愛知万博特設面~経済で解く

万博特需 伸びる消費



 愛知万博(愛・地球博)も後半を迎えている。総入場者は、予想の1500万人を大幅に超える見込みで、百貨店、ホテル、運輸など多くの業界に「特需」をもたらしている。万博の経済効果を点検した。

●「モリコロ」600億円市場



 愛知万博の公式キャラクター「モリゾー&キッコロ」(モリコロ)をめぐるビジネスが熱を増している。4千種類以上ある関連グッズの売り上げは、当初目標の600億円を大きく超える見込み。新参のイベントキャラクターとしては異例の大ブレークに、「万博終了で役割を終えてしまうのはもったいない」との声も高まっている。

 7月下旬。会場内にある伊藤忠商事の愛・地球博マスターライセンシーオフィス(AMLO)に、同社と万博協会のグッズ販売担当職員が集まった。公式グッズの製造販売とライセンス商品の使用承認業務は、伊藤忠に一括委託されている。各企業から寄せられた新しいライセンス商品の提案を審査する週2回のミーティングだ。「このマスコット、モリゾーの表情に違和感があるから、もう1回出し直してもらって」。見本を手に取った万博協会の原田幸之介調査役の目は厳しい。

 「うちの商品にもモリコロを」との引き合いが絶えない。万博が残り2カ月を切った今でも、新たなモリコロ商品が続々と誕生している。この日は携帯ストラップや小物入れ、耳かきなどのほか、携帯電話待ち受け画面やチラシの絵柄までが審査を受けた。

●誕生から3年で躍進



 伊藤忠は現時点での売り上げを公表していないが、関係者によると、すでに3月の開幕時には600億円の目標を達成するメドがついた。

 「ついこの間生まれたイベントキャラクターとしては、驚くべき市場規模だ」。市場調査会社キャラクター・データバンク(東京都港区)の陸川和男社長は、モリコロの躍進に目を見張る。

 同社の調べでは、国内のキャラクタービジネスの市場規模は1兆6400億円(04年)。トップ3は「くまのプーさん」(ディズニー)、「ハローキティ」(サンリオ)、「ミッキーマウス」(ディズニー)で、いずれも1千億円規模を売り上げる。モリコロは誕生からわずか3年で、これらに次ぐ位置にまで駆け上った。

 万博協会はモリコロのメジャー化を狙い、モリコロを主人公とした絵本を作ったり、NHKでアニメを全国放送したりした。その上で、「日常生活のすべてのシーンにモリコロを登場させる」(村上一平・AMLO事務所長)勢いで、飲料や食品・生活雑貨などのライセンス商品を大量投入した。


●広告効果と収益両立



 工夫したのは、微妙なさじ加減が要るライセンス料の設定だ。安すぎては協会の収入が減るし、高いと商品価格が上がって売れなくなり、やはり協会の取り分が減る。

 協会は、薄利多売で万博を告知する効果の高いビールやスナック菓子などのライセンス料を価格の数%に抑えた。その一方で、土産用菓子や雑貨など、モリコロマークが付いていることが価値の大きな部分を占める商品には、10%近いライセンス料を課し、収入の最大化を図った。

 こうした戦略が奏功し、協会は大きな広告効果と、巨額のライセンス収入の両方を手にした。協会が当初想定したライセンス収入は4億円だったが、協会関係者は「倍増も視野に入った」と明かす。

 万博閉幕後のモリコロの扱いを各業界が注視する。万博協会の原田調査役はこう断言する。

「万博が終わっても、モリコロは終わらない」

(江渕崇)

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最終更新:2005年10月16日 11:05
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