RC-800偵察機「白頭」


▼2008年に撮影された「白頭」電子情報偵察機
▼「金剛」画像情報収集機

性能緒元
重量 7,303kg
全長 15.60m
全幅 15.66m
全高 5.36m
エンジン アイドラ・シグナル TFE731-5BR-1H(2,113kg)×2
最大速度 M0.87
巡航速度 845km/h
航続距離 5,200km
上昇限度 13,100m
乗員 2~8名

RC-800「白頭」電子情報偵察機(レイセオン ホーカー800SIG)/「金剛」画像情報偵察機(レイセオン ホーカー800RA)は米レイセオン・エアクラフト社が生産したビジネスジェット機、ホーカー800XPを改修したSIGINT(SIGnal INTelligence:電波情報収集)機と画像情報偵察機。韓国空軍では「白頭」電子情報偵察機/「金剛」画像情報偵察機をそれぞれ4機ずつ導入している。

ホーカー800XPの原型は英デ・ハビランド社が開発していたDH-125で、その後経営の悪化したデ・ハビランド社が英ホーカー・シドレー社に買収され、ホーカー・シドレー社がイギリス国営のBAeシステムズ社になった事でBAe125-800と機体名称が変更された。その後製造は米レイセオン・エアクラフト社が行う事になり、ホーカー800として生産された。800XPは800の発達型で空力特性を改善されている。ホーカー800は航空自衛隊でもU-125/U-125Aとして使用している。

「白頭」/「金剛」両偵察機は、米軍のU2偵察機などにより得られた観測情報に依存してきた体制を改め、韓国軍自身による情報収集能力を強化する目的で導入が行われた。8時間以上の滞空能力があるため、長時間の監視活動を遂行することが出来る[6]。

「白頭」電子情報偵察機は北朝鮮が発する電波信号情報を機体下部のアンテナで収集する事を任務としている[6]。「金剛」画像情報偵察機は休戦ラインから40~50km離れた高度10kmを飛行しながら、機体下部の「LAIRSII」合成開口レーダーを使用して高解像度の偵察画像の収集を行う[6]。LAIRS-IIは8K0m離れた地点から解像度30cmでの撮影能力を有しており、合成開口レーダーを使用しているため、悪天候下でも画像情報収集が可能。得られたデータは、TADIL-J(Link-16)データリンクによりリアルタイムで送信される。LAIRS-IIは限定的な移動目標追跡能力を有しており、大規模な部隊の移動状況を探知・追跡することも可能。「白頭」「金剛」はいずれも朝鮮半島の山の名前で、「白頭」は休戦ラインから500km離れた白頭山までの電子情報の収集が可能である事、「金剛」は休戦ラインから100km離れた金剛山までの偵察画像の収集が可能である事を表わしている[6]。

韓国は電波情報収集機を導入する為の「白頭事業」及び画像情報収集機を導入する為の「金剛事業」として、ダッソー・ファルコン50EX(仏)とセスナ650サイテーションIII(米)、レイセオン・ホーカー800XP(米)の3機種を検討し、最も価格が高かったにも関わらずホーカー800XPの採用を決定した。搭載する偵察機材は当初イスラエル製のものが検討されたが、E-SYSTEMS社のRCSS(遠隔操作式画像偵察・電子情報収集システム)が採用された。この偵察機材の導入にあたっては空軍幹部や事業団長らに多額の賄賂が贈られ、後に大きな問題となった。またRCSS用のソフトウェアは開発をE-SYSTEMS社に丸投げしために、朝鮮半島の地形に最適化されたものになっていないという。そもそもRCSSは800XPに搭載するには大きすぎ、そのため韓国のRC-800は所定の高度を飛行できないと言われている。更にこの事業を強力に推進した武器仲介人の韓国系アメリカ人女性は北朝鮮協力者で、偵察機の情報は筒抜けになっていたと言われている(リンダ・キム事件)。韓国空軍は1998年にRC-800を4機導入する契約を結んで購入し(約50億ドル)使用しているが、2002年にそのうちの1機が滑走路上で大破した(現在は修復済)。2007年3月の報道によれば、軍の一部消息筋はRC-800「白頭」について「収集している電波情報はほとんど価値が無く、米軍から与えられた情報に頼っているのが現状」と伝えたという。これはRC-800が搭載する機器の電波発信源の方向測定精度が低く、またリアルタイムで地上に送られる信号が途切れがちであるためのようだ。同じく収集された画像データに関しても、専門の分析官でさえ「日本海に船が2隻浮いているかもしれない」程度の情報しか読み取れないような、粗悪な画像しか収集できないという。事業当初の軍側の説明では、30cm大の物体も識別できる高解像度の画像収集能力がある事になっていた。2001年9月にはハンナラ党の朴議員がRC-800について「当初期待された滞空時間の半分程度しか飛べない」「頻繁に故障を起こしており、4機中2機が飛行不能な時もあった」と述べており、そのためRC-800を交代で24時間飛ばし常時情報収集を行う計画だったのが、1日1機4時間だけしか偵察活動を行えていない状況だと軍当局を非難した。

2006年9月、アメリカ政府は韓国にRC-800電子偵察機と地上用機材、支援サポートなどを約2億ドルで輸出すると発表した。また米ロッキード・マーチン社は2007年2月14日、韓国空軍のRC-800の改修作業を2,800万ドルで受注したと発表した。計画名は「ピース・クリプトン」。契約はDSCA(Defense Security Cooperation Agency:アメリカ国防安全保障協力局)行われ、RC-800が装備するSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)とその地上機器のアップグレードを行う。

【2009.06.24追記】
韓国国防部は北朝鮮のミサイル発射基地から発せられる特定の信号を探知する装備を、2016年までに100億ウォンを投じて「白頭」偵察機に搭載する事を決定した。
(連合ニュース)

【参考資料】
[1]月刊航空ファン(文林堂)
[2]別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
[3]North Korea Today
[4]Kojii.net
[5]Defense-Aerospace
[6]야후! 블로그- 비겐의 군사 무기사진 블로그 「북한의 위협을 감시하는 한국공군 금강 백두 정찰기 」(2010年1月31日)


2010-11-13 15:15:38 (Sat)

最終更新:2010年11月13日 15:15
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