F-15K戦闘機「スラムイーグル」



F-15K性能緒元
重量 14,515kg
全長 19.43m
全幅 13.05m
全高 5.63m
エンジン F110-STW-129 ×2(第一次FX事業発注分)
F100-PW-229EEP ×2(第二次FX事業発注分)
最大速度 M2.5
戦闘行動半径 1,270km
上昇限度 18,920m
武装 M61 20mmバルカン砲×1
  AIM-120アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル「AMRAAM」
  AIM-9赤外線誘導空対空ミサイル「サイドワインダー」
  AGM-84艦対艦ミサイル「ハープーン」
  AGM-84H空対地ミサイル「SLAM-ER」
  JDAM誘導爆弾など
乗員 2名

韓国空軍はF-4D/Eの後継F-Xとしてダッソー社製ラファール戦闘機を退け、ボーイング社製戦闘攻撃機F-15Eの韓国型であるF-15Kを選定した。F-15Kは2008年までに40機が導入される予定。愛称は「Slam Eagle(スラムイーグル)」。

F-15E「ストライクイーグル」はアメリカ空軍のDRF(Dual Role Fighter:複合任務戦闘機)計画で採用されたもので、F-16XLとの比較審査に競り勝ち1984年2月に選定された。F-15Eは副座型のF-15とほとんど同じ外形をしているが、本格的な対地攻撃能力を得るために機体各部に大幅な変更がなされている。機体構造は60%近くが再設計されており、構造寿命も8,000飛行時間以上になった。追加装備機器や大量の兵装を搭載するため機体各部が補強され重量も重くなり、これに耐えるように降着装置なども強化されている。また夜間・全天候下での精度の高い地上攻撃を行うためにレーダーやFCS(Fire Control System:火器管制装置)、航法システムを強化している。1984年2月に生産が開始されたF-15Eは、2004年に236機をもって生産を終了した。1991年の湾岸戦争では長距離侵攻可能な全天候攻撃機としてその性能を遺憾なく発揮し、夜間のスカッド狩りや大きな兵器搭載力を活かした機甲部隊の攻撃に活躍した。

韓国空軍向けのF-15Kはアメリカ空軍向け最終アップグレード型のE-227をベースに、更にアップグレードを加えたものだ。エンジンはF-15Eシリーズで初めてジェネラル・エレクトリック製F110エンジンを装備する。これはF110-STW-129と呼ばれ、STWは韓国の三星テックウィン社の略でF110-GE-129をSTW社がライセンス生産したものだ。このエンジンは自衛隊のF-15J/DJが搭載するF110-IHI-100を上回る推力を持つ。STW社は最初の段階ではGE社からエンジンを受け取りボーイング社に引き渡すだけだが、第2段階ではノックダウン生産、第3段階では一部部品の自主生産という具合に徐々に自己生産割合を増やす予定だ。なおF-15Kの整備は当初ボーイング社が行なっていたが、KAIで行う事になった。同社は米空軍のF-15Kを累計500機以上オーバーホールした実績があるという。また同社はF-15Kの組立のほかに、F-15K採用の見返りとしてシンガポール向けF-15SGの部品製造の権利をボーイング社から獲得しており、慶尚南道泗川市の工場で生産を行なっている。

電子機器類はレーダーがAN/APG-63(v)1に換装される。これは航空自衛隊のF-15J/DJの能力向上改修機で使用されるレーダーと同じものだが、F-15K向けのAN/APG-63(v)1は豊富な空対地攻撃機能が加えられ、RCS(Radar Cross Section:レーダー反射断面積)が小さい目標にも対応できるようになっている。また目標指示・航法ポッドはロッキード・マーチン社製のタイガー・アイが装備される。タイガー・アイはLANTIRN(Low Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night:夜間低高度赤外線航法及び目標指示)システムをさらに発展させた第3世代の航法・目標指示ポッドで、中波赤外線を使用したFLIR(Forward Looking Infra-Red:前方監視赤外線)・地形追随レーダーを収める航法ポッドと、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)TVとレーザー、IRST(Infra-Red Search and Track:赤外線捜索及び追尾)システムを収め長距離から精密誘導空対地兵器の使用を可能にする目標指示ポッドから成る。これにより地形の起伏に沿って天候・昼夜間に関わらず超低空で縦深攻撃を行うことができる。しかし元々F-15は制空戦闘機として開発されたため翼面荷重が小さく、空気密度の大きい低空を高速で飛ぶ事は苦手としている。兵装を満載した状態でのNOE(Nap-of-the Earth:地形追従)飛行は機体に大きな振動を発生させるだろう。F-15KはIRSTシステムと最新型のAIM-9X赤外線誘導空対空ミサイル「サイドワインダー」、JHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System:ヘルメット装着キューイング・システム)を組み合わせる事で高いオフボアサイト攻撃能力を有しており、AIM-120アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル「AMRAAM」の運用能力と共に高い空対空戦闘能力を有している。

電子戦装備はTEWS(Tactical Electronic Warfare System:戦術電子戦システム)AN/ALQ-135Mを装備する。自衛隊の装備するF-15J/DJはTEWSの輸出が認められなかった為、日本独自開発のJ/TEWSを搭載している。AN/ALQ-135Mは最新のTEWSであり、アメリカでも一部の機体しか搭載されていない。またレーダー警戒機も最新のALR-56C(v)1を装備している。他にもAN/ARC-232通信機、2重の統合型GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)及びINS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)、先進表示コア処理装置と6in液晶表示システム、TACAN(Tactical Air Navigation:戦術航法装置)とLink16データリンク・システムなど最新の機器を搭載している。しかし韓国空軍はLink16の地上側設備を有しておらず、F-15K間でしかリアルタイムの情報を行えない。韓国空軍はF-15Kの基地となる大邱に第2MCRC(2nd Master Control and Reporting Center:第2主防空管制センター)を開設した際、独自にLink16システムを構築しようとして失敗したという。

F-15KがこれまでのF-15Eファミリーと大きく違うのは、搭載兵装にAGM-84艦対艦ミサイル「ハープーン」とAGM-84H空対地ミサイル「SLAM-ER」(Standoff Land Attack Missile-Expanded Response:スタンドオフ対地攻撃ミサイル-発展型)の搭載能力を持たされている事だ。「ハープーン」と「SLAM-ER」の他にもF-15Eファミリーが搭載できる各種の精密誘導兵器の携行能力を持つ事は言うまでも無い。F-15Eの兵装搭載能力はコンフォーマル燃料タンク下部にステーションが追加された事で大幅に高まっているが、このステーションはミサイルのような精密誘導兵器を搭載する事ができなかった。しかしF-15Kではこれ等の兵装ステーションもスマート・ステーションと呼ばれるものになり、あらゆる兵器の搭載が可能になっている。

しかしF-15Kには幾つかの問題が発生している。まずスタンドオフ攻撃兵器として期待されていた「SLAM-ER」だが、このミサイルを誘導するためのデータリンク周波数が既に移動通信IMT2000が占有していて使用出来ない事が分かり、韓国空軍は急遽ボーイング社と周波数変更などの協議を行った。結局周波数の変更には約100万ドルの費用と12ヶ月の時間がかかる事が判明したため、有事の際は電波統制を行ってSLAM-ERに周波数を割り振る事にしたという。また対地精密攻撃に必要なDPPDB(Digital Point Positioning Data Base:精密映像位置提供地形情報)というソフトウェアがF-15Kにインストールされていない事が判明した。DPPDBはパイロットが希望の地点を精密攻撃できるよう支援するプログラムで、このシステムを利用すれば誤差範囲を10mから1mへ縮めることができると言われている。しかしアメリカは自国の「武器輸出統制法」による輸出制限品目として、この重要なソフトウェアをインストールしなかった。韓国はこの問題に関してアメリカに支援を要請し、アメリカは難色を示したが解決の方向に向けて交渉を行ったという。また2007年2月には地上を走行中のF-15Kがマンホールにタイヤを落とす事故を起こし、韓国空軍のインフラ整備に問題がある事も発覚した。

F-15Kの選定にも問題があった。候補機種はF-15K(米)の他にラファール(仏)、タイフーン(国際共同開発)、Su-35(露)の4機種があったが、この中でラファールが最優秀だったにも関わらず、アメリカ製戦闘機を選定するために評価基準をF-15Kに合わせたものに変更されたという憶測が流れた。フランスは中距離ミサイル技術と電子戦装備だけでなく、生産技術の一部までも韓国に提供する事を提案したが、結局アメリカ製のF-15Kが選定されたのだ。F-15Kは最新の機器を搭載した一流の戦闘攻撃機だが、機体の基本設計は70年代のものであり「次世代の戦闘機」として選定される資格は無いのではないか、という意見があったにも関わらずである。

現時点でF-Xとして韓国空軍が発注しているF-15Kは40機で、2005年第4四半期から2008年第3四半期にかけて引渡しが行われる予定だったが、製造ペースが早い為に計画が前倒しされた。2008年10月8日に第一次発注分の最後の3機の引渡しが実施され、2日後の10月10日に韓国に到着した[1]。またF-15Kの製造については、9号機以降の主翼は韓国で製造される事になっており、胴体前部も韓国で製造される予定だ。F-15Kは第102戦闘飛行隊と第122戦闘飛行隊の2個飛行隊に配備され、2006年末頃から実戦運用を開始すると思われる。また第2次F-Xとして国防部はF-15Kクラスのマルチロール戦闘機20機の追加発注を計画しており、再びF-15Kが選定される可能性は高い。

【2008.11.29追記】
韓国空軍は2008年10月8日、第1次F-Xとして導入を進めてきたF-15K計40機(実際には1機失われたので39機)の配備を完了したと発表した。既にF-15Kを装備した1個戦闘飛行隊の戦力化は終了しており、2009年には残りの1個戦闘飛行隊も戦力化を完了する予定。

【2009.03.19追記】
米ボーイング社は17日、セントルイスでF-15の最新発展型「サイレント・イーグル(SE)」を発表した。F-15SEはF-15Eをベースにステルス性の付与をはじめとする各種生存性向上技術を採用したもの。同社のジョーンズ副社長は会見において「F-15SEは2~3年で生産できるようになる」「ステルス機能は韓国のF-15Kにも適用できる」と説明した。空軍はF-15K第二次調達分21機を2010~2012年にかけて導入する。空軍当局者は「我が国がステルス性能を持つF-15Kを保有すれば、2012年に戦時統制権がアメリカから委譲された後に、韓国軍単独で爆撃作戦を行うことが出来る」と述べた。
(中央日報)

【2010年8月1日追記】
第二次FX事業の契約は2008年5月に調印され、合計21機(1機は2007年10月の事故で失われた機体の代替分)が発注された[1]。第一次FX事業(FX-I)で発注されたF-15Kは韓国のサムスン・テックウィン社でライセンス生産されたF110-STW-129Wターボファンエンジンを搭載していたが、FX-IIではエンジンはアメリカのプラット&ホイットニー社で生産されたF100-PW-229EEPに変更されている。両者の性能は殆ど同じで、エンジン変更は二系統のエンジンを用意することで冗長性を確保することや提示された価格やエンジンの信頼性などを考慮して決定されている。
【参考資料】
M&M「F - 15K 2次事業の1号機の初飛行成功」(2010年4月26日)[1]

2005年10月4日、F-15K 3号機、4号機が韓国に到着
2006年1月2日、金成一空軍参謀総長(当時)がF-15Kを操縦し、竹島(韓国名:独島)上空で示威飛行を行った
2006年2月17日、F-15Kが高度20,000ftからJDAM 3発の投下試験を行い、全弾目標の2.1m以内に命中した
2006年3月28日、F-15Kが高度25,000ftから100nm離れた目標に向けSLAM-ERを発射試験を行い、目標に直撃した
2006年6月7日、F-15K 1機(5号機)が夜間襲撃訓練中に日本海(韓国名:東海)上で墜落した
2006年10月4日、F-15Kが訓練中に農家へ誤って爆弾(訓練弾)を投下した
2007年2月9日、F-15Kが大邱基地で移動中、タイヤがマンホールに落ちる事故を起こし右の翼を破損した
2010年7月26日、地上での教育訓練中、誤作動によりF-15Kの後部座席が射出される事故が発生。負傷者はなし

▼F-15Kの1号機
▼米空軍のKC-135から空中給油を受けるF-15K
▼編隊を組んで飛ぶF-15K

▼F-15Kに装備されたAGM-84「ハープーン」対艦ミサイルとJDAM誘導爆弾
▼「タイガー・アイ」航法・目標指示ポッド

▼ボーイング社の工場で組み立て中のF-15K

▼F-15K動画(SLAM-ER、JDAM、GBU-24による爆撃訓練など)

【参考資料】
月刊航空ファン(文林堂)
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
Jウィングス特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
朝鮮日報
Kojii.net
Defense-Aerospace
Defence Talk.com「Air Force Gets Last Batch of F-15K Fighters」(2008年10月10日)[1]
中央日報「F-15K戦闘機の非常脱出装置を誤って操作、10億ウォンの損失」(2010年7月27日)




2006年6月9日に墜落したF-15K 5号機についてのまとめ


2006年6月9日20時12分、日本海(韓国名:東海)上で夜間飛行訓練中だったF-15K 1機が墜落した。当該機は僚機2機とともに夜間訓練を行っていた。墜落地点は慶尚北道盈徳郡江口面の東、約21海里。搭乗していたのはパイロットのキム・ソンデ少佐(36歳、空士41期、死後中佐に昇進)と兵器システム操作員のイ・ジェウク大尉(32歳、空士44期、死後少佐に昇進)で、2名とも死亡した。

当日F-15K 3機は19時45分に大邱(テイグ)基地を離陸して24,000フィートまで上昇、浦項沖で訓練を開始した。行われたのはTIN(Tactical Intercept Night:夜間戦術迎撃)訓練で1、2番機が18,000フィートまで降下したあと、10,000フィート以下で反航してくる敵機役の3番機を撃墜する、というものだった。20時10分頃1,2番機は3番機に向けミサイルを発射(シミュレート)し旋回して追撃しようとした時、1番機が「訓練中止」を無線で伝え、直後にレーダーから機影が消えたという。この時1番機の高度は11,000フィートで、速度は約900km/hだった。2番機は訓練中止の無線を聞いて上昇し、通常の高度にもどったが何事も無かった。僚機によれば1番機は落ち着いた声で「訓練中止」を伝えてきたという。1番機が墜落した地点は、当初予定されていた訓練飛行経路より大きく外れていた。墜落前の交信内容は以下の通り。

20時12分03秒 1番機「訓練中止」
20時12分05秒 2番機「訓練中止了解」
20時12分07秒 3番機「訓練中止了解」
20時12分11秒 2番機「1番機、何か異常が発生したのか?」
20時12分17秒 2番機「1番機、エマージェンシーか?」
20時12分19秒 1番機墜落

韓国軍は海洋調査船「海洋2000」を派遣し、ソナーを使って墜落したF-15Kの残骸を捜索した。発見された残骸は水深400mの海底に広く散らばっており、付近の視界は悪く30cmほどしかないため捜索は困難を極めた。韓国軍は民間の韓国通信サブマリン社が所有するサルベージ船「パダロ」搭載の無人深海探査船を使い、墜落現場から燃料バルブ、ランディングギア、尾翼の一部、エンジンブレード、飛行記録装置などを回収したが、1ヶ月以上捜索したにも関わらずブラックボックスは発見できなかった(破片のみ)。飛行記録装置は飛行機の高度や姿勢、速度などの情報や発生した警告などを記録する装置だが、飛行後の整備に使用する点検用システムでブラックボックスのように厳重な保護はされておらず、海水の影響でデータが欠損していたことから復元するために米スミス・エアロスペース社に送られた。

2005年8月、F-15Kがアメリカのセントルイスで飛行試験を行った際、トラブルにより緊急着陸する事態が発生した。また以前F-15Kの整備士が誤って翼を傷つけ、2週間訓練が中止になったこともあったという。整備マニュアルが英語で書かれていたため韓国空軍の整備士には理解出来なかったという報道もあったが、パイロットとともに整備士もアメリカに派遣されて研修を行っている事から英語マニュアルは特に問題ではなかったと思われる。韓国国防部によれば、2002年にボーイング社と契約を結んだ際に、F-15Kが配備2年以内に機体の欠陥が原因で機体の80%以上が損傷する事故を起こした場合は最大1億ドルの補償を受ける、という条項が盛り込まれていた。また1億ドルに満たない損傷の場合は、新規のF-15K 1機か相当分の金額の補償を受ける事になっている。ただしエンジンの欠陥で機体が失われた場合は機体全体の補償規定は適用されず、エンジンを製造したGE社が補償責任を負う事になっている。

2006年8月19日、韓国空軍はF-15Kの墜落原因を「パイロットが行った急激な機動によって起きた重力加速に搭乗員が耐えられず意識を失ったため」と発表した。調査の結果、機体やエンジンに異常は見つからなかったという。しかし、この発表について韓国の軍事マニア達は幾つかの疑問を持っているようだ。まずパイロットが何らかのアクシデントで訓練中止を報告したにも関わらず、意識を失うようなGのかかる急機動を行うか?という点。発表では9G以上だったとされるが、上昇旋回して通常高度に戻るのにそこまでの高Gはかからないという。パイロットのキム少佐は2004年5月から2005年9月までアメリカでF-15Kの飛行教育訓練を受け、その後教官を勤めるほどのベテラン(総飛行時間1,900時間以上)であり、G-LOK(Gravity-Loss of Consciousness)が起こるような急激な機動は行わないだろう。このG-LOKが墜落原因とされたのはボーイング社のシミュレーションの結果に因っているようで、韓国空軍とボーイング社がF-15K導入が阻害されないようパイロットに責任を押し付ける為、早々にG-LOKが原因と発表したのだという話もある。またKF-16には装備されているGLC(G Limited Control:重力加速度制限)システムがF-15Kには装備されていないのも今後問題にされそうだ。

他に考えられる墜落の原因は幾つか挙げられているが、どれも断定できるほどの根拠を持っていない。F-15Kが装備するエンジンはGE社製のF110系だが、これはF-15シリーズの機体が初めて搭載するエンジンである(他のF-15シリーズが搭載するエンジンはP&W社製F100系)。このF-15シリーズに慣れていないエンジンが墜落の原因になったのではないかとする説もあるが、2基装備しているエンジンの両方が同時に停止する可能性はかなり低い。機体の残骸は30km四方の広い範囲に散らばっており、パイロットが意識を失って海面に激突したのではなく空中で爆発四散したのではないか、と推測する向きもある。2005年に夜間飛行訓練中のF-4、F-5が次々と墜落し、その原因の一つがNVG(Night Vision Goggle:夜間暗視ゴーグル)の視野の狭さによるバーティゴ(Vertigo:空間識失調)であったためF-15Kの墜落もNVGが原因かと一部で推測されたが、F-15Kのパイロットが装着するのはより高度なJHMCS(Joint Helmet-Mounted Cueing System:ヘルメット装着型キューイング・システム)で視野もかなり広く問題とはなり難い。北朝鮮のミサイル発射を警戒して日本海に展開していた米海軍のイージス艦に撃墜されたという珍説や、ボーイング社の陰謀説まで出ているが、さすがにこれ等は眉唾だろう。

F-15Kの飛行は事故以来中止されていたが、8月21日に再開された。事故の影響でF-15Kの韓国への引き渡しに一時影響が出たが、F-15K全体の導入スケジュールに影響は無いという。

【2006年10月26日追記】
2006年10月24日の京郷新聞(韓国紙)は、ハンナラ党の宋永仙議員が国防委員会にF-15Kの不良部品に関する資料を提出したと報道した。この資料によれば2005年にボーイング社とその関連企業から輸入したF-15Kの部品のうち403品目、4,795万ドル分が欠陥品だという。6月に墜落したF-15K 5号機にもこの欠陥部品が多数使用されており、これが墜落の原因になったのではないかと宋議員は主張している。

【2008.01.21追記】
米ボーイング社は2006年に起きたF-15K墜落事故で失われた機体の代替機を無償で提供すると示唆したとの事。これは韓国のメディアが報じたもので、ボーイング社からの正式な発表は行なわれていない。

【参考資料】
朝鮮日報
東亜日報
中央日報
PowerCorea


2010-08-01 04:19:38 (Sun)

最終更新:2010年08月01日 04:19