MiG-19戦闘機(ファーマー? > 殲撃6? > J-6? > F-6)(北朝鮮)


▼1996年5月23日、韓国に亡命し水原基地に着陸したJ-6

MiG-19S性能緒元
重量 8,830kg
全長 14.90m
全幅 9.00m
全高 3.89m
エンジン ツマンスキー RD-9B(3,250kg)2基
最大速度 マッハ1.34(10,000m)
航続距離 2,200km
上昇限度 17,500m
武装 NR-30 30mm機関砲×3(195発)
  R-3赤外線誘導空対空ミサイル(AA-2 Atoll)
  各種爆弾等2,000kg
乗員 1名

MiG-19(NATOコード:Farmer/ファーマー)は旧ソ連のミコヤン・グレヴィッチ設計局が開発したジェット戦闘機。迎撃戦闘機として開発され、最初の試作機は1954年1月に初飛行し、ソ連初の実用的超音速ジェット戦闘機として1955年3月から量産された。MiG-19は旧ソ連や共産圏各国に配備され、中国ではJ-6(殲撃6/輸出名:F-6)としてコピー生産された。また中国はJ-6をベースにした攻撃機Q-5(強撃5/輸出名:A-5)も開発している。

MiG-19は強い後退角を持つ主翼と、極端に薄い翼厚で超音速能力を獲得するとともに、機体を小型軽量にまとめる事で低高度での卓越した機動性と抜群の上昇力を得る事に成功した。固定武装として30mm機関砲を3門装備しており(MiG-19S)、得意の格闘戦に持ち込むことができればその恐るべき火力で敵機を粉砕する事が出来る。また主翼下のハードポイントには2発のR-3赤外線誘導空対空ミサイル(NATOコード:AA-2 Atoll/アトール)の装備が可能(MiG-19P)。ただしMiG-19は高度なアビオニクスを搭載しておらず、またレーダーも基本的に装備していない。

J-6は中国の瀋陽航空機が生産したMiG-19のコピー機。旧ソ連と結んだライセンス契約により1953年からMiG-19SとMiG-19Pをベースにした「東風102」(59式)を開発し、その初号機は1959年9月23日に初飛行したが、性能が低かったため瀋陽航空機は昼間型MiG-19S(NATOコード:Farmer C/ファーマーC)をベースに再設計を行なった。この再設計機はJ-6(殲撃6)として1964年に制式化された。1958年12月にはRP-5レーダーを装備した制限全天候型MiG-19P(NATOコード:Farmer B/ファーマーB)をベースに開発された「東風103」(59A式/J-6A)の初飛行が成功したが、1970年代半ばになるまで本格的生産は行われなかった。ミサイル・ロケット弾専用機MiG-19PM(NATOコード:Farmer E/ファーマーE)をベースに開発された「東風105」(59B式/J-6B)はその性能の低さから短期間で生産を終えている。J-6の生産は瀋陽航空機のほか、南昌航空機、貴州航空機でも行なわれ、3,000機以上が作られた。J-6は1980年代まで中国空軍及び海軍航空隊の主力戦闘機としてその地位を占めたが、現在は第一線からほぼ退いている。

J-6は旧ソ連ツマンスキー設計局製のクリモフRD-9Bターボジェット・エンジンをライセンス生産した渦噴6(WS-6)を装備している。基本的に機体はMiG-19と同じだが、途中から垂直尾翼後縁付け根にドラッグ・シュートを装備するようになった。J-6Aは翼下に6箇所のハードポイントがあり、2発のPL-2赤外線誘導空対空ミサイルやロケット弾ポッド、500kg爆弾などを装備する事ができる。固定武装としてJ-6は30-I型30mm機関砲3門、J-6Aは23mm機関砲2門を装備している。J-6Bは機首の空気取り入れ口内にRP-5レーダー(捜索距離2km)を装備しているが、実用性は低かったようだ。出力を強化した渦噴6A(WS-6A)を装備しミサイルのみを運用する迎撃機型のJ-6I、J-6Iに30mm機関砲2門を追加したJ-6II、J-6IIの機関砲を3門に強化したJ-6III、複座型のJJ-6、偵察機型のJZ-6なども生産された。なおパキスタンに輸出されたタイプはAIM-9「サイドワインダー」赤外線誘導空対空ミサイルの運用能力を有している。

北朝鮮は旧ソ連から若干数のMiG-19を輸入したが、現在保有しているMiG-19のほとんどが中国製のJ-6だと思われる。中国からは1970年代後半から1980年代半ばまでに200機前後のJ-6が輸出されたようだ。現在北朝鮮は約150機のMiG-19(J-6)を保有しており、4個戦闘機連隊に分散配備され迎撃及び対地攻撃の任務に使用されている。生産施設は北朝鮮内に建設されていない。1996年5月に韓国に亡命してきたJ-6(機体番号529)は、スロットルの部品脱落を防ぐために布が巻かれ計器類は油と埃で真っ黒に汚れており、機体のビスやリベットの多くが緩んでいたなど、整備状態が非常に悪く韓国軍関係者を驚かせた。なお計器類の表示はロシア語、英語、ハングルなど様々な文字が混ざっていたという。1983年に亡命してきたJ-6(機体番号207)は1996年の機体と違い、ドラッグシュートが装備されていなかった。J-6の前期生産型と思われる。

1983年2月25日、MiG-19(J-6)1機が韓国ソウル近郊の空軍基地に着陸、亡命した(207号機)。
1996年5月23日、MiG-19(J-6)1機が韓国水原基地に着陸、亡命した(529号機)。
2003年2月20日、MiG-19(J-6)1機が黄海上で韓国領空を13km侵犯した。
2005年11月11日、MiG-19(J-6)2機が白翎島付近で韓国領空を侵犯した。

▼北朝鮮の温泉邑空軍基地に並ぶMiG-19(J-6)

【参考資料】
月刊航空ファン(文林堂)
Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
北朝鮮軍の全貌(清水惇/光人社)
Grobal Security
Chinese Defence Today


2007-12-02 13:49:54 (Sun)

最終更新:2007年12月02日 13:49
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