KCVX(韓国航空母艦計画)


▼韓国のミリタリー雑誌が掲載した小型空母の妄想図。ドクト級揚陸艦をベースにしていると思われる。

韓国海軍は航空母艦取得に関してKCVXと呼ばれる整備計画を推進しており、2010年以降に整備して2015年以降に就役する予定と伝えられている。しかし韓国国防中期計画2020にKCVXは折り込まれておらず、また研究予算なども計上されていない。

KCVX計画は1990年代初め、韓国海軍は試験的に大宇造船海洋と現代重工へ空母設計を発注した事に端を発する。1996年、韓国の竹島接岸施設建設発表で日韓の関係が冷え込む中、当時の金泳三大統領は15機前後の固定翼機を運用する事ができる12,000tクラスの多目的空母を導入するため、大統領直属の秘密諮問機関が設置された。1996年10月のソウル・エアショーで現代重工は2012年就役を目標に計画中の韓国空母構想を発表、全長197m、全幅24m、15,000tクラスとされた模型が公開されている。また1994年にはキエフ級航空重巡洋艦(1143型:満載排水量43,500t)の2番艦ミンスクと3番艦ノヴォロシースクを韓国の民間会社がロシアから廃艦作業を名目に購入、その後ミンスクは1998年に中国に売却されたが、ノヴォロシースクは韓国国内で海軍と造船会社が各種調査を行いつつ解体された。キエフ級は純粋な空母ではないが、この時の調査で韓国は幾らかの技術的情報を得たと推測される。

しかし1997年に起き韓国をデフォルト寸前の状況にまで追い込んだ経済危機は、膨大な予算が必要になるKCVX計画を吹き飛ばしてしまい、経済力が回復するまでこの計画は持ち越される事になった。もし計画が推進され空母が建造されていたとしても、当時の韓国海軍には空母を護れる護衛艦艇が無く、有効的な運用は難しかっただろう。その後、経済力が回復した韓国海軍はKCVXの再計画を考え始めた。大きさは当初の12,000tから35,000tに拡大され、ハリアー若しくはF-35と対潜ヘリを最大で25機搭載するよう改められた。これにより外洋での運用に問題が無くなり、搭載機数の増加で有効なエア・パワーの投入が可能になる。しかし35,000tクラスの空母を常時展開可能にする為には複数隻の建造が必要であり、それを維持するには莫大な予算とインフラ、特殊技術者(パイロットを含む)の整備が必要で、経済力が回復したとはいえ韓国がKCVX計画を進めるのは極めて難しいだろう。現在のところKCVXに正式な開発予算は下りていないが、基礎的な研究は密かに続いている可能性がある。

【2008.01.01追記】
韓国造船工業協会のキム会長(三星重工業社長)は、2007年12月31日に行なわれた第5回KITA(韓国貿易協会)最高経営者朝食会において「韓国はその気になれば、いつでも空母を作ることができる」と発言した。キム会長はこの日”韓国造船業界の現在と未来”という主題で講演を行い、その後の質疑応答で「現在の韓国の軍事造船技術の水準は?」という質問に対し、「今の我々に作れない船は存在しない。我々は世界に誇る恐るべき技術力を持っている」と答えた。

【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
PowerCorea


2008-01-05 15:25:33 (Sat)

最終更新:2008年01月05日 15:25
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