24.信じる者は…

    
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 小島、お前を信じてやれなくて、すまなかったな…
 だが、もしお前に会えたら、土下座でもなんでもして謝る。
 だから、俺を恨まないでくれ。俺を許してくれ──

「…いやー、助かりますね。缶詰があるなんて」
「あぁ、本当だな。あんなまずいパンだけじゃ、腹はふくれないしな」
「さ、腹ごしらえしましょうか」
「おう」

目の前に出された缶詰と、インスタントの味噌汁。
味噌汁のいい臭いが鼻を刺激し、食欲をかきたてる。

「こんな腐ったゲーム中だ、これでもご馳走に見えるな」

非常食らしき缶詰のパンでも、支給された堅くて味のないパンよりは断然マシだ。
口の中にいれると、チョコレートの甘い味が広がった。

「うまいな…」
「なんかこう、希望が出てきますね」
「そうだな、このゲームからどうにかして逃げてやろうって気になれるな」

清々しい気分だった。小島を信じられなくて追い返してしまった自分が恥ずかしい。
人を信じる事ができなかった自分が恥ずかしい。
現に、目の前にいるこの男は自分に何の危害も加えていないじゃないか。
末永、礼を言う。年下の奴に説教されるとは思わなかったがな。しかも前田さんにいつも子供扱いされているような奴に。
まぁ、とにかくこの調子で仲間を増やして…

何も意識することなく味噌汁を一口飲んだ。
その直後に、体に起きた異変に気づいた。しかし、もう遅かった。
_なんだ…この……
「グ、ゥ!」
次の瞬間、口から勢い良く真っ赤な液体が吐き出された。
田中敬人(19)はそのテーブルにうつぶせになり、ピクリとも動かなくなった。即死だった。

田中が味噌汁を飲んだのを見るとすぐに対面の椅子から離れた大島崇行(46)は、
冷や汗を垂らしながら、少し笑った。
すごい効き目だ。この薬は──
使いにくい武器だとは思ったが、全く警戒することもなく声をかけてきた田中のような無警戒な男には、
全く殺意を悟られずに殺す事ができるものだった。
ポケットに入れたドクロマークのラベルが貼られた小瓶は、まだまだ中身が残っている。
それが残っている限り、自分を信じる者全てを片っ端から殺していく事ができる。
「信じる者は…救われないんですよね」

学校を出発してすぐに、誰かが倒れているのを見た。
暗くてよく見えなかったが、おそらくは襲われたのだろう。──あと少し近寄ればそこに
倒れている選手の背番号が見えたのだろうが、見たくはなかった──
あの人は、チームメイトに信じてもらえなかった。だから襲われた。きっとそうなんだ。
──だったら自分は、誰も信じない。
この時考えたのは、ただ、それだけ。

缶詰や水、それから救急箱といった使えそうな物資を全てバッグに詰め、大島はその大きな家を後にした。

──烏の鳴き声が聞こえてきた。夜明けが近いのだろうか。
この島で行われている惨劇を空から見守る烏達の声は、どこか悲しげに聞こえた。
「田中さん…大丈夫かな…」
田中に食って掛かった時の勢いはすっかり無くなり、不安気な表情で歩く末永真史(51)。
やはり一人でいるという事自体が、末永の恐怖心を再び煽っていた。
「栗も…大丈夫かな…」
そしてちょうど末永がそんな事を考えていた頃──、

「腹減ってきたなぁ…」
海に近い辺り、草木が生い茂る草地を、栗原健太(50)はひたすらまっすぐ歩いていた。
末永と同じ海を見ながら、栗原は空腹に耐えていた。
一方、すぐ近くにある茂みの中では、一人の大男が鼻息を荒くして栗原を待ち構えていた。
そして次の瞬間…
「グッ!」
栗原の視界が90度回転した。

田中敬人(19)死亡
【生存者残り39名】



リレー版 Written by ◇富山
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