F-4D? > E戦闘機「ファントムII」(韓国)


▼F-4D

F-4E性能緒元
重量 13,800kg
全長 19.2m
全幅 11.71m
全高 4.98m
エンジン J79-GE-17(5,380kg)×2
最大速度 M2.3
巡航速度  
戦闘行動半径 870km
上昇限度 17,700m
武装 M61A1 20mmバルカン砲×1
  AIM-7セミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル「スパロー」
  AIM-9赤外線誘導空対空ミサイル「サイドワインダー」
  AGM-142空対地ミサイル「ポパイ」
  各種爆弾7,260kg
乗員 2名

F-4「ファントムII」は1950年代にアメリカ海軍がマクドネル社(マクドネル・ダグラス社、現ボーイング社)に開発させた艦隊防空・攻撃戦闘機である。当時の艦上戦闘機としては異例の大型双発機だったが、大パワーに支えられた高性能と多用途性が認められ、アメリカ空・海軍をはじめ西ドイツ、日本、トルコ等の西側各国にも多数採用され、総生産数は5,129機を記録した。

F-4DはF-4Cの攻撃精度向上型で、1965年12月に初飛行している。レーダーを測距機能付きのAN/APQ-109とし、爆撃コンピューターもAN/ASQ-91に変更、AN/ASG-32見越し計算ジャイロ、AN/ASN-63INSなどを装備した。空軍型ファントムの海外ユーザーの中で、固定武装を持たないショート・ノーズのF-4Dを装備したのは韓国とイランしかない。

F-4Eは、当初全天候ミサイル迎撃機として開発されたF-4には近接戦闘用の機関砲が装備されていなかったため、機首下面にM61A1 20mmバルカン砲を装備したタイプである。レーダーもAN/APQ-120に換装し、エンジンもアフターバーナー時の推力が向上したJ79-GE-17となった。またAN/APS-107レーダー警戒装置を搭載、そのアンテナが垂直尾翼上端に付けられた(後期型ではアンテナは主翼端に移動している)。

1969年に韓国空軍は駐留していたアメリカ空軍のF-4D 18機を譲り受ける形で導入し(ピース・スペクテーター計画)、1972年には韓国空軍向けに用意されていたF-5A 36機を南ベトナムへの駆け込み供与にまわした見返りとして、更に18機のF-4Dが引き渡された。その後の供与分を合わせて韓国は1988年までに合計92機のF-4Dを装備し、テイグ(大邱)基地第11戦闘航空団の第110戦闘飛行隊と第151戦闘飛行隊に配備した。F-4Eの購入は1978年に19機、1980年に18機行われた(ピース・フェーサント計画)。これは全て新規生産機で、その最終機(78-0744)はアメリカのセントルイス工場が送り出した最後のファントム(5057号機)でもある。この他にも韓国空軍はアメリカ空軍から余剰のF-4E 66機を引き渡され、これらのF-4Eをチョンジュ(清州)基地第17戦闘航空団の第152、153戦闘飛行隊に配備した。

韓国空軍はF-4D/Eのレーダーとアビオニクスを更新する近代化改修を計画し、1987年にAN/AVQ-29ペイブタック・ポッド(レーザー照準ポッド)を8基購入してF-4D 24機が同ポッドを運用可能に改修された。1997年には116発のAGM-142空対地ミサイル「ポパイ」を購入して30機のF-4Eが運用可能に改修されるなどの能力向上が図られている。しかし1993年のドイツエアロスペース(DASA)社によるF-4F ICE仕様の迎撃能力向上計画は、韓国の財政困難のために中止となった。韓国空軍のF-5D/Eは戦術データ・リンク・システムを搭載していないため、迎撃はもっぱら地上管制官の音声指示に従って行われる。現在老朽化したF-4D/Eの後継として、F-15Kの導入が進められている。

2005年7月13日、F-4E(第17戦闘航空団所属)1機が南海上空で、海軍との夜間合同訓練に墜落し、パイロット2名が死亡した。NVG使用による操縦者のVertigoが原因とされている。

【2010年6月17日追記】
韓国空軍で最後までF-4Dを運用していた大邱駐在の第11戦闘航空団所属の第151戦闘飛行隊のF-4Dが現役を退く事となり、6月16日に記念式典が行われた[7]。F-4Dが最初に配備されたのも大邱であり、1969年の配備開始から41年間運用された事になる[8]。第151戦闘飛行隊はF-4Dの退役と共に解隊となった[8]。第11戦闘飛行団には新たにF-15Kが配備されF-4Dの任務を引き継ぐ[7]。

▼退役し展示されているF-4D
▼F-4E

▼高速道路を利用した大規模な離発着訓練を行うF-4D
▼アメリカ空軍のF-111と編隊を組む韓国空軍のF-4D
▼旧ソ連のTu-95爆撃機をインターセプトする韓国空軍のF-4E
▼AIM-7「スパロー」を発射するF-4E

【参考資料】
[1]月刊航空ファン(文林堂)
[2]世界の傑作機No.74 F-4ファントムII海軍型(文林堂)
[3]世界の傑作機No.82 F-4ファントムII輸出型(文林堂)
[4]世界の傑作機No.86 F-4ファントムII米空軍型(文林堂)
[5]Jウィングス特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
[6]別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
[7]The KoreaTimes「Korean Air Force decommissions F-4D jets」(Jung Sung-ki/2010年6月16日)
[8]連合ニュース「F-4Dファントム、41年間の飛行を終え退役」(2010年6月16日)



2010-06-17 03:34:42 (Thu)

最終更新:2010年06月17日 03:34