KUH(韓国次期輸送ヘリコプター計画? > KHP)

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▼2007年10月のソウル・エアショーで公開されたKUH(KHP)のモックアップ

KHP性能緒元
重量 7,256kg
全長 14.9m
全幅  
全高 4.45m
エンジン GE T700-701K 1,800shp ×2
最大速度  
巡航速度  
航続距離 500km
上昇限度 2,327m
武装  
乗員 13名

韓国国産ヘリコプター計画(KHP:Korea Helicopter Project)は、UH-1H汎用ヘリコプターと500MD軽ヘリコプターの後継として軍用輸送ヘリコプター272機を生産する事業である。軍用ヘリコプター477機を韓国で独自開発・生産する計画は「KMH事業」として2001年から検討が始まったが、監査院が「採算性に欠ける」として意を唱えたため先送りされていた。KMH事業では攻撃ヘリコプターと輸送ヘリコプターを同時に開発するはずだったがこれは白紙に戻され、輸送ヘリコプターだけを開発する「KHP事業」として2005年7月に決定された。開発費1兆3113億ウォンを含めた9兆1028億ウォンをこの事業に投入する計画だが、専門家によれば最終的に費用が10兆ウォンを超える可能性もあり、今後充分な議論が必要になるだろうと指摘されている。

KHP事業の国内主契約社はKAI(Korea Aerospace Industries:韓国航空宇宙産業)に決定していたが、海外の協力会社は欧ユーロコプター社と伊アグスタ・ウェストランド社、米ベル社が受注を争っていた。KAIは内々でユーロコプター社を希望していたといわれていたが、韓国軍はこれまで大規模な装備契約事業は全てアメリカ企業に発注していた(在韓米軍との関係もある)事もあり選定は難航した。結局ベル社は「2011年までに新規モデルを開発するのは不可能」として韓国側の要求仕様を大きく下回る既存モデルのUH-1Yのライセンス生産案を提出したために選定から漏れ、アグスタ・ウェストランド社もA-139の改良型を提案したために選考から外されて、KAIが国防部に要望していた通りユーロコプター社がKHP事業を受注する事になった。KAIとユーロコプター社はADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)やKARI(Korea Aerospace Research Institute:韓国航空宇宙研究院)と協力しつつ開発を進め、2009年までに1号機の初飛行を行う予定。韓国から40人の技術者がユーロコプター社に派遣され、6年をかけて開発が行われる。2006年12月、KHPの開発拠点がソウルの建国大学校内に開設された。

この新型輸送ヘリコプターは8t級の13人乗りで2時間飛行でき、1機あたりの生産費用は159億3000万ウォンと予想されている。KHPに使用するエンジンは米ジェネラル・エレクトリック社製のT700-GE-701Kに決定している。T700-GE-701KはAH-64アパッチ攻撃ヘリに使用されているT700-GE-701C(離昇出力1,800shp)を発展させたターボシャフト・エンジンで、GE社が韓サムソン・テックウィン社と共同開発を行う予定。燃料タンクの開発及び初期ロットの製造はGKNアエロスペース社が担当する。

【2007.05.04追記】
KHPの開発スケジュールと機体の要目が防衛事業庁から発表された。それによれば2007年6月までに基礎研究を終えて同年7月からは詳細開発に入り、2008年1月から試作機の開発を行なうという。当初2009年が目標とされていた試作1号機の初飛行は2010年まで延期され、2012年から量産を開始する予定。生産予定数は245機で、現在使用されているUH-1H汎用ヘリコプターを代替する。機体の規模はUH-1Hよりもひと周り大きく、UH-60Pよりも若干小さい。開発費は総額1兆2,960億ウォン、量産終了までに5兆ウォンがこの事業に投入される。輸出も視野に入れており、生産から10年以内に500機以上の輸出を目標にしているという。KHPの輸出事業はKAIとユーロコプター社が合弁投資会社を新たに設立して行なう予定。

【2007.10.16追記】
独EADS社はKHP用にMILDS(Missile Launch Detection System:ミサイル接近警報装置)であるAN/AAR-60を供給する事を明らかにした。AN/AAR-60は紫外線画像センサーを使用した完全パッシブ式のミサイル警報システムで、高い角度精度、低誤報確立といった特徴を持ち、海上自衛隊のSH-60J/Kにも装備されている。KHPへのインテグレーションは韓国のNEX1フューチャー社が担当する。

【2007.10.28追記】
KAI(Korea Aerospace Industries)とユーロコプター社はKUHの開発を行なう合弁会社を設立するという内容の覚書を、2007ソウル・エアショーの席上で調印した。出資比率はKAIが51%、ユーロコプター社が49%。この合弁会社は2010年から業務を開始する予定。ユーロコプター社はこのKUH事業に40名のエンジニアを送り、開発の技術支援を行なう。合弁会社はKUHの輸出事業も担当する予定で、約300機の需要を見込んでいるという。

【2008.02.23追記】
KHP用の総合試験・評価センターが2008年10月に完成する予定だと発表された。これは10億ウォンを投じて空軍第3訓練航空団の敷地内に建設される施設で、試験評価棟、飛行試験管制棟などからなり、各開発業者と軍が効果的にKHPの共同開発を行なえるようにするもの。KUHは2009年中に試作初号機を初飛行させ、2010年から初期低率生産を開始、2012年から本格量産に入る予定。

【2009.01.06追記】
KAI(Korea Aerospace Industries:韓国航空宇宙産業)は1月6日、KUH試作1号機の胴体部分の最終組み立てに着手する記念式典を開催した。KAIは試作1号機を2009年8月に完成させる予定との事。
(連合ニュース)

【2009.03.12追記】
韓国航空宇宙研究院は知識経済部の支援を受け、KUHの試験評価に使われる「ローター疲労試験設備」「開放型風洞試験設備」「ヘリコプター用エンジン高空試験セル」を建設したと発表した。ローター疲労試験設備は、ローターに作用する飛行荷重と反復荷重を再現し、ローターの構造強度や寿命を検証する。この試験設備の建設により、ヘリコプターのローターの国産化と技術開発のための評価テストがようやく可能になった。開放型風洞試験設備は既存の中型亜音速風洞にヘリコプター試験のために追加されたテスト部分で、韓国国内では最大規模を誇る。KUHの空力と騒音、排気ガス循環特性などの試験が可能。ヘリコプター用エンジン高空試験セルは、既存のエンジン高空試験セルにヘリコプター用のターボシャフトエンジン試験セルを追加したもので、実際の飛行高度の環境条件下でエンジンの性能をテストする事ができる。これにより韓国は、世界で8番目に固定翼機及びヘリコプター用エンジンの高空性能試験を行なえる能力を獲得した。航空宇宙研究院の関係者は「これらの設備によりKUHはもちろん、攻撃ヘリコプターなどの後続ヘリ事業でも関連テストを韓国国内で行えるようになり、海外での試験と比べて大幅に経費を節減できる。技術的な保安上の秘密も守られるだろう」と語った。

【2010.03.10追記】
2009年7月10日、韓国防衛事業庁は開発中のKUHについて愛称を公募した結果、第31師団96連隊所属のイ・ビョンジュン兵長が応募した「スリオン(Surion)」という名を採用することに決まったと発表した。「Suri」は韓国語で鷲を意味しており、「on」は「100」という意味がある純韓国語で、スリオンはその2つを組み合わせた造語。鷲の勇猛さと素早い飛翔、100%の国産化や開発の完全さを象徴する名であるとのこと[1]。

2010年3月10日、KUH「スリオン」試製一号機が慶尚南道泗川空港で初飛行に成功した。初飛行ではホバリングや地上滑走試験などが行われ、約10分間の飛行時間でであった[3]。防衛事業庁の関係者は「KUHは、開発試験の評価と運用試験の評価を経た上で、2012年以降の戦力化を予定している。」として、KUHの戦力化は「陸軍の航空戦力を大幅に向上させるであろう。」と説明した[3]。

【参考資料】
[1]ハンギョレ新聞電子版「初の国産ヘリコプターの愛称"スリオン"に」(2009年7月10日)
[2]連合ニュース「最初の国産ヘリコプターKUH、"スリオン"と命名」(2009年7月10日)
[3]アジア経済「韓国型ヘリコプタースリオン初飛行の成功」(2010年3月10日)

▼左から「ローター疲労試験設備」「開放型風洞試験設備」「エンジン航空試験セル」

▼KUHのモックアップ。外見はユーロコプター社のAS332「シュペルピューマ」をひと回り小さくしたような印象だ。
▼モックアップ内の操縦席
▼キャビン内部

▼白紙にされたKMH事業は、攻撃ヘリと汎用ヘリを一部共用のフレームで同時開発する計画だった。
▼KMHの攻撃ヘリコプタータイプの模型
▼KMHの汎用ヘリコプタータイプの模型
▼汎用ヘリタイプのモックアップ

【参考資料】
Defense-Aerospace
Kojii.net
Aviation Now
Missile & Arms
朝鮮日報
PowerCorea


2010-03-10 19:35:42 (Wed)

最終更新:1970年01月01日 09:00