隣の家にツンデレのサトラレが越してきた

僕達のひと夏

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匿名ユーザー

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98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2005/11/30(水) 02:29:04 ID:4nTns8/Q0
短編「僕達のひと夏」

「私ってさ、サトラレじゃん?」
「そうだね」
彼女は何ともあっけらかんと言ってのけた。
「ってことはさ、私って凄い?」
「かもしれないね」
「かもとじゃなくてさ、めっちゃすごいんじゃないの?」
「…だね」
「だったらさ、耳が聞こえない人とかにも声、届いちゃったりするのかな?」
「…どうだろ、調べた事ないから何とも」
心底残念な顔で空を見上げる川につけた足をジタバタと振り、水を飛ばした。辺りに落ちる水滴は日の光を浴びてキラキラとガラス玉のように輝いた。
「んーそーなのかぁー」(あー、残念)
「…でも」
「でも?」
言おうとして飲み込んだ。聞き様によってはとても恥ずかしい言葉だ。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2005/11/30(水) 02:30:23 ID:4nTns8/Q0
「…なにー?なんなのさー、はっきりしなさいよ、男の子っしょ?」
「あ゛ぁ゛ー…うん」
立っている僕の顔を覗き込むように彼女は顔をしかめた。
「あぁーうん、何?」
「いや、さ…君の声…心に届くから」
「…へ?」(心に…?)
「うん、胸の奥に響くように聞こえるんだ」
空を見上げる、頬が熱くなって行くのを夏の日差しの中で感じた。
「あー…」(胸の奥に…響く)
二人とも沈黙する、何か、考え事でもしてるのかと思ったが彼女はサトラレだ。聞こえなこないはずは無い。川のせせらぎと草の心地よいこすれる音だけが聞こえた。
「…!ば、バッカ!何言ってんのよ!」(あぁぁぁー恥ずかしい!)
水に手を浸すと、彼女は僕に向けて水を浴びせてくる。
「うわっ、つめたっ!」
「あははは!変なこという罰だ!」
「いや、本当にやめて冷たいから!」
「はははは!」
あまりの冷たさに身体が震える。夏とはいえ上流近い湧き水は冷たかった。僕は走って彼女を置く、笑いながら彼女は僕のほうを見続けた。


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2005/11/30(水) 02:31:19 ID:4nTns8/Q0
「一緒にさ!」
「んー?」
口のところに手を添えて彼女は僕に向けて叫んだ。
「一緒に…さ」(いえ、言うんだ律子!一世一代のチャンスっしょ?!)
遠いから良く聞こえない、耳を凝らしてみる。
「一緒に…」(あー!言って楽になっちまえ、当たって砕けろ!)
次第に彼女の声は小さくなるだが、心の声だけははっきりと聞こえた。
「………あぁぁぁぁぁぁ!なんでもない!」
「はぁ?」
思いっきり叫んだかと思うと笑っていって見せた。
「だから、いーの!えへへ」(一緒に居ようねって言いたかったな…)
「…そか」
可愛らしさに思わず笑みがこぼれる。僕も手を添えて彼女に言ってやった。
「一緒に!…居られたらいいな!」
「え……あ、うん!」
最高に、とびっきりの笑顔で彼女は笑って見せた。

短編「僕達のひと夏」 完

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