もうじき僕は歌わない。@Wiki

もうじき僕は歌わない。

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或る白鳥の死

漕手(ふなこ)よ、君は死んだ女をつかまえる、
こんぐらかった彼女の襞の中に立たせたまま。
誰も一度も《僕》と言ったことのない処(ところ)で
小鳥たちが供回りになる。

高貴な塩の彫像よ、自分の首を捻(ひね)れ、
停れ! うしろを向け、
僕らを殺す青春は
後では屋根から逃げて行く。

犯罪者は顔を隠している、
でも僕の胸倉にささったこの短刀、
このお祭りの射的場の短刀で、
若い殺人犯人だと目星はつく。

真珠は天の病気だ。
おお! 来(きた)れ、潜水夫でも漕手(ふなこ)でも。
身にしむ僕のメロディーで、
瀕死(ひんし)の僕と気づかぬか?

香(か)ぐわしい一つの結び目が解けて、
その紅(べに)と蜜(みつ)を放つ、
尾羽根を展(ひろ)げたりすると
天使は天火に打たれるので。

白雲よ、君はジルか
繻子(しゅす)の腕をひろげているが。
それとも天に手で血塗る
業(わざ)に長(た)けたジル・ド・レエか?

高い雲は漂うヨーロッパ、
それはまた馬でもある。
望遠鏡で武装したハムレット
そこに海戦を発見する。

君の羽根の扇を開け、
僕が気に入られた残酷(むご)い波よ。
僕はもう溶ける、僕は泡沫(あわ)だ……。
もうじき僕は歌わない。


カテゴリ: [io] - &trackback() - 2005年11月21日 12:29:43

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