22.密談

    

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「そうか、連絡無しだったか……」
「でもまだ希望は捨てずにいきましょう」
「ああ。しかしもう既に何人かが……。それに連絡が取れた所で果たして……」
「幹英さん」
「いや、ごめん。こっちにも策を練る時間の余裕が出来た。そう思おう」
「そうっすよ。俺ももっと考えてみます。
 ……その、文句がある訳じゃないけど、今の策は……俺はあんまり……」
「分かってるよ。俺も考える」

校舎2階の一番端、窓から差し込む微かな月明かりだけが光源の薄暗い理科室で
小林幹英と澤崎俊和は額を付き合わせるように座り声をひそめて話し合っていた。
ちらりと時計に目をやり澤崎が立ち上がる。
「そろそろ戻らないとやばいすね」
「そうだな、じゃ次は……今から4時間後にここで。もう一度策を話し合おう」
「ラジャ。じゃ次の合い言葉は『ミノフスキー粒子』と『メガ粒子砲』で」
「……分かりずらいよ。て言うかさ、合い言葉いらないだろ」
「いいじゃないすか。テンション上がるし」
(やれやれ)
苦笑いしながら小林は承知した。
わざと脳天気な事を言ってこの陰鬱な状況を少しでも和ませようとしてるのか。
周りに気を使いすぎる性格はいつまで経っても変わらないらしい。
「もう行け。用心しろよ」
「分かってますって。じゃっ、澤崎行きまーす!」
声を潜めているため何ともマヌケだが精一杯の勢いをつけてそう言うと、
ドアに耳を当て外の物音を伺い、用心深く細く開け体を滑り込ませ廊下に出た。
そっとドアを閉めもう一度周囲を伺い、大きく一つため息をつく。
(諦めないぞ。こんな馬鹿なこと、絶対に終わらせてやる)
自分に言い聞かせるようにそう強く心に念じ顔を上げると、ふと黒田の顔が浮かんだ。

今や押しも押されもせぬカープのエース、セリーグを代表する最多勝投手。
片や自分は故障に泣かされ続け、結果的に入団一年目だけの活躍で終わってしまった。
それはもちろん悔しく様々な葛藤と苦渋の日々があったが、黒田を妬むような気持ちはない。
あいつ自身の才能と努力で掴み取った揺るぎ無い栄光だ。
そうやすやすとくたばるような奴じゃない。そうは思うがやはり心配で胸が痛む。
(頑張れよ、生き延びてくれよ。なあ、また飲みに行ってバカ騒ぎをしよう。俺もここで戦うから)
戦力外を通告された自分が安全な場所にいて、誰よりもチームに貢献した奴が生命の危険がある場に放り込まれている。
こんな理不尽なことがあっていいはずがない。

様々に到来する思いを胸に歩を踏み出すと頭の中で1つのメロディーが沸き上がった。
――まだ怒りに燃える闘志があるなら……巨大な敵を 討てよ 討てよ 討てよ……
(そうだ、諦めてたまるか。戦うぞ。新しい時代を創るのは老人ではない!修正してやる!
 そして帰るんだ。それぞれの、帰る場所へ!)
ふつふつと沸き上がる怒りに歩調は止めどなく早くなり、終いには走り出していた。
走り去った後に壁に貼られた『ろうかは静かに!』の貼り紙がヒラヒラとたなびく。

(やっぱただの天然かな……)
騒がしい澤崎の足音が遠ざかるのを聞きながら小林は周囲に視線を泳がせた。
教室の壁沿いにある棚の上には小動物や鳥の剥製が並び、薄暗い中でその目が光っている。
命を奪われ、防腐処理をされ、目にはガラス玉をはめられ、内臓を抜き取り人工の詰め物をされ……
生きている時の表面上の姿だけを無理矢理留めさせられている哀しく滑稽な置物。
(まるで……)
ふっ、と自嘲気味な笑いを漏らし、目を逸らせ立ち上がった。
(そう、死んだものは無に返してやるべきだ。跡形もなく消し去るべきだ……)
そっとドアを開け、暗い廊下に踏み出すと小林は静かに歩き出した。

【生存者 残り40名】



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