RIM-7艦対空ミサイル「シースパロー」(韓国)


▼シースパローを発射するKD-I型駆逐艦

RIM-7P性能緒元
全長 3.66m
直径 20.3cm
重量 231kg
弾頭重量 40kg(HE)
最大速度 マッハ4.0
射程 20km
誘導方式 セミアクティブ・レーダー誘導

RIM-7シー・スパローは西側を代表する個艦防空ミサイルで、AIM-7スパローⅢ空対空ミサイルの技術を転用している。第三次中東戦争のさなかの1967年10月、イスラエル駆逐艦エイラート(Eilat)が旧ソ連製のP-15対艦ミサイル「テルミット」(NATOコード:SS-N-2 Styx/スティクス)によって撃沈された事件をきっかけに、BPDMS(Basic Point Defense Missile System:標準個艦防空ミサイル)として急遽生産に移された。BPDMSを構成するミサイル発射機はアスロック対潜ロケットのMk16 8連装発射機を流用したMk25で、ミサイル管制装置は手動、ミサイル本体のRIM-7EもAIM-7Eスパロー空対空ミサイルそのままだった。1973年にはNATO諸国共通のNSSMS(NATO Sea Sparrow Missile System)が開発された。このタイプは主翼を折畳み式にしたRIM-7H(AIM-7E2)を使用しているため、8連装発射機が軽量でコンパクトなMk29になった。

スパローが搭載しているマイクロ・プロセッサーを半導体化し、逆モノパルス・シーカーを採用してECCM(Electric Counter Counter Measure:対電子妨害手段)性能やシュート・ダウン能力が向上したAIM-7Mに発展すると、シー・スパローもRIM-7Mへと発展した。さらにRIM-7Mを改良したRIM-7Pは後部に受信機が設けられて中間段階でのアップデートが可能になっており、新型のレーダー信管(DSU-34B)を装備している。RIM-7Pは特に海面すれすれを飛来する低空目標の迎撃能力を向上させており、既存のRIM-7Mからの改造が可能。1970年代末からVLS(Vertical Launching System:垂直発射システム)の使用が検討され、JVC(Jet Vane Control)と呼ばれる垂直発射直後に目標方向へ偏向するためのアクチュエーターや慣性基準装置から成る15.8kgの装置が開発された。JVCはシー・スパローの後部に装着され、小型VLSのMk48や大型で1セルにシー・スパローを4発収納できるMk41から発射される。ミサイルが発射され目標方向へ偏向した後にJVCは破棄される。生産は米レイセオン社とゼネラル・ダイナミクス社で行われている。

シー・スパローはセミアクティブ・レーダー誘導ミサイルで、母艦から照射されるレーダー波とそれを目標が反射した電波を受信して目標を追尾する。そのためミサイルが目標に命中するまでレーダー波を照射しロックオンし続けなければならず、一度でもロックオンが外れるとミサイルは命中しない。またこのような誘導方法なので管制レーダー1基で1発しかコントロールできず、敵が多数の対艦ミサイルで飽和攻撃をしかけてきた場合に対処できない。現在生産中の最新型であるESSM(後述)はこの点が改良されており、中間期に慣性誘導を採用しているので管制レーダー1基で最大3発程度を同時にコントロールできるという。シー・スパローは基本的にMk95管制システム(FCS:Fire Control System)で誘導されるよう開発されたが、各国の事情によってその他のFCSも採用されている。ドイツやオランダなどNATO諸国ではSTIR-180やWM-25が使用されており、海上自衛隊では射撃指揮装置2型等が使用されている。

2004年1月から全規模生産が始まった最新型のRIM-162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile:発展型シースパロー)は空対空型のAIM-7シリーズとは別系列で、それまでのシー・スパローとも一線を画している。Mk41あるいはMk48 VLSからの発射に最適化させたもので(既存の8連装発射機も使用できる)ミサイル前半部は誘導システムごとRIM-7Pを流用しているが、後半部はより強力なMk134固体ロケット・モーターで弾体も25.4cmと太くなっている。翼の構成もスパローよりスタンダードSM-2対空ミサイルに似たものになっており、制御は主翼ではなくテイル・フィンで行い最大50Gの急旋回も可能になっている。ESSMは真上に発射された直後、TVC(Thrust Vector Control:推力偏向)で目標の方角に向きを変え、中間段階ではSM-2のように母艦からのアップデート情報に基いて目標データを更新しつつ慣性航法で飛行し、最終段階でセミアクティブ・レーダー誘導に切り替わる。このような飛び方をした場合のESSMの射程は30~50kmにもなるといわれている。

韓国海軍ではKD-I型駆逐艦(クァンゲト・デ・ワン級)がRIM-7Pを使用している。KD-I型は小型のMk48 VLS 16セルを艦橋前に装備しており、1セルに1発のRIM-7Pが装填されている。FCSは蘭タレス社のSTIR-180で、艦橋上とヘリコプター格納庫上にそれぞれ1基ずつ装備している。韓国海軍はESSMに興味を示しているといい、将来的にはRIM-7Pに変わってESSMがKD-I型に搭載されるかもしれない。

【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
世界の艦船(海人社)
艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)


2007-07-22 00:00:08 (Sun)

最終更新:2007年07月22日 00:00
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