T-50練習機「ゴールデンイーグル」

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▼T-50の量産1、2号機

性能緒元
重量 6,441kg
全長 13.13m
全幅 9.17m
全高 4.90m
エンジン GE F404-GE-402(A/B8,036kg)×1
最大速度 M1.5
巡航速度  
航続距離 1,850km
上昇限度 14,630m
乗員 2名

T-50はKAI(Korea Aerospace Industries:韓国航空宇宙産業)が米ロッキード・マーチン社の支援を受けて開発した高等練習機で、1997年に全規模開発契約を得て計画がスタートした。全規模開発契約では強度試験機2機と飛行試験用のプロトタイプ4機(1号機は性能曲線拡大と操縦及び安定性試験用、2号機は空中荷重と高迎え角試験用、3号機はLIFT型でアビオニクス試験用、4号機もLIFT型でレーダー及び武装試験用)が発注され、プロトタイプ初号機は2002年8月20日に初飛行している。開発費は2兆817億ウォン。当初は高翼で双垂直尾翼付きの初期案が提示されていたが1995年に保留され、1997年に現在の形状に変更された。T-50の50(TはTrainer:練習機)は韓国空軍50周年を記念したものだという。

T-50の機体レイアウトはF-16に極めて近く、ひとまわり小型(グリペンとほぼ同規模)にしたような形だ。搭載レーダーの要求が高くないため、機首のデザインは細めになっている。中翼配置で可変キャンバー式の主翼には前縁のみに後退角、翼付け根前方にLEXが付き、空気取り入れ口は胴体両側面に設けられている。練習機として低速時のハンドリングが重要になるため、各舵面はF-16より面積が拡大されており、それぞれの作動レートも大きく設定された。操縦系統は3舵ともフライ・バイ・ワイヤで操作される。T-50にはAPU(Auxiliary Power Unit:補助動力装置)が搭載されているため、地上の支援設備なしに自力でエンジンをスタートさせる事が可能。エンジンはゼネラル・エレクトリック社のF404-GE-102ターボファンで、F/A-18に搭載されているのと同系統のもの。アフターバーナー使用時は最大推力17,700lbを叩き出す。このエンジンはアメリカが他国への輸出を渋った過去がある。T-50に使用されるF404は韓国の三星テックウィン社によりライセンス生産が行われる。コクピットはHUD(Head-Up Display:ヘッドアップ・ディスプレイ)と5×5.1インチのカラーMFD(Multi-Function Display:多機能ディスプレイ)を2基備えており、HOTAS(Hands On Throttle And Stick:手をスロットルレバー及びスティックから離さず各種操作を行える事)やアップフロント・コントロールといった概念が取り入れられている。操縦桿は後席の教官が前席の学生の動作を把握できるよう、それぞれ電気的に同調して作動するアクティブ・スティックになっている。座席はマーチン・ベイカー社製のMk16Lゼロ・ゼロ射出座席。背面はF-22やF-35と同じように17度のリクライニング角となっている。T-50のアビオニクスは技術面での支援を担当したロッキード・マーチン社の担当で、同社はそのほか飛行制御システムや主翼も担当している。最大離陸重量は29,700lbで最大上昇率は毎分39,000ft、機体最大制限荷重は-3/+8。機体の構造寿命は最大10,000飛行時間。

韓国政府は全部で72機(当初は94機の予定だったが削減された)のT-50を調達する計画で、第1期分の22機には予算が付き生産が確定しており、第2期分38機、第3期分12機も生産が決定した。T-50の開発は順調に進み、1番機と2番機が2006年1月4日に韓国空軍に引き渡された。2006年中に8機(1、2号機と合わせ全10機)が引き渡され、2007年からは月産1機の割合で生産される。量産は最低でも2012年まで継続されることになる。2007年4月現在では既に13機が引き渡されており、最初のT-50訓練生が運用を開始している。2008年中にT-50を擁する飛行隊は2個に拡大される予定。T-50は韓国空軍のアクロバット飛行隊であるブラックイーグルスにも10機が配備される予定。KAIは韓国空軍向けを含め、各派生型合計で最大600機の生産を期待しているという(KAIは2030年までにT-50級の航空機3,300機の潜在的需要があると分析している)。生産にあたっては大宇が中央胴体、KAL(Korean Air:大韓航空)が後部胴体と尾部ユニット、ロッキード・マーチン社が主翼、KAIが前部胴体と最終組立を分担する事になっている。ワークシェアのうち55%はアメリカ側の取り分で、44%が韓国、残り1%はその他の第三国。T-50で使用しているソフトウェアは全面的にロッキード・マーチン社が開発・生産しているが、韓国はレーダーとエンジン制御に関する部分以外のソフトウェア全てを2011年までに国産化するとしている。しかしロッキード・マーチン社からFBW(Fly-by-wire:フライ・バイ・ワイヤ)やFCS(Fire Control System:火器管制装置)のソースコードが韓国に公開される見込みは無く、これらも含めて653億ウォンをかけて新規に国産開発する予定だという。T-50の国際マーケティング活動については、ロッキード・マーチン社とKAI社が協同で担当する。T-50の1機辺りの価格は韓国各紙の発表では約350億ウォンとされており、KF-16の価格(300億ウォン)を上回る。

KAI社はT-50について「現在量産されている、唯一の超音速練習機」と形容した。また同機の開発に際して関係者が密接に協力してスケジュール通りに作業を進めた点を指摘し、T-50/A-50計画が、韓国が世界的な航空産業基盤を獲得するという国家的目標を達成する上での重要な計画だと位置づけた。韓国空軍の某少将は、T-50の装備化に期待するとした上で「世界の有力な空軍と同様に、我々も最良の装備と訓練を供給すると約束しておりT-50はその両方に大きく貢献する。T-50はパイロット訓練生にとってもっとも新しく高性能な先進的ジェット練習機であり、戦闘機コースに進む訓練生にとってはもっとも費用対効果の高いLIFT機だ」とスピーチした。T-50とシステムの互換性が高いF-16を採用している国が世界に多くあり、またそれらの国々の練習機の機体寿命が2008年から2012年にかけて限界に達する事を考えると、T-50の輸出が成功する可能性はある程度見込めるだろう。ただ超音速高等練習機は高価なため、その点がネックになる(UAEに提案した価格は1機250億ウォンだという)。

KAIはUEA(アラブ首長国連邦)で行われたドバイ2005エア・ショーにT-50を持ち込み、T-50担当テスト・パイロットのリー・チョンファン中佐の手でデモフライトが行われた。これがT-50の実質的世界デビューとなる。現在T-50はUAE空・防空軍の新型練習機導入計画で伊アレニア・アエルマッキ社のM346(Yak-130をベースに開発)と採用を争っている。ギリシャやイスラエルもT-50に関心を示しているという。MAKO超音速練習機を計画していたEADS(European Aeronautic Defence and Space Company:ヨーロッパ大手の航空宇宙企業)は、これを諦めてT-50のマーケティング参加を狙っており、これが実現すればT-50がヨーロッパ12ヶ国の共通練習機となる可能性もある。またアメリカ空軍は旧式化したT-38タロン練習機の代替としてT-50かボーイング社製のT-45ゴスホークを検討するよう議会から要請されており、T-50が採用されれば韓国初の兵器の対アメリカ輸出となる。2007年1月の報道によれば、韓国DAPA(Defense Acquisition Program Agency:防衛事業庁)長官が訪米した際、アメリカ側はT-50について「大変良い機体であり、両国にとって大きな利益となるだろう」と語ったという。またアメリカ空軍の教官を韓国に招き、T-50の評価試験を行う事も米韓間で協議されているという

【2007.10.15追記】
韓国KAI社は2007年10月中もしくは今後数ヶ月以内に、UAE及びシンガポール、ギリシャの3ヶ国からT-50の発注を獲得できるだろうと発表した。調達数についてはUAEが60機以上、ギリシャが40機、シンガポールが30機と見込まれている。

【2008.02.03追記】
UAEは韓国に対し、T-50の発注条件としてアブダビ-仁川間の民間航空路線新規開設を要求しているしている事が分かった。アブダビは同じUAEのドバイと比べて発展が遅れており、韓国T-50の競争相手であるイタリアは既に2007年10月にアブダビ路線を開設している。

【2008.08.26追記】
韓国国防部関係者は2008年8月26日、シンガポールの高等訓練機導入事業の優先交渉リストに、T-50とM346(イタリア製)が選ばれた事を明らかにした。シンガポールは5億ドルを投じて高等練習機12~16機を導入する計画。国防部関係者は「この事業に成功すれば、韓国は機体だけでなくパイロットの訓練プログラムなども売り込めるだろう」と発言した。
(YONHAPNEWS)

【2009.01.30追記】
2009年1月に韓国を訪問したイラクのジャシム国防相が、T-50練習機についてのブリーフィングを受けたと報じられた。イラク空軍はF-16の導入を希望しており、その橋渡しとなる高等練習機を取得した考え。
(DefenseNews/kojii.net)

【2009.02.27/2010.10.1追記】
4年以上に渡って行なわれていたUAEへのT-50の売り込みが失敗に終わった事が、アブダビで行なわれたIDEX2009で明らかになった。UAEはIDEX2009で伊アレニア・アエルマッキ社のM346を選定した。韓国KAI社は今後、シンガポールやポーランドへの販売攻勢を強める方針との事。

ただし、UAEはM346を優先交渉候補としたが2010年10月時点でも購入契約の調印には至っておらず、T-50についてもロッキード・マーチンとの間で協議を再開したとの情報もある。
(聨合ニュース「高等訓練機「T-50」、UAEからの受注に失敗」〔2009.2.26〕)
(Flightglobal「UAE reopens trainer talks」〔2010.6.17〕 )

【2009.03.22追記】
韓国紙によると、イラクが韓国に対しT-50の購入を申し入れたとの事。またイラク関係者がK9自走砲やK2戦車のブリフィーングを受けたとの情報もある。
(Kojii.net)

【2009.04.02追記】
韓国国防部はT-50の導入により、F-16パイロット養成の時間と経費を削減できると説明した。現在F-16パイロットの養成はKT-1→T-103→T-59→T-50という課程で行なわれているが、この内T-59での訓練をT-50で代替する事により、訓練機関を32ヶ月から26ヶ月に短縮できるという。また訓練飛行回数もそれに応じて20%減り、経費も21億ウォンから14億ウォンに圧縮できるとしている。
(Defense-Aerospace.com/Kojii.net)

【2010.05.14追記】
2010年5月13日、韓国空軍は発注していたT-50×50機全てが空軍に引き渡されたことを記念する行事を光州で開催した。式典には李啓勲(イ・ゲフン)空軍参謀総長を初めとする関係者約150名が参列した。2005年12月に量産01号機の引渡しが行われてから、4年6ヶ月で50機の配備が完了した事になる。

今後の量産は、「ブラックイーグルス」向けに生産されるTB-50、レーダーを搭載して兵器システムの訓練が可能となったTA-50の生産に移行する予定。TB-50は10機、TA-50は22機生産される事になっている。
(The Korea Times「T-50 trainer jets in full service」〔2010.5.13〕)
(金融ニュース「空軍T-50戦力化を完了。「空軍のもう一つの戦力が用意された」〔2010.5.13〕)
(朝鮮日報「超音速高等練習機T50の戦力化完了」〔2010.5.14〕)

【2010年10月1日追記】
シンガポール空軍は、選考中だった高等ジェット練習機(AJT)導入計画について、アレニア・アエルマッキ、ボーイング、シンガポールテクノロジーズエアロスペース(STエアロスペース)の3社グループが提案していたM346「マスター」を採用した事を発表した。採用機数は12機。機体の配送は2012年より開始される。
(シンガポール国防省公式サイト「New Generation Advanced Fighter Trainer for the RSAF」〔2010.9.28〕)

▼KF-16と編隊飛行を行なうT-50量産1号、2号機
▼離陸直後の量産3号機
▼胴体中央のハードポイントに増槽を付けてブレイクするT-50
▼エアショーでスモークを曳きつつロールするT-50
▼翼付け根前方にはF-16と同じようなLEXが付いている
▼機体後部のアップ。

▼T-50の試作1~4号機
▼AIM-9「サイドワインダー」空対空ミサイルとAGM-65「マーベリック」空対地ミサイルを装備した試作2号機

▼組み立て中のT-50
▼T-50の内部構造図

▼T-50用操縦シミュレータ

▼T-50動画

【参考資料】
月刊航空ファン(文林堂)
Jウィングス特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
朝鮮日報
中央日報
Kojii.net
Defense-Aerospace
PowerCorea

【関連項目】
F/A-50攻撃機


2010-10-01 01:20:54 (Fri)