F-15E「ストライクイーグル」はアメリカ空軍のDRF(Dual Role Fighter:複合任務戦闘機)計画で採用されたもので、F-16XLとの比較審査に競り勝ち1984年2月に選定された。F-15Eは副座型のF-15とほとんど同じ外形をしているが、本格的な対地攻撃能力を得るために機体各部に大幅な変更がなされている。機体構造は60%近くが再設計されており、構造寿命も8,000飛行時間以上になった。追加装備機器や大量の兵装を搭載するため機体各部が補強され重量も重くなり、これに耐えるように降着装置なども強化されている。また夜間・全天候下での精度の高い地上攻撃を行うためにレーダーやFCS(Fire Control System:火器管制装置)、航法システムを強化している。1984年2月に生産が開始されたF-15Eは、2004年に236機をもって生産を終了した。1991年の湾岸戦争では長距離侵攻可能な全天候攻撃機としてその性能を遺憾なく発揮し、夜間のスカッド狩りや大きな兵器搭載力を活かした機甲部隊の攻撃に活躍した。
電子機器類はレーダーがAN/APG-63(v)1に換装される。これは航空自衛隊のF-15J/DJの能力向上改修機で使用されるレーダーと同じものだが、F-15K向けのAN/APG-63(v)1は豊富な空対地攻撃機能が加えられ、RCS(Radar Cross Section:レーダー反射断面積)が小さい目標にも対応できるようになっている。また目標指示・航法ポッドはロッキード・マーチン社製のタイガー・アイが装備される。タイガー・アイはLANTIRN(Low Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night:夜間低高度赤外線航法及び目標指示)システムをさらに発展させた第3世代の航法・目標指示ポッドで、中波赤外線を使用したFLIR(Forward Looking Infra-Red:前方監視赤外線)・地形追随レーダーを収める航法ポッドと、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)TVとレーザー、IRST(Infra-Red Search and Track:赤外線捜索及び追尾)システムを収め長距離から精密誘導空対地兵器の使用を可能にする目標指示ポッドから成る。これにより地形の起伏に沿って天候・昼夜間に関わらず超低空で縦深攻撃を行うことができる。しかし元々F-15は制空戦闘機として開発されたため翼面荷重が小さく、空気密度の大きい低空を高速で飛ぶ事は苦手としている。兵装を満載した状態でのNOE(Nap-of-the Earth:地形追従)飛行は機体に大きな振動を発生させるだろう。F-15KはIRSTシステムと最新型のAIM-9X赤外線誘導空対空ミサイル「サイドワインダー」、JHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System:ヘルメット装着キューイング・システム)を組み合わせる事で高いオフボアサイト攻撃能力を有しており、AIM-120アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル「AMRAAM」の運用能力と共に高い空対空戦闘能力を有している。
電子戦装備はTEWS(Tactical Electronic Warfare System:戦術電子戦システム)AN/ALQ-135Mを装備する。自衛隊の装備するF-15J/DJはTEWSの輸出が認められなかった為、日本独自開発のJ/TEWSを搭載している。AN/ALQ-135Mは最新のTEWSであり、アメリカでも一部の機体しか搭載されていない。またレーダー警戒機も最新のALR-56C(v)1を装備している。他にもAN/ARC-232通信機、2重の統合型GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)及びINS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)、先進表示コア処理装置と6in液晶表示システム、TACAN(Tactical Air Navigation:戦術航法装置)とLink16データリンク・システムなど最新の機器を搭載している。しかし韓国空軍はLink16の地上側設備を有しておらず、F-15K間でしかリアルタイムの情報を行えない。韓国空軍はF-15Kの基地となる大邱に第2MCRC(2nd Master Control and Reporting Center:第2主防空管制センター)を開設した際、独自にLink16システムを構築しようとして失敗したという。
F-15KがこれまでのF-15Eファミリーと大きく違うのは、搭載兵装にAGM-84艦対艦ミサイル「ハープーン」とAGM-84H空対地ミサイル「SLAM-ER」(Standoff Land Attack Missile-Expanded Response:スタンドオフ対地攻撃ミサイル-発展型)の搭載能力を持たされている事だ。「ハープーン」と「SLAM-ER」の他にもF-15Eファミリーが搭載できる各種の精密誘導兵器の携行能力を持つ事は言うまでも無い。F-15Eの兵装搭載能力はコンフォーマル燃料タンク下部にステーションが追加された事で大幅に高まっているが、このステーションはミサイルのような精密誘導兵器を搭載する事ができなかった。しかしF-15Kではこれ等の兵装ステーションもスマート・ステーションと呼ばれるものになり、あらゆる兵器の搭載が可能になっている。
しかしF-15Kには幾つかの問題が発生している。まずスタンドオフ攻撃兵器として期待されていた「SLAM-ER」だが、このミサイルを誘導するためのデータリンク周波数が既に移動通信IMT2000が占有していて使用出来ない事が分かり、韓国空軍は急遽ボーイング社と周波数変更などの協議を行った。結局周波数の変更には約100万ドルの費用と12ヶ月の時間がかかる事が判明したため、有事の際は電波統制を行ってSLAM-ERに周波数を割り振る事にしたという。また対地精密攻撃に必要なDPPDB(Digital Point Positioning Data Base:精密映像位置提供地形情報)というソフトウェアがF-15Kにインストールされていない事が判明した。DPPDBはパイロットが希望の地点を精密攻撃できるよう支援するプログラムで、このシステムを利用すれば誤差範囲を10mから1mへ縮めることができると言われている。しかしアメリカは自国の「武器輸出統制法」による輸出制限品目として、この重要なソフトウェアをインストールしなかった。韓国はこの問題に関してアメリカに支援を要請し、アメリカは難色を示したが解決の方向に向けて交渉を行ったという。また2007年2月には地上を走行中のF-15Kがマンホールにタイヤを落とす事故を起こし、韓国空軍のインフラ整備に問題がある事も発覚した。
2006年8月19日、韓国空軍はF-15Kの墜落原因を「パイロットが行った急激な機動によって起きた重力加速に搭乗員が耐えられず意識を失ったため」と発表した。調査の結果、機体やエンジンに異常は見つからなかったという。しかし、この発表について韓国の軍事マニア達は幾つかの疑問を持っているようだ。まずパイロットが何らかのアクシデントで訓練中止を報告したにも関わらず、意識を失うようなGのかかる急機動を行うか?という点。発表では9G以上だったとされるが、上昇旋回して通常高度に戻るのにそこまでの高Gはかからないという。パイロットのキム少佐は2004年5月から2005年9月までアメリカでF-15Kの飛行教育訓練を受け、その後教官を勤めるほどのベテラン(総飛行時間1,900時間以上)であり、G-LOK(Gravity-Loss of Consciousness)が起こるような急激な機動は行わないだろう。このG-LOKが墜落原因とされたのはボーイング社のシミュレーションの結果に因っているようで、韓国空軍とボーイング社がF-15K導入が阻害されないようパイロットに責任を押し付ける為、早々にG-LOKが原因と発表したのだという話もある。またKF-16には装備されているGLC(G Limited Control:重力加速度制限)システムがF-15Kには装備されていないのも今後問題にされそうだ。