隣の家にツンデレのサトラレが越してきた

このそらの下で-第二話後編-

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243 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)11:06:01ID:F5YOY29j0
 それから数日、僕はひたすらツンを屋上で待った。
 メリーさんとの電話は、相変わらず続いた。
 メリーさんの電気屋巡りは続き、とうとう全てのお店からブラックリスト登録されたらしい。誇らしげに話していたのは、ついこの前。
 同人ショップで目を付けられるようになったのが、一昨日の話。
 そして何も変わらずに、メリーさんは僕の家電を聞きたがりまくった。タウンページに登録してないから、家電から住所は割れないよ。と、教えてあげるとかなりきょどったのはつい昨日の話。
 そして、また今日も電話がかかって来た。
「こちらメリーさん、大佐! さっそく指示を欲しいの」
「はいはい、今日はどうしたの?」
「あ、コンビニで携帯を充電していたら、なんか今凄くばれそうなの。メリーさん、ちょっと目を離して携帯充電しながら漫画読んでいたら凄くピンチなの」
「電気屋は、ブラックリスト載りしたから、今度はコンビニで携帯を充電しているんだ……。自業自得じゃない?」
「そ、そんな……。メリーさんの電話没収されたら、あなたとお話出来ないの」
「うん、そうだねえ。電気泥棒だから、捕まるかもよ?」


244 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)11:06:37ID:F5YOY29j0
「逮捕されるお化けなんて前代未聞で、ちょっとwktkwwwwwww」
「はいはい、って言うか電話やめてさっさと退散すれば良いじゃん!」
「それは駄目なの。今、電池2だからここで充電しないとなの。逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ! なの。それに、やっぱり捕まるのもやなの」
「なんかもう、色々なものに侵食されているね……」
「あ、ばれた! 大佐、アラートモードに突入したの!」
「大声出すからだよ……、だいたい、漫画を立ち読み何時間もしていたんでしょ? その時点で、疑われていることに気付こうよ」
「ちょww 本当に、やばっ、あーーーーーー、Hey! boy! whatdoyoudo!」
 ぶちっと何かを引っこ抜く音と共に、メリーさんが突然英語で話しだした。
 電話の向こうの声が遠ざかる。
「あんたさ、こういうの罪ってわかるよね?」
 若い男の人の声が聞こえる。あー、店員に捕まったよ。
「hmm what do you say please tell me english!」
「はぁ? 何わけわかんないこと言ってんの。良い? こっちも仕事なの? 解る? あんたね、携帯の電源だか、なんだか解らないけど、勝手にこういうことしちゃいけないの」
「hmmm」


245 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)11:08:19ID:F5YOY29j0
 うわーー、外人を演じて日本語わからないフリして逃れるつもりだ~~。相変わらず、やることが汚い。
「だいたい、アンタさっき思いっきり日本語で話していたよね? 日本語の本読んでいたよね? とりあえず、ご両親呼ぶから裏に来て」
「うむううううう……」
 メリーさんの唸り声が聞こえる。僕は何も言わずに、ただ遠まきに聞こえる会話を聞いていた。
「………!」
 何かメリーさんが言ったような気がしたけど、小声すぎて聞こえなかった。
「あ! あれなーーんだ! この隙に乗じて、万引き犯がいるの!」
「つまんない嘘吐くと、お前警察呼ぶぞ!」
「マジなの、マジなの! ほらほらほら! あれ! 厨房が! あーーー、メリーさんも同じことしたかったのーーー!」
「お前、本気で往生際悪いなあ! 店長!」
 あー、多分、今のは本気だったなあ。メリーさん、可哀想に。でも、あれなーんだ! って、一体どこで覚えたんだろう? ネタが古いよ。
 電話の向こうが、ざわざわとしだす。
 ノイズが沢山聞こえ、その向こう側で、中年の男性の声が聞こえた。何か、ぼそぼそとバイトの人と話しているみたいだ。
「いい? これから、警察に引き渡してちょっと説教してもらうからね? 解るよね? どうしてだか」


246 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)11:08:55ID:F5YOY29j0
「だいたい、日本はこんなに電気に溢れているのに、ちょっとくらい譲ってくれたって良いと思うの!」
 うわー、逆切れだよ。
「メリーさんの故郷のウェールズの片田舎では、夜になると電気がぽつりぽつりなの! 日本は夜でも、凄く明るいくらい電気あるのに、携帯の電気くらいケチってどうするつもりなの! 恥かしくないの! そんな小さな電気代で、ケチケチして!」
 しかも、止まらない。ほんと、往生際悪いなあ……。
「それとこれとは、関係ないでしょう? じゃあ、銀行にはお金が沢山あるけど、君の故郷の人は無断でちょっとづつ持って行くのかな? そうなったら困るだろう?」
 うん、その通り。残念だけど、メリーさん。謝ろうね。ごめんなさいって
「うむううううううう」
「ほら、今ならご両親呼んで少しお話しする程度で許してあげるから」
 凄い良い人だなあ。この店長さん。
「……、ごめんなさいなの……、ひっくうぇっぐ、すん、パパとお話していたの。パパね、メリーにこの電話だけ渡して、ママとメリーを故郷に置いたままどっか行っちゃったの。それでね、メリー頑張って日本まで来て、パパを探していたの。今、やっとパパと電話できたの」
 電話の向こうが静まり返る。


247 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)11:10:57ID:F5YOY29j0
「ママは死んじゃって、メリー独りぼっちでこの電話の先のパパだけが頼りなの……。だから、電話きらせたくなくって、ぐすん、ひっく」
「それは本当なのかい?」
「店長、コイツさっきから嘘ばっかついているから、信じないほうが良いですよ!」
「まあ、聞いてみるだけだから」
 あーー、ななななな、なんかすっごいやな予感がする。
「それじゃあ、メリーちゃん。パパと少しお話しても良いかい?」
「……、うぇっぐ」
「それじゃあ、少しお話しするね」
 ばかーーーーー! メリーさんのばかあああああ! お前今頷いたろおおお! 
「こちら、○○の秋葉原店、店長の向原と申します。メリーちゃんのお父様ですか?」
「え、ええ」
 僕はできーーる限り、大人っぽく聞こえるように頷く。
「随分若い方ですね……」
「そ、そうでしょうか?」 
 そりゃそうです、だって僕高校生。


254 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)17:05:29ID:F5YOY29j0
「今回こうしてお話をさせていただくのは、お宅の娘さんが弊店で無断に携帯を充電しておりましてね。相当悪質ですし、本来なら警察に突き出すところですが、こちらとしても事を穏便にすすめたいのです」
「め、メリーがそのようなことを……。警察のやっかいになるようなことを……、ああ……」
 出来る限り落胆したように話す。
「ですから、娘さんを引き取りに来て頂けませんでしょうか? そして、二度とこのような事をしないと約束していただきたいのです」
「……」
 あーー、ばかあああああ! そんあ引き取りにいけるわけないじゃーーーーん! どあほーー!
 こ、こうなったら僕も腹をくくるしかない。
「残念ですが、それは出来ません。メリーから話は聞いたと思いますが、私は今1人です。
妻と、メリーはウェールズに残してきました。私は、今莫大な借金を抱えておりましてね。人前に姿を現すわけには行かないのです。
妻と娘には、このような逃亡生活を送って欲しくなく、故郷に残しておきました。それが、このようなことになるなんて……」
「ふむ……」
 ここで、メリーさんが絶妙のタイミングでパパぁ! ねえ、パパ! メリー一緒に暮らしたいよ! って叫んだ。ナイスっ。
「どうか、どうか! 今回だけは許していただけないでしょうか? 私からメリーにはキツク言っておきます」


255 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)17:06:48ID:F5YOY29j0
「……、解りました。初犯のようですし、今回だけは特別に見逃すことにします」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
 やったあ! 色んな意味でありがとうございます! マジで!
「店長! コイツ、絶対に始めてじゃないですよ。手馴れていますもの」
 後のほうでバイトの人が大声で言った。あたりです。そこの人は、もろに常習犯です。
 電話の向こうの声が遠くなる。
「店長、それで良いんですか?」
「まあ、ウチの店では初めてだし。こうやって、罪になると解ればもう二度としないでしょう」
「うぇ、ぐっす、ひっく、メリーどうなっちゃうの?」
「メリーちゃん。こういうことしたら駄目なのは、よーく解ったよね? 今日は、許してあげるから。パパとゆっくりとお話し」
「ありがとー、お兄ちゃん大好きなの、ぐっす」
 し、しらじらしい……。
 暫く、電話の向こうで話し声と物音が聞こえて、騒然とした音が聞こえてくる。
 外に出たらしい。
「ふぅ……、大佐! 今回は中々難しいミッションだったの」
「はぁ、呆れてものも言えない」
「メリーさんも、そろそろ秋葉に限界を感じ始めたの」
「遅いよ、もぉ……。だいたい、僕の嘘なんかすっごい稚拙なんだから、ばれたらどうするつもりだったの?」
「ばれたら、その時は……」


256 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)17:07:16ID:F5YOY29j0
(いるかな……? あ、いた)
「あ、まって、ごめんっ! 電話切るね」
「りょ、了解なの」
 僕は携帯の通話を切ると、後に向かって
「おはよー、ツン」
 と、声をかけて振り向いた。
「お、お、はよう」
(び、びっくりさせないでよ!)
「ごめーん」
「きょ、今日はちょっと風にあたりにきただけよ」
 ツンは風を浴びながら、屋上の入り口のところにいた。
「うん♪ きてくれてありがと」
「べ、べべべ、別、別にあんたに会いに来たわけじゃあ」
(心配かけちゃったし、どう切り出そう……)
「それでもありがと♪ それに、そんな所にいたら寒いよ? そこ日陰だし」
「解っているわよ」
(うーーん)
「まあまあ、こっち来て」
「言われずとも」
(どうしよう、やっぱり今日も日を改めようかな? 上手く話せそうに無いわよ……)
「うまく話さなくったって良いじゃん。今日も日を改められたら、イチゴミルクまた飲まなきゃいけなくなるよ」
「でも……」


257 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/16(水)17:07:40ID:F5YOY29j0
「いい日もあって悪い日もあって、色んな日があるんだから。それに、僕謝ってないし。ちゃんと、だから謝らせて。ごめんね、寂しい思いさせちゃって」
「はぁ……、敵わないな。あんたには」
(いい日もあって悪い日もあってか……)
「はい、これでも飲んで」
 僕はツンのところまで歩いていって、イチゴミルクを渡す。彼女が小さな頃から大好きだったもの。
「う、うん」
(もう、物じゃ釣られないわよ)
「あ、やっぱり」
「今度からは、もうちょぉっと物以外の手段を覚えなさいよ」
(ま、こういう子供っぽさがあんたらしさなんだけどね)
 ツンはそう言って笑った。
「むー、子供っぽさが僕らしさってちょっとショック。ちゃんと他の手段も覚えるよ」
「まー、しょうがないんじゃない? あたしがしっかりしてないとアンタ駄目だし」
「はーい」
「って、相変わらずこれは生ぬるいのね……」
 ツンはイチゴミルクに口をつけて文句を言った。
(ほーーんっと、こういうところも進歩ないから、さっきの取り消し。やっぱり五分五分ね)
「あはは、手痛いよ。進歩するように、ガンバリマス」


27 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/20(日)21:35:35ID:7Bt/9aAL0
 それから数日後。
 僕とツンはいつものように話し、屋上でこの空を眺めていた。
 携帯が鳴る。
「はいはい」
(あ、メリーって子かな?)
 僕が電話に出ると同時にツンが、ふっとこっちをみた。
「あ、私メリーさん。今ちょっと秋葉に限界を見出して放浪中なの」
「うん……、あ、待って、今日は僕じゃなくって別の人とお話してもらいますっ」
「別の人?」
 メリーさんが頷く前に、僕は携帯をツンに渡す。
「は? 何?」
(え? どういうコト? 何話せって言うのよ!)
「まあまあ、せっかくかかってきた電話だし。僕が今までどんな人と話していたか知って欲しいしねっ♪ そしたらツンも暇じゃないでしょっ」
 実は密かにずっと思っていたことだった。
 仲直りした日からずっと。
「はい?」
(ちょっっとお、あーーー、でも、その気持ちは嬉しいかもな)
「あ、私メリーさん。あなただあれ?」 


28 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/20(日)21:36:51ID:7Bt/9aAL0
「あたし? あたしは、その、アイツの友達」
「ふふーん、なるほどなの。彼女?」
(ぶっ!! かかかかkkkk)
 真横で二人の会話を聞いていた僕を、ツンは突き飛ばしてそのまま走り去ってしまった。
「いたっ、つーーーん! どこ行くの~~~!」
「うっさい! とと、とととと、とりあえず、あたしの声が届かないくらい!」
(何言い出すの~~、くぉ、ここここの子は~~~!)
 結局、屋上の端っこまで走って行ってしまった。
 こっからでは、電話をするツンしか見えなかった。
 時々身振りなんかをしながら、彼女は話していた。なんか新鮮な気がした。そんな彼女を見るのも、他人と自然に話すツンを見るのも。
 遠く遠く限りなく透き通った空を見たら、何故か、何かが終わるような、そんな気がした。
「ねっ、電話」
「あ、うんっ」
「ま、まあ楽しい奴じゃないのよ」
(ふぅ~~、イキナリ何を言い出されるのかと思ったら……)
 ツンに声をかけられるまで、暫く僕は空を見上げてぼっとしていた。
「あ、なあに?」


30 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/20(日)21:38:23ID:7Bt/9aAL0
「そろそろ、メリーさんもお電話をよそうかなって思ったの」
「……、うん、今、なんとなくそんな気がした」
「あなたの謎も沢山解けたの、メリーさんの何故も結構わかったから」
「あははw 時々メリーさんは、訳解らないこと言うよね」
「ふふふ~♪」
 暫く僕は、ツンに今話していることを説明しながらそんな下らないことを話していた。
「さてっと、次で最後の電話にするの。だから、あなたの家の住所を教えて欲しいの」
「それじゃあ、メリーさんも一体何者なの? それを教えて」
「ふむぅ、解ったの」
「僕の家は、神奈川の海沿いだよ。湘南って呼ばれる地域。住所は~~」
「了解、解ったの。メリーさん、もう電車マスターだからただ乗りでそっちまで行くの」
「相変わらず、やること汚いなあ。メリーさんのことも教えてよ」
「明日ね、まだ内緒なの。私メリーさん、今、東京駅で暮らしているの」
 がちゃっと電話が切れた。
「ふ~、ねえ、ツンはどんなことを話していたの?」
「べ、別に……」
(ううう、思い出させないで~)
「ふ~む」
 複雑なお話なのかなあ? ぷいっとツンはそっぽをむいた。


21 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火)00:16:58ID:gq+pA22E0
 ツンと僕の変わらぬ日常の始まりで、ちょっとした事件のオシマイは、一本の電話からだった。
「こんにちは、私メリーさん。今あなたの住んでいる町の近くにいるの」
「うん、やっとだね」
 その電話は、冬の朗らかな日のこと。
 とても綺麗な日本語で、挨拶を交わした。
 落ち着いて電話に出る僕に、
「うん、とうとうなの。メリーさんちょっと寂しいの」
「ちょっ、メリーさんw 散々人の家の場所を知りたがったのにね」
「うん、あはは~、私メリーさん。そろそろ電車が着きそうだから電話を切るの」
 相手は、やっぱり名前と現状を言って電話を切った。
「メリーさんかあ」
 誰でも名前は知っているだろうケド、僕とツンしかしらない。誰も知らない都市伝説の彼女。
「変な子だったわね……」
「本場から出勤だしね」
 始まりの電話を少しだけ思い出した。あの時は1人で家で受けたけど、今は外でツンと一緒に電話を受けている。
 随分昔のような気がした、ほんのちょっと前の話なのにな。なんて思っていたら、やっぱり電話がなった。090から始まる携帯の番号から。


22 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火)00:17:42ID:gq+pA22E0
「私メリーさん、今からあなたの学校に行こうと思っているの。んー、田舎なの」
「田舎は余計だって! で、メリーさんはほんとーに何者? イタ電でしたじゃないでしょw」
「私は、あなたの知っているメリーさんなの。ただ、お化けでちょっとお茶目な事をしていた時期もあったけど、やっぱりあなたの知っているメリーさん。メリーさんは、今旅しているの。幸せ探し」
「なるほどねえ、あはは、次はもう電話してこないんだよね」
「うん、電話もこれでオシマイなの」
「見つかった? 幸せ」
「わかんないのwwwww あなたは?」
「そんなの解らないよ、高校生に聞く質問じゃないから」
「あ、ところで家に行っても会えないから、学校の場所を教えてほしいの」
「うん、学校の住所はって言うかそっから見えるよ。小高い丘の上にあるから」
「あ、見えたの」
「はいはい、じゃあ、近くに来たらまた電話してね」
「私メリーさん、近所の視線を集めまくりんぐwwww うぇww メリーさんの可愛さに皆嫉妬の視線が痛いのw」


86 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:43:32 ID:gq+pA22E0
「とりあえず、電話は切るね?」
「はいはい、最後は次なの」
 ゆっくりと通話を終わらせた。
 僕とツンは金網に背を持たれながら、メリーさんが来るのを待った。
「ねえ、ツン」
「ん?」
「ここ最近のこと、どう思う?」
 僕はなんとなーく、ツンに聞いてみた。
「ん~~~~」
(そりゃ、色々あったわよ)
「そっかあ」
「あんたは?」
(やっぱり、あたしのことで心配とかかけたのかな? 迷惑とかかけたのかな?)
「んーー、僕も色々っ。ツンのこととか、僕のこととか、色々」
「そう」
(やっぱり、あたしのことで心配かけたんだ……。ごめん)
「いえいえ♪ 心配するってのも良いもんだよ。お姫様っ」
「あんた、今吐いてる白いの、脳ミソ溶けた奴じゃない?」

87 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:44:19 ID:gq+pA22E0
(ばっかじゃない……)
「ごめんなさい」
 ふいんきを軽くする為のジョークだったのに……。
「その脳ミソの足りなさに免じて、許してやらないことも無いわ」
(ま、あんたの精一杯って所でしょ)
「えーーーっ。ぼ、僕も、もしかしてサトラレ?」
「違うわよ、ばーか。アンタは顔に出るの。空気緩まそうとか、思ったんでしょ。しゅんとされたら、こっちが気分悪いわよ」
 ツンが苦笑いをしながら言う。
「あはは、なるほど……。むぅ、かなわんのぅ」
「かなうわけ無いでしょ? 誰にもの言っているのよ」
(まーだ、あんたにデカイツラさせないわよ)
「デカイツラなんかしてないもん」
「ふっ」
(ま、あたしと張り合うにはあと10年必要ね!)

88 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:49:18 ID:gq+pA22E0
「あはー」
 ほんっとツンには敵いそうにないや……。
 冬のにおいのする空は、なんだか今日も穏やかだった。
 ツンの髪のにおいがちょっとだけした、とっても落ち着くいいにおいだった。
 寄り添う僕らの目線の先には、給水塔があってその先には見慣れた青空がある。ちょっとだけ手が冷えてきた。
 僕は自分のポケットに手を突っ込みながら、電話を待った。
 そして暫くして、
「あ、電話きたよ」
「うん」
(とうとうメリーって子と、ご対面ね。どんな子なのかな)
「気になるね、電話に出るよ」
 ぴっと通話ボタンを押すと、聞きなれた子供っぽい声がした。
 ツンは僕の電話にぴったりと耳をくっつけて、話を聞いている。
「あ、私メリーさん。今あなたの学校にいるの。どこにいるの? このままじゃ、メリーさんあまりの美貌で全校生徒のアイドルになっちゃうの」
「あはは……、おばけなんだから姿消すとか、そういうコトできないの?」
「出来たらとっくの昔にしているの、で、どこにいるの?」
 電話の向こうがざわざわとしている、あーっちゃ、本気でふっつうに来ているみたい。
「屋上だよ。二号館って解る? そこの上」
「二号館? ちょっと待って欲しいの」


89 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:49:53 ID:gq+pA22E0
 電話が遠くなって、その向こう側で誰かと話している声が聞こえた。
「はいはい、了解なの。今からそっちに行くの」
「うん、解った。なんか、メリーさん最後まで現実的だねえ。おばけっぽくないよ」
「メリーさん化け物じゃないんだから、そんなすっごいことできないの! 酷いの! 今の言葉だけで、慰謝料ふんだくれるの」
「ふんだくらないで、学生だからそんなに持ってないんだ」
「それじゃあ、土下座して謝ったら許してあげるの」
「じゃあ良いよ、訴えて」
「さいごっ位もっと構って欲しいの、メリーさん孤独なろんりーお化け」
「あははは」
「とうとう屋上近くまでやってまいりました、この階段は死刑囚が上るといわれる13階段のように重く重く圧し掛かっております。一歩、一歩と歩む様は、まさに戦場に向かう戦士の出陣ではないでしょうか? はい、じゃあ、ここでいったんCM入りま~す」
「ごめん、元ネタがわからない」
「古館と、タモさんなの。最後の一旦CMがタモさん、そこまでは古館なの。修行不足は否めないの」
「ふーん」
「って、とと、扉が開かないの。んーー! んーー!」
「わーーー、ばかーー! 鍵かけているんだから~~。僕とツンしか持ってないから、絶対開かないようになっているの。無理に開けようとしないでーー!」
 あああー、もお! 最後は力技にでようとする~。


90 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:50:22 ID:gq+pA22E0
「メリーさん、ちょっと100%になるから扉を吹っ飛ばすの」
「ならなくって良いから! ちょっと待ってて、今すぐあける」
 僕とツンは一緒に立って、扉まで行くと鍵を開けた。
「はい、開いたよ」
「それじゃあ、そのまま後ろを向いていて欲しいの。振り向いたら、絶対に駄目なの。解った?」
「はいはい、私メリーさん、今あなたの後にいるのってしたいんでしょ?」
「約束だから、それは外せないの」
「はーい」
 僕らはくるっと後ろを向いた。
 金網の向こうに、輝く太陽と町がどこまでも見えた。
 その先には、真っ青な海が広がっている。大きなイチョウの木が一本町の中に見えた。あんなのあったんだ……。
「後ろ向いたよ」
「了解なの」
 電話と、そしてメリーさん本人の声が聞こえた。なんだか、凄く近くにいるのに電話で話すって変な気がした。
「私メリーさん、今、あなたの後にいるの」
「ごーる~」


91 名前: ◆Qvzaeu.IrQ[]投稿日:2005/11/22(火) 16:51:00 ID:gq+pA22E0
 その時、メリーさんだと思う。誰かが後っから、ちょんちょんと僕らの背中を叩いた。
「振り向くよ? 良い?」
「どうぞ~」
 そして振り向いた僕らの前には、金色の髪をした子が階段を下っていく姿がちょっとだけ見えた。
 ただ、本当にちょっとだけで歳も背格好もあまりよく解らなかった。でも、それで良いかなっておもった。
「ありがと、メリーさん」
 走って消えていく背中に、僕はふっとつぶやいた。
 もう電話の通話は切れて、ただただ、ぷーぷーって音が聞こえた。
 暫くその電話の音を聞いていると、僕は静かに電話を切り、履歴からメリーさんの番号を消した。
「ばいばい、また今度会うときがあったら会おうね」
 僕らの少し変な日常は、静かに静かに終わったのでした。
 初めて、そこに僕とツンと他人がいたような、そんな気がした冬の朗らかな日。 
 この空の下は、いつまでも穏やかだった。

            ~このそらの下で、第二話おしまい。


97 名前: ◆Qvzaeu.IrQ [] 投稿日:2005/11/22(火) 17:50:15 ID:gq+pA22E0
では、あとがきを失礼させてもらうね。

このお話には、おっきなテーマがあってそれにそって小さなテーマを幾つか展開するって形式で書いてみました。
おっきなテーマの中には、この物語り全体の「悟られるツンデレ」の生き方。
そしてそれを取り巻く環境と、彼女が彼女としてどう生き、考え、行動するか? ってのがあるんだけど
その内の小さなテーマは、そこに取り巻く何かを書くことに凄く集中して投下しているんだけど
伝わらなかったらごめん、俺の完全な力量不足っ。つまらないのも、俺の力が不完全なだけっ。
もっと精進するわwww
第一話は、閉鎖空間の中での外と中。これの破壊が、ある意味物語のスタートです。
そして二話はは伝えること、そして外へと向かうこと。
この二話から本当のお話が始まって、物語がどんどん進むようにって思う。
テンポは、一話が結構重かったからわりと軽めの文章にしてみたり、電話っていう外へ向かうツールを使ったりと
ちょっとだけ小細工をしてみたけど、読みにくかったらごめんねっ。
これからも、この物語には沢山のテーマとメッセージを持って書いて行きたいなって俺は思う。
ちなみに、キャラに関してはめりーさんは完全な俺の遊び心から生まれた奴。
今まで楽しいっていってくれたりしてくれた人、本当にありがとう! 一話限りのキャラだけど、これで浮かばれるww
他の主要人物に関しては、またいずれ書ける機会があれば書くね。
最後に、読んでくれている皆。ありがとう。
乱文長文なのに、励ましの言葉を貰うとそれだけで超漲ってきたよw
では、長文失礼しました。

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