広島東洋カープバトルロワイアル2005
33.「鬼」
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匿名ユーザー
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海が見える。
うっすらと白くなり始めた空の下に、どこまでも続く凪が見える。
穏やかな波の上を、眠りから醒めた海鳥が滑るようにして飛んでいく。
うっすらと白くなり始めた空の下に、どこまでも続く凪が見える。
穏やかな波の上を、眠りから醒めた海鳥が滑るようにして飛んでいく。
緒方は枝を伸ばした木の根元に腰掛けながら、それを見詰めていた。
レーダーで回りに誰もいないのを確認してから、銃を取り出す。
(減音器といっても、無音になるわけじゃないんだな…これが安物なだけかもしれないが)
MK23“ソーコムピストル”。銃の名は聞いたこともなかった。
説明書を渡されたのは出発の三日前だ。
それから広島を出発するまでの時間の大部分は、その扱い方を頭に入れることに費やした。
たいていのことはわかって臨んだつもりだったが、実際に撃ってみると随分と勝手が違うものだ。
発砲時の反動、火薬の匂い、乾いたような破裂音。
この銃を、撃った。
この銃で、井生を殺した。
レーダーで回りに誰もいないのを確認してから、銃を取り出す。
(減音器といっても、無音になるわけじゃないんだな…これが安物なだけかもしれないが)
MK23“ソーコムピストル”。銃の名は聞いたこともなかった。
説明書を渡されたのは出発の三日前だ。
それから広島を出発するまでの時間の大部分は、その扱い方を頭に入れることに費やした。
たいていのことはわかって臨んだつもりだったが、実際に撃ってみると随分と勝手が違うものだ。
発砲時の反動、火薬の匂い、乾いたような破裂音。
この銃を、撃った。
この銃で、井生を殺した。
夜明けまでの6時間は、島の地勢を把握するのに使おうと決めていた。
地図も予め渡されていたとはいえ、確認しなければならないことは山ほどあった。
どの程度なら全力で走ることが出来るのか。死角は。
川の水量・市街地の見通し・山道の傾斜。目測・距離感。全てを身体に叩き込む。
それはまるで、初めて訪れたスタジアムの照明の加減や、芝の状態を確認する作業と似ていた。
地図も予め渡されていたとはいえ、確認しなければならないことは山ほどあった。
どの程度なら全力で走ることが出来るのか。死角は。
川の水量・市街地の見通し・山道の傾斜。目測・距離感。全てを身体に叩き込む。
それはまるで、初めて訪れたスタジアムの照明の加減や、芝の状態を確認する作業と似ていた。
迂闊という他に言いようのないような遭遇だった。
森と梅津が近くを歩いていることにばかり、気を取られ過ぎていたのかもしれない。
油断が、全力で走ってきた井生を緒方の前に立たせた。
「井生」
初めて口に出してその名を呟いてみる。
彼は本当は、生き残るべき人間ではなかったのだろうか。
今更の後悔が少しだけ胸に残っている。
覚悟なら疾うに決めてこの島に来たはずだったのに。
森と梅津が近くを歩いていることにばかり、気を取られ過ぎていたのかもしれない。
油断が、全力で走ってきた井生を緒方の前に立たせた。
「井生」
初めて口に出してその名を呟いてみる。
彼は本当は、生き残るべき人間ではなかったのだろうか。
今更の後悔が少しだけ胸に残っている。
覚悟なら疾うに決めてこの島に来たはずだったのに。
==================
「正気ですか?そんな…そんなこと!」
両脇から押さえつけてこようとした奉文と田村を、力任せに振りほどく。
怒りで唇が震えているのが自分でもわかる。
それでも、その話を語った目の前の人間を張り倒さなかったのは、その名が「山本浩二」だったからだ。
心から尊敬し、信頼していた人から呼び出しを受けたのは、一週間前のことだった。
そこで聞かされた悪魔のような計画……今期一軍公式戦に出場した全選手による殺し合い。
「わしは本気じゃけぇ、メグ」
「どうして…」
その時の山本浩二の口調はいつもと同じものだった。
だから緒方は聞き返しながらも、悲しいほどに確信を持ってしまった。この人は“本気”なのだ。
両脇から押さえつけてこようとした奉文と田村を、力任せに振りほどく。
怒りで唇が震えているのが自分でもわかる。
それでも、その話を語った目の前の人間を張り倒さなかったのは、その名が「山本浩二」だったからだ。
心から尊敬し、信頼していた人から呼び出しを受けたのは、一週間前のことだった。
そこで聞かされた悪魔のような計画……今期一軍公式戦に出場した全選手による殺し合い。
「わしは本気じゃけぇ、メグ」
「どうして…」
その時の山本浩二の口調はいつもと同じものだった。
だから緒方は聞き返しながらも、悲しいほどに確信を持ってしまった。この人は“本気”なのだ。
「どうしてそんなことを?カープをどうしようというんですか?」
返事の変わりに、机の上のクリアファイルから一枚の紙を取り出した。
受け取れというように緒方の目の前にひらりと差し出されたので、手を伸ばす。
「わしはカープを強くしたい。ただ、それだけよ。」
そこに描かれているのは升目で区切られた…地図?
「これは、どこかの島ですか?」
「会場だ。お前には渡しておくから、他の連中に見られんようにな。」
「え?」
「武器はまだここにはないが、お前の希望を聞いて使いやすそうなものを用意させる。
ああ、それでも説明書くらいは、先に渡しておかんといかんかのぅ。」
「待ってください、それはどういうことですか?説明してください監督!」
緒方はまだ、目の前の人を他の名では呼べないでいた。
今では“元”監督となったその人は、少し寂しげに笑ったようにも見えた。
返事の変わりに、机の上のクリアファイルから一枚の紙を取り出した。
受け取れというように緒方の目の前にひらりと差し出されたので、手を伸ばす。
「わしはカープを強くしたい。ただ、それだけよ。」
そこに描かれているのは升目で区切られた…地図?
「これは、どこかの島ですか?」
「会場だ。お前には渡しておくから、他の連中に見られんようにな。」
「え?」
「武器はまだここにはないが、お前の希望を聞いて使いやすそうなものを用意させる。
ああ、それでも説明書くらいは、先に渡しておかんといかんかのぅ。」
「待ってください、それはどういうことですか?説明してください監督!」
緒方はまだ、目の前の人を他の名では呼べないでいた。
今では“元”監督となったその人は、少し寂しげに笑ったようにも見えた。
「監督はこんなことで、本当にカープが強くなると思ってるんですか?」
「思っとるよ。」
「そんな!だからといって殺し合いなんて、許されるわけがない!」
「メグ、どうしてカープは弱くなった?強かったあの頃と何が違う?」
語気を強くする緒方とは対照的に、静かな口調でぽつぽつと言葉を落としていく。
「簡単なことよ。あのころは皆、ギラギラしてた。勝ちに飢えて、命さえ賭けるほどの気持ちでいた。
今は試合をやって、ただ負けた、ただ勝った。それだけだ。
闘争心っちゅうもんがないんよ。それは、わしも含めて。」
最後の言葉が、殊更に悲しい語調を孕んでいるように聞こえたのは気のせいか。
「思っとるよ。」
「そんな!だからといって殺し合いなんて、許されるわけがない!」
「メグ、どうしてカープは弱くなった?強かったあの頃と何が違う?」
語気を強くする緒方とは対照的に、静かな口調でぽつぽつと言葉を落としていく。
「簡単なことよ。あのころは皆、ギラギラしてた。勝ちに飢えて、命さえ賭けるほどの気持ちでいた。
今は試合をやって、ただ負けた、ただ勝った。それだけだ。
闘争心っちゅうもんがないんよ。それは、わしも含めて。」
最後の言葉が、殊更に悲しい語調を孕んでいるように聞こえたのは気のせいか。
いつの間に出て行ったのか、部屋から奉文と田村の姿が消えている。
緒方は、そんなことに気がつかないほどに狼狽していた。
目の前で語られた言葉の一つ一つが、破片となって散らばってまるで形にならない。
「…俺は、何をすればいいんですか」
何か自分に伝えたいことがあるのだということは分かっていた。
たった一人だけこの球団事務所に呼ばれたことには、何か意味があるはずだ。
緒方は、そんなことに気がつかないほどに狼狽していた。
目の前で語られた言葉の一つ一つが、破片となって散らばってまるで形にならない。
「…俺は、何をすればいいんですか」
何か自分に伝えたいことがあるのだということは分かっていた。
たった一人だけこの球団事務所に呼ばれたことには、何か意味があるはずだ。
漠然とした悪い予感が胸を渦巻く。それは予感だが、確信でもあった。
それでも聞いておかなければならない。
「メグ、お前にしか頼めんことだ。殺す役を引き受けて欲しい」
それでも聞いておかなければならない。
「メグ、お前にしか頼めんことだ。殺す役を引き受けて欲しい」
オフの球団事務所は静かだった。
緒方は静寂の重さが、心を折ろうとするのに耐えていた。
一方でその沈黙が永遠に続けばいいとも思う。聞きたくない。これ以上、何も。
だが、その願いは叶わなかった。山本浩二は、いとも簡単に沈黙を破ってみせる。
「殺し合えと言われても、実際に出来るわけがない…お前はそう思うか?
だがわしは、殺し合いが起こる状況にはすぐになると思う。
始めにちょっと追い込んでやれば、精神的に弱い連中は錯乱して、何かをしでかすだろう。
でも、そんな奴らは、殺し合いを始めるのには役立っても、結局は使い物にならん。
最終的には、強い意志を持って戦って生き抜いた奴が欲しいんじゃ。
だが、そうなると話は難しい。基本的には甘っちょろい奴らばかりじゃけぇ…わかるな?」
「わかりません」
その緒方の答は無視される形になった。語尾の疑問符には意味はなかったのだろう。
「弱い奴が殺される。錯乱して弱い奴を殺した連中も誰かに殺される。
残った奴は、どんどんと追い詰められる。追い詰められて、追い詰められて。
最後に、自分自身に強い執着を持った連中が生き残る。そうなって初めて、この殺し合いが意味を持つんじゃ。」
「……監督!」
もしかしたら泣いてしまえば楽だったのかもしれないと、今になって思う。
泣いて、わめいて、嘘だと否定するだけの若さがあったなら。
だが、緒方はにはそれは出来なかった。
目の前に突きつけられた、その人の“本気”から目を逸らすことが出来なかった。
緒方は静寂の重さが、心を折ろうとするのに耐えていた。
一方でその沈黙が永遠に続けばいいとも思う。聞きたくない。これ以上、何も。
だが、その願いは叶わなかった。山本浩二は、いとも簡単に沈黙を破ってみせる。
「殺し合えと言われても、実際に出来るわけがない…お前はそう思うか?
だがわしは、殺し合いが起こる状況にはすぐになると思う。
始めにちょっと追い込んでやれば、精神的に弱い連中は錯乱して、何かをしでかすだろう。
でも、そんな奴らは、殺し合いを始めるのには役立っても、結局は使い物にならん。
最終的には、強い意志を持って戦って生き抜いた奴が欲しいんじゃ。
だが、そうなると話は難しい。基本的には甘っちょろい奴らばかりじゃけぇ…わかるな?」
「わかりません」
その緒方の答は無視される形になった。語尾の疑問符には意味はなかったのだろう。
「弱い奴が殺される。錯乱して弱い奴を殺した連中も誰かに殺される。
残った奴は、どんどんと追い詰められる。追い詰められて、追い詰められて。
最後に、自分自身に強い執着を持った連中が生き残る。そうなって初めて、この殺し合いが意味を持つんじゃ。」
「……監督!」
もしかしたら泣いてしまえば楽だったのかもしれないと、今になって思う。
泣いて、わめいて、嘘だと否定するだけの若さがあったなら。
だが、緒方はにはそれは出来なかった。
目の前に突きつけられた、その人の“本気”から目を逸らすことが出来なかった。
「もう止めてください、そんな無茶な話は!
第一、殺し合いをすれば選手が足りなくなる。ペナントが戦えなくなる。
それでどうやって、優勝なんてできるんですか!」
「選手は足りる。メグ、わしは“来年”優勝するチームにするとはいっとらんだろう。」
「…え?」
「わしらが目指すのは、2009年の優勝だ。」
ざあっとつま先から何かが這い上がるような感覚があって、足が震えた。2009年。
第一、殺し合いをすれば選手が足りなくなる。ペナントが戦えなくなる。
それでどうやって、優勝なんてできるんですか!」
「選手は足りる。メグ、わしは“来年”優勝するチームにするとはいっとらんだろう。」
「…え?」
「わしらが目指すのは、2009年の優勝だ。」
ざあっとつま先から何かが這い上がるような感覚があって、足が震えた。2009年。
2009年の優勝。そうだ、それはカープの至上命題。
新球場建設。そして
「謙二郎に強いカープを渡してやりたい。」
「…………野村さん」
「この殺し合いに残った連中を核としてチームを作り直す。
選手の数が減れば、ドラフトに金が回せる。いい外国人も呼べる。コーチも揃える。
メグ、今年のカープのキャッチフレーズを覚えてるか?」
「Reborn…赤ヘル、再生…」
「そう、文字通り“再生”だ。カープは生まれ変わるんじゃ。」
散らばった全ての欠片が一つに纏まって、緒方の頭の中でパズルを組み上げた。
財政難の球団。低迷する成績。
選手の選抜。チームの再建。
許されることではない。それでもやらなければいけない。
そう、全ては2009年のために。
新球場建設。そして
「謙二郎に強いカープを渡してやりたい。」
「…………野村さん」
「この殺し合いに残った連中を核としてチームを作り直す。
選手の数が減れば、ドラフトに金が回せる。いい外国人も呼べる。コーチも揃える。
メグ、今年のカープのキャッチフレーズを覚えてるか?」
「Reborn…赤ヘル、再生…」
「そう、文字通り“再生”だ。カープは生まれ変わるんじゃ。」
散らばった全ての欠片が一つに纏まって、緒方の頭の中でパズルを組み上げた。
財政難の球団。低迷する成績。
選手の選抜。チームの再建。
許されることではない。それでもやらなければいけない。
そう、全ては2009年のために。
「もしも」
なんてことだ、声がかすれている。
「もしも、“断ります”といったらどうなりますか。」
「その時は残念だが、お前の家族の命を預からせてもらうことになる。」
「馬鹿な!」
「だがな、メグ」
泣いてしまえ。叫んでしまえ。
今ならば間に合うかもしれない。今なら……
「お前はきっと、断りはせんよ。」
なんてことだ、声がかすれている。
「もしも、“断ります”といったらどうなりますか。」
「その時は残念だが、お前の家族の命を預からせてもらうことになる。」
「馬鹿な!」
「だがな、メグ」
泣いてしまえ。叫んでしまえ。
今ならば間に合うかもしれない。今なら……
「お前はきっと、断りはせんよ。」
================
海が見える。
躊躇いもなく一直線に海と空を分けて、水平線が伸びている。
東の空がオレンジ色を溶かしたように染まっていく。夜が明ける。
躊躇いもなく一直線に海と空を分けて、水平線が伸びている。
東の空がオレンジ色を溶かしたように染まっていく。夜が明ける。
緒方は手首を捻って、拳銃を裏返した。
あまり大きい武器は走れなくなるから止めて欲しい。そんな希望を汲んで用意された銃。
チームメイトを殺す。その役割を果たすために、選んでバッグに入れられた武器。
(かなこ、俺はこの銃で人を殺したよ。お前は信じないだろうな・・・でも、これは真実なんだ。)
あまり大きい武器は走れなくなるから止めて欲しい。そんな希望を汲んで用意された銃。
チームメイトを殺す。その役割を果たすために、選んでバッグに入れられた武器。
(かなこ、俺はこの銃で人を殺したよ。お前は信じないだろうな・・・でも、これは真実なんだ。)
まず、闘争心のないものを殺す。
次に、緊張感に負けた心の弱いものを殺す。
三年後のチームで優勝の戦力にならないであろうものを殺す。
この、チーム再建のための選抜を邪魔しようとするものを殺す。
― もし、俺が三年後に必要だと思った選手が、他の奴に殺されたら? ―
― それは気にせんでええ。それは、そいつがその程度の人間だったということだ ―
本来ならば、選手の可能性を見極めるのは監督の仕事ではないのか。
その問いに、“それが出来ていれば、殺し合いなんて必要なかったのぅ”と、その人は呟いた。
それ以上は言葉もなかった。
次に、緊張感に負けた心の弱いものを殺す。
三年後のチームで優勝の戦力にならないであろうものを殺す。
この、チーム再建のための選抜を邪魔しようとするものを殺す。
― もし、俺が三年後に必要だと思った選手が、他の奴に殺されたら? ―
― それは気にせんでええ。それは、そいつがその程度の人間だったということだ ―
本来ならば、選手の可能性を見極めるのは監督の仕事ではないのか。
その問いに、“それが出来ていれば、殺し合いなんて必要なかったのぅ”と、その人は呟いた。
それ以上は言葉もなかった。
(野村さん、俺は井生を殺しました。伸び悩んでいた若手です。
俺の姿を見て、泣きそうになってた。恐怖に震えていた。だから、殺しました。
そのために俺はこの島にいるんです。そう思って、その時は迷いもせずに撃ちました。
でもね、野村さん。もしかしたらアイツは、これからいい選手になったかもしれない。
可能性はありました。不器用だけど、前向きで、一生懸命練習する奴だった。
……何様のつもりなんでしょうね、俺は。人ひとりの夢と可能性を潰しました。
井生を、殺しました。そんな資格なんて、あるはずないのに。)
俺の姿を見て、泣きそうになってた。恐怖に震えていた。だから、殺しました。
そのために俺はこの島にいるんです。そう思って、その時は迷いもせずに撃ちました。
でもね、野村さん。もしかしたらアイツは、これからいい選手になったかもしれない。
可能性はありました。不器用だけど、前向きで、一生懸命練習する奴だった。
……何様のつもりなんでしょうね、俺は。人ひとりの夢と可能性を潰しました。
井生を、殺しました。そんな資格なんて、あるはずないのに。)
己の判断のみを拠り所として人を殺す。そんな資格を持った人間などいるはずがない。
もしもいるとするならば、それは人ではなく無慈悲な神か、あるいは冷酷な鬼だろうか。
緒方は目を閉じて深く息を吸い込み、そしてゆっくりと開けた。
もしもいるとするならば、それは人ではなく無慈悲な神か、あるいは冷酷な鬼だろうか。
緒方は目を閉じて深く息を吸い込み、そしてゆっくりと開けた。
ポケットから小さな機械を取り出せば、中央に赤い光と“9”の表示。
それは武器とともに荷物に入れられていた、首輪の発信機の位置を示す装置だった。
もう、油断はしない。今は周りには人影はない。
確認してボタンを操作する。表示を全島に切り替えると、たくさんの赤が画面にあらわれた。
この中にはもう64の数字はない。他にもいくつかの光が失われたはずだ。
だがまだ、これだけの光が残っている。本当の勝いはこれからだった。
それは武器とともに荷物に入れられていた、首輪の発信機の位置を示す装置だった。
もう、油断はしない。今は周りには人影はない。
確認してボタンを操作する。表示を全島に切り替えると、たくさんの赤が画面にあらわれた。
この中にはもう64の数字はない。他にもいくつかの光が失われたはずだ。
だがまだ、これだけの光が残っている。本当の勝いはこれからだった。
(野村さんは怒るでしょうね。あなたの愛したカープの選手を殺した。でも、これからも殺します。
俺はどうしてもあなたと優勝したいんです。新しい球場で選手としてグラウンドに立っていたい。
そこで、あなたを胴上げしたい。だから………)
俺はどうしてもあなたと優勝したいんです。新しい球場で選手としてグラウンドに立っていたい。
そこで、あなたを胴上げしたい。だから………)
夜が明ける。
最強のカープを作るための殺し合い。もう後に戻ることはできない。
最強のカープを作るための殺し合い。もう後に戻ることはできない。
― だから俺は、鬼になります ―
【生存者 残り36名】
リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A