もうじき僕は歌わない。@Wiki io05

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タイトルは未定のまま

1/7 2時半 ちょっと進捗状況の報告など。

テーマ「過去の清算と未来の選択」

 ※ 三題噺の転用。たぶん最後の部分?
 ※ 鴉は、カフカの意味と熱田高校の制服のダブルミーニングです。
部分的にセシルも含む。

  • 電話でイトイカズマを呼び出すアズキミサト(AZUKI MISATO)
 指定場所は、昔、一緒に通っていた学校にほど近いファミレス。
「ごめんなさい、こんな夜中に呼び出してしまって」
 十年ぶりの再会。鏡を見なければ、あの頃と何も変わらないつもりの
カズマ。
 目の前に現実がある。
 知っているミサトは、あどけない少女だった。
 パンツスーツに身を包んだ目の前の女性は、言われなければミサトだ
と気づかない。
 昔の方が素敵だ。全然、昔の方がいい。
「どうしても聞きたいことがあったの」
 紅を引いた唇が、訓練された開き方をする。
 大人の女性。子どもだった、あの頃の方がいい。
「何?」
「あなたは、この十年、何をしていたの?」

もうじき僕は歌わない。
 ~鴉~

 深夜のファミレスの、何か暫定的な雰囲気。朝が来るまで何も変わら
ないのに、まるで朝なんか来ないことが約束されているような沈黙。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
 オーダーを取りに来た店員に、ミサトはメニューも見ずにチキンサラ
ダとかりかりに焼いたトーストを注文する。
「おなかは空いてる? お酒を飲みたい?」
「じゃあ、食事と一緒に、季節限定のパルフェを」
 復唱した店員が厨房に戻るのを見届けてから、ミサトはじっとカズマ
の顔を、まるで美術館で高尚な絵画を鑑賞するように眺めた。
「何?」
「なんでもない。十年か、と思っただけ」
 十年前、カズマはミサトのことが好きだった。面影を探している自分
に気づくと、今はどう思っているんだろうと思う。あの頃はゴムでひと
つにまとめていた黒い髪、ショートにしている今でも、色は変わらな
い。あの頃は優等生的メガネだったけれど、今はコンタクトにして素顔
を晒している。
「夢を探すことが夢です」と十年前のミサトは言った。
「他人に夢を与えられる仕事がしたい」と、同じ頃のカズマ。
 十年前のカズマは、勉強はできないけれど、いつも手を動かしている
少年だった。漫画を描いたり、それを粘土で立体造形したり、消しゴム
でスタンプを作ったり。クラスの中では、アンダーグラウンドな人気者
だった。トイレに行こうとすると、誰かが必ず連れションに立つくらい。
「嬉しいの、それって?」
「ホモとか、そういうのは妄想の中だけで間に合ってるから」
 十年後の今、変わらないどころか、とめどなく育った妄想だけを支え
に日々を送っている。
「その辺の情報は、トシキから行ってるんだろ?」
 今でもつながりのある、共通の友人の名前をあげてみる。
「定職にも就かずに、ニッチ市場向けの漫画を描き続けてることは聞い
た」
 まだ羽根や尻尾の生えた女の子のイラストとか描いてるの?

「だったら、他に何の説明が必要なんだ」
「それだけの十年?」

 しかし、とカズマは軽い口調で話しかける。だって軽い口調で話しか
けるしかないじゃないか。
「高校卒業から十年、会わないんだもんな。同じ街に住んでるのに」
「昼間しか出歩かない公務員と、昼寝て夜起きるピーターパンが、どこ
で会うの?」
「住民票を取りになら何回か行ったけど」
「公務員って言ったら住民票ですか」
 この街には250万の市民がいて、この国には、その50倍
くらいの国民がいて、その50倍くらい、世界にはひとがいて……。
 この十年、おまえは何をしていたんだ、とカズマは問いかける。たぶ
ん地雷を踏む、その覚悟はある。
 昔からずっと、貧乏くじばかり引いていた。
 黙って、ミサトは袖をまくり上げる。隠れるくらいの手首から、ひじ
までの間、何本も走る線。
 いつから、と条件反射。
「最近はしていないから」

「死ななかっただけ上出来」



  • 名前をください。→「環」で。
  • 「ここでないどこかへ。」

  • おまえだって小説を書いていたんじゃないのか。→もう卒業した。