、あの前田さんに特別に可愛がられていたんだもんな。
いわゆる果報者ってやつだ。それが今は辛いだろうがな。

俺は違う。
俺はもう何も迷ってはいない。
鮮やかな光芒を放った入団1年目、しかしそれ以降の苦境は言語に絶した。
あの98年の光の強さは、寧ろその後の影を暗く濃くしただけだった。
石にかじりつくようにやってきた。
これ以上何をどう頑張ればいいのか分からない程に頑張ってきた。
その末の解雇宣告。
俺はもっと投げたかった、しかしその気力も粉微塵に挫かれた。

そして言い渡されたこの馬鹿馬鹿しい反吐が出そうな計画。
その裏方、スタッフとしての役割に俺は乗った。そして……

窓に映る小林独特の長く切れた目が鬼気を孕み更に鋭く吊り上がる。
その視線は漆黒の風景を通り抜け、小林にしか分からない更なる暗がりを見つめていた。

「……お前らの思い通りになんてさせてたまるかよ」

【生存者残り41人】



リレー版 Written by ◆uMqdcrj.oo
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