韓国ミサイル防衛計画(KAMD)


韓国軍は巨額の開発コストと中国・ロシアに対する配慮から、日米が進めているミサイル防衛計画への参加を見送っている。そのため韓国は北朝鮮のミサイル攻撃に対処する独自のミサイル防衛計画(KAMD)を推進中だ。韓国はKMSAMと呼ばれるロシアのS-300(NATOコード:SA-10 グランブル/Grumble)対空ミサイルを基にした中距離SAMを開発中で、S-300に限定的な弾道ミサイルの迎撃能力があるため、KMSAMも同程度の迎撃能力を持つ。また長距離SAMとしてパトリオットPAC-2を2008年に導入する予定で、PAC-2はPAC-3ほどでは無いにしろある程度の弾道ミサイル迎撃能力を持っている。韓国軍は2015年頃にPAC-3を導入したいとしているが、まだ正式な契約は結ばれていない。弾道ミサイルを探知する地上レーダーは2012年頃に導入される予定で、これとセジョン・デワン級イージス艦のSPY-1レーダーが組み合わされて使用される事になる。当面韓国はKMSAMとPAC-2でミサイル防衛網を築く計画だが、どちらのミサイルも迎撃能力が低いため、巡航ミサイルによる発射基地への先制攻撃など攻守織り交ぜたミサイル防衛を行なう腹積もりのようだ。

なお韓国海軍のチュン大佐は2007年春、日本がアメリカと共同で進めているミサイル防衛計画(MD計画)について「軍拡競争に繋がる恐れがあり、アジアに不安定要因を作り出している」と非難する発言を行なった。

【2007.11.04追記】
2007年10月末に行なわれた空軍に対する国政監査で、空軍の高位関係者が「2025年までにレーザー兵器を実戦配備し、宇宙軍を創設する」と報告した。この報告によると、韓国空軍はまず第1段階として2015年までに宇宙での作戦基盤を構築するという。軍民共同で衛星追跡システムを開発し、2012年には対弾道ミサイル用の早期警戒レーダーを導入する。2016~2025年の第2段階では、光学及びレーダーによる宇宙監視網を構築し、ミサイル迎撃用のレーザー兵器を地上に配備する。さらに2025年以降の第3段階では空中発射型レーザー兵器や迎撃衛星を実戦配備し、宇宙軍を創設する。この一見途方もない計画は、中国の宇宙進出の加速や北朝鮮をはじめとする近隣の弾道ミサイル保有国の存在など、外的要因に韓国が煽られて立てたものと言える。また日本とアメリカが着々と進めるミサイル防衛計画には韓国は参加しておらず、独自にミサイル防衛を行なわなければならない事も、韓国の焦りの一因であろう。このような計画を韓国独自で行なうには莫大な費用が必要で、また近年ロシアと宇宙関連技術の交流を深めているとはいえ、早々に韓国がその方面の技術躍進を行えるとも思えず、この「スターウォーズ」計画は絵に描いた餅に終わる事だろう。

【2007.11.10追記】
朝鮮日報によれば、韓国軍消息筋は2007年11月9日に「国内開発されたレーザー兵器による迎撃実験に成功した」と伝えたという。開発されたレーザー兵器は現在のところ出力が弱く、数百メートル離れている物体を破壊できる程度の威力しかない。しかし今後も研究を続け、数キロ離れた目標を破壊できるようになるという。このレーザー兵器はADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)とト斗山インフラコア等の韓国企業が1990年代末から密かに研究・開発を行なってきたもので、スカッドなどの弾道ミサイルやロケット弾などを迎撃するための装備。トラックに積載して移動する事もでき、国防省は2010年代中頃までにレーザー兵器の実戦配備を行なう予定だ。

【2008.01.20追記】
韓国は弾道ミサイル防衛の下層段階迎撃用としてスタンダードSM-6 ERAM(Extended Range Active Missile:射程延長型アクティブ誘導ミサイル)の導入を検討しているという。アメリカには既に打診しており、前向きな回答を得たようだ。SM-6は既に韓国海軍でも使用しているSM-2にAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルのシーカーを付け、アクティブ・レーダー誘導とするタイプ。射程も400kmと大幅に延び、弾道ミサイル迎撃能力も備える予定で、現在開発が進められている。韓国はこのSM-6をセジョン・デワン級イージス駆逐艦(KDX-III)に装備したいとの事。

【2008.01.28追記】
韓国は大統領が変わったことで、アメリカのMD(ミサイル防衛)構想への参加を模索し始めた。すでに米統合参謀本部への打診も行なわれたとの事。統合参謀本部は韓国側に対し、ミサイル配備基地の提供と配備費用の負担、開発費の負担を求めたという。

【2008.02.15追記】
韓国軍当局が周辺国の発射したミサイルの探知・迎撃を指揮する専門作戦統制所を2012年までに立ち上げる計画を進めている事が明らかになった。軍消息筋によればこの計画は2006年から進められており、3,000億ウォンを投じて2012年に完了する予定だという。作戦統制所は24時間体制で近隣諸国のミサイル施設を監視し、ミサイルが発射された場合はその脅威度を評価して、迎撃部隊に指示を出す。

【2008.02.16追記】
韓国防衛事業庁は2月16日、弾道ミサイル探知の為の早期警戒レーダーの選定を3~4月頃に行なうと発表した。優先交渉権はイスラエルのエルタ社と米仏のタレスレイセオンシステムズ社に与えられており(米レイセオン社製のFBX-Tは米政府から輸出拒否された)、同庁は2月中にこの2社との価格交渉を終える予定。エルタ社が提案するEL/M-2080「グリーン・パイン」レーダーは、「アロー2」弾道ミサイル迎撃ミサイル用のフェイズドアレイ・レーダーで、弾道ミサイルの探知・追跡と迎撃ミサイルの誘導を行なう。最大探知距離は500kmといわれ、「アロー2」の射撃管制システム「イエロー・シトロン」は、パトリオット・システムとの互換性を持つ。韓国は2007年頃、「アロー2」を36発と「グリーン・パイン」6基を導入する計画を企てた事があり、その際にレーダーを含めたシステム一式の性能調査をイスラエルで行なっている。価格は1基あたり約1,000億ウォン。韓国側は「グリーン・パイン」の改良型で探知距離800kmの「スーパー・グリーン・パイン」を要望しているともいう。タレスレイセオンシステムズ社製の「M3R」レーダーは、弾道ミサイルの迎撃も可能な「アスター30 block1」用のアクティブ・フェイズドアレイ・レーダーで、最大探知距離は約300km。「アスター30 block1」と共に現在開発中で、2010年までにフランスに配備される予定。価格は1基あたり約800億ウォン。韓国紙の報道によれば「グリーン・パイン」2基が導入される予定だという。韓国軍は2012年までに、周辺諸国の発射したミサイルの防衛指揮にあたる弾道ミサイル作戦統制所(Air and Missile Defense-Cell:AMD-Cell)に早期警戒レーダーを配備する計画だ。
(連合ニュース/DefenseNews/Kojii.net)

【2009.05.19追記】
韓国は8,000万ドルを投じて弾道ミサイル早期警戒システムを整備する計画だが、この件に関してイスラエルのIAI/エルタ社、フランスのタレス社、アメリカのレイセオン社が入札した事が明らかになった。2012年までに整備する予定。
(Kojii.net/SpaceWar)

【2009.06.24追記】
国防部は北朝鮮のミサイル発射を早期に探知するための警戒レーダー導入事業に、2695億ウォンを投じる事を明らかにした。2010年度予算に反映される予定。これは「国防改革2020」の修正案として認められた、新たな対北朝鮮防衛策の一環として整備されるもので、2020年までにイージス艦搭載のSM-6迎撃ミサイル、パトリオットPAC-3迎撃ミサイルも導入する予定。
(連合ニュース/朝鮮日報)

【参考資料】
朝鮮日報
GrobalSecurity
Kojii.net
Defense-Aerospace


2009-06-27 12:39:25 (Sat)

最終更新:2009年06月27日 12:39