羅老宇宙センター(韓国ロケット打ち上げ基地計画)



羅老宇宙センターは全羅南道高興郡の外羅老(ナロ)島に建設された韓国初のロケット打ち上げセンター。建設の総工事費は3,200億ウォンにものぼり、2000年12月から建設が始まった。当初韓国は衛星打ち上げに相応しい(韓国領内で最も赤道に近い)済州島に打ち上げ基地を建設する計画だったが、住民の強固な反対に遭い外羅老島に変更された。羅老宇宙センターは150万坪の敷地を持ち、高さ33mのロケット発射台をはじめ、管制塔、ロケット最終組立棟など13の建物から構成される。また同じ外羅老島の馬伏山には、宇宙センター周辺の気象情報を収集するための気象観測所も建設されている。打ち上げられたロケットを追跡するレーダー施設やコントロールデータの送受信を行なう追跡施設は、羅老宇宙センターの他に済州島南済州郡表善面下川里に建設された。

初代センター長に就任した閔庚宙氏は「建設はゼロからスタートしたが、結果的にこの宇宙センター建設技術の80%を国産化する事に成功した」と述べた。当初韓国は発射追跡やデータ計測などを行なうシステムをアメリカから輸入する予定だったが、米国務省が国家の戦略事業であるという理由から輸出の許可をしなかった。このため韓国航空宇宙研究院は急遽システムの輸入先をイスラエルとフランスに変更せざるを得なかった。更に発射台の設計を行なうロシアが、技術流出に関する問題で設計図を当初の予定より大幅に遅れた2007年3月に送ってきた。これにより2008年末に完成予定だったスケジュールも遅れる事になった。ロシア側は「技術的な蓄積のある我々でも建設に2年かかる」としていたが、韓国側はスケジュールの達成にこだわり、19ヶ月後の2008年10月に完成させた。韓国の技術者達はA3用紙2万1631枚にものぼる設計図を、全て韓国国内の部品規格に合うようわざわざ修正したという。現代重工は石油化学プラント工事で蓄積した技術を応用し、1秒あたり900リットルの水を散布してロケットの火炎を冷却するシステムを独自開発した。さらに地下に埋められているケーブルが数百度の温度にも耐えられるよう防護壁を開発した。

この基地の完成により韓国は宇宙開発先進国への仲間入りを果たし、経済波及効果は1兆ウォンにも達するだろうと韓国人達は予想している。2009年6月12日に行なわれた完工式で、李明博大統領は「今後10年以内に我々の力で宇宙時代を切り開き、世界7大宇宙大国の一員となる」と述べた。

【2008.11.29追記】
▼左と中はエンジンと制御装置を搭載した月着陸船、右はエンジン
今月27日、KAIST(Korea Institute of Science and Technology:韓国科学技術院)は、航空宇宙工学科ロケット研究室の権世震(クォン・セジン)教授が小型月面着陸船の開発に成功したと発表した。この着陸船は重さ20kgのものを月面に降ろす事が出来るという。着陸船は重量25kg、高さと幅がそれぞれ40cmで、最大推力350ニュートンの液体推進ロケットエンジンを搭載している。権教授のチームは6年以上の研究の末に、この推力調整の可能なエンジンを独自開発した。このエンジンには韓国スペース・ソリューション社製の高性能推進剤バルブが装着されており、またエンジンの推進剤には毒性の無い親環境推進剤が使用されている。権教授によれば、このロケットエンジンは米NASAで開発している月着陸船の半分の費用(約5,000万ドル)で開発できるという。また現在、さらに高効率のロケットエンジンを開発中で、このエンジンの開発が完了すれば月探査宇宙船のエンジンとして使用できると話している。韓国は2013年に、中国かインドのロケットで月着陸船を打ち上げる予定。

【参考資料】
朝鮮日報


2009-06-13 14:32:00 (Sat)

最終更新:2009年06月13日 14:32