もうじき僕は歌わない。@Wiki

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moujiki

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 その灰色の夢の中で、僕にはそれが現実だと分かっていた。身体は眠っていた。意識もほとんどなかったと思う。でも頭のどこかが圧倒的に冷たく醒めていた。たぶん幽体離脱とか薬物によるトリップとか、そういうのと同じ感覚だと思う。いや、まだ十四歳の僕は、そんな素敵な体験はしたことがなかったけれども。なにもかもが普通じゃなかった。それは映像として目から入ってくるというよりは、脳内に直接電極でも差し込まれて、電気信号か毒電波か何かを送り込まれているような感覚だった。目から入ってきたにしてはリアルすぎる。間違っている、と僕は思った。でも間違いすぎていて、どう正していいのかも分からなかった。ただ抗えない力で、僕はそれを一方的に体験させられていた。
 見えたのは破壊された街だった。至る所から煙が立ち上り、住宅は崩壊し、地面には亀裂が走っていた。戦争の記録映像か何かかと最初は思った。その夢は白黒だったし、その街のすさまじい廃墟っぷりには僕の知っている現実のリアリティがなかったからだった。でも、それは現代の日本の街だった。落ちそうで落ちないぎりぎりの場所、折れた高架の道路の先っぽで、バスが地獄の淵を覗いていた。もちろん何台もの車が実際に落ちて潰れて燃えていた。アスファルト舗装の道路はひび割れて、所々から水が噴き出していた。高層ビルが隣のビルにもたれかかるように倒れていた。ぺしゃんこに潰れた日本家屋もあったし、防水シートで応急処置されただけの倒れかけの住宅もあった。学校や公園の空き地にはテントが立ち並んでいた。怒鳴りながら走り回る人たちの横で、疲れ切った人たちが呆然と何をするでもなく座っている。あるいは頭を抱え込み、あるいは何もない中空に視線をさまよわせながら。
 僕の身体はその場所に存在しなかった。ただの感覚器官として映像を見、音を聞き、そしてその場の空気を感じているだけだった。それは夢だった。でも間違いなく現実だった。訳がわからなかった。何なんだこれは、と僕は思った。僕の頭が、あるいは身体がどうかしたんだろうか。でも、何がどうおかしくなってしまったのかも分からなかった。でも、僕はそこにいた。何もできずにそこですべてを見ていた。
 僕は眠るたびにその夢を見続けた。でも、そんな日は長くは続かなかった。二週間ちょっとしてからは夢ではなく、テレビをつけるたびにその映像を見ることになったからだった。それは阪神・淡路大震災の光景だった。死者数で三千人を超える、地震大国日本でも史上有数の大災害だった。影響を受けた人の数で言えば何百万というオーダーになるだろう、その被災者の中には僕も含まれると僕は思った。僕はその光景を夢で二週間前から見続けていた。このとき僕は十四歳、中学二年生を終わろうとしているところだった。僕の一九九五年はそんな夢で始まった。あるいは、今の僕はそのときから始まった、と言ってもいいかもしれない。
 一月十三日の朝ご飯はトーストとスクランブルエッグだった。飲み物は雪印の牛乳に日東のティーバッグを入れて、アルミの雪平鍋で煮出したロイヤルミルクティ。基本的にはうちでよくある朝ご飯だったけれど、そんなどうでもいい記憶が鮮明に残っている。寒い朝だった。厚手の靴下をはいて、パジャマの上からジャンパーを羽織って台所に降りていった僕の耳に届いたのは、時計代わりのラジオから流れる朝のニュースだった。地震の速報を伝えていた。そのとき被害状況をどう報告していたかは覚えがない。まだ僕は気づいていなかった。確かまだ情報は全然入っていなかったし、まさか自分が未来のことを知っていたなんて思わないじゃないか。僕はただの好奇心からパンをくわえながらテレビのある居間に移動した。NHKが放送局内の被害の瞬間を流していた。震度を表す数字が地図の上に並んでいた。それは全部見覚えがある光景だった。やっと僕は気づいた。夢で見た映像、その圧倒的なリアリティが脳裏にフラッシュバックする。僕は、これを知っている。見た覚えがある。そんな被害じゃすまない、とすぐに僕は思った。
 朝食はのどを通らなかった。まだニュースで流れていない映像も僕は知っていた。それは控えめに言っても破局と名前をつけるしかない規模の災害だった。僕が十四年の人生で体験する初めての破局だった。テレビ越しの映像はバーチャルなものに過ぎないし、夢で見ていたことだって本当はリアルとは呼べないかもしれない。でも、その体験は圧倒的な説得力で僕を引き裂いた。昨日までの何も知らない僕と、今、何かを知ってしまった僕と。僕は力なくソファに座り、見るともなくテレビを見ながら、何かを考えようとした。でも何も考えられなかった。
 その日、僕は体調不良を口実に学校を休んでテレビニュースをずっと追いかけた。共働きの両親はいつも通り仕事に行って、家の中には僕ひとりしかいなかった。ニュースの情報はもどかしく断片的で、遅々としか入ってこなかった。おかげで僕はやっと、自分の身に起きていることについて考える余裕ができた。僕は二週間前からこの光景を知っていた。それは常識的にはありえないことだった。超能力、と僕は思った。嘘くさく手垢のついた言葉だ。そんなもの宗教と同じくらいにしか信じてはいなかった。年寄りは宗教を信じ、子どもは超能力を信じる。その程度の認識だった。でも、僕の夢は超能力という言葉でしか説明できなかった。予知夢、と僕は口に出してみた。泣きたくなるくらい嘘くさい言葉だった。
 そもそも、僕にあるのがどの程度の能力なのか分からなかった。予知と言ったって、この大地震にだけ反応した一般化できない能力なのかもしれない。あるいは他の未来についても夢に見ることができるのかもしれない。僕だけおかしくなってしまったのかもしれないし、みんなどうかなっているのかもしれない。何も分からない状態は不安で仕方がなかった。寝て夢を見れば何か分かるかもしれない、と僕は思った。テレビなんか見ていなくても、どうせ地震の情報はもう全部知っているんだし。でも、こんなに興奮していては寝られる訳がなかった。
 僕は居間で筋トレを繰り返して体力を消耗させることにした。エネルギーの無駄遣いならマスターベーションも有効な方法だけれど、さすがにそんな気分にはなれなかった。腹筋とスクワットと腕立て伏せをセットにして、それを体力の限り繰り返す。テレビでは延々、地震のニュースを流していた。見ていても代わり映えはしないし流れる映像は知っているし、でも切ることはできなかった。僕が健康であることに僕は罪悪感を感じた。でも、そんなのどうすることもできない。
 結局、筋トレではうまく眠ることはできなかった。身体を動かすほどに頭が冴えてしまうのだ。僕は何をやっているんだろう、と考え始めると眠るなんてできやしない。やっと眠ることができたのは、風邪薬をまとめて飲むことを思いついた昼過ぎだった。きちんと夢を見た。それは居心地の悪い夢だった。
 いつの、かは分からない。明日かもしれないし三年後かもしれない。学校で僕はクラスのみんなから無視されていた。ホームルーム前の親密なざわめきの中に居場所がなく、チャイムにあわせて入ってきた担任の教師も僕を意図的に無視した。机の中には落書きされたノートが入っていて、表紙には大きく「死ね」と書いてあった。誰かが僕に後ろから消しゴムをぶつけた。でも、誰も僕と目を合わせようとしなかった。僕に見られると居心地の悪そうなひともいたけれど、逆に僕に対して腹を立てるひともいた。一番多かったのは迷惑そうな顔だった。おまえなんかいなきゃよかったのに、みんなの顔はそう言っていた。試しに何人かに声をかけてもみたけれど、みんな聞こえないふりをした。それは明らかなシカトだった。予知についてしゃべった結果だ、と僕は何の根拠もなく理解した。誰も分かってくれない。僕は除外され迫害され、みんなは僕の存在を拒否する。それは至極ありそうな話だったから、僕としては納得するしかなかった。おまえなんかいなくなれ、それが僕に対するみんなの評価だった。
 気持ち悪い汗をかいて目を覚ました時、テレビのニュースは死者の名前を読み上げていた。破壊された街と同じように、死にもリアリティはなかった。夢で見たノートの落書きに「死ね」とあったけれど、中学二年生にとっては死なんてせいぜいそのぐらいだった。もちろん、ニュースで読み上げられる名前には説得力はあった。被害者はただの数字じゃなくて、きちんと名前があるんだって。それは被害の生々しさを伝えるには有効な方法かもしれなかった。でも、僕にとっては生々しい被害なんて二週間前から知っていたことだった。今さら言われても、という冷めた気持ちがどこかぬぐえなかった。もし僕の名前がそこにあったら違うだろうな、と僕は思った。最初それを思いついたのは偶然だった。僕も被害者だ、という気持ちからのただの連想だった。でも、一度そう思うと、そこに僕の名前がないことがむしろ不自然な気がした。でも、もちろん僕の名前が呼ばれることはなかった。
 僕は勝手に死ぬしかないと思った。いま生きていて、これからも生きていくということに実感がまるでわかなかった。昨日までの僕はもう死んでいた。今の僕はどこにもいなかった。みんなは僕を受け入れない、と夢の確かな手応えで僕は確信していた。僕がいなくなることをみんなは期待している。戻れるものなら戻りたかった。でも、もう戻れない。僕がみんなと違うことは今さら否定しようがなかった。みんなに受け入れられない僕は、いなくなるしかない。だったら死ぬしかない。どうせ地震で何千人と死ぬのなら、僕がここで死んでもたいした違いはないだろう。
 でも、服を着替えてカッターナイフを買いにコンビニまで行く途中で、気が変わった。僕が死ぬ必要はない。間違っているのはみんなの方だ。僕が正しいんだ。僕だけが未来を知ることができる。それは神様から僕に託された権利であり、きっと何かの義務だ。たとえ誰も理解してくれなくてもいい。未来は僕の側にある。僕がみんなを変えればいいんだ。みんなが僕を受け入れないからって、僕が僕を受け入れない必要はない。革命、と僕はつぶやいた。僕は他の誰とも違うこの予知能力を使って、この世界を革命しなきゃいけない。この能力はそのためにあるに違いない。
 カッターナイフの代わりにおにぎりふたつとカップラーメンと、大学ノートを一冊買って帰った。コンビニでは脳天気な歌謡曲が流れていた。でも恋愛も友情も、もう僕の関心事ではなかった。僕に興味があるのは未来のことだけだった。家に帰ってお湯を沸かしながら、僕はノートの表紙に<未来>と書いた。どんな未来が待っているのか、今はまだ何も分からなかった。でも、夢で未来をかいま見ることができるのなら、僕はそれを全部記録してやろう。きっと僕にしかできない何かがあるはずだった。
 もちろん、すぐに眠ることなんてできなかった。僕はテレビが垂れ流す不幸なニュースを片目で追いかけながら、右手でずっと心臓を押さえていた。興奮と孤独ではりさけそうだった。でも、特別な自分、他の誰とも違う自分でいるのは悪くなかった。だって僕は特別なんだ。みんなに嫌われる、さっきまでそれだけで自殺までしようと考えていたくせに、もう僕はそう思っていた。
 次の日、教室に入るときはシカトされる夢を思い出して緊張した。でも、誰も僕が昨日までの僕と違うことに気がつかなかった。みんな間違っている、と僕は思った。もう誰も僕のことを理解することはできない。
 見る夢を選ぶことはできなかった。それに、眠れば必ず予知夢を見られるものでもなかった。夢を見たことは覚えていても、内容までは定かではないこともよくあった。ノートに「哀しい夢」としか書けない日もあった。「青空」とか「海」とか、そんな夢を見ることもあった。たぶんそんなのは予知とは何も関係ないだろうと思いながら、僕はそんな夢もノートに記入した。そもそも僕の能力が、未来のことを夢で見る能力なのかどうかだって僕には分からなかった。押しつぶされそうな不安の中で、僕は自分の殻にこもることを覚えた。必要なこと以外しゃべらなくなり、めったに笑わなくなった。
 それからしばらくは具体的に予知が的中することもなかった。そもそも普段見るような不確かな夢に当たるも外れるもなかった。
 新聞もテレビも地震のことを伝え続けていたけれど、それは逆にそれ以上のニュースがないからだったかもしれない。阪神・淡路大震災のような特大の災害がないから予知が働かないのか、それとも僕の能力が限定的なものだからなのか、それも分からないまま日々は過ぎていった。どうして僕だけが特別なのか、どうして突然目覚めたのか。分からないことばかりだった。でも、誰も答えを教えてくれない。僕はとにかく自分だけが特別なんだと言い聞かせて、なんとか日常生活を維持していた。どうせ誰も分かってくれないんだ。他人に何かを期待する方が間違っている。
 次にまとまった夢を見るようになったのは三月に入ってからだった。ノートには、たくさんの救急車の回転灯を見たことや、電車の中やホームで人が倒れている映像を見たことが連日詳細に書いてある。僕はまたやってきた具体的なビジョンに興奮した。いつどこで起きることなのかは僕には分からなかった。でも、きっとそう遠くないうちに、この国のどこかで起きる。それはきっと僕の予知能力を証明することになるだろう。
 もちろん僕は、それが地下鉄サリン事件と呼ばれる、オウム真理教に関係する一連の事件を指していたということをすぐに知ることになる。でも事件を予知していたといっても、ニュースが伝えるまで僕は犯人のことはまるで分からなかった。電車で何かが起きる、ということは分かっていた。でも、地下鉄の中で毒ガスによるテロが起きるなんて理解の外だった。後から思えば、誰かが傘で何かを刺す映像は夢でも見ていたような気がした。でもそれはワイドショーで見たものを、以前夢で見たと勘違いしているだけかもしれない。そもそも、テロが行われた場所が東京都の地下鉄だというのも、僕はニュースで聞くまで分からなかった。テレビで、被害現場からのレポートを見て、この映像には見覚えがあると思った。それは神戸の地震のときと同じだった。分かるのは全部終わってからだった。こんなんじゃ知っていたって何の役にも立たないじゃないか、と僕は思った。事件の意味を考えるとか被害者を悼むとか、そういう気持ちはほとんどなかった。僕は現実をリアルに感じる能力を失っていた。僕に興味があるのは僕自身のことだけだった。
 ちょうど春休みに入るところだった。僕はもっと積極的に予知をしてやろう思った。精神修行だとか何だとか、きっと精度を向上させるためにできることがあるだろう。たとえ今は限られた能力かもしれないけれど、そもそも他のひとにはないものを僕だけが持っていることに代わりはなかった。僕だけにしかできないことがあるに違いない。未来を知っている僕にしかできないことが、何かきっとあるはずだった。それをするためには、もっとしっかり未来について知らなきゃいけない。そうすればきっと何かが分かる。
 その日から、夢うつつの生活が始まった。予知夢を見たいと思って眠りにつくと、僕はきちんと何かの夢を見るようになった。僕はそれを進化だと思った。この先にきっともっと素敵な未来がある、この方向で努力を続ければいいはずだ。春休みをいいことに僕は不規則に眠り続け、起きているときも未来のことばかり考えるようになった。
 その頃の僕が夢に見たのはグローバルな規模のものばかりだった。一番よく見たのは戦争の夢だった。たとえば砂漠を背景に、燃えている戦車や海に注ぐ重油、飛ぶミサイルの映像が繰り返された。アラブ系の住人がミサイルや空爆で殺されていた。逆に彼らは白人たちの前で自爆テロを試みていた。超えられない壁の前に銃を構えた兵士がいて、武器らしい武器もない群衆と睨み合っていた。石を投げると銃撃が返ってくる、分かっていても何もしないではいられない。そこには未来なんてなかった。
 あるいは、どこかのジャングルの奥で、都会の真ん中の教会で、学校で。夢の舞台はもちろん砂漠に限らなかった。戦争の方法だって多種多様だった。銃撃戦は何度も見た。地雷も見たし、ロケット弾も見た。戦闘機が空母から飛び立つような大規模なものから、生身の人間がナイフで殺し合うような小さなものまで。バスジャックやハイジャックもあったし、爆弾テロもあったし、正規軍同士の戦争もあった。世界中に戦争は充ち満ちていた。実感は全然なかった。でもそれが僕に与えられた未来だった。こんな夢を見せられても僕には何もできない。でも、僕はそれを何度も何度も見せられた。
 環境破壊の夢も何度も見た。切り倒される熱帯雨林、溶けて崩れて海に落ちる氷山。巨大なハリケーンに襲われて水に沈む街があり、逆に雨が降らなくて干上がった池では魚たちがなすすべもなく死んでいた。見上げると汚染された大気は日の光を遮って空を覆い、流れる川は汚れた水を海へ海へと運んでいく。酸の雨は浴びると肌を灼き、毒の空気は呼吸のたびに胸を冒す。規模が大きくなるほどリアリティは失われていった。
 夢に出てくる未来に対して、僕にできることは何もなかった。でも、何か意味があるんだろうと僕は思った。僕にだけできる何かがあるんだろう、でなければ僕にだけ予知能力がある理由がない。脳髄に直接刻み込まれる予知夢は日常生活より遙かにリアルな記憶として残った。そして、すべての夢が不幸な未来を示していた。僕の存在に意味があると思わなければ耐えられなかった。
 僕は時間があると図書館に行って、夢で見た情報の裏付けを取ることにした。戦争に関してはきな臭い情報はどこにでもあった。知らなかったけれど、ちょっと調べれば世界中が戦争の準備をしているようなものだった。そもそも全世界の国が軍隊を持って、戦争の準備をしているのだ。民族対立があり、宗教対立があった。引き金に指をかけて睨み合う毎日の中で、殺すことも殺されることも日常だった。他人はすべて敵だった。それが現実であることを僕は夢のリアリティで知っていた。僕が過ごしてきた毎日の方が薄っぺらい嘘のようなものだった。
 現在の日本が平和なことは僕も認める。でも、そんなのは地域的に見ても歴史的に見ても、きわめて例外的なことにすぎない。五十年前の日本軍が中国大陸で何をしていたかなんて知りたくもなかった。それに現在の日本にだって北方領土問題があり、在日米軍問題がある。隣国の北朝鮮と韓国は停戦しているだけで戦時中だし、中国と台湾もミサイルを向けてにらみ合っている。僕たちの現実の外にきちんとリアルは存在しているのだ。予知の夢を見るまでもなく。
 環境問題はもっと絶望的だった。既に放出されたフロンだけでオゾン層の破壊は続き、今すぐに対策が取られたとしてもこの先何十年も被害は拡大すると言われていた。その対策だって取られるとは思えなかった。先進国では対応できるかもしれない、でも環境問題以前に生存権が脅かされている国はいくらでもある。たとえば、アマゾンを切り開かなければ生活できないひとがいる。遠い未来より明日のことを考えなければ生きていけない人たちはいくらでもいる。違う例を挙げれば、いつか枯渇するに決まっている石油に依存して生きているという意味では先進国だって未来が絶望的なことには何の違いもなかった。エコ発電のプラントひとつつくるのに、どれだけ石油が必要になるんだろう? たとえば発電分野なら、可能性のある代替手段は原子力しかなかった。でも、原子力発電なんて放射性廃棄物の処理を未来に先送りしなければ成立しない技術だった。原子力発電所が大爆発する夢だって見た。マンガのような破滅が訪れる未来を僕は何度も見た。何度も何度も見た。
 図書館で勉強をすればするほど精緻な夢を見るようになった。細かいところまではっきりすればするほど絶望的だった。どうしたらいいのか分からなかった。そして春休みの残り日数は少なくなっていった。春休みが終われば僕は普通の中学生に戻らなきゃいけない。でも、学校なんて行けるとは思えなかった。みんなと同じことをしているなんて耐えられない。この一瞬一秒でできることがあるはずなんだ、僕にしかできないことが。でも、そんなものはどこにも見つけられなかった。
 頭のどこかでは、僕にだってそんなものがないことは分かっていたと思う。たかだか、ちょっと頭のおかしい中学生に、特別できることがあるわけがなかった。でも、目をそらすことはできなかった。眠るたびに夢はやってきた。戦争も環境破壊も僕の中にあった。怖くて仕方がなかったのに、僕は溺れるように夢を見続けた。そのうち、起きていても白日夢を見るようになった。
 最初は、まぶしすぎる日の光を遮るために、カーテンを閉めようと窓辺に立ったときだった。僕は窓から落ちて死ぬ自分を見た。それは予知夢と同じリアリティを持つ空想だった。たかだか二階の窓から落ちたくらいで死ぬはずがないから、きっとそれは予知ではないと思う。でも圧倒的なリアリティがあった。僕はカーテンを閉めてベッドに倒れた。心臓が痛かった。もうカーテンには触れない、と僕は思った。きっとカーテンを見るたびに僕は転落死する夢を見ることになる。でも、もちろんカーテンだけが僕に悪夢を連れてくる訳ではなかった。
 ビルの側を通れば何かが落ちてくる夢、道路に出れば車に轢かれる夢。どこにいっても白日夢は僕につきまとった。自転車に乗ればタイヤが外れ、川を渡れば橋が落ちた。大きな木の側に立てば雷が落ち、電車に乗れば脱線事故が起きた。マンホールに乗ると下水が噴き出し、飛び出してきたワニに襲われる。もちろんそれが夢だということは分かっていた。でも、そんなことは分かっていても何の助けにもならなかった。僕にとって夢の方がはるかにリアルだった。なんだって起きる、と僕は思った。リアルな世界ではなんだって起きる。
 でも、本当に怖かったのは被害にあうことではなかった。僕の夢は僕を被害者だけで終わらせてはくれなかった。僕は加害者にもなった。それも、とびきりリアリティのある加害者だった。
 鞄を持っていれば、僕はその鞄を振り回して誰彼構わずに殴りかかった。割れ物を手に持ったら叩きつけて壊さずにはいられなかった。老人や女性や子ども、僕の方が体力がありそうな人たちには襲いかかった。実際にはケンカひとつろくにしたことがないくせに、白日夢の中の僕は獰猛だった。拳を固めて殴りかかり、首を絞めたり蹴りつけたり踏みつけたり、思いつく限りの乱暴をはたらいた。女性に対しては服を引き裂いたり、胸を揉んだりもした。悲鳴を上げて逃げまどう声を聞きながら、僕は空を見上げて狂ったように笑った。それが夢の中の僕だった。
 僕よりも体力がありそうなひとたちに対しては、僕はスマートな暗殺者になった。なにしろ僕は超能力を持った選ばれた存在なのだ。目の奥の照準で対象をロックオンして、イメージの引き金を引く。僕がそうすると彼らの頭は爆発四散した。心臓を破裂させることもできたし、同じ超能力でビルを爆破することだってできた。すれ違う人ごとに僕は妄想が止められなかった。僕が通りがかるだけでみんなの頭が次々と破裂していく、そんな白日夢。妄想は止まらなかった。
 特別な自分でなんていたくなかった。予知能力が欲しいなんて思ったことはないのに。僕は普通の僕でいたかった。つい何ヶ月か前までの僕は普通の中学生だったんだ。でも、今の僕が僕だった。同じ超能力で僕は自分の頭が破裂するところも想像した。何度も想像した。いっそそうなればいいのに、と何度も思った。でも、もちろんそんなことは起きなかった。
 光を見ると身体が溶ける夢を見るようになったのは、春休み最後の雨の日だった。僕はもう外出ができなくなっていた。妄想にとりつかれたままで日常生活なんて送れない。僕は部屋に引きこもって日々を過ごしていた。夢がやってくるたびに僕はベッドに逃げ込んだ。布団をかぶって震えていることしかできなかった。でも、目を閉じても白日夢は止まらなかった。薄っぺらな現実より、夢の中の方がリアルだった。僕は予知を通してリアルな世界を求めていた。その結果がこれだった。
 冷たい雨は夜まで降り続いていた。窓の外でずっと雨音が続いていた。両親が何度か心配して覗きに来た。僕は布団の中で眠ったふりをした。助けて欲しいと思っていた。でも、何も言えなかった。誰も僕のことを理解できない。僕を助けに来てくれたかもしれない両親さえ、夢の中の僕は何度も殺していた。そんなことを考えているなんて気づかれる訳にはいかなかった。気づかれたら本当に僕は全否定されることになると思った。僕を助けることなんて誰にもできない。全否定されるくらいなら理解されない方がよかった。
 ずっと起きていたのか、少しは本当に寝ていたのかは分からない。妄想は波のように押し寄せては去っていった。そして僕はいつの間にか自分を取り戻している自分を発見した。これが最後かもしれない、と僕は思った。この静けさは、津波の前の引き潮のようなものなんじゃないか。それが妄想なのか予知なのかは分からないけれど。
 部屋の電気をつけていなかったから、布団から顔を出したときには世界は真っ暗だった。ひどく喉が渇いていた。今が何時なのか分からなかったけれど、特に知りたいとも思わなかった。世界の終わりにいるような気分だったけれど、もちろん自分の部屋にいるに過ぎなかった。多分ここが僕の世界の終わりなんだ、と僕は思った。僕は息を潜めて階下の気配を伺った。誰にも会いたくなかった。
 もうみんな寝ているから大丈夫、と誰かが言った。もちろん幻聴だった。白昼夢をずっと見ていたから、現実も妄想もたいした違いはなかった。僕はあいまいに頷いた。それは聞き覚えのない女性の声だった。幻聴にしても誰の声なんだろう。
 僕は足音を忍ばせて階段を降り、電気をつけないまま台所の扉を開けた。低く重く冷蔵庫がうなりを上げていた。電子レンジが緑色の光で時計を表示していた。午前三時。まず誰も起きてこないだろう。ダイニングテーブルの上には僕の分の夕飯がラップをかけて置いてあった。丸皿がひとつ、小鉢がひとつ、ひっくり返ったご飯茶碗と塗りのお椀、机に直接置かれた箸。夕飯は何だったんだろう、と僕は思った。最後に食べた食事がいつで、何だったのかを思い出そうとした。でもまるで記憶がなかった。痴呆老人か僕は。でも、家族がばらばらに食事をするのはいつものことだった。誰かの分の食事がずっと残っているのは珍しくない。この家では食事なんて誰も全然大事にしていなかった。
 僕は食べ物を心の底から美味しいと思ったことがなかった。嫌いな食材はあるし、失敗料理を食べてこれは不味いと思ったこともある。でも、僕には好きな食べ物はなかった。そもそも食べ物を好きになる、という発想がなかった。母親は料理に興味がなかったし、父親は日常生活に興味がなかった。必要なだけ栄養があって、カロリーが適度にとれればそれでいい。それが僕の家族にとっての食事だった。作るのが面倒なときは外食や冷凍食品ということも多かった。料理の上手なお母さんなんて幻想だ。家族で囲む幸せな食卓なんてホームドラマの中にだけにしかありえない。
 でも、いま僕が求めていたのは、そんな幻想だった。冷蔵庫と電子レンジ以外は何も動いていない台所で僕はそう思った。僕は母親を求めていた。血のつながった料理に興味のない僕の母親ではなくて、象徴的なお母さん的なもの、たぶん僕を無条件に庇護し慈しみ、愛し育ててくれるものを求めていた。僕はずっとそれを与えられないで来たんだ、と僕は思った。言葉にして求めていることを意識したのは初めてだった。もともとうちにはないものだとずっと僕は思っていた。それは求めて与えられるようなものではない、と思っていた。でも、僕は今、それを求めていた。得られないことは分かっていた。たとえば今、母が起きてくることなんて僕は求めていない。僕が求めているものは妄想の中にしかなかった。そんなことは自分で分かっている。
 どこかの台所で、誰かが料理をしている後ろ姿を僕は想像した。大きな窓があって、明るく日が差す台所だ。鉢植えが置いてあったり花が飾られたりしている。肩までの長さに髪を切りそろえた彼女は、エプロンをしてカウンターに向かっているだろう。包丁で何かを刻んだり、おたまで味を確かめたりしている。すらりと細身の体が蝶のようにキッチンの中を舞っている。前髪を左手でかき上げながら、時々ちらりと時計に目をやる。
 今日は肉じゃがですよ、と彼女が言った。もうすぐできますからね、待っててくださいね。
 背中越しでも彼女が料理を楽しんでいることが分かった。料理を楽しんでいるし、その後で僕と一緒に料理を食べることを楽しみにしている。幸せというタイトルの物語のようだった。陳腐だ。でも、それは幸せに違いない。陳腐かもしれないけれど、僕の知らない幸せだった。
 これは予知かもしれない、と僕は思った。というか、予知であることを祈った。でも間違いなく妄想だろう。僕は彼女の料理が食べたかった。それはきっと僕が今までに食べたことのあるどんな料理よりも美味しいに違いない。だからそんなのは妄想に決まっているんだ。
 白日夢の中の僕は、包丁を持って彼女の背中に襲いかかった。どうしてそんなことをしたのかは分からない。僕はそんなことをしたくはなかった。でも、妄想は止められなかった。彼女は悲鳴を上げて倒れ伏した。僕はその背中に何度も何度も包丁を突き立てた。切っ先が刺さるたびに血が飛び散り、骨に当たれば固い手応えが返ってきた。その手応えはリアルな記憶として僕の手に残った。耳の奥に悲鳴も焼き付いている。僕は笑っていた。それが僕だった。何をしているのか分からなかった。でも、僕は自分がしていることを冷静に正確に認識していた。僕は彼女を破壊しようとしている。彼女を破壊することで、僕は僕自身を否定しようとしている。僕は幸せになるようにはできていないんだ、と僕は思った。たぶんそれは真実だった。普通のひとと違う僕には普通の幸せはありえない。そんな当たり前のことが、僕は彼女を殺さなければ理解できないらしかった。
 僕は冷たい台所の床に座って泣いた。現実の僕はひとりきりだった。僕はひとりで生きていくだろう。数少ない幸せの可能性を自分で破壊しながら、孤独だけを友として生きていく。それが僕の未来だった。夢を見るまでもない。もし、今すぐ死ぬことを選ばないなら、それしか未来はありえなかった。誰かを殺さなければ生きられないなら死ぬ方がいい。包丁のある場所なら知っている、と僕は思った。暗闇の中で天井を見上げた。
 予知と同じリアリティを持つ妄想の中で、僕は空を見上げていた。引きちぎられたような雲が空を流れていく。日が沈みかけていて、冷たい風が吹き抜けていった。犬の散歩をしている人やはしゃぐ子どもたちが、みんな僕を避けていく。でも、僕もみんなを避けているからお互い様だった。僕は公園のベンチに座って、ただ、そのときが来るのを待っていた。僕には待っているのが何なのかが分からなかった。やってくるのが幸せではありえないことは分かっていた。来ないかもしれない。でも、僕は待つことをやめられなかった。
 おひさしぶりです、と逆光の中で、シルエットの彼女は僕の前に立ち止まって言った。ついさっき台所で貴方に殺されたものですが、覚えていますか?
 しばらく言葉が出なかった。彼女は小首をかしげながら僕の反応を待っている。絞り出すように、そんなのは嘘だ、と僕は言った。台所で彼女を殺したのが嘘なのか、彼女がここにいることが嘘だと言いたいのか、自分でも分からなかった。本当ですよ、と彼女は小さく笑った。でもまあいいです、そのときが来れば分かりますから。
「今は言葉だけです。まだ、その時じゃないから。いつか会えるといいですよね」
 あなたは誰なんですか、と僕は聞いた。私ですか? と彼女はまた小首をかしげた。それはあなたが一番よく知っているはずですよ。でも、もちろん僕は彼女に心当たりなんかなかった。
 彼女はまた空を見上げた。春ですね、そんな意味のないことをぽつりと言う。こんな未来がありえないことは僕が一番よく知っている、と僕は思った。これは妄想だ。僕の意識が見せる白日夢、ただの幻に過ぎない。死ぬしかない僕が思いつく、唯一生き残るための虚ろな希望だ。こんな未来が待っていると思ったら生き残れるんじゃないか、僕の無意識がその可能性にすがっているだけだ。僕はそう思った。
「この可能性にすがったら生き残れるんなら、すがって生き残ればいいんじゃないですか。貴方には、貴方にしかできないことがあるんでしょう?」
 僕と彼女の見上げる空に、今までに予知してきた未来が浮かんで見えた。戦争や環境問題や、そんな場違いなあれこれだった。未来、と僕は思った。ひどく嘘くさい言葉だった。それで貴方はどこにいるんですか、と静かに彼女は言った。僕は胸を押さえた。確かに、今まで見た予知の中に僕はいなかった。全部、他人事だった。僕がどこかにいる、という考え方をしたことがなかった。僕は戦場で倒れる一兵卒なのか、それともそれをテレビで見ているのか。戦場は僕のいる場所ではなく、環境破壊の最先端もまた今の僕と連続する場所ではなかった。
 僕はどこにいるんだろう、と僕は思った。未来の僕どころか、現実の僕がどこにいるのかさえ僕には分からなかった。僕はどこにもいなかった。
「規則正しい生活をしなさい。夜寝て朝起きること、きちんと食事を摂ること、適度な運動をすること。それができれば貴方は生き残ることができます」
「そんなことが簡単にできたら苦労しないよ」
「簡単にする必要はないでしょう。苦労しなさい、まだ若いんだから」
 ふと視線を落とすと、僕の右手はバールのようなものを持っていた。意図しているところは明確だった。僕はそんなことをしたくなかった。逃げて、と僕は声を振り絞った。僕は彼女に襲いかかろうとしていた。理由は分からないけれど、僕にはそうするしかない必然性があった。僕には僕をコントロールすることはできない。でも、もちろん、そんなことを僕はしたくなかった。
「あなたになら殺されてもいいですよ」
 彼女は静かに言った。僕にはもう選択の余地はなかった。僕はバールを握りしめて彼女に襲いかかった。どこからか桜の花びらが舞っていた。夕日が僕の影を長く地面に引き伸ばしていた。彼女は逃げなかったし、抵抗もしなかった。ただ僕に殺されていた。死にたくない、と僕は思った。僕は死にたくない。こんな風に死にたくない。
 気がつくと、もう隣に彼女の姿はなかった。場所も、もう公園ではなかった。床の冷たさから僕は台所に座っていることを思い出す。周りは暗い夜の底で、僕は元通りひとりきりだった。どうせ誰も助けてくれない、と僕は小さく声に出してみた。貴方を助けられるのは貴方だけです、と彼女は答えた。幻聴はまだ続いていた。
 隣の部屋の時計の針の音が聞こえる。深い沈黙の中で僕は冷蔵庫を開けた。オレンジの光の中で、トマトケチャップやイチゴジャムの赤がもの言いたげに僕を見ていた。床にぶちまけたら少しは楽になるかもしれない、と僕は思った。でも、そんなことをしても何も解決しないという理性が勝った。そんなことは妄想の中ですればいい、現実よりそちらの方がリアリティがある。僕はケチャップをぶちまけ、イチゴジャムをぶちまけ、卵をすべて叩き割るさまを妄想した。それから牛乳を取り出してコップに注ぎ、蜂蜜を少し注いでかき混ぜ、電子レンジで四十秒間温めて、ゆっくり飲んだ。眠ろうと思った。頭から布団をかぶって丸太のように眠ろう。今なら眠れるかもしれない。どんな夢を見るかは分からないけれど、どんな不幸な未来だって、僕がいない未来なんて知ったことじゃない。
 明日から学校に行ける気はしなかった。僕が普通じゃないことに代わりはなかった。たとえ今、さっきの彼女が出てきたって僕に釣り合わない。彼女の存在はただの幻に過ぎないだろう。でも、死んで何かを解決したことにする気にはならなかった。僕は死にたくなかった。理由なんて分からない。でも、死にたくない。
 夜中の台所で君に話しかけたかった、というフレーズを僕は思い出した。谷川俊太郎の詩集のタイトルだったか。僕は彼女に話しかけたかった。今はまだ語りかける言葉も思いつかない。でも、きっと今じゃない未来に、いつか、どこかで誰かに会う日が来るのかもしれない。幸せな未来なんかじゃなくていいから、ただ、瞬間のすれ違いだけでいいから、僕は彼女に話しかけたい。そう思った。
 真っ暗な台所から僕は静かに立ち上がり、ゆっくりと階段を上って部屋に戻った。また家から出られるようになったら、図書館へ行って詩集を借りてこよう。谷川俊太郎なんて名前しか知らない。世の中は僕の知らないことばかりだ。僕に関係ないどこかの予知なんてたいした問題じゃない。知ったことか。そう、思うことにした。布団に入る前にカーテンを開いてみた。落ちて死ぬような気がした。窓の外は都会の薄明るい闇、まだ僕の白日夢は続いている。きっと僕が僕である限り、このよくわからないビジョンは続いていくんだろう。でも、僕は眠るために目を閉じることができた。あるいは、苦労はするかもしれないけれど、規則正しい生活をすることだってできるかもしれない。夜寝て朝起きること、きちんと食事を摂ること、適度な運動をすること。それができれば僕は生きられると彼女は言った。それを目指してみようと僕は思った。彼女を殺してきたおかげかもしれない、それができる気がした。根拠なんて何もなかったけれど、そう思った。
 僕は布団にもぐりこんで目を閉じた。眠りはほどなくやってきた。また僕は何かの夢を見ていた気がする。でも、目が覚めたら何も思い出せなかった。
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