28.届かなかった声

    

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じんわり…とイヤな汗が浮かぶ。緊迫が支配する中、何度も込み上げる不快感と共にそれも拭う。
あれから何時間経ち、そして何時間沈黙と歩いているのか。いつの間にか時計を見ることをやめていた。その行為がとても馬鹿馬鹿しいものだと悟ったからだ。
何の解決の糸口も見えないまま、時間の経過を窺うのは非常に馬鹿らしい、と。

相変わらず鬱蒼とした道を歩いていた佐々岡真司(18)と高橋建(22)は、しばらくしてぽつりと開いた場所に出た。
「ぅわっ!」
突然の二人の出現に、慌てた様な声が聞こえた。
佐々岡が懐中電灯で声のした方を照らすと、眩しげに目を細める永川勝浩(20)の姿がそこにあった。
ようやく落ち着いていたところだったのだろう。
動揺を表す様に、咽喉を潤していたと思われるペットボトルが地面に落ち、それを拾う余裕も無いのか、貴重な水はどんどん土に吸い込まれていく。
そのわずかな数秒間、どちら側も何のリアクションもとらなかった。おそらく3人共次の行動を迷ったに違いない。
微妙な空気の中、意外にも先に動いたのは永川だった。
驚きと不安で強張っていた表情は、佐々岡と高橋だと気付いた途端見る見る緩んでいった。
ぎこちない笑みを張り付かせ、その表情のまま立ち上がろうと腰を上げた瞬間。

「逃げ―――」
その言葉が届くよりも先に空気を切り裂く一発の轟音が辺りに響いた。
立ち上がりかけた永川の身体が大きく後に傾く。
「ぐっ……」
痺れる感覚の中、永川の短い呻き声だけはリアルに聞こえた。
右足を抱えて痛みにのた打ち回る永川の身体に続けて穴が開いていく。目を覆う間も与えなかった。
暗いはずなのに嫌でも目に入る、開けられた箇所から飛び散る血は、それこそ赤。
赤いユニフォームを更に赤に、Carpのロゴは既に読み取れない。赤で不思議な模様を広げながら、周囲一辺を赤で侵していく。
土も、木も、緑も、目の前も、倒れこんだ永川も。
赤、赤、赤、何もかも赤―――――

「やめろ!やめろーっ!!」

そう叫んだのは誰だったのか。
制止を乞う声は、歪んでしまった空間にただ吸い込まれていくだけだった。


【永川勝浩(20)死亡 生存者残り37名】



リレー版 Written by ◆9LMK673B2E
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