RIM-66? > 156艦対空ミサイル「スタンダードSM-2」(韓国)


▼スタンダードSM-2を発射するKD-II型駆逐艦

■''RIM-66M-2 SM-2 BlockIIIA性能緒元''
全長 4.7m
直径 34.0cm
重量 706kg
最大速度 マッハ3.3
射程 140km
誘導方式 慣性誘導(アップデート有)
  セミアクティブ・レーダー誘導(終末期)

アメリカ海軍は1950年代の後半に3Tと呼ぶ艦対空ミサイル(SAM:Surface-to-Air Missile)を相次いで実用化した。超長距離防空を担うラムジェット推進のRIM-8タロス(Talos)、長距離防空用のRIM-2テリア(Terrier)、中距離防空用のRIM-24ターター(Tartar)の三種類である。巡洋艦以上の大型艦にしか搭載できないRIM-8タロスは第二次大戦型巡洋艦の退役と共に姿を消し、RIM-2テリアとRIM-24ターターは1960年代後半から発展型のスタンダード・ミサイルに更新された。スタンダードはブースターを装備してRIM-2テリアを代替する延長射程(ER:Extended Range)型と、ブースター無しでRIM-24ターターを代替する中射程(MR:Medium Range)型の2種類が開発された。1967年から生産が始まった初期のスタンダード・ミサイルをSM-1(Standard Missile-1)と呼び、SM-1MRはRIM-66、SM-1ERはRIM-67と命名された。アメリカ海軍ではSM-1ERは1990年代に退役しSM-1MRも2003年に退役したが、SM-1MRは海外でエリア防空用SAMとして現在でも幅広く使われている(海上自衛隊のはたかぜ型ミサイル護衛艦など)。

イージス・システムに対応するスタンダード・ミサイルとして開発されたSM-2は1978年に就役し、現在米海軍などで広く使われている。1983年に登場したSM-2 BlockIIは改良されたMk104ロケット・モーターを装備し、有効射程は倍近くまで延びた。SM-2 BlockIIIAは非イージス艦用。BlockIIIBではミサイル側面にIR(Infra-Red :赤外線)シーカーが新たに付けられ、SARH(Semi-Active Radar Homing:セミアクティブ・レーダー誘導)と併用される。SM-2 BlockIVA(RIM-156B)は海軍のBMD(Ballistic Missile Defense:弾道ミサイル防衛)の低層部分を担当するNAD(Navy Area Defense:海軍エリア防空)用として開発された。誘導はBlockIIIBと同じSARHとIRシーカーのデュアル・モードで、Mk125破片弾頭の改良型を装備している。BlockIVAは開発費超過を理由に2001年末にキャンセルされてしまったが、2006年5月24日に改良型のSM-2 BlockⅣAの試射が行われ要撃に成功した。SM-2 BlockIVB(RIM-156A)はSM-2ERとも呼ばれ、ミサイル後部に太く短いMk72ブースターを取り付けたタイプ。SM-2は低空の対艦ミサイルからヘリコプター、航空機などを目標とするSAMだが、水上艦艇に対しても攻撃可能だ。

SM-2はMk29連装発射機かMk41VLS(Vertical Launching System:垂直発射システム)から発射される。SM-2はSARHとINSを併用しており、中間期は慣性航法と母艦からの目標情報のアップデートを受けてターゲットの未来位置に向かって飛行し、目標に接近したところでSARH(BlockIIIBはIRシーカー併用)に切り替わる。このようにSARHが作動するのは目標に接近する直前なため、母艦のFCS(Fire Control System:火器管制装置)からのレーダー照射は数秒で済み、交戦可能な目標数を増やす事ができた。固体燃料によるMk104デュアル・スラスト・ロケット・モーターで推進されるSM-2の射程距離はBlockIIIで最大140km、Mk72ブースターを付けたBlockIVで最大240kmといわれる。弾頭はレーダー及び着発信管を持つMk125爆発破片弾頭である。FCSはAN/SPG-62が主に使用されているが、蘭タレス社のSTIRも使用されている。

SM-3(RIM-161)は海軍BMDの高層部分(大気圏外)を担当するNTW(Navy Theater Wide)計画用のミサイルで、現在ではABMD(Aegis Ballistic Missile Defense:イージス弾道ミサイル防衛)と呼ばれている。推進部分などはSM-2 BlockIVと変わらないが、シーカーと弾頭部分がノーズコーンと運動エネルギー弾頭(KW:Kinetic Warhead)、第3段ロケット・モーターに置き換わっている。目標に接近したSM-3はノーズコーンを切り離してIRシーカーで目標を捕捉する。その後KWは3段目ロケットから投射され、捕捉した目標を追尾しながら補助ロケットで軌道を修正し、目標に直撃して破壊する。SM-3の試射は1999年に始まり、2002年1月の試射では標的のミサイルを撃墜している。SM-3の引き渡しは2004年10月から始まり、2006年度末までに3隻の米イージス艦がBMD能力を備える予定。

韓国海軍はKD-II型(チュンムゴン・イ・スンシン級)駆逐艦にSM-2を装備している。搭載しているのはSM-2MR BlockIIIA(RIM-66M-2)で、推力偏向装置を付けてVLSに対応したタイプ。KD-II型はMk41 VLSを艦前部に32セル装備しており、32発のSM-2を搭載している。イルミネーターとしてSTIR-240を前部と後部に1基ずつ装備しているが、目標のデータを得るためのMW-08三次元捜索レーダーが探知距離は100kmしかなく、SM-2の射程距離を下回っているため有効な運用が出来ない。100km以遠の目標を攻撃する場合は2基あるSTIR-240のうち1基を、射撃データ取得用に使用するしかない。韓国海軍は2000年に1億5,900万ドルでSM-2ブロックIIIAを110発発注している(Mk13キャニスター込み)。

韓国は当初KDX-III型イージス駆逐艦にはRIM-156スタンダードSM-2 BlockⅣAを搭載する予定だったがアメリカでの開発が2001年にキャンセルされてしまったため(2006年に復活?)、BlockⅢBの搭載を決定した。アメリカからSM-2 BlockⅢBを48発とスペアパーツ、中間整備、人員の訓練費用などを総額1億1,100万ドル(オプション込みの場合)で契約する予定になっている(SM-2 BlockⅡBとする資料もあるようだ)。

【2009.05.28追記】
アメリカのDSCA(Defense Security Cooperation Agency)は議会に対し、韓国向けにFMS(対外有償軍事援助:Foreign Military Sales)経由でSM-2 blockIIIAを輸出すると報告した。全てのオプションを含めた契約総額は1億7,000万ドル。内訳はSM-2 blockIIIA 46発、SM-2 blockIIIB 35発、SM-2 blockIIIB(テレメトリ)3発、SM-2用ミサイルコンテナ84個、テスト器材、サポート器材、スペアパーツ、訓練及び訓練用器材、文書類、技術データ、その他の兵站支援。担当メーカーはレイセオン社。
(Kojii.net/Defense-Aerospace.com)

【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
世界の艦船(海人社)
艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)
Military Analysis Network(Federation of American Sientists)
Designation-Systems
Grobal Security
Kojii.net


2010-02-17 22:48:12 (Wed)

最終更新:2010年02月17日 22:48
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